戦慄! ゾンビに襲われる寄宿学校!

炭酸水

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次はどこに行く?

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「げほっ……はあ……会長さん……あんたオレを殺す気かよ」
「ん? ああ、ごめん。でもあの状況じゃ仕方なかっただろ」
 遅れて壁の陰から出てきたAlfredは、息も絶え絶えになっていた。ゾンビへの恐怖に加え、Williamに五分間も口を押さえられていたのだから当然だ。人を食った態度もなりをひそめ、恨むような視線を向けてくる。いい気味だ、とWilliamは鼻で笑って、Patrickの方を向き直った。
「あの、ウィリアム先輩、その人死にかけてません……?」
「大丈夫大丈夫。それよりリッキー、聞きたいことがあるんだけど」
「え? なんでしょうか」
「なんで君はここで戦ってたの? その……すぐ後ろに玄関があるのに」
「それは俺も気になってた。なんで外に逃げないんだって」
 WilliamとDanielに問われたPatrickは、サッと気まずそうな表情に変わった。その態度にWilliamは悪い予感が当たっていることを確信した。
「実は、玄関が開かないんです」
「……やっぱり」
「鍵もかかってないのに全然動かなくて。他の窓とかも試したんですけどダメでした。それで、どうにか壊せないかって椅子で殴ってたらゾンビが集まってきちゃって……」
 華奢な見た目に反してPatrickは武闘派らしい。再び浮かびそうになる引きつった笑みを抑えながら、Williamは脳内データを書き換える。
「……とにかく、外に出たら助かるって考えは間違ってたってことだね」
「はあ? じゃあどうすんだよ」
「学校の中で、なにか手がかりを探すしかないだろう」
「はあ~? なんだよそれ……」
 Alfredはすっかりテンションが下がってしまったらしく、しゃがみ込んでどこか遠くを眺めだした。Danielもそれは同様のようで、戦いで体力を消耗したせいもあるのだろう、箒を杖代わりに肩を落としている。どうしたものかとWilliamは友人たちを眺める。すると、Patrickの表情が妙に曇ったままであることに気がついた。
「リッキー、どうかしたの?」
「え、ボクですか?」
「うん。何か気になることがあるのかなって。そんな顔してるから」
「あ……」
 Williamの勘は当たったらしい。Patrickは目を伏せて、言いにくそうに口を開いた。
「実はボク、人を探してるんです。……ニック、なんですけど」
「……わあ」
「まじか」
「……誰?」
 あまり良い知らせとは言えない告白に、三者それぞれ微妙な返事をする。Patrickは困ったように笑うと、再び口を開いた。
「ニック……Nicholas Andersonはボクのルームメイトで、親友です。生徒自治会でも一緒です」
「へえ、そうなの?」
「お前は黙ってろ」
「わあ、怖~い」
 Williamをおちょくることに人生を捧げているAlfredは、当然「生徒自治会」という語に食いついてきた。つい口が悪くなってしまったWilliamに、Patrickが困惑した表情を向ける。
「あ。えっと、リッキー……。気にしなくていいから。話をつづけて」
「え? は、はい……。その、今日も放課後、生徒自治会の活動でハロウィンの飾り付けをしたじゃないですか。そのあと帰ろうって思ったら、外は真っ暗だし誰もいないし。ニックだけは一緒にいたんですけど、途中ではぐれちゃって」
「はぐれた?」
「はい。ゾンビの大群に襲われて、引き離されちゃって。ボクは逃げられたんですけど……」
「……」
「危険だとは分かってます。でもボク、ニックを探したいんです」
「でもさあ、そのニックって奴? 普通に考えたらもう死んでるでしょ」
「!」
「お前なあ!」
 デリカシーのかけらもないAlfredの発言に場の空気が凍りつく。言い返そうとしたWilliamを、Danielがすかさず押し止めた。
「やめろウィル。フレッドに突っかかっても意味はない。それにこいつの言ってることも、間違いじゃないんだ」
「……そりゃそうだけど」
「分かってるねえ、ダニエルさん」
「……けど、俺たちにできることは学校をしらみつぶしに探索することだけだ。同時にニックも探せばいい」
「ほんとですか⁉」
「ああ」
「……あっそ。結局脳筋プレイするしかないってことね……」
 Danielの言葉にPatrickは目を輝かせ、Alfredも露骨にいやそうな顔をしながらだが賛同した。Williamも異論はないのだが……。
「でもさ、しらみつぶしって言ってもある程度当たりはつけた方がいいんじゃない?」
「それはそうだ。リッキー、ニックとはぐれた場所は?」
「んーっと、二年生の教室の前辺りです。多分ですけど、ニックは二階の方に逃げたんじゃないかなあ……」
「二階……」
「……ウィル、何か思い当たることがあるのか?」
「うん。……もしかしたらなんだけどさ。ニック、生徒自治会室にいるんじゃないかな」
「そうなんですか⁈」
「いや、ほんとに勘だよ? だけど、今日の部室の鍵締め当番ってニックだったよね」
「! そうです!」
「ニックが鍵を持ってたらだけど、生徒自治会室に行けば鍵をかけて閉じこもれるでしょ? だったら、あそこが学内で一番安全な場所なんじゃないかなあ」
「はい! きっとそうです!」
「じゃ、生徒自治会室に行くので決まり?」
「だな。だが一応、一階も見ておかないか? 今ならゾンビも少ないだろうし」
「はは、それはそうだね」
 話してるうちに感覚が麻痺していたが、辺りは一面ゾンビの海なのだ。歩き出そうとしたDanielに、Williamはハンカチを差し出した。
「ハンカチ?」
「うん。もう慣れちゃったのかもしれないけど、顔とか眼鏡、すごい汚れてるから」
「そうか」
「リッキーも。すごいことになってるよ」
「え、ほんとですか?」
「うん」
 いそいそと顔を拭く二人を見ながら、Williamは悲しくなった。またゾンビに出遭ったら、戦うのは結局この二人なのだ。もしかしたら死ぬかもしれない。そうなる前に、なにか自分にできることはないのだろうか?
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