思い込み、勘違いも、程々に。

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楽しい昼食になる筈が……

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 昼休憩に入り、1年生の教室へ行こうとアウテリート様と席を立つと「お姉様」とエルミナの声が。終わりの鐘が鳴って間もないのにもうエルミナが来ていて驚いた。エルミナのクラスは鐘が鳴る前に授業が終わったのかしら。1年生と3年生の教室は遠く離れ、階段を使わないとならない。入り口に近付いてエルミナと合流し、早速食堂へと向かった。
 学院内で最も人が多く集まる時間なだけあり、既に生徒や教師で一杯。


「先に席を探しましょうか?」
「そうね。今日は天気も良いし、外で食べるのもありかも」
「あ、わたしが席を取っておきましょうか?」


 エルミナを極力外に出したくない。何時あの『予知夢』のようにエルミナが大怪我を負うか……。


「私が行きますのでアウテリート様とエルミナは先に並んでおいてください」
「なんだったら、フィオーレの分も頼んでおくわよ。コルネットとホットミルク?」
「お願いします」


 こうして二手に分かれ、私は席を先に取る側へと回った。中は多いが外も多い。外に設置された席で空いている場所は……と周囲を見回すと木の下にある席が空いていた。そこにしようと椅子を引いて座る。此処なら食堂内からも遠くないし、陽光も遮られて丁度良い。

 今日何も起きなくてもエルミナが何時不幸に見舞われるか不明だ。暫くはエルミナの側にいてあげないと。出来るならリアン様がいた方が良いのだけれど……。左手首にはリアン様に付けられた跡が濃く残っている。どうしてこんなことをしたんだろう。王女殿下を甘く見ている私への忠告、という意味なら頷ける。リアン様は優しい人……好きな人の姉を心配してくれるのだから。


「フィオーレ。お待たせ」
「お姉様!」


 左手首を眺めていたのをアウテリート様とエルミナへ意識を向け、渡されたトレイを受け取った。焼き立てのコルネット2個とホットミルク。あ、今日のホットミルク上に蜂蜜が掛けられてる。コルネットは2個ともチョコレート。聞くと他の味は完売だとか。元々今日はチョコレートを多く仕入れたせいで数も少なく作ったらしい。
 アウテリート様はクリームパスタとサラダ、エルミナも同じ。


「お姉様コルネットだけではお腹が空きませんか?」
「そんなことないのよ。これでも数は増えた方だし、放課後は教会に行ってオーリー様とお茶やお菓子を食べるからこれで十分なの。エルミナはアウテリート様と同じにしたの」
「クリームパスタかカルボナーラで悩んだのですがクリームソースが美味しそうに見えたのでこれにしました」
「あたしもグラタンにするかパスタにするかで悩んだわ」
「アウテリート様はグラタンが好きですものね」


 昼食は主にグラタンとサラダで済ませることが多いアウテリート様。熱過ぎる料理が好きならしく、熱々なグラタンは特に好きとか。ただその分、屋敷に帰ったら運動をし、夕食は量を減らしているのだとか。


「好きな物をずっと食べ続けるなら、他を抑えないといけないのが辛いわ……」
「飽きませんか?」
「フィオーレに言われたくないわ。フィオーレだってずっとコルネットじゃない」
「私の場合は味が変わるので」
「と言っても、チョコレート・ハチミツ・ジャムの3種類だけじゃない。似たようなものよ」
「3種類で十分ですよ」


 どれも甘くて美味しいので飽きない。
 偶には違うパンも食べたくなるから、明日は違うパンにしようかな。
 エルミナがとても楽しげに笑って私達の会話を聞いているから、話題を振ろう。


「エルミナも――」
「そこ邪魔よ!」


 この声は……。
 声が届いた瞬間うんざりとした表情になったアウテリート様は緩慢な動きで向きを変え、私とエルミナは恐る恐る向いた。
 そこにいたのは案の定――リグレット王女殿下だった。しかも今度は令息の取り巻きを従えて。

 王女殿下は私を見るなり、吊り目気味な目を更に吊り上げた。


「この泥棒猫! わたくしのリアンとまた2人っきりになったと聞いたわ!」


 一体何処から情報が漏れるのか、そもそも監視され……監視?



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