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第50話 フラグが立った…?
しおりを挟む「うん、ありがと。落ち着いた」
涙が引っ込んだらしいルーナは不器用に笑って見せた。涙の跡が頬についている。
「そっか」
近くの木に寄り掛かりながら俺はそう答える。
「……ここね、パパとの思い出の場所なの」
ルーナはポツポツと語り始めた。
「今は何にもない野原だけど、小さい頃は綺麗なお花畑だったのよ。そこでよく遊んで貰ったなー。うん、あれは楽しかったよ」
「良いじゃないか。家族仲が良いのは羨ましいな」
「ヨリの家族は? 」
「俺の家族は……生きてはいるだろうが、どうしてんだろう。縁切っちゃったからわかんねえな」
俺は元の世界でどういう扱いなのだろうか、失踪? 死亡? 家族もほんの少しは心配してくれてるだろうか。
「そうなんだ。複雑だね」
ルーナも何か察したのかそれ以上は聞いてこなかった。
「そんで、ルーナはどうしたいんだ」
俺がそう言うとルーナは今にも泣きそうな顔で唇を強く噛んだ。そして喉の奥から言葉を絞り出す。
「私はパパが嘘をついてるなんて思ってない。……でも今までの常識をひっくり返すのは怖いの……」
だって! と更に言葉を続ける。
「ずっと信仰していたテゼス様に秘密があるなんて考えたこともなかったんだもん……。ううん、むしろただのお伽噺だと思ってた」
「そうだよな」
俺だってアマテラスだのツクヨミが本当に存在するなんて思ってない。だがそれが実在するとしたらこんな反応になるだろう。
「それに私だけが真実を暴ける? そんな重要なこと……私に押し付けられても困るよ……」
そしてルーナは俺の方をちらりと見る。
「ヨリならどうする? 」
「そうだなー」
これはそう簡単には答えること出来ないだろう。
よく考えて返事をしなければならない。
「俺はやりたくないことはしない。それだけかな」
「そ、そんな簡単なの? 」
「ああそうだよ。だって俺は弱いしやる気もない。自分がやりたくないことならやらないさ」
「へ、へえ……」
ルーナは面食らったように俺の顔を見つめる。
「別にルーナが真実を知りたくないならそれで良いんじゃないか? 真実を知らなかったからと言って世界が終わる訳じゃない」
「まあ、そうかも」
「少なくともルーナが寿命を全うすることは出来るだろ? それならそれで良いじゃないか。別に俺たちは勇者でも賢者でもないんだ」
「……」
まあよーは嫌なことからは逃げちゃおうぜという俺のゴミクズ理論だ。ってこんな偉そうなこと言ってる俺もブラック企業からは逃げずにじりじりと精神を削られて自殺までしちまったけどな……。
若いルーナへのおじさんからのエールだエール。
「……私は真実は知りたい。でも、パパを殺した悪い人たちに狙われるのは怖い」
「じゃ、真実を知れば良いじゃないか」
「でも! 私は強くない! 」
「俺が守ってやるよ」
「へ? 」
ルーナがポカンと口を開けて俺を見つめる。
あ、俺というよりシエルがと言った方が正しいかもしれん……。
俺はただの一般人だし。
しかし余計なことは言わないようにした。
「だから、俺がお前を守ってやる。それなら良いだろ? 」
「う、うん。ま、そうね。それなら」
そしてみるみる内に顔が赤くなっていくルーナ。
「ん、大丈夫? 熱でもあるのか」
ルーナの額に手を当てると、ひゃあ!! と甲高い声をあげてルーナが後ろへ飛び退いた。
「ご、ごめん」
確かにおじさんにいきなり触られるのは嫌だよな。
ごめんなルーナ。
「あ、いや。別に嫌という訳じゃなくて……ごめん、びっくりしただけ」
「そうか」
「あ、その嫌では、なかった。むしろ、その……嬉しいかな」
「そうなのか? 」
額に触られて喜ぶなんて少しルーナは変わってるな。
「って、そんなことどうでも良くて! 私のこと守ってくれるの? 」
「ああ、勿論」
「本当? 絶対? ぜーったい? 」
しつこいぐらい確認してくるルーナ。
「当たり前だ。ルーナに、いやルーナの家族に危害を加えられるようなことはないようにするさ」
「そ、そっか」
ルーナは俺から視線を外し、自分の髪の毛をくしゃくしゃと掻き回す。
「……それから私、やるよ。パパの残した真実を、明らかにするよ」
「おう」
ルーナは俺の目をまっすぐに見つめた。
その瞳には迷いはなく、全ての覚悟を決めたような色を秘めていた。
「例えどんなことが分かっても私は目を逸らさない。私はパパの残した真実を受け止めたいの」
そしてルーナは俺の手を取ると、こう続ける。
「だからヨリはちょっとだけ私を助けて。一人じゃ……しんどいから」
「任せろ、いつでも受け止めてやるよ」
「うん! 」
そしてルーナはちょっと照れ臭そうにこう言った。
「何だか、お姫様になった気分ね」
「じゃあさしずめ俺は姫を守る騎士ってとこか」
そんな柄じゃねえなと心のなかで呟いた。
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