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第13話 突然の訪問者
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二人でやるとやっぱり作業が早い。めぼしい場所の掃除を終えた私たちはほっと息をつく。
広すぎるお屋敷なので流石に全ての部屋の掃除をすることは無理だったが、だいぶ過ごしやすくはなっただろう。
一番変わったのはやはりアステルの部屋だ。
埃かぶって、散乱していた本はきれいにぴっちり並べられ、分厚いカーテンも取っ払い柔らかな日光が差し込んでいる。
足の踏み場もない部屋だったが二人ぐらいなら余裕で眠れそうだ。
「うわぁ……凄いね。俺、久々に部屋の床見たかも」
「どれだけ掃除してなかったのよ……でも今日の掃除はもう終わり! お疲れ様! 」
アステルはまじまじと部屋を眺めると、ぽつりと呟くように言った。
「……掃除も悪いもんじゃないな」
「でしょー! それにほら! 」
私は写真立てをアステルに見せる。その中にはアステルのお母さんが柔らかな笑顔を浮かべていた。
「それは……」
「ふふ、いらない木材とか使って写真立て作ってみたの。お母様の写真を本に挟みっぱなしじゃ良くないじゃない? 」
アステルは私から写真立てを受け取ると、照れ臭そうにありがとう、と言った。
そしてそのままそれを、ベッドのすぐ横に置く。
「私の作った写真立てなんかでごめんね、不器用だから上手く出来なくて。もしもっと綺麗なの見つけたら買ってくるね! 」
「いや、良い。俺はこの写真立てが好きだ」
「そ、そう? 」
少し斜めってるし、歪んでるけど……まあアステルがそう言うなら。
「さー、疲れたし夕食にしますか」
今日のご飯は何にしようかな、昨日はお肉だったし、今日は魚かな。
すると、トントンと誰かが扉をノックする音がした。
「こんな時間に誰かしら……? 」
耳を澄ませてみたがおそらく人数は二人。敵意はなさそうだ。
「こ、こんな時間に誰だ!? ステラ、ここは居留守で……」
ビビりまくるアステルを尻目に、はーいと玄関に向かう私。
そして扉を開くとそこにいたのは……。
「お願いします……! 王子様!! 」
「わわ! 」
そこにいたのは幼い子どもを抱えた見知らぬ母親。
母親の腕の中で眠る子どもは熱があるようで顔が真っ赤だ。呼吸もどこか苦しそうにしている。
「だ、誰だ!? 」
こんなごく普通の母子にビビるなよアステル……。
「突然の無礼をお許しください、実は我が子の様子が昨日からおかしくて……薬を分けて頂けないでしょうか……? 」
「薬? 俺は医者ではない、他を当たってくれないか」
「昨日からお医者様が別の町にいってまして……お願い致します。薬だけでも……」
深々と頭を下げる母親。
アステルは困惑したように私を見る。
いやいやいや、私に助けを求められても困る!
「アステル様、薬ぐらい分けてあげれば良いじゃないですか」
「違う……この子どもの症状はただの発熱ではない」
へ? どういうこと?
「どういうことですか……!? 」
私の気持ちを代弁するように母親が声をあげる。
それに押されたのか、アステルがたじろく。
「いや、その……その子どもの腕に斑点のようなものが出来ているだろう……? これはおそらく、鬼火病かと……」
「鬼火病!? 」
なんじゃそりゃ。
聞き慣れない病名だ。
しかし母親の反応からして、重病なのだろうか。
「何それ……? 」
「流行り病だ。高い熱出るのが特徴で専用の薬でなければ治らない……」
「え!? ただの風邪薬が効かないんですか? 」
「そうなんだが……でも……いや……」
何を迷ってるのだろうかこの男は……?
ああそうか、と私は思い出した。
アステルは母親を助けるために色々な研究をしていたのだ。
もしかしたら彼はこの薬の作り方を知っているのでは?
広すぎるお屋敷なので流石に全ての部屋の掃除をすることは無理だったが、だいぶ過ごしやすくはなっただろう。
一番変わったのはやはりアステルの部屋だ。
埃かぶって、散乱していた本はきれいにぴっちり並べられ、分厚いカーテンも取っ払い柔らかな日光が差し込んでいる。
足の踏み場もない部屋だったが二人ぐらいなら余裕で眠れそうだ。
「うわぁ……凄いね。俺、久々に部屋の床見たかも」
「どれだけ掃除してなかったのよ……でも今日の掃除はもう終わり! お疲れ様! 」
アステルはまじまじと部屋を眺めると、ぽつりと呟くように言った。
「……掃除も悪いもんじゃないな」
「でしょー! それにほら! 」
私は写真立てをアステルに見せる。その中にはアステルのお母さんが柔らかな笑顔を浮かべていた。
「それは……」
「ふふ、いらない木材とか使って写真立て作ってみたの。お母様の写真を本に挟みっぱなしじゃ良くないじゃない? 」
アステルは私から写真立てを受け取ると、照れ臭そうにありがとう、と言った。
そしてそのままそれを、ベッドのすぐ横に置く。
「私の作った写真立てなんかでごめんね、不器用だから上手く出来なくて。もしもっと綺麗なの見つけたら買ってくるね! 」
「いや、良い。俺はこの写真立てが好きだ」
「そ、そう? 」
少し斜めってるし、歪んでるけど……まあアステルがそう言うなら。
「さー、疲れたし夕食にしますか」
今日のご飯は何にしようかな、昨日はお肉だったし、今日は魚かな。
すると、トントンと誰かが扉をノックする音がした。
「こんな時間に誰かしら……? 」
耳を澄ませてみたがおそらく人数は二人。敵意はなさそうだ。
「こ、こんな時間に誰だ!? ステラ、ここは居留守で……」
ビビりまくるアステルを尻目に、はーいと玄関に向かう私。
そして扉を開くとそこにいたのは……。
「お願いします……! 王子様!! 」
「わわ! 」
そこにいたのは幼い子どもを抱えた見知らぬ母親。
母親の腕の中で眠る子どもは熱があるようで顔が真っ赤だ。呼吸もどこか苦しそうにしている。
「だ、誰だ!? 」
こんなごく普通の母子にビビるなよアステル……。
「突然の無礼をお許しください、実は我が子の様子が昨日からおかしくて……薬を分けて頂けないでしょうか……? 」
「薬? 俺は医者ではない、他を当たってくれないか」
「昨日からお医者様が別の町にいってまして……お願い致します。薬だけでも……」
深々と頭を下げる母親。
アステルは困惑したように私を見る。
いやいやいや、私に助けを求められても困る!
「アステル様、薬ぐらい分けてあげれば良いじゃないですか」
「違う……この子どもの症状はただの発熱ではない」
へ? どういうこと?
「どういうことですか……!? 」
私の気持ちを代弁するように母親が声をあげる。
それに押されたのか、アステルがたじろく。
「いや、その……その子どもの腕に斑点のようなものが出来ているだろう……? これはおそらく、鬼火病かと……」
「鬼火病!? 」
なんじゃそりゃ。
聞き慣れない病名だ。
しかし母親の反応からして、重病なのだろうか。
「何それ……? 」
「流行り病だ。高い熱出るのが特徴で専用の薬でなければ治らない……」
「え!? ただの風邪薬が効かないんですか? 」
「そうなんだが……でも……いや……」
何を迷ってるのだろうかこの男は……?
ああそうか、と私は思い出した。
アステルは母親を助けるために色々な研究をしていたのだ。
もしかしたら彼はこの薬の作り方を知っているのでは?
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