27 / 46
第27話 謎の虫刺され
しおりを挟む
「おはようございます、アステル様」
珍しく遅く起きてきたアステルに私は声をかける。
「あ、お、お、おはよう」
「ん? どうかしましたか」
真っ直ぐ私の顔を見ないアステル。いやに顔が赤い。
「えっと……その、ステラ……」
何かを言いたげにもごもごと口を動かすアステル。しかし特に言葉を発するわけではない。
「はい? 」
そして私は彼の首筋にある赤いアザのようなものに気がついた。
「あら、アステル様。首のところに虫刺されが……」
「え!? いやこれは……」
アステルは慌てて手でそのアザを隠す。
「それに顔も真っ赤ですし……もしかして私の風邪がうつってしまいましたか……? 」
まあ私のは風邪ではないのだけれど。それでも私が家事を放棄している間に体調を崩してしまっていてもおかしくない。
「……何にも覚えてないのか」
「え? 」
「いや覚えてないならそれで良い……。今日の朝ごはんは? 」
ああ、今日はお魚を焼きましたよ、と答える私。
しかしアステルの言葉が気がかりだ。……覚えていない? 私は何かを忘れているのだろうか……?
「ああ!! 」
思わず声をあげる。
「な、なんだ? 」
その声に驚いたアステルが思わずフォークを手から落とした。
「もしかして私、アステル様を食べようとしました!? すすすすすいません。お怪我はありませんか? 」
見た感じアステルは怪我をしてはいなそうだ。特に血の臭いもしない。
済んでのとこで止められたのかもしれない。
「食べよう……というか食べられたんだが」
「え? 」
「い、いや何でもない。気にするな。それに何もなかったぞ」
あれ、さっきと言ってたことが違いますけど……。
でも彼がそう言うならそうなのだろう。
でもアステルを食べようとしたことはどうやら事実らしいので今後は対策を練らなければなるまい。
まさか主を食べてしまう奴隷なんて千回首吊りに処されるレベルの大罪人だ。
「それなら良かったです……でもなぜアステル様、私の目を見ないのですか? 」
「いや……これはその……」
変なアステル。
そのとき、ガバッとアステルに抱き着く影があった。
「よー、アステル。遊びに来てやったぞ」
「おじさん! 」
声の主は勿論ヴァイス。戸締まりはしているはずなのにどこからともなく入ってくるなこの人は……。
「おじさんは止めろって言ってるだろ……て、アステルお前、その首のは……」
アステルははっとした表情で首元を隠す。
「ああ、虫刺されらしいですよ。そろそろ暖かくなってきましたしね」
「虫刺され……ねえ」
ニヤニヤと笑みを浮かべるヴァイス。
「なんですか気持ち悪い顔して……」
「気持ち悪いは余計だろ犬っころ! 」
「朝から大きな声出さないで下さい! 」
まあそんなことは良いんだ、とヴァイスは咳払いを一つ。
「ステラ、いったいどこの雌犬に主を噛まれたんだ? ちゃんと見ておけよ」
「雌犬……? 噛まれた……? 」
意味が分からなくて頭をかしげる。
虫は雌かもしれないけど、犬ではないだろ……と心のなかでツッコむ。
「ま、良いよ。面白くなってきたじゃないか。なあアステル? 」
「知りません!!! 」
顔を真っ赤にしたアステルの絶叫が屋敷中に響き渡った
珍しく遅く起きてきたアステルに私は声をかける。
「あ、お、お、おはよう」
「ん? どうかしましたか」
真っ直ぐ私の顔を見ないアステル。いやに顔が赤い。
「えっと……その、ステラ……」
何かを言いたげにもごもごと口を動かすアステル。しかし特に言葉を発するわけではない。
「はい? 」
そして私は彼の首筋にある赤いアザのようなものに気がついた。
「あら、アステル様。首のところに虫刺されが……」
「え!? いやこれは……」
アステルは慌てて手でそのアザを隠す。
「それに顔も真っ赤ですし……もしかして私の風邪がうつってしまいましたか……? 」
まあ私のは風邪ではないのだけれど。それでも私が家事を放棄している間に体調を崩してしまっていてもおかしくない。
「……何にも覚えてないのか」
「え? 」
「いや覚えてないならそれで良い……。今日の朝ごはんは? 」
ああ、今日はお魚を焼きましたよ、と答える私。
しかしアステルの言葉が気がかりだ。……覚えていない? 私は何かを忘れているのだろうか……?
「ああ!! 」
思わず声をあげる。
「な、なんだ? 」
その声に驚いたアステルが思わずフォークを手から落とした。
「もしかして私、アステル様を食べようとしました!? すすすすすいません。お怪我はありませんか? 」
見た感じアステルは怪我をしてはいなそうだ。特に血の臭いもしない。
済んでのとこで止められたのかもしれない。
「食べよう……というか食べられたんだが」
「え? 」
「い、いや何でもない。気にするな。それに何もなかったぞ」
あれ、さっきと言ってたことが違いますけど……。
でも彼がそう言うならそうなのだろう。
でもアステルを食べようとしたことはどうやら事実らしいので今後は対策を練らなければなるまい。
まさか主を食べてしまう奴隷なんて千回首吊りに処されるレベルの大罪人だ。
「それなら良かったです……でもなぜアステル様、私の目を見ないのですか? 」
「いや……これはその……」
変なアステル。
そのとき、ガバッとアステルに抱き着く影があった。
「よー、アステル。遊びに来てやったぞ」
「おじさん! 」
声の主は勿論ヴァイス。戸締まりはしているはずなのにどこからともなく入ってくるなこの人は……。
「おじさんは止めろって言ってるだろ……て、アステルお前、その首のは……」
アステルははっとした表情で首元を隠す。
「ああ、虫刺されらしいですよ。そろそろ暖かくなってきましたしね」
「虫刺され……ねえ」
ニヤニヤと笑みを浮かべるヴァイス。
「なんですか気持ち悪い顔して……」
「気持ち悪いは余計だろ犬っころ! 」
「朝から大きな声出さないで下さい! 」
まあそんなことは良いんだ、とヴァイスは咳払いを一つ。
「ステラ、いったいどこの雌犬に主を噛まれたんだ? ちゃんと見ておけよ」
「雌犬……? 噛まれた……? 」
意味が分からなくて頭をかしげる。
虫は雌かもしれないけど、犬ではないだろ……と心のなかでツッコむ。
「ま、良いよ。面白くなってきたじゃないか。なあアステル? 」
「知りません!!! 」
顔を真っ赤にしたアステルの絶叫が屋敷中に響き渡った
0
あなたにおすすめの小説
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
召喚先は、誰も居ない森でした
みん
恋愛
事故に巻き込まれて行方不明になった母を探す茉白。そんな茉白を側で支えてくれていた留学生のフィンもまた、居なくなってしまい、寂しいながらも毎日を過ごしていた。そんなある日、バイト帰りに名前を呼ばれたかと思った次の瞬間、眩しい程の光に包まれて──
次に目を開けた時、茉白は森の中に居た。そして、そこには誰も居らず──
その先で、茉白が見たモノは──
最初はシリアス展開が続きます。
❋他視点のお話もあります
❋独自設定有り
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付いた時に訂正していきます。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さくら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる