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第7話 つながりも生活も大事
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ーーそして紬が倒れてから少々時計は進み、その日の夜
「え、今日紬休みなんか!? 」
「ええ、何とも体調を崩してしまったとか」
鈴屋は待ってましたとばかりにスマホを取り出すと彼女へのメッセージを作り始める。
スマホ初心者とは思えないほどの指捌きで操作をする彼はあっという間に長い文章を作ってしまった。
すずや♪>お~い、大丈夫か? 倒れるなんて軟弱なやっちゃな、たくさん食べてたくさん運動しなきゃあかんで!
……返信はない。
「おかしいな~、昨晩は凄い返信早かったのに」
「心配だね……」
凍花も紬に心配するレインを送りながら言った。
「でも、どうします? 先生がいないんじゃあ私たちで出来ることなんて何も……」
カミラがうーんと首を捻りそねみと顔を見合わせた。
「そうですね~……今日はお休みにしましょうか。明日には先生も良くなるでしょうし」
そのとき、ガラリと教室の扉が開いたかと思うと久々に幽霊少年が登校してきた。
彼は無言のまま自分の席に着くと、紬がいないことに気がつきようやく口を開いた。
「……あいつは? 」
「今日は先生が倒れてしまったみたいでお休みになったんですね。あ、そうそう、これ海斗にも支給です」
海斗はそねみから手渡されたスマホを受け取り、少しだけ目を輝かせた。
「あーあ、それにしても返信がないとつまらんやっちゃなー」
「返信? 誰からの? 」
するとカミラが答えた。
「昨日の夜、皆先生と一晩中レインをしてたんですよ~。色々な話が出来てとっても楽しかったですわ」
「一晩中? まさか皆であいつにレインしてたの? 」
「そうやけど? 紬から返信来るのが楽しみやのに、今回は遅いな~」
すると海斗が久々に声を荒げ始めた。
「先生を殺したくないなら今すぐ夜中にレインを送るのはやめろ」
「は? 急になんやねん」
「先生を殺したいなんて……、そんな恐ろしいこと思ってないよ……。何でそんな酷いこと言うの……?」
凍花さえも珍しく頬を赤らめて怒っている様子だ。
「人間は夜は寝なきゃいけないんだ。そうじゃないと死んでしまう生き物なんだ。忘れたのか? 」
「死んでしまうなんてそんな大袈裟な! 」
「あいつは優しいから皆に早く返信してくれたんだろうけど、今日倒れたんだろう? 明らかに寝不足だ。このままこんな生活させてたら……分かるだろ」
海斗の言葉に皆がごくりと唾を飲み込んだ。紬とのレインが楽しくて楽しくてすっぽり忘れてしまっていた。
「そうですわね……人間は夜は眠っている生き物。私たちとは違うんですね」
カミラがさっとスマホを取り出した。
「私、先生に謝らなくては……!! 」
その言葉を皮切りに他の三人も慌てて文章を作る。
「ごめんな紬……ゆっくり夜寝かせてやれんで……」
「きっと眠たいのを我慢して気を遣ってくれてたんだね……」
すると海斗がさっと皆を制止した。
「こういうときはまとめて送った方がよいだろ。ほらここをこうして……」
◇◇◇
私がゆっくり目を開けると、見覚えのある天井が飛び込んで来た。
そこが自宅だと気が付いた私は今までの経緯を理解した。
体を起こすと、きちんと整理された鞄が机の上に置かれていて、その横には冷めないようラップが張られたお粥が鎮座していた。
「やらかしたな……」
そう小さく呟いた私は慌てて鞄の中からスマホを取り出した。
倒れてから私は一体どれぐらい意識を失っていたのだろうか? 無断で授業を休んだのだ。彼らから大量のメッセージが入っていてもおかしくない。
「"あやかし組"に招待されています……? 」
しかし私の予想とはうって代わり、あやかし組というレイングループに招待されているのと、鈴屋から1件メッセージが来ているのみであった。
私がそのグループに参加をすると、すぐに皆からレインが飛んできた。
すずや♪>紬! ようやく意識戻ったんか!
日野紬>はい、ご迷惑おかけしました。
皆、怒ってるんだろうな……。少しだけ覚悟してグループに参加したのだが、皆の反応はまったく違うものだった。
鈴屋♪>ごめんな、紬。ワシらが紬が人間であることを忘れて、無理させてしまったんやろ
☆凍花☆>本当にごめんなさい(>_<) 私たちのせいで体を壊させてしまって…。
曽音己>本当にすいません、しばらく無理せず休んでください。
そねみからは頭を下げるウサギのようなキャラクターのスタンプが送られてきた。
カミラ=カルンスタイン>本当にごめんなさいね。私たち、先生とのやり取りが楽しくてつい調子に乗ってしまったの…。
次々に送られてくる謝罪の声に私は驚きを隠せなかった。
日野紬>いえいえ、そんなとんでもないです。
すると、ゲームのキャラクターをアイコンにした見たことのないアカウントが発言をした。
かいと>謝んなくて良いよ。僕たちとあんたは生きる時間が違うんだから。
鈴屋♪>おいこら、またそんなこと言ってんのか!
かいと>だから、僕たちは人間に合わせなきゃいけないんだよ。
かいと>なるべく深夜の連絡は避ける、返信が来なくても怒らず気長に待つ
かいと>それで良いでしょ?
何があったのかは知らないが海斗が上手く皆をまとめてくれたようだ。
次々に皆が了解の返事をする。それに続けて私もokのスタンプを押した。
かいと>じゃあそういうことで
日野紬>海斗くん、ありがとう。
彼からの返事はなかったが、少しだけそのぶっきらぼうだが優しい少年のことを知れた気がした。
「え、今日紬休みなんか!? 」
「ええ、何とも体調を崩してしまったとか」
鈴屋は待ってましたとばかりにスマホを取り出すと彼女へのメッセージを作り始める。
スマホ初心者とは思えないほどの指捌きで操作をする彼はあっという間に長い文章を作ってしまった。
すずや♪>お~い、大丈夫か? 倒れるなんて軟弱なやっちゃな、たくさん食べてたくさん運動しなきゃあかんで!
……返信はない。
「おかしいな~、昨晩は凄い返信早かったのに」
「心配だね……」
凍花も紬に心配するレインを送りながら言った。
「でも、どうします? 先生がいないんじゃあ私たちで出来ることなんて何も……」
カミラがうーんと首を捻りそねみと顔を見合わせた。
「そうですね~……今日はお休みにしましょうか。明日には先生も良くなるでしょうし」
そのとき、ガラリと教室の扉が開いたかと思うと久々に幽霊少年が登校してきた。
彼は無言のまま自分の席に着くと、紬がいないことに気がつきようやく口を開いた。
「……あいつは? 」
「今日は先生が倒れてしまったみたいでお休みになったんですね。あ、そうそう、これ海斗にも支給です」
海斗はそねみから手渡されたスマホを受け取り、少しだけ目を輝かせた。
「あーあ、それにしても返信がないとつまらんやっちゃなー」
「返信? 誰からの? 」
するとカミラが答えた。
「昨日の夜、皆先生と一晩中レインをしてたんですよ~。色々な話が出来てとっても楽しかったですわ」
「一晩中? まさか皆であいつにレインしてたの? 」
「そうやけど? 紬から返信来るのが楽しみやのに、今回は遅いな~」
すると海斗が久々に声を荒げ始めた。
「先生を殺したくないなら今すぐ夜中にレインを送るのはやめろ」
「は? 急になんやねん」
「先生を殺したいなんて……、そんな恐ろしいこと思ってないよ……。何でそんな酷いこと言うの……?」
凍花さえも珍しく頬を赤らめて怒っている様子だ。
「人間は夜は寝なきゃいけないんだ。そうじゃないと死んでしまう生き物なんだ。忘れたのか? 」
「死んでしまうなんてそんな大袈裟な! 」
「あいつは優しいから皆に早く返信してくれたんだろうけど、今日倒れたんだろう? 明らかに寝不足だ。このままこんな生活させてたら……分かるだろ」
海斗の言葉に皆がごくりと唾を飲み込んだ。紬とのレインが楽しくて楽しくてすっぽり忘れてしまっていた。
「そうですわね……人間は夜は眠っている生き物。私たちとは違うんですね」
カミラがさっとスマホを取り出した。
「私、先生に謝らなくては……!! 」
その言葉を皮切りに他の三人も慌てて文章を作る。
「ごめんな紬……ゆっくり夜寝かせてやれんで……」
「きっと眠たいのを我慢して気を遣ってくれてたんだね……」
すると海斗がさっと皆を制止した。
「こういうときはまとめて送った方がよいだろ。ほらここをこうして……」
◇◇◇
私がゆっくり目を開けると、見覚えのある天井が飛び込んで来た。
そこが自宅だと気が付いた私は今までの経緯を理解した。
体を起こすと、きちんと整理された鞄が机の上に置かれていて、その横には冷めないようラップが張られたお粥が鎮座していた。
「やらかしたな……」
そう小さく呟いた私は慌てて鞄の中からスマホを取り出した。
倒れてから私は一体どれぐらい意識を失っていたのだろうか? 無断で授業を休んだのだ。彼らから大量のメッセージが入っていてもおかしくない。
「"あやかし組"に招待されています……? 」
しかし私の予想とはうって代わり、あやかし組というレイングループに招待されているのと、鈴屋から1件メッセージが来ているのみであった。
私がそのグループに参加をすると、すぐに皆からレインが飛んできた。
すずや♪>紬! ようやく意識戻ったんか!
日野紬>はい、ご迷惑おかけしました。
皆、怒ってるんだろうな……。少しだけ覚悟してグループに参加したのだが、皆の反応はまったく違うものだった。
鈴屋♪>ごめんな、紬。ワシらが紬が人間であることを忘れて、無理させてしまったんやろ
☆凍花☆>本当にごめんなさい(>_<) 私たちのせいで体を壊させてしまって…。
曽音己>本当にすいません、しばらく無理せず休んでください。
そねみからは頭を下げるウサギのようなキャラクターのスタンプが送られてきた。
カミラ=カルンスタイン>本当にごめんなさいね。私たち、先生とのやり取りが楽しくてつい調子に乗ってしまったの…。
次々に送られてくる謝罪の声に私は驚きを隠せなかった。
日野紬>いえいえ、そんなとんでもないです。
すると、ゲームのキャラクターをアイコンにした見たことのないアカウントが発言をした。
かいと>謝んなくて良いよ。僕たちとあんたは生きる時間が違うんだから。
鈴屋♪>おいこら、またそんなこと言ってんのか!
かいと>だから、僕たちは人間に合わせなきゃいけないんだよ。
かいと>なるべく深夜の連絡は避ける、返信が来なくても怒らず気長に待つ
かいと>それで良いでしょ?
何があったのかは知らないが海斗が上手く皆をまとめてくれたようだ。
次々に皆が了解の返事をする。それに続けて私もokのスタンプを押した。
かいと>じゃあそういうことで
日野紬>海斗くん、ありがとう。
彼からの返事はなかったが、少しだけそのぶっきらぼうだが優しい少年のことを知れた気がした。
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