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第15話 エルフの秘薬
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見よう見まねで作ったスポーツ飲料のお陰か、脱水の心配はなさそうだ。しかし一向に熱は下がらない。
「薬は……薬はまだなんですか!? 」
半狂乱の母親が私には詰め寄る。
「落ち着いて下さい、様子を見てきますのでここで待っていてください」
それにしてもアステル遅いなぁ……。何か問題でも起きたのだろうか?
そうして私はアステルの部屋に向かった。
◇◇◇
部屋に入ってまず見えたのは倒れ伏しているアステルの姿。
流石の私も驚いて彼を助け起こす。
「どうしたの!? 」
「う、うう……」
呻き声を返す彼。良かった、意識を失っている訳ではないようだ。
そしてよく見ると、彼の前には白い粉薬が完成していた。
薬を完成させて疲れてしまったのだろう。
「なんだ完成しているじゃない。これを早くあの子に! 」
「だ、駄目だ……」
薬を取ろうとした私の腕を彼が掴む。
「どうして? 完成しているんでしょ? 」
「そうだけど……もし俺が作り方を間違えていたら……あの子は……」
「そんなこと、彼らだって分かってるわよ。貴方は薬師ではないって」
「そうかもしれないけど……でも俺は、もう誰も殺したくない……」
「殺す? 」
コクリと頷くアステル。
「この薬の作り方は全て母から教わったものだ。俺は昔、この薬で母を殺してしまった……」
声が出なかった。アステルの作った薬でお母様が死んだ……?
「薬自体は何も間違っていなかったんだ。しかし母の弱りきった体ではその薬に耐えきれることが出来なかった」
自嘲気味に笑うアステル。
彼は更に言葉を続ける。
「俺が……とどめを刺してしまったんだ。母から教わったその薬で」
しくしくと泣くアステル、私は一体彼に何て声をかければ良いのだろうか。
そして子どもの命も危険な状態だ。そう悠長にはしていられない。
ーー私は
ガッとテーブルに載っている粉末を取る。そしてもう片方の手でアステルの手を掴んだ。
「救えるか救えないかは分からないじゃない。今はやってみるしかない」
「ステラ……!! 返せ! 」
「返さない。母親が貴方の薬を待っているわ」
そして私は強引に彼を母子が待つ部屋に連れていく。
傍らの彼はまだ自信なさげだ。
「お母様は薬に精通していたのでしょう? だったら副作用のことを知らないはずがない。それでも貴方の薬をお母様は飲んだ。私が言えるのは……これだけ」
アステルの返事を待たずに私が扉を開くと、待ち構えていたかのように母親が立ち上がった。
「薬が出来上がりました。飲ませましょう」
「はい……!! 」
私はアステルの方に向き直り、声をかける。
「水で飲ませれば良いのよね? 」
「う、うん……」
「分かりました」
子どもの体を優しく起こして、水でゆっくりと薬を服用させる。
そして再び寝かせると、段々と子どもの呼吸が安定してきたのが分かった。
流石エルフの秘薬、効果てきめんという訳か。
「ありがとうございます……! ありがとうございます! 」
泣いてお礼を言う母親を、アステルは信じられないとでも言いたげな顔をして眺めていた。
そんな彼を私は肘でつつく。
「貴方の薬は、誰かを救えるのよ」
「……そうかもな」
彼は一言そう呟いた。
「薬は……薬はまだなんですか!? 」
半狂乱の母親が私には詰め寄る。
「落ち着いて下さい、様子を見てきますのでここで待っていてください」
それにしてもアステル遅いなぁ……。何か問題でも起きたのだろうか?
そうして私はアステルの部屋に向かった。
◇◇◇
部屋に入ってまず見えたのは倒れ伏しているアステルの姿。
流石の私も驚いて彼を助け起こす。
「どうしたの!? 」
「う、うう……」
呻き声を返す彼。良かった、意識を失っている訳ではないようだ。
そしてよく見ると、彼の前には白い粉薬が完成していた。
薬を完成させて疲れてしまったのだろう。
「なんだ完成しているじゃない。これを早くあの子に! 」
「だ、駄目だ……」
薬を取ろうとした私の腕を彼が掴む。
「どうして? 完成しているんでしょ? 」
「そうだけど……もし俺が作り方を間違えていたら……あの子は……」
「そんなこと、彼らだって分かってるわよ。貴方は薬師ではないって」
「そうかもしれないけど……でも俺は、もう誰も殺したくない……」
「殺す? 」
コクリと頷くアステル。
「この薬の作り方は全て母から教わったものだ。俺は昔、この薬で母を殺してしまった……」
声が出なかった。アステルの作った薬でお母様が死んだ……?
「薬自体は何も間違っていなかったんだ。しかし母の弱りきった体ではその薬に耐えきれることが出来なかった」
自嘲気味に笑うアステル。
彼は更に言葉を続ける。
「俺が……とどめを刺してしまったんだ。母から教わったその薬で」
しくしくと泣くアステル、私は一体彼に何て声をかければ良いのだろうか。
そして子どもの命も危険な状態だ。そう悠長にはしていられない。
ーー私は
ガッとテーブルに載っている粉末を取る。そしてもう片方の手でアステルの手を掴んだ。
「救えるか救えないかは分からないじゃない。今はやってみるしかない」
「ステラ……!! 返せ! 」
「返さない。母親が貴方の薬を待っているわ」
そして私は強引に彼を母子が待つ部屋に連れていく。
傍らの彼はまだ自信なさげだ。
「お母様は薬に精通していたのでしょう? だったら副作用のことを知らないはずがない。それでも貴方の薬をお母様は飲んだ。私が言えるのは……これだけ」
アステルの返事を待たずに私が扉を開くと、待ち構えていたかのように母親が立ち上がった。
「薬が出来上がりました。飲ませましょう」
「はい……!! 」
私はアステルの方に向き直り、声をかける。
「水で飲ませれば良いのよね? 」
「う、うん……」
「分かりました」
子どもの体を優しく起こして、水でゆっくりと薬を服用させる。
そして再び寝かせると、段々と子どもの呼吸が安定してきたのが分かった。
流石エルフの秘薬、効果てきめんという訳か。
「ありがとうございます……! ありがとうございます! 」
泣いてお礼を言う母親を、アステルは信じられないとでも言いたげな顔をして眺めていた。
そんな彼を私は肘でつつく。
「貴方の薬は、誰かを救えるのよ」
「……そうかもな」
彼は一言そう呟いた。
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