思い込み、勘違いも、程々に。

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悪夢の再現?

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 次の日、朝の学院で初めに会ったのはアクアリーナ様だった。海を思わせる青い髪をハーフアップにしたアクアリーナ様は教室に入りたい私を通せんぼしている。他の生徒が入れなくなると困っていると口を開かれた。


「グランレオド様は一緒じゃないのかしら?」
「大体は教室に入って会います」
「そ、そう。……フィオーレ様にお話があるの。付いて来て下さる?」
「はい……」


 一体どうしたのだろう。何度か嫌味を言われたりするが連れ出されたことはない。呼び出しを受けたこともない。訝しげに思いつつもアクアリーナ様の後を追った。
 到着したのは屋上。朝の冷たい風を浴びつつ、言葉を待っていると私に振り向いたアクアリーナ様は近い内に開かれるカンデラリア公爵家の親族会について話を始めた。


「エーデルシュタイン伯爵家も参加するのよね?」
「はい。例年通りに」
「今回は、同伴者を1人連れて来て良いことになったの」
「存じております」
「フィオーレ様は、誰をお連れに?」


 何故アクアリーナ様が気にするのだろう。親族会でアクアリーナ様と何度か顔を合わせるがお互い挨拶をするだけで終わる。私が誰を連れて来ようが彼女には関係の領域だ。この場を誤魔化して当日に誰かを連れて来たら色々と突っ掛かれそうなので正直にアウテリート様の名前を出した。端正な顔を歪ませ、やっぱりと呟かれ首を傾げた。


「やっぱりとは? 私が同伴をお願いするとしたら、アウテリート様以外いませんが……」
「そうね……あなたならそうよね。…………王太子殿下もなんでこっちに…………」
「?」


 顔を逸らし小声で何かを呟くアクアリーナ様。声を掛けるべきかと悩んでいると再び視線が合った。


「参加する気ではいるのね?」
「当日、余程のことがない限りは……」
「そう。絶対よ? 絶対参加しなさいよ?」
「あ、あの、何故アクア様が気になさるのですか?」
「ど、どうしてもよ。別に……いえ何でもないわ。連れて来て悪かったわねっ」


 早口で捲し立てられ言い返せず、早足で屋上を出て行ったアクアリーナ様を呆然と見送った。結局何だったのか。私が参加すると困る何かがあるとか? 何も思い付かない。何だったのだろうと思いながら屋上を出た。階段を降り、教室に向かおうと廊下に出ると――窓際に誰かがいた。その人は身を乗り出すように下を覗き込んだ後、急いでその場から走り去って行った。

 落とし物でもしたのかしら?
 太陽の光が眩しい上に距離が遠くて誰かは分からなかった。スカートを穿いているから女子生徒しか言えない。気になり、私も同じ窓から下を覗き込むように近付いた時だ。
 慌ただしい足音が複数短い時間で近付いてきた。何事かと振り向いた時だった。


「――あの女だっ!!」


 最初に現れたのはガルロ殿。髪を乱し、息も荒いガルロ殿は次に現れた男子生徒に私を指差したまま「犯人はあの女だ!!」と叫んだ。
 犯人? どういう事?
 気になって下を覗いた。

 そこには――――


「…………エルミナ…………?」


 昨日視た最悪の部類に入る『予知夢』で見えた光景と同じだ。蹲って動けなくなっているエルミナがいて、側にはリアン様がいて。……唯一違うのは私が見ている光景。
『予知夢』の時は、私が見ていたのはエルミナの頭に植木鉢が直撃する場面。今は上から見下ろしている。
 どうして……? エルミナには建物側は歩かないでとお願いしていたのに……。
 エルミナが怪我をした、微かにだが頭を抑えているエルミナの手には血が付着している。

 呆然と見ていると突然髪に強い痛みが走った。


「きゃっ!!」
「この外道女!! 自分よりエルミナが優れているからって殺そうとするかのかよ!!」
「ち、ちがっ、私は何もしてない!」
「嘘を吐くな! 植木鉢は此処から落とされたんだ! 何故タイミングよくいるんだ!」



 知らない男性生徒にまでガルロ殿に掴まれている方向とは別で髪を引っ張られた。力加減を知らないから痛くて仕方ない。怖くて、痛くて、声が震える。私がしていない事だけは証明しないと『予知夢』通りになってしまう。


「本当に知りません! 屋上から降りたら、先に誰かがいて、っっ!!」
「見え透いた嘘を吐くな! 此処にはお前以外いなかったんだ! やっぱりこの間リグレット様が泣いていたのはお前がやったんだろう!!? 王太子殿下は騙せても俺達は騙せないぞ!!」
「きゃあ!!」


 頭皮ごと持っていかれると恐怖する程の強い力で髪を引っ張られ、体を引き摺られていく。抵抗しようにも男2人がかりで全く歯が立たない。更にまだ2人別の男子生徒がいて。彼等は抵抗する私の腕を強引に掴んで同じ方向に引っ張っていく。こちらも手加減無用に掴むから痛い。

 こんな事になるのは、私がリアン様を諦められないから? 好きな気持ちを捨てられないから?
 エルミナと結ばれて幸せになってほしいと願いながら、ほんの少しでも側にいたいと願ってしまったから?

 どれだけ違うと否定しても彼等の足は止まらない。否定すればするだけ髪や腕を引っ張る力が強まるだけだった。



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