5 / 5
次はどこに行く?
しおりを挟む
「げほっ……はあ……会長さん……あんたオレを殺す気かよ」
「ん? ああ、ごめん。でもあの状況じゃ仕方なかっただろ」
遅れて壁の陰から出てきたAlfredは、息も絶え絶えになっていた。ゾンビへの恐怖に加え、Williamに五分間も口を押さえられていたのだから当然だ。人を食った態度もなりをひそめ、恨むような視線を向けてくる。いい気味だ、とWilliamは鼻で笑って、Patrickの方を向き直った。
「あの、ウィリアム先輩、その人死にかけてません……?」
「大丈夫大丈夫。それよりリッキー、聞きたいことがあるんだけど」
「え? なんでしょうか」
「なんで君はここで戦ってたの? その……すぐ後ろに玄関があるのに」
「それは俺も気になってた。なんで外に逃げないんだって」
WilliamとDanielに問われたPatrickは、サッと気まずそうな表情に変わった。その態度にWilliamは悪い予感が当たっていることを確信した。
「実は、玄関が開かないんです」
「……やっぱり」
「鍵もかかってないのに全然動かなくて。他の窓とかも試したんですけどダメでした。それで、どうにか壊せないかって椅子で殴ってたらゾンビが集まってきちゃって……」
華奢な見た目に反してPatrickは武闘派らしい。再び浮かびそうになる引きつった笑みを抑えながら、Williamは脳内データを書き換える。
「……とにかく、外に出たら助かるって考えは間違ってたってことだね」
「はあ? じゃあどうすんだよ」
「学校の中で、なにか手がかりを探すしかないだろう」
「はあ~? なんだよそれ……」
Alfredはすっかりテンションが下がってしまったらしく、しゃがみ込んでどこか遠くを眺めだした。Danielもそれは同様のようで、戦いで体力を消耗したせいもあるのだろう、箒を杖代わりに肩を落としている。どうしたものかとWilliamは友人たちを眺める。すると、Patrickの表情が妙に曇ったままであることに気がついた。
「リッキー、どうかしたの?」
「え、ボクですか?」
「うん。何か気になることがあるのかなって。そんな顔してるから」
「あ……」
Williamの勘は当たったらしい。Patrickは目を伏せて、言いにくそうに口を開いた。
「実はボク、人を探してるんです。……ニック、なんですけど」
「……わあ」
「まじか」
「……誰?」
あまり良い知らせとは言えない告白に、三者それぞれ微妙な返事をする。Patrickは困ったように笑うと、再び口を開いた。
「ニック……Nicholas Andersonはボクのルームメイトで、親友です。生徒自治会でも一緒です」
「へえ、そうなの?」
「お前は黙ってろ」
「わあ、怖~い」
Williamをおちょくることに人生を捧げているAlfredは、当然「生徒自治会」という語に食いついてきた。つい口が悪くなってしまったWilliamに、Patrickが困惑した表情を向ける。
「あ。えっと、リッキー……。気にしなくていいから。話をつづけて」
「え? は、はい……。その、今日も放課後、生徒自治会の活動でハロウィンの飾り付けをしたじゃないですか。そのあと帰ろうって思ったら、外は真っ暗だし誰もいないし。ニックだけは一緒にいたんですけど、途中ではぐれちゃって」
「はぐれた?」
「はい。ゾンビの大群に襲われて、引き離されちゃって。ボクは逃げられたんですけど……」
「……」
「危険だとは分かってます。でもボク、ニックを探したいんです」
「でもさあ、そのニックって奴? 普通に考えたらもう死んでるでしょ」
「!」
「お前なあ!」
デリカシーのかけらもないAlfredの発言に場の空気が凍りつく。言い返そうとしたWilliamを、Danielがすかさず押し止めた。
「やめろウィル。フレッドに突っかかっても意味はない。それにこいつの言ってることも、間違いじゃないんだ」
「……そりゃそうだけど」
「分かってるねえ、ダニエルさん」
「……けど、俺たちにできることは学校をしらみつぶしに探索することだけだ。同時にニックも探せばいい」
「ほんとですか⁉」
「ああ」
「……あっそ。結局脳筋プレイするしかないってことね……」
Danielの言葉にPatrickは目を輝かせ、Alfredも露骨にいやそうな顔をしながらだが賛同した。Williamも異論はないのだが……。
「でもさ、しらみつぶしって言ってもある程度当たりはつけた方がいいんじゃない?」
「それはそうだ。リッキー、ニックとはぐれた場所は?」
「んーっと、二年生の教室の前辺りです。多分ですけど、ニックは二階の方に逃げたんじゃないかなあ……」
「二階……」
「……ウィル、何か思い当たることがあるのか?」
「うん。……もしかしたらなんだけどさ。ニック、生徒自治会室にいるんじゃないかな」
「そうなんですか⁈」
「いや、ほんとに勘だよ? だけど、今日の部室の鍵締め当番ってニックだったよね」
「! そうです!」
「ニックが鍵を持ってたらだけど、生徒自治会室に行けば鍵をかけて閉じこもれるでしょ? だったら、あそこが学内で一番安全な場所なんじゃないかなあ」
「はい! きっとそうです!」
「じゃ、生徒自治会室に行くので決まり?」
「だな。だが一応、一階も見ておかないか? 今ならゾンビも少ないだろうし」
「はは、それはそうだね」
話してるうちに感覚が麻痺していたが、辺りは一面ゾンビの海なのだ。歩き出そうとしたDanielに、Williamはハンカチを差し出した。
「ハンカチ?」
「うん。もう慣れちゃったのかもしれないけど、顔とか眼鏡、すごい汚れてるから」
「そうか」
「リッキーも。すごいことになってるよ」
「え、ほんとですか?」
「うん」
いそいそと顔を拭く二人を見ながら、Williamは悲しくなった。またゾンビに出遭ったら、戦うのは結局この二人なのだ。もしかしたら死ぬかもしれない。そうなる前に、なにか自分にできることはないのだろうか?
「ん? ああ、ごめん。でもあの状況じゃ仕方なかっただろ」
遅れて壁の陰から出てきたAlfredは、息も絶え絶えになっていた。ゾンビへの恐怖に加え、Williamに五分間も口を押さえられていたのだから当然だ。人を食った態度もなりをひそめ、恨むような視線を向けてくる。いい気味だ、とWilliamは鼻で笑って、Patrickの方を向き直った。
「あの、ウィリアム先輩、その人死にかけてません……?」
「大丈夫大丈夫。それよりリッキー、聞きたいことがあるんだけど」
「え? なんでしょうか」
「なんで君はここで戦ってたの? その……すぐ後ろに玄関があるのに」
「それは俺も気になってた。なんで外に逃げないんだって」
WilliamとDanielに問われたPatrickは、サッと気まずそうな表情に変わった。その態度にWilliamは悪い予感が当たっていることを確信した。
「実は、玄関が開かないんです」
「……やっぱり」
「鍵もかかってないのに全然動かなくて。他の窓とかも試したんですけどダメでした。それで、どうにか壊せないかって椅子で殴ってたらゾンビが集まってきちゃって……」
華奢な見た目に反してPatrickは武闘派らしい。再び浮かびそうになる引きつった笑みを抑えながら、Williamは脳内データを書き換える。
「……とにかく、外に出たら助かるって考えは間違ってたってことだね」
「はあ? じゃあどうすんだよ」
「学校の中で、なにか手がかりを探すしかないだろう」
「はあ~? なんだよそれ……」
Alfredはすっかりテンションが下がってしまったらしく、しゃがみ込んでどこか遠くを眺めだした。Danielもそれは同様のようで、戦いで体力を消耗したせいもあるのだろう、箒を杖代わりに肩を落としている。どうしたものかとWilliamは友人たちを眺める。すると、Patrickの表情が妙に曇ったままであることに気がついた。
「リッキー、どうかしたの?」
「え、ボクですか?」
「うん。何か気になることがあるのかなって。そんな顔してるから」
「あ……」
Williamの勘は当たったらしい。Patrickは目を伏せて、言いにくそうに口を開いた。
「実はボク、人を探してるんです。……ニック、なんですけど」
「……わあ」
「まじか」
「……誰?」
あまり良い知らせとは言えない告白に、三者それぞれ微妙な返事をする。Patrickは困ったように笑うと、再び口を開いた。
「ニック……Nicholas Andersonはボクのルームメイトで、親友です。生徒自治会でも一緒です」
「へえ、そうなの?」
「お前は黙ってろ」
「わあ、怖~い」
Williamをおちょくることに人生を捧げているAlfredは、当然「生徒自治会」という語に食いついてきた。つい口が悪くなってしまったWilliamに、Patrickが困惑した表情を向ける。
「あ。えっと、リッキー……。気にしなくていいから。話をつづけて」
「え? は、はい……。その、今日も放課後、生徒自治会の活動でハロウィンの飾り付けをしたじゃないですか。そのあと帰ろうって思ったら、外は真っ暗だし誰もいないし。ニックだけは一緒にいたんですけど、途中ではぐれちゃって」
「はぐれた?」
「はい。ゾンビの大群に襲われて、引き離されちゃって。ボクは逃げられたんですけど……」
「……」
「危険だとは分かってます。でもボク、ニックを探したいんです」
「でもさあ、そのニックって奴? 普通に考えたらもう死んでるでしょ」
「!」
「お前なあ!」
デリカシーのかけらもないAlfredの発言に場の空気が凍りつく。言い返そうとしたWilliamを、Danielがすかさず押し止めた。
「やめろウィル。フレッドに突っかかっても意味はない。それにこいつの言ってることも、間違いじゃないんだ」
「……そりゃそうだけど」
「分かってるねえ、ダニエルさん」
「……けど、俺たちにできることは学校をしらみつぶしに探索することだけだ。同時にニックも探せばいい」
「ほんとですか⁉」
「ああ」
「……あっそ。結局脳筋プレイするしかないってことね……」
Danielの言葉にPatrickは目を輝かせ、Alfredも露骨にいやそうな顔をしながらだが賛同した。Williamも異論はないのだが……。
「でもさ、しらみつぶしって言ってもある程度当たりはつけた方がいいんじゃない?」
「それはそうだ。リッキー、ニックとはぐれた場所は?」
「んーっと、二年生の教室の前辺りです。多分ですけど、ニックは二階の方に逃げたんじゃないかなあ……」
「二階……」
「……ウィル、何か思い当たることがあるのか?」
「うん。……もしかしたらなんだけどさ。ニック、生徒自治会室にいるんじゃないかな」
「そうなんですか⁈」
「いや、ほんとに勘だよ? だけど、今日の部室の鍵締め当番ってニックだったよね」
「! そうです!」
「ニックが鍵を持ってたらだけど、生徒自治会室に行けば鍵をかけて閉じこもれるでしょ? だったら、あそこが学内で一番安全な場所なんじゃないかなあ」
「はい! きっとそうです!」
「じゃ、生徒自治会室に行くので決まり?」
「だな。だが一応、一階も見ておかないか? 今ならゾンビも少ないだろうし」
「はは、それはそうだね」
話してるうちに感覚が麻痺していたが、辺りは一面ゾンビの海なのだ。歩き出そうとしたDanielに、Williamはハンカチを差し出した。
「ハンカチ?」
「うん。もう慣れちゃったのかもしれないけど、顔とか眼鏡、すごい汚れてるから」
「そうか」
「リッキーも。すごいことになってるよ」
「え、ほんとですか?」
「うん」
いそいそと顔を拭く二人を見ながら、Williamは悲しくなった。またゾンビに出遭ったら、戦うのは結局この二人なのだ。もしかしたら死ぬかもしれない。そうなる前に、なにか自分にできることはないのだろうか?
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる