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第57話 デート?
しおりを挟む昨日はよく眠れなかった。
冷静になって頭を冷やすと、ただの一般人である俺にサクヤを救うことなんて出来るのだろうか?
たびたび忘れてしまうが俺はただ少しだけお金を持ってるだけの一般人なのだ。強い魔法も剣術もない。うんうん、忘れちゃいけないな。
「いやでも……」
月読の神衣を通して見てしまった未来。これは放置していたら必ず訪れるだろう。
そうすればサクヤはおそらく死ぬ。それが分かっていて何もしないのは気持ちが悪い気がした。
「ヨリおはよ」
シエルがもそもそと起き出した。
寝癖があちこちについてもしゃもしゃになっている。
「おはよ」
「? ヨリ、何か悩んでます? 」
「まーな。そもそもどうやって帝国に入ろうかなって考えてる」
ルーナによると帝国に入るには手続きがいるらしいし。しかしそれだとサクヤはどうやって入るつもりなのだろうか……? もしかして何かあてがあるのだろうか?
「そっかぁ……私たちじゃ入れないもんね」
「入れるかもしれないが、入れないかもしれない。無駄に時間を食うのだけは避けたいな」
「むむむ……」
頭を抱えて考え込むシエルだったが良い案は思い付かなかったのか、こてんと布団に顔をつけた。
「無理……」
「まあ、そう焦らなくても良いけどな。最悪金を積めば入れそうだし」
ただこの方法だけは避けたい。なぜならあまり目立つのは得策ではないからだ。大金持った子連れが来た、なんて噂が立てば怪しまれるのは確実だ。
「そうだね……ん? 誰か来たかも」
「ルーナか? 」
シエルがそう言ったすぐ後に、ドンドンと扉を叩く音がした。うーん、流石シエルの聴力は確実だ。
ルーナも朝からご苦労だな、そんなことを考えながらはーい、と玄関に走る俺。
そして扉の向こうにいたのは……。
「久しいな」
「ミシェル!? 」
そこにいたのはミシェルだった。そういえばリュイを助けて以来顔を見ていなかったな。
しかし今日のミシェルはいつもと雰囲気が違った。お堅い鎧は脱ぎ捨てて、女の子らしいワンピースに身を包んでいる。三つ編みの髪の毛も下ろし、さらさらとなびいている。
「……あまり見るな。今日は休日なんだ」
顔を赤くしてよそ見をするミシェル。
「あ、ああごめん。珍しいなと思って」
「そうだな、私も久しぶりに休んだ」
おそらくガーゴイルの処理で忙しかったのだろう。ご苦労だ。……まあ半分俺のせいなのかもしれないけど。
しかしミシェルは何をしに来たのだろうか? そんなことを考えていると彼女から口を開いた。
「……二人で話がしたい。今、大丈夫か? 」
「話? あ、ああ。良いけど」
「……そっか」
ミシェルは少しだけ嬉しそうに口許を緩めた。
俺はシエルに少し出掛けてくるー、と声だけかけると、上着を羽織り、ミシェルと共に飛び出した。
◇◇◇
「それで話というのは? 」
近所のお洒落なカフェに場所を移した俺たち。
……あまりにお洒落すぎて落ち着かない俺に対し、背筋をピンと伸ばして上品に紅茶を飲むミシェル。
俺一人じゃ入りづらいから何となく避けていたけど今度シエルも連れていってやりたいな。
「……その、まずはお礼を言いたい」
「え? 」
ミシェルは深々と頭を下げると、こう続けた。
「弟を救ってくれてありがとう。君がいなければ私たちはこんな風に生活できていなかった……」
「え、あ、いやいやいやいや」
「そして非礼を詫びたい。いくら仕事とは言え君たちには失礼なことをした」
「そんな気にしないで下さい」
びっくりするぐらい真面目なのだろう。ミシェルはきりっと唇を引き結び、頭を下げる。
「それで、今日はその……お礼ということで食事でも奢らせて欲しいなと」
「あ、そういう訳なんですね」
「……私にはそれぐらいしか出来ないから。すまないな」
ミシェルもマメだな。そんなんいいのに。
すると俺の頭の中に悪い考えが浮かんだ。
ミシェルなら帝国に入ることが出来るんじゃないかーー? いや正確にはミシェルに認められた者なら。
ミシェルは立派な王国騎士だ。帝国に入るには十分身分が証明されているだろう。
いやいやいやいや、でもどうやってそれをミシェルに伝えれば良いんだ……?
帝国に行きたいから許可くださーいなんて頼んだところでなんで? と聞かれるのは当たり前だろう。
竜殺しサクヤを探しに行くから、なんて言えるはずもない。
「ヨリ? 」
「あ、いや何でもない」
挙動不審な俺を訝しげに見つめるミシェル。
どうしようどうしよう……。でも正直ミシェル以外に思い当たるアテはない。
意を決した俺はミシェルにこう告げた。
「なあミシェル、食事は奢って貰わなくて大丈夫だ。その代わり頼みたいことがある」
「頼みたいこと? 」
「ああ。ただここでは言いづらい。どこか人気のないところに行きたい」
するとミシェルは俺の表情を見てか、こくりと頷いた。
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