思い込み、勘違いも、程々に。

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親族会2

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 ――予知はここで消えた。
 故意に視ようとしなかったからか、体力は問題なくても精神の減り具合が酷かった。北の修道院へ護送されている途中の襲撃。私を抱いていた人は誰なのか。髪と顔を隠されて分からなかった。
 横になったまま窓を見やれば、空は朱色に染まっていた。長く寝ていたんだ……。微睡から戻れないでいると控え目に扉が叩かれる。眠そうな声を出して部屋に入ってもらった。


「失礼するわ。フィオーレ、疲れは取れた?」


 入ったのはお義母様だった。体を起こそうとするのを手で制され、ベッドに腰掛けると頬に手を当てられた。温かいお義母様の手。小さい頃、こうやって頬を撫でられて眠ったのだっけ。
 お義母様に撫でられるとすごく安心してしまう。


「まだ眠って良いわよ、と言ってあげたいけれどそろそろ起きないとね。夜眠れなくなるわ」
「暫くしたら眠気も消えます。イースター伯爵夫人とのお話はどうなりましたか?」
「ええ。トロントと夫人は離縁。ガルロはイースター伯爵家から除籍され、トロントとお母様共々カンデラリア家が所有する隅の領地に飛ばすことになったの。これでフィオーレに酷いことをした人達は、2度と目の前に現れないから安心してちょうだい」
「ありがとうございます、お義母様」
「いいのよ。ガルロの馬鹿がしでかした事が大きかったのもあるけど、以前から夫人にトロントとの離縁の相談をされていたもの。ガルロが事を起こさなくても何時かはこうなっていたわ」


 機会を窺っていたところに今回の騒動が起きたのか。ガルロ殿とトロントおじ様、義祖母様にだけはあまり同情出来ないが、お義母様達の悩みの種が解消されたならそれはそれで良しとしたい。


「今度の親族会でフィオーレは誰を同伴者にするか決めた?」
「あ……えっと……。リアン様……です」


 アウテリート様にお願いしようと思っていたがリアン様からああ言われては断れない。……本音を上手に隠すリアン様が……ううん、思っちゃいけない。リアン様は自分の気持ちに嘘を吐いてまで私の心配をしてくれているんだ。

 私が同伴者の名を告げたらお義母様は驚いた顔をしながらも、どこかホッとしたように相貌を緩めた。


「そう。リアン様ね。フィオーレ、婚約の件を黙っていてごめんなさい」
「お義母様?」
「リグレット王女殿下の件もだけれど、旦那様はフィオーレには伯爵家に残ってほしいという気持ちが強かったせいで言えなかったの。貴女が長女だから継いでほしいという訳じゃないの。心配なのよ、貴女が」


 私の顔を覗き込むお義母様が嘘を言っているとは思えない。心底私を想っている目と声。予知と現実のお義母様が同じとは言わない。前妻の子である私と自分の子であるエルミナとの接し方に差は全くなかった。思うところはなかったことはないのだろうけど、トロントおじ様に告げられるまで私やエルミナは異母姉妹だとは全く気付けなかった。

 ……予知と現実の違いが大きくて時折、どうしたら良いか分からなくなる。
 お義母様の裾をそっと掴んで怒られるのを承知でオーリー様に頼んで、隣国の教会で神官様になる話をしている旨を伝えた。途中で言葉を挟まず、最後まで話を聞いたお義母様は眉間を指で揉み。顔を上げると何とも言えない表情をしていた。


「フィオーレが隣国の神官になろうと決めた経緯は分かったわ。ただ……うーん……隣国ね……」
「反対しないのですか?」
「勿論反対よ? でも一方的に否定もしない。考えなしに物事を決める子じゃないのを知ってるもの。ねえフィオーレ。その件は私に預けてちょうだい。だから貴女はリアン様とのことを考えてほしいの」

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