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あなたの想い人はエルミナでは? 2
しおりを挟む執事に連れられ、お父様と公爵閣下のいる応接室に入った。重苦しい空気が漂う室内には、向かい合って座り、難しい顔をしていたお父様が私を見た途端顔色を変えて走って来た。
「どうしたんだいフィオーレ! こんなに早く帰るなんて……制服が汚れているし、リアン様がいるのは何が」
やはりまだ報せの手紙は届いていなかった。正直に話そうにも公爵閣下がいる。後程話そうと過ぎるもリアン様が先に話してしまわれた。学院で起きた事件を聞くとお父様だけではなく、公爵閣下までも表情を険しくした。
お父様が座り直したので私とリアン様は各々の父の隣に座った。
「そんな事があったなんて……」
「報せが届く前に私が先に帰ったみたいですね……」
「いや。無事で帰って来てくれて良かった。……あのトロントのガルロのせいでフィオーレやエルミナがとんだ災難に遭うなんて……!」
「あ、あの、エルミナは怪我をしてしまいましたが軽傷です。私は怪我はしていませんから、お父様もあまり怒らないで」
「怒らずにはいられない。イースター伯爵令息が昔からフィオーレを気に食わないのは、トロント殿やカンデラリア先代公爵夫人の吹き込みのせいだが、下の弟や妹に影響がないのは本人の問題でもある」
「……」
そう。イースター伯爵家で私を嫌っているのはおじ様とガルロ殿だけ。アルス殿とミーティア嬢は人懐っこい性格で私やエルミナと遊びたがる。吹き込みはきっと2人にもされているだろうが影響を濃く受けているのはガルロ殿のみ。イースター伯爵家の跡取りだから、余計強く言い含められたのだろう。
お父様が怒りを覚えるのだから、今この場にはいないお義母様が聞いたら更なる怒りを覚える。お義母様はおじ様の姉だから特に。
「リアン」
公爵閣下がリアン様を呼ぶ。
「その件にリグレット王女は絡んでいるのか?」
「……どうとも。今王女殿下は、王宮で軟禁されている」
「ふむ……。伯爵」
顎を撫でながらお父様を呼んだ公爵閣下は、リアン様と同じ青水晶の瞳を真っ直ぐ私へと向けて紡いだ。
「この2年。貴殿にそこにいるフィオーレ嬢とリアンの婚約の打診をしてきた」
――…………え…………?
今、なんて……?
「貴殿がリアンとフィオーレ嬢の婚約を了承しないのも、薄々リグレット王女の存在があるからだと予想していた」
「それもありました。ただ、最初に言った通り、フィオーレは我が伯爵家を継ぐ子です。リアン様がロードクロサイト家を継ぐ立場になかったらフィオーレの意思を尊重し、婚約を考えました。しかし此度の件、詳細を知り次第ですがやはり婚約の件は無かった事にしていただきたい」
私とリアン様の婚約……?
どうして、だって、『予知夢』ではリアン様が婚約の打診をしていたのはエルミナだった。幼い時に会ったお茶会でエルミナを好きになって、エルミナもリアン様を好きになって。2人は両想いで……。
私は……馬鹿な嫉妬の末に身を滅ぼして伯爵家を追放され、恐らく死んだ。
何より、公爵閣下は先程2年と仰った。入学当初から婚約の打診があったの? お父様が告げなかったのは今の会話からリグレット王女殿下の存在を心配して。『予知夢』の的中率は100%で、絶対に外れない。何故か身近な人の未来しか視れないがそれだけは絶対だ。
「待っていただけますか、伯爵。伯爵はフィオーレ嬢にこの婚約の話をしていないでしょう」
「……」
リアン様の責める口調にお父様は眉を寄せた。答えずとも事実だと肯定したもの。
「……もしも、フィオーレが跡取りではなくても、私はこの婚約には反対なのです」
「何故っ」
「隣国の公爵家か……」
硬い声で漏らしたのは公爵閣下。隣国の公爵家、私の母方のお祖母様の実家。隣国の現王妃出身の家。私の紫紺色の瞳は公爵家と同じ。顎を撫でるのが好きなのか、公爵閣下は私の瞳を捉えた。
「確かにフィオーレ嬢の瞳は隣国のフワーリン公爵家のものだ。王妃の生家であり、王家に次ぐ恐ろしい力を持つ家だ。
今代の王族は女神に好かれている者が多いと聞く。私が聞いただけでも4人いる。1人はティベリウス先王陛下、2人目はオルトリウス前王弟殿下、3人目は現王弟シエル殿下、4人目は分からない。その先を知るのは禁じられた。
運命の女神が決めた運命を唯一断ち切る力を持つと言われるのがフワーリン家だ。たとえフィオーレ嬢にその力がなくても、隣国の王族や公爵家を恐れる貴族からすれば厄介極まりない」
「ロードクロサイト家は王家に近い家です。無用な衝突を避ける為にもフィオーレとリアン様の婚約は望ましくない。何より私は、この子には伯爵家にいてほしいのです。ミランダが遺したたった1人の子なのです」
「ふむ……」
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