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第30話 協力
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「アル様……!? 」
彼の姿に気が付いたカイルが慌てて姿勢を正す。
そして少年の異様な様子を見て顔色を変えた。
「その瞳の色……そして頬のアザ……もしかしてアル様も……」
そして確認するように私の方を見るカイル。
「ま、まさかアル様も……」
「ははは……」
思わず視線を逸らす私。
その通り、そのまさかなのだ。
カイルは私に掴みかかると、物凄い剣幕で捲し立てた。
「そ、そんな。アル様まで吸血鬼になってしまうなんて俺は王になんて報告したら……!! 」
「ご、ごめんなさい。その件は……」
「もう俺、国に戻れません!! 」
目に涙を溜めるカイル。まあその気持ちも分かる。せっかく助けに来た王子様が化け物の手によって化け物にされていたのだから。
「いやでも一応理由はありまして……」
「理由!? 何ですかそれは!? 」
「カミルさんに触るな」
私たちのやり取りを見ていたアルが口を挟んだ。そしてそれとなく私とカイルを引き離す。
「僕が吸血鬼にして貰えるよう頼んだんだ。カミルさんには非はない」
「アル様が……!? 」
カイルは口をパクパクさせて白目を向く。そしてそのままばったりと倒れてしまった。
「カ、カイルさーん!! 」
気絶したカイルを、私たちは一先ず家まで運ぶことにした。
◇◇◇
カイルはしばらくうなされていたが、夜が明けた頃不意に目を覚ました。
「アル様……!! 」
「あ、おはようございます」
目覚めたカイルは私の顔とアル、そして鏡に映る自分をしばらく眺めた後、ガックリと肩を落とした。
「……夢ではないんですね」
「あはは……そうですね」
申し別けなくてただ同意することしか出来ない私。
隣にいるアルも、気まずそうに顔を背けている。
「……僕が吸血鬼にしてくれって頼んだんだ。カミルさんは悪くない」
「ええ!? アル様が!? 」
思わぬ言動に飛び上がるカイル。
「どうせ僕はもうすぐ死んでしまう。それなら吸血鬼になってカミルさんの傍で生きたいって思ったんだ」
「アル様……」
カイルも事情は知っているのだろう、憐れみを帯びた目でアルを見つめた。
「僕はもう城には帰らない。僕がいなくても兄さんさちがいるじゃないか」
「しかし、お父様は心配してますよ」
心配? と鼻で笑うアル。
「吸血鬼になった息子のことなんてあの人は排除したがるに決まってますよ」
そうだろう。私の父ですら魔女をひどく毛嫌いしていた。
貴族というのはそういうものなのだ。
「じゃあアル様はこれからどうするのですか……? 」
「僕はここで暮らします。ただのアル、として」
カイルはしばらく迷ったように目を閉じたが、あるとき急に目を見開いた。
「……分かりました。アル様がそういうなら俺も協力します」
「カイル……」
「アル様がひっそり暮らせるように、王の動きを監視したいと思います」
ふわっとした笑みを浮かべるカイル。本当にアルのことを思っているのだろう。
「ですが貴女のことを信じたわけではありませんよ! アル様に変なことしないでください……!! 」
キッと私のことを睨み付ける。
あら、随分嫌われてしまったようだ。
「しませんよ。それにカイルさんも気を付けた方が良いですよ。貴方も吸血鬼なのですから」
「俺はそんなヘマしないですよ、これでも騎士団長なんですから」
と言って胸を張るカイルは、何かしらやらかしそうな気がした。
彼の姿に気が付いたカイルが慌てて姿勢を正す。
そして少年の異様な様子を見て顔色を変えた。
「その瞳の色……そして頬のアザ……もしかしてアル様も……」
そして確認するように私の方を見るカイル。
「ま、まさかアル様も……」
「ははは……」
思わず視線を逸らす私。
その通り、そのまさかなのだ。
カイルは私に掴みかかると、物凄い剣幕で捲し立てた。
「そ、そんな。アル様まで吸血鬼になってしまうなんて俺は王になんて報告したら……!! 」
「ご、ごめんなさい。その件は……」
「もう俺、国に戻れません!! 」
目に涙を溜めるカイル。まあその気持ちも分かる。せっかく助けに来た王子様が化け物の手によって化け物にされていたのだから。
「いやでも一応理由はありまして……」
「理由!? 何ですかそれは!? 」
「カミルさんに触るな」
私たちのやり取りを見ていたアルが口を挟んだ。そしてそれとなく私とカイルを引き離す。
「僕が吸血鬼にして貰えるよう頼んだんだ。カミルさんには非はない」
「アル様が……!? 」
カイルは口をパクパクさせて白目を向く。そしてそのままばったりと倒れてしまった。
「カ、カイルさーん!! 」
気絶したカイルを、私たちは一先ず家まで運ぶことにした。
◇◇◇
カイルはしばらくうなされていたが、夜が明けた頃不意に目を覚ました。
「アル様……!! 」
「あ、おはようございます」
目覚めたカイルは私の顔とアル、そして鏡に映る自分をしばらく眺めた後、ガックリと肩を落とした。
「……夢ではないんですね」
「あはは……そうですね」
申し別けなくてただ同意することしか出来ない私。
隣にいるアルも、気まずそうに顔を背けている。
「……僕が吸血鬼にしてくれって頼んだんだ。カミルさんは悪くない」
「ええ!? アル様が!? 」
思わぬ言動に飛び上がるカイル。
「どうせ僕はもうすぐ死んでしまう。それなら吸血鬼になってカミルさんの傍で生きたいって思ったんだ」
「アル様……」
カイルも事情は知っているのだろう、憐れみを帯びた目でアルを見つめた。
「僕はもう城には帰らない。僕がいなくても兄さんさちがいるじゃないか」
「しかし、お父様は心配してますよ」
心配? と鼻で笑うアル。
「吸血鬼になった息子のことなんてあの人は排除したがるに決まってますよ」
そうだろう。私の父ですら魔女をひどく毛嫌いしていた。
貴族というのはそういうものなのだ。
「じゃあアル様はこれからどうするのですか……? 」
「僕はここで暮らします。ただのアル、として」
カイルはしばらく迷ったように目を閉じたが、あるとき急に目を見開いた。
「……分かりました。アル様がそういうなら俺も協力します」
「カイル……」
「アル様がひっそり暮らせるように、王の動きを監視したいと思います」
ふわっとした笑みを浮かべるカイル。本当にアルのことを思っているのだろう。
「ですが貴女のことを信じたわけではありませんよ! アル様に変なことしないでください……!! 」
キッと私のことを睨み付ける。
あら、随分嫌われてしまったようだ。
「しませんよ。それにカイルさんも気を付けた方が良いですよ。貴方も吸血鬼なのですから」
「俺はそんなヘマしないですよ、これでも騎士団長なんですから」
と言って胸を張るカイルは、何かしらやらかしそうな気がした。
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