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王家主催のパーティー4

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    王家主催のパーティー開始直前。

 父から、シェリとの婚約を解消にし、【聖女】の生まれ変わりであるミルティーとの婚約が決まったと話されたのは約1週間前。

 突然だった。以前から、何度もシェリに対する態度を改めろと両親だけじゃなく兄夫婦からも口酸っぱく忠告され続けていた。
 レーヴ自身も何度も改善をしようと試みたが……結果は惨敗。
 オーンジュ公爵家からの打診を良いことにシェリに好意を抱いていると悟られたくなくて、だが噂が気になって下手に好意を示すのも出来なくて……結果、この婚約が嫌で嫌で仕方ない第2王子が完成された。初対面の日は大いに失敗した。思い出したくもないくらい。

 緊張しながらも綺麗なカーテシーや家庭教師に教わった挨拶を熟したシェリの印象は良かった。偶に言葉を噛みつつも自身の話をするシェリから必死さが伝わり、レーヴも最初の失敗を挽回しようと口を開きかけるが……緊張で強張った顔が大層シェリの相手をするのが嫌だと勘違いされた。泣きそうになりながらも、それでも好かれようとする彼女に何か言わなければと頭では理解していても――悲しい結果で終わった。
 無論、顔合わせが終われば部屋に戻って布団に包まって泣いた。自分が情けなくて、シェリに申し訳なくて。
 
 婚約が結ばれてから何年経過していると思ってるんだ、と兄王子に言われたのは婚約解消をされた日から。
 大いに動揺した。父に何故と詰っても【聖女】を保護する正当な理由だから、と告げられた。
 意味が分からなかった。
 確かに【聖女】の保護は王家の重要な役割。だが、必ず王子と婚約しなければならない決まりはない。ましてや自分にはシェリが、ミルティーは口には出してないが友人のヴェルデをとても慕っていた。仄かな熱い眼をヴェルデに向けるミルティーは【聖女】とは関係なく、恋する少女だった。ヴェルデ自身彼女をどう思っているかは不明でも、他に好きな人のいるミルティーとの婚約をレーヴは願っていない。
 何度も取り消しの話を父に訴えても、既に決定事項であり、オーンジュ公爵家側も同意していると教えられた。
 
 明らかに理不尽で正当性がなければ別だが、基本王命であれば従わなければならない。
 【聖女】の保護を謳う王家の主張をオーンジュ公爵家は受け入れたのだ。
 娘に弱かろうがフィエルテは公爵。娘と王命(個人的には娘に天秤が傾けそうだが)ではどちらを取る、など考える馬鹿はいない。
 

「レーヴ! いい加減にしろ! もうこれは決定なんだ! お前が今更どうこう言おうが事実は変わらない」
「っ、僕は認めていない。第一、何度も言うが【聖女】と必ず婚約しなければならない決まりはないのに何故今回に限って……!」
「父上が、国王が判断したのだ。従うしかあるまい」

 
 何度もクロレンス王立学院でシェリに会って話をしたいと姿を探した。教室まで足を運んだ。待ち伏せじみた真似もした。が、全て空回りした。
 シェリはレーヴのいる場所を特定出来るのに、レーヴではシェリのいる場所を見つけられない。
 パーティー当日になっても何も話せないのなら、下らない抵抗だが出席しないと言い放った。
 主役の片方が欠席すれば、発表の重みが違ってくる上、不在では延期になる。
 しかし、黙っている身内ではない。既に両親から説得されたが決して首を縦に振らなかった。膠着状態に陥っていると今度は兄が説得に現れた。
 
 
「ミルティー嬢は平民出身ではあるが向上心があり、非常に前向きで努力家な少女だと聞いている。オーンジュ家の婿になるより、父上から爵位を与えられ公爵となってミルティー嬢と夫婦になった方がお前の為だ」
「普通に考えればそうでしょうね。ですが何度言われようが僕はシェリ以外の女性と一緒になる気はない」
「そういうのはまず本人とちゃんと話が出来てから言いなさい」
「ぐっ」
「全く……誰が思う。好きな子の前では、緊張と恥ずかしさのせいでずっと固まってまともに話せなくなるせいで婚約してから1度も会話をしてないなんて」
 
 
 初対面の日に失敗し、部屋に引きこもって布団に包まって泣き続けたレーヴを慰めたのは他ならぬ……兄である。国王譲りの優しげな相貌と青の宝石眼を受け継いだ兄は、絶世の美貌を受け継いだレーヴと違い温かく優しい人のイメージが強い。容姿は決して悪くないが母譲りのレーヴと比べると優劣がはっきりとされる。
 
 
「こればかりはどうしようもない。聞く所によるとミルティー嬢とはちゃんと会話が成立しているんだろう? なら、シェリ嬢のことは苦い初恋と諦めてミルティー嬢と交流を深めろ」
「あれは……ミルティーにヴェルデのことを教えていたんだ。彼女はヴェルデに気があったから」
「……それは、何というか……」
 
 
 
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