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意外な助け人
私が無理矢理連れて来られたのは生徒指導室。校則を破った生徒が入れられ、指導の先生の監視の下、反省文を書かされる。合格を貰えたら出られるが不合格を貰うと合格を貰えるまで書かされる。生徒指導の先生は特に厳しいと有名で1度で合格を貰えた生徒はいないと聞く。入学してすぐに噂を聞き、校則を破らないよう、目を付けられないよう気を付けてきた。
扉を開かれ、室内へ放り込まれた。受け身を取れず、無様に床に転がった私をガルロ殿を含めた4人の男子生徒が見下ろす。どれもに怒りがあり、同時に下卑た欲望の灯った目もあった。
くしゃくしゃになった髪を整えるとか、考えはない。逃げようにも恐怖が勝り体が震えてまともに動けない。
「普段は校則を破った生徒がいる時にしか先生はいないからな。助けを求めようとしても無駄だぞ」とガルロ殿は言う。彼の手には引っ張られた際抜けた私の髪の毛がついていた。きっと、もう1人の男子生徒にもついているだろう。
「最低だな、半分しか血が繋がってないからって妹を殺そうとするなんてっ」
「ち、違います、本当に、私はっ」
「ああ!!? 俺達が嘘を言っていると言いたいのか!!」
「っっ!」
大声で怒鳴られると更に怖くなって身が竦み、声が出なくなる。畳みかけるようにガルロ殿が怒鳴り続ける。1人の男子生徒が声が大きいと止めるが興奮した様子のガルロ殿には聞こえてない。
手を伸ばされ、反射的に避けた。
それがいけなかった。
「逃げるな犯罪者!!」
「きゃあっ!!」
前髪を掴まれた挙句、顔を上げられた。掴まれた髪が全て引き千切られそうな力。堪えていた涙が溢れ出して止まらない。
私が何を言っても彼等は信用しない。大声を出して私の声を遮り聞こうともしない。
「何で犯罪者のお前が泣くんだよ! エルミナはな、植木鉢に頭が直撃して大量の血を流して倒れたんだぞ!! お前が落としたんだろう!!」
「ち……ちが……っ」
「じゃあ何でタイミングよくあそこにいたんだよ!! 犯人じゃなきゃ、あんな場所にいるかよっ!!」
「おいガルロ、いい加減声を小さくしろ。お前の馬鹿デカイ声のせいでバレたらどうするんだよ」
朝教室に入ろうとしたら入り口をアクアリーナ様に塞がれ、話があるからと付いて行った先が屋上だった。話が終わると早々に立ち去ったアクアリーナ様の後に屋上を出て階段を降りた先で、誰かが窓から身を乗り出して下を見ていて、その人が去って行って落とし物をしたのかと気になって窓に近付いただけ。
そう言えば全て収まる。……彼等以外の人だったならば。
「うるせえ!! この女が王太子殿下やロードクロサイト様を卑怯な手を使って味方にしたせいで俺は母親からうざい説教を食らったんだ。父上やお祖母様は俺がイースター家の跡取りだと認めていたのに、跡取りの座を弟に移すだと? ふざけやがって、全部この女のせいだ!! たかが伯爵令嬢如きのせいで……カンデラリア公爵家の血を引くエルミナより身分が低いくせにこの女が……!!!」
「君って見た目と同じで馬鹿っぽいね~」
「そうだ馬鹿な見た目…………は!!?」
雰囲気に似合わないのんびりとした知らない誰かの声。潤む視界できちんと姿を捉えられない。瞬きをして涙を零した。大粒の涙が沢山流れた。はっきりと見える視界に入り込んだのは、大教会で見る時と同じで違うオーリー様だった。
紫がかった銀髪も瑠璃色の瞳も変わらないのに何が違うのか、すぐに知れた。纏う雰囲気が違う。穏やかな相貌とは異なり、感じる気配は威圧に溢れ息苦しい。
ガルロ殿達の顔は急激に青くなっていく。自分達がしている事が暴力だと自覚はあったみたいだ。オーリー様は普段と変わらない微笑を浮かべたまま、硬直したガルロ殿の手を掴んだ。その腕は私の前髪を掴んでいる手。
「少々やんちゃが過ぎるよ、ガルロ=イースター君」
名前を紡いだ直後――嫌な音が響いた。前髪を掴んでいた手は力が抜けたように開き、私は大勢を崩して前のめりに倒れた。続いてガルロ殿の絶叫が室内に轟いた。床に膝をついて私を起こしてくれたオーリー様が乱れた前髪を手で整えていく。
「怖い思いをしたね。怪我はないかい?」
「はい……、あの、オーリー様はどうして此処に……」
「この間、フィオーレちゃんと放課後の食堂でお茶をしたでしょう? お茶の味が忘れられなくて校長に無理を言って生徒のいない時間ならって許可を貰ったんだ。早く着いちゃって校内を歩いていたら馬鹿デカい彼の声を聞いてね。何事かと思って駆け付けたんだ」
仲間の1人が止めるのも無理はなかった。耳元で叫ばれたら鼓膜が破れていただろう。
床に蹲り、手首を押さえているガルロ殿に何をしたか訊ねると変わらない微笑のまま、骨を折ったと告げられた。あまりにも普通に言われてしまい反応に困った。
他の3人が逃げ出そうとしたのを視界の端に捉えた。声を上げかけるも「心配いらないよ。人は呼んでる」と教えられた。
すぐに人は来た。
「なんだこれは…………」
「……」
駆け付けたのは王太子殿下、そして……エルミナの側にいたリアン様。
呆然とする王太子殿下の横を通り過ぎたリアン様もショックを隠せないでいた。私の前に膝をつくと苦しげに顔を歪められた。
「フィオーレ嬢……っ、何があった、あいつらに何をされたっ」
「……エルミナの上から植木鉢を落としたと勘違いされて……」
「勘違いなものか!! 僕達は確かに見ました! この女がエルミナ嬢のいる場所に植木鉢を落としたのを!!」
怖くてリアン様が見れない。
もしも、彼等の言葉を信じてしまったら……私は……
「あ……」
急な温もりに驚き、鼻腔を擽った香り。後頭部に手を回されゆっくりと撫でられた。視線だけ上へ向けるとリアン様の青い瞳があった。
「大丈夫だ。あいつらの言葉が嘘なのは分かってる。エルミナ嬢は無事だ。怪我はしていない」
「ほ、本当ですか? 本当にエルミナは無事なのですか……っ?」
「ああ。手に擦り傷を負ってはいるが大した傷じゃない。君が犯人じゃないのは分かる。真犯人はもう捕まってるからな」
「え……」
真犯人は捕まってる? つまり、あの時私が見た人が……
「……フィオーレ嬢」
リアン様が私を呼ぶ。
声色にも、見下ろす瞳にも、嵐の前の静けさを纏った怒りが光っていた。
「教えてくれ。……そこの奴らに、何をされた?」
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