転生したけどモブ奴隷だったので、悪役王子を更生させようと思います

寿司

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第1話 前世の記憶

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 生まれたときから奴隷として生活し、ご主人様が見つかるまで各地を転々とする日々。
 しかしこの世界で差別されている獣人という姿の私はいつも売れ残りだ。

 そのせいか日に日に待遇も酷くなり、ついにはご飯も満足に与えられなくなってしまった。

 もう何日食べ物を口にしていないだろうか……。
 視界がクラクラと歪んで来るのが分かる。
 そうして名無しの「私」が空腹の余り、三途の川を渡りかけているとき、あることを思い出した。

「あ、私の本名……久野 唯花くの ゆいかだ……」

 そのときまるで濁流のように記憶が私の脳裏を駆け巡った。
 いや、これはただの記憶ではない。ーー前世・・の記憶だ。

 久野 唯花という名前のごく普通の女子高生で、乙女ゲームが大好きないわゆるオタク。

 家族構成は両親と、そして六人もの弟と妹たちがいた。
 多忙な両親に代わって私が良く兄弟たちの世話をしていたものだ。まあ一番年上だったし。

 それで私は死ぬ直前まで「True Love」という乙女ゲームにドはまりしていたことを思い出した。
 内容的にはごく普通の町娘の主人公(デフォルト名はリィンだったかな? )が個性豊かなイケメン王子様に好かれまくるというよくあるストーリーだ。

「アステル様、こちらの奴隷などいかがでしょう」

「そうそう! アステルっていうシュタインの弟が主人公を傷つけて処刑されるんだよなー。あのイベントはちょっと可哀想だったかも」

「は? 」

「え? 」

 あれ、今誰がアステルって言ったっけ? 

「貴様……今、何と言った? 」

 聞いたことあるイケメンボイス。
 衰弱し切った体を何とか起こして顔を上げると、そこにいたのは乙女ゲーム「True Love」の登場人物、アステル=セリラムド。
 
 信じられない光景に私は思わず目を見開いた。

 私の目の前にアステルがいる……!? つまりここは乙女ゲームの世界!? 

 いやいやいや待て待て。こういうとき転生するのは悪役令嬢なのではないか。しかしなぜ私は名もなき獣人奴隷に転生している……!?
 悪役令嬢に転生してイケメンとくっつくのがお約束じゃないのかよ……。まあこの中途半端さは私らしいと言えば私らしいかも。
 そうして私が一人思い悩んでいると、アステルがずいと私の入っている牢に顔を近づけた。

「おい、答えろ。俺が……殺される? 」

「いや、すいません、何も言ってないです!! 」

 やばい、ぼーっとしていたのでうっかり名前を出してしまった。
 こんな失礼なことを言ってしまった私は殺されるの決まっている。

「俺の名前と兄の名前を知っていたな、何者だ女!! 」

 何者かと言われても……。
 私は慌てて空耳じゃないですか~? とすっとぼけてみるが、アステルには通じなかったようだ。

「出ろ!! 」

 そして王族を怒らせた私は無理やり牢から出される。
 ああ、ようやく記憶を取り戻したのに……私は殺されてしまうのね……。

 願わくば、次転生した時は金持ちの娘にしてください。
 ああ……出来ればイケメンに甘やかされたいです。
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