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第22話 まさかの再会
しおりを挟む「まさかルーナも転生者なのか?! 」
その後、あたしたちは近くの宿屋みたいな場所に入った。あんな道の真ん中でこんな大事な話をするのはちょっと気が引けたからだ。
隣にはルティは珍しく不思議そうな顔であたしとエルメの会話を聞いている。ああギルはいつの間にかいなくなっていた。多分ルティが苦手で関わりたくないのだろう。
「そう! 元々はごくふつーの女子高生だったのにいつの間にかこんなことに! 」
エルメは分かる分かると言いながらこくりと頷く。
「俺もただの男子中学生だったさ。でも気が付いたらこのエルメってキャラクターになってたよ」
ああ、だから見た目の割に男みたいな言動が多かったのか。それなら納得もいく。
「それは……大変ね」
大変だったよ! とエルメは勢いよくジョッキの中のジュースを飲み干した。
「俺に女の子のことなんて分かるわけないし、主人公はキモいし! 初めはゲーム通りのキャラを演じてたんだけどもう限界だ」
「エルメはこのゲームを知ってるの? 」
もちろんとエルメは頷いた。
「このゲームはかなりやりこんだよ。大まかなストーリーなら覚えている」
でも! とエルメはあたしをびしっと指差す。
「ルーナのキャラクターがそもそも違うし、ルティというキャラも知らない。俺の知っているストーリーとは変わってきているみたいだ」
「そっかぁ……あたしはこのゲーム全然知らないからさ……」
でもストーリーを知っている人間に出会えたのは大きいかも。それならこれから起こるであろうイベントや、神様のこと、色々知っているだろう。
「ふーん、なるほどね。未プレイ者なら仕方ない。それにルーナは生け贄として死んでしまうキャラだし、運命が変わるのは良いことかもな」
「やっぱそうなんだ……いや、そのことは知ってたのよ。翔……ああごめん前世での弟から聞いてたし」
翔、という単語を聞いた瞬間、ぶふぉっとエルメが噴き出した。
その液体は正面に座っていたあたしに降りかかる。
「ちょっ、ちょっと何すんのよ! 」
げほっ、ごほっ、とエルメは蒸せながら必死に言葉を紡ぎ出す。
「……まさかお前の前世の名前は小谷 里奈《こだに りな》か? 」
「どうしてそれを……」
エルメが言い当てたのはあたしの本名。
彼女ははぁーっと大きく息を吐くと、意を決したように顔をあげた。
「俺の前世での名前は小谷 翔だ。……久しぶり、姉ちゃん」
「う、う、嘘でしょ?! 」
「嘘なわけあるかよ。がさつで男好きでうるさくて乱暴なねーちゃ……」
「うるさいうるさい! 」
目の前にいる美少女があの翔?!
似ても似つかぬその姿にあたしは思わずじっくりと見つめてしまう。
あたしの記憶の中の翔はいわゆるヲタクで、身だしなみもテキトーな暗い奴。そりゃたまに会話はするけど、仲良し姉弟かと聞かれればそれはノーだ。
でもこの言い回し、確かに翔を思い出す。
「こんなことってある……? 」
この世界にきてまさかこんなことになるとは。
「分からん。けど実際に俺たち姉弟で転生してしまったみたいだな……」
ルティだけは面白そうにその様子を見ていた。
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