思い込み、勘違いも、程々に。

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隣国の怖い人2〜アウムル視点〜

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 母上と父上の婚約は幼少の頃決定された。先王陛下と先王妃殿下の間には父上しか生まれず、側妃を娶るという選択もあったがお祖父様が断固として拒否の姿勢を貫いた。たった1人の王子、という事があり、周囲に大層大切に育てられた父上はまあ……あまり言いたくないがリグレット程にはないにしろ中々の我が儘王子だったと聞く。更に異性に好かれやすい容姿もあって、女性達には絶大な人気を誇った。
 王子としての公務もしっかりと熟し、能力的にも次期国王に申し分なかった。性格さえ良ければ完璧だったろう。

 王を支えよと教育された母上は出会った頃から嫌われていたと苦笑を交えながら話してくれた事がある。曰く、冷たく澄ました顔が気に食わないと。侯爵家の娘として生まれた矜持と第1王子に会う緊張からそうなっただけなのに、初対面から好意とは逆の感情を剥き出しにされれば、未来の伴侶としか思わない相手に無理に好意を抱く必要も無くなった。

 婚約者として、次期王妃として、父上とは必要最低限にしか関わってこなかった母上でも在学中に恋人を作り、剰え卒業時に婚約破棄騒動を起こした父上にはその時から愛想を尽かした。今尚夫婦としてあるのはお祖父様やお祖母様の頼みあってこそ。
 父上からは冷遇されても娘となる母上に2人はかなり良くしてくれたと。ひょっとすると父上からの冷遇を見かねての態度だとしても、である。

 最近抱くようになった気持ちとしては。父上は、母上が思う以上に面倒臭い人間なのかもしれない。公式の場ではお互い名前で呼び合い、仲睦まじく振る舞う。
 必要がない時はお互い顔を合わせようとしない。
 名前すら呼ばれたくないとはっきりと言葉にした母上を、驚きの眼で見やりながらも瞬時に悔しげに、うっすらと憎しみの籠った瞳で睨む。が、母上はないものと扱い王妃の席から立った。
 おれの前に来るとふわりと微笑む。


「アウムル。実はお客様がいらしているの。私と参りましょう」
「しかし、まだリグレットの件について終わっておりません」


「ああ――」とついさっきまで話していた件なのに、思い出したと言わんばかりの母上の声におれも肝を抜かれた。


「陛下。いくら寵愛深い娘といえど、やって良い事と悪い事くらい、きちんと教育しておいて下さいな。たとえ愛人の男爵令嬢の娘といえど、貴方の娘はこの国の第1王女。再び学院に通わせるには、相応の振る舞いが出来てからにしてもらいませんと王家の面子に関わります」
「……分かった。リグレット、暫し離宮にて反省をし、其方が王女として相応しくあるならば、学院の登校を認めよう」
「そ、そんなっ、パパ……!」


 先ずは父上への呼び方を変えねばな……。
 苦虫を噛み潰した相貌をする父上を、これまた輝かしい微笑を携える母上。どちらが余裕か一目瞭然。
 愛人が何かを喚いているが父上が黙らせた。元々、この場に於いて彼女に発言権はない。父上が連れて来たと言っても過言じゃない。
 用無しとばかりに振り向いた母上に客人が誰か訊ね、聞かされると父上が声を荒げた。


「待て! どういう事だ! 俺は聞いてないぞ!」
「聞いてないとは? 私、あの方が2年前にいらした時ちゃんと陛下に報告しましたわ。というか、陛下に謁見を求められたのに陛下はそこな愛人との逢瀬に忙しいからと断ったではありませんか」
「な……だ……だが……何故お前が会うのだ。会うなら、国王である俺に……」
「私、先王陛下の計らいであの方や隣国の先王陛下にはお世話になっておりますの。礼儀を通すのは当然ですわ」
「待て……そんな話1度も……」


 顔面蒼白になり、茫然となる父上が縋るように手を伸ばすが母上はおれの背を押した。2人謁見の間を出て、客人の待つサロンへと向かった。

 今頃学院はどうなっているのか。
 リアンが上手くやっている事を願うがフィオーレ嬢の様子からすると一筋縄ではいかないだろう……。
 彼女がリアンはエルミナ嬢を好きだと思い込むのは、きっと理由がある筈だ。フィオーレ嬢しか見ていないリアンが余所見をするとは限らないが……密かに探りを入れてみよう。



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