行動あるのみです!

文字の大きさ
9 / 81

パーティーも近い1

しおりを挟む
 

 例え平民出身でも、純粋で天真爛漫な少女を目にすると、不思議と好意を抱くのは仕方ないと思えてしまう。
 彼女の持って生まれた性質か、彼女が育ってきた環境がそうさせたのか。何れにせよ、それら全て含めて彼女という人間を形成する要素に過ぎない。

 レーヴとの婚約が解消されて今日で5日目。

 発表のある王家主催のパーティーまで残り2日。

 その間、レーヴの謎の行動を何度か目撃していたが昨日になるとパタリとなくなった。ミルティーとは同じ教室だが、極力視界に入れないようにしているのでまともに姿は見ていない。

 きっと、相思相愛であるレーヴと正式に婚約が結ばれ幸せそうなミルティーの姿は見たくない。

 下らない悪足掻きだ。

 元から、シェリに勝ち目はなかった。ミルティーと出会うまでの過程でしかなかった。

 諦めようと何度も思うのに長年の恋心は簡単に消えない。

 これは数十年という月日を条件にしないと一生消えないだろう。

 4日前、人気の少ない裏庭でヴェルデと言葉を交わして以降も周囲に誰もいない場所で会うと話すようになった。

 お互い踏み込んだ会話はしないが不思議と心穏やかに過ごせた。

 向こうがどう思っているか分からないが、レーヴしか追い掛けず友達と呼べる相手が皆無なシェリにとっては、数少ない話し相手となっている。

 今日は何処に行こうか、とシェリは放課後学院内を歩いていた。人が来ない場所は少ないがある。

 裏庭が最たる場所だ。後は使われなくなった教室、静粛さが求められる図書室辺りか。今日は図書室に行こう、と足を向けた。

 以前訪れた際に借りられていた本はもう戻っているだろうか。それがあれば、読みたかった続きが知れる。

 期待して図書室へ方向転換したシェリは、耳に響く慌ただしい足音に驚くと近くの掃除用具入れに入った。

 これで2度目になる。

 覚えのある感覚だと思えば、足音の発生源が息を切らしやって来た。


「さっきまでいたのに……! 何処へ行ったっ」


 いつぞやと同じで、青みがかった銀髪を乱れさせたレーヴが誰かを探している。

 何処から走って来たのか不明だがレーヴの様子からして、遠くから誰かを見つけて走って来たのだろう。

 誰か、とは考えなくてもシェリには分かる。

 ミルティーだ。

 シェリ自身確認していないがミルティーの姿を遠くから見つけたレーヴが急いで駆け付けたが、姿を見失ってしまったのか。

 息を切らし、身嗜みに気を配るレーヴに必死になって探されるミルティーが心底羨ましい。

 ミルティーを見つけられなかったレーヴは「後2日しかないのに……っ」と焦燥とした状態で走り去って行った。

 気配がないのを確認してから、掃除用具入れから出たシェリはほっと息を吐いた。

 掃除用具入れに人が入っている等と思われないだろうがもしもの時がある。

 見つからなくて良かった。あんな大慌ての時に出会したら、焦りと苛立ちがレーヴを苛んでしまう。


「レーヴ様……いえ、殿下は何をあんなに慌てているのかしら……」


 彼は去り際、後2日しかないと言っていた。

 2日後は王家主催のパーティーがある。そこでレーヴとシェリの婚約解消と共にレーヴとミルティーの婚約が発表される。

しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

チョイス伯爵家のお嬢さま

cyaru
恋愛
チョイス伯爵家のご令嬢には迂闊に人に言えない加護があります。 ポンタ王国はその昔、精霊に愛されし加護の国と呼ばれておりましたがそれももう昔の話。 今では普通の王国ですが、伯爵家に生まれたご令嬢は数百年ぶりに加護持ちでした。 産まれた時は誰にも気が付かなかった【営んだ相手がタグとなって確認できる】トンデモナイ加護でした。 4歳で決まった侯爵令息との婚約は苦痛ばかり。 そんな時、令嬢の言葉が引き金になって令嬢の両親である伯爵夫妻は離婚。 婚約も解消となってしまいます。 元伯爵夫人は娘を連れて実家のある領地に引きこもりました。 5年後、王太子殿下の側近となった元婚約者の侯爵令息は視察に来た伯爵領でご令嬢とと再会します。 さて・・・どうなる? ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

婚約破棄の前日に

豆狸
恋愛
──お帰りください、側近の操り人形殿下。 私はもう、お人形遊びは卒業したのです。

真実の愛は、誰のもの?

ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」  妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。  だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。  ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。 「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」 「……ロマンチック、ですか……?」 「そう。二人ともに、想い出に残るような」  それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

欲深い聖女のなれの果ては

あねもね
恋愛
ヴィオレーヌ・ランバルト公爵令嬢は婚約者の第二王子のアルバートと愛し合っていた。 その彼が王位第一継承者の座を得るために、探し出された聖女を伴って魔王討伐に出ると言う。 しかし王宮で準備期間中に聖女と惹かれ合い、恋仲になった様子を目撃してしまう。 これまで傍観していたヴィオレーヌは動くことを決意する。 ※2022年3月31日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】

雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。 誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。 ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。 彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。 ※読んでくださりありがとうございます。 ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

私の名前を呼ぶ貴方

豆狸
恋愛
婚約解消を申し出たら、セパラシオン様は最後に私の名前を呼んで別れを告げてくださるでしょうか。

貴方は私の

豆狸
恋愛
一枚だけの便せんにはたった一言──貴方は私の初恋でした。

処理中です...