婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

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兄妹



「何か?」
「あ、ああ……今日皆で行ったスイーツ店で買ったべルティーナへのお土産だよ。クッキーが好きだっただろう」


 はて、と内心小首を傾げた。兄にクッキーが好きだと話した覚えは一切ない。差し出されたクッキー缶を受け取り、見覚えのある缶を暫し眺めた後。べルティーナは流れるようにクッキー缶をアルジェントに渡した。


「あげる」
「な、ベルティーナ!」
「一体誰から私がクッキーが好きだと聞いたか知りませんが何でも好きという訳じゃありません。お兄様が渡したクッキーにはブルーベリーが練られているようですが、私ブルーベリーは嫌いなので絶対に食べません」
「え……!」


 クッキーが好きなのは知っていても、ブルーベリーが嫌いなのは知らなかったみたいだ。固まったビアンコに声を掛けても、ショックなのか動かない。アルジェントに目配せをし、動かない内に部屋から追い出してもらおうにも意識が戻ったビアンコはアルジェントから逃げた。
 面倒臭いと隠さず睨んだら慌てて弁明を始めるもベルティーナからするとどうでもいい。


「うるさいので出て行ってください」
「お前に気を遣って折角買ってきてやったのにっ」
「お兄様からの贈り物なんて要りません。新しく妹となる予定のクラリッサにでもあげたらどうです?」
「っ、父上や殿下に可愛げがないと言われるのはそういうところなんだぞ!!」
「なら、お父様や殿下に告げ口しては? 昔みたいに」
「……っ」


 プラチナ伯爵令息がお兄様だったら良かった発言や、泣かされた時父に突き放された時。そのどちらかでもベルティーナに謝ってさえくれていたら、小麦一粒分はビアンコを兄と思う気持ちは残っていたかもしれない。現実はそうじゃない。ビアンコを兄だと思わない。兄妹仲良くをしたければクラリッサとすればいい。


「さあ、早くしてくださいよ。ベルティーナが、ベルティーナが、って」
「お前は……ベルティーナは……そんなに僕が嫌いなのか? 僕は……」
「嫌いか好きかと聞かれれば嫌いです大嫌いです。お兄様と呼ぶのも吐きそうになるほど嫌いです。なので、貴方に私の事を気持ちが砂粒程度でもあるのなら、是非出て行ってください」
「……なんで……僕は……」


 人の話を聞いているのだろうか。断固拒絶の態度を崩さないベルティーナに絶望したビアンコは涙を流し始めた。幼少期なら顔を真っ赤にしたまま母に泣き付き、事情を聞いた両親から平手打ちをされる。成人しても妹に泣かされたのを両親に叱ってもらう情けない兄ならビアンコへの気持ちにドン引きが追加される。
 アルジェントに視線を送り、無理矢理追い出させる。ビアンコに近付いたアルジェントだが、嗚咽を漏らしながらもビアンコが語り出したので体に触れずにいた。


「ぼ、僕はっ、ずっとベルティーナと仲良くしたかったんだっ」
「妹と仲良くしたいならクラリッサがいるでしょうに」
「クラリッサは関係ない、僕は、自分の妹と仲良くしたかったんだっ」


 ビアンコから歩みってきた記憶はあったか……? と考えたが一致する記憶は何もない。


「父上や母上が、べルティーナは可愛げがなくてクラリッサはとても可愛い、クラリッサが妹なら良かったのにな、と物心ついた時から言われ続けた……二人の言葉を聞いていたから僕は――」
「アルジェント、追い出して」


 有益な話でもしてくれるのかと期待したが思ったよりどうでも良さそうなのでアルジェントに退室させた。外へ追いやる間際、ビアンコの上着のポケットにクッキー缶を入れたと鍵を閉めたアルジェントは振り向いた。


「最後まで聞かなくて良かったの?」
「聞いたって、どうせ二人の言葉を鵜呑みにして私を馬鹿にし続けていただけじゃない。馬鹿らしい」


 元凶は両親でもビアンコは元からプラチナブロンドに青の瞳の庇護欲を感じさせるクラリッサに夢中だった。今更何を言おうが言い訳にしか聞こえず、べルティーナ的には重要な話じゃないのなら聞く価値がない。


「お父様が異様にクラリッサを可愛がるのはモルディオ公爵夫人の娘だから?」
「愛する妹の娘。強ち、間違ってはいなさそう」
「ふむ……まず、異様にクラリッサを可愛がる理由を探しましょうか。お父様とモルディオ夫人の関係をより詳しく調べる必要があるようね」


 血の繋がった兄妹で仲良くするなとは言えなくても、二人の距離の近さは異常だった。特に夫人はベタベタと父の体に触れていた。






 
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