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親族会6
しおりを挟む遂に親族会当日がきてしまった。
侍女達が気合を入れて磨き上げた身体に今夜の為に用意されたドレスを上から着せられる。お義母様は「フィオーレは濃い青色のドレスがよく似合うわ」と肩が露出しながらも背中と胸元は適度に開いたデザインが用意されていて、裾には黒いレースがあり何だかリアン様を意識しているようで恥ずかしい。特にリアン様に同伴してもらうから余計に。
普段は下ろしている髪を1つに纏めて完成である。姿見の前に立つと普段の自分と別人過ぎて誰か分からなくなりそう。達成感を味わう彼女達の気持ちが少しだけ分かってしまう。
控え目に叩かれた扉が開くとやって来たのはエルミナだった。
プラチナブロンドによく映える桃色の愛らしいドレス姿。ドレス部分にある花柄の刺繍がエルミナに似合い過ぎていて花の妖精が私の目の前にいるのかと抱かせた。エルミナは私を見るなり頬を赤らめ「お姉様!」と駆け寄った。
「とても素敵なドレスですわ!」
「ありがとう。エルミナもとっても素敵よ」
「ありがとうございます! ささ、もうすぐ迎えが来るのでしょう? 一緒に行きましょう」
「ええ」
エルミナと2人並んで玄関ホールへ歩く。そういえば。
「エルミナは今日同伴者を連れて来るの?」
「いいえ。また次回にしようかと」
「そうなの」
てっきり、学院で出来たお友達を連れて来るものだとばかり。
私達が玄関ホールに行くと丁度リアン様がやって来た時だった。リアン様の青の瞳が此方に向き、対応している執事も此方を向いた。
どうしよう……ドレスの色がリアン様と同じだから意識してないかと思われたら……。
リアン様は視線を逸らさないまま私達の前へ立ち、普段眠たげな相貌からは予想出来ない優しい笑みを浮かべて見せた。途端熱くなる私の頬。
どうしよう……顔真っ赤になってないかな……。
「フィオーレ嬢」
「!」
視線が逸れそうになる直前、リアン様が私を呼ぶ。
「よく似合っているよ」
「ありがとうございます……」
意識しているって思われたら……と俯きそうになるがリアン様の青の瞳が隣のエルミナへと注がれた。
あ……
「エルミナ嬢もよく似合っているよ」
「ありがとうございます、ロードクロサイト様。今夜はお姉様をよろしくお願いします」
「ああ」
微笑み合うリアン様とエルミナの姿を見た途端、目の前が違う景色となった。
学院の庭園で仲睦まじく腕を組んで歩くリアン様とエルミナがいて……私は……嫉妬に濡れた目で2人を見ていて……2人に近付くとエルミナをリアン様から引き剥がそうとした。
「フィオーレ嬢?」
「!」
「どうした?」
「い、いえ、何でもありません」
リアン様が呼ぶ声によって現実に戻った意識。良かった。内心多大な安心感を抱いた。もしもあのまま見ていたら、私は泣いて正気を失っていた。何れ現実になる事なのに、何時までリアン様への好意を引き摺っていたらいいの?
そっと差し出された手を取り、先に私とリアン様は玄関ホールを出た。途中エルミナが気になってしまうも全く気にされてなくて笑顔で手を振られた。大きく手を振るのは淑女らしくないと言いたいが、私の顔を見て「あ」となり小さめにした。苦笑しながらも私もそっとエルミナに手を振って前を向いた。
……チラリと隣を見る。今夜のリアン様、とても素敵。左耳に髪を掛けるだけで色気が増すなんて狡い。黒と紫を基調とした正装はあまりにリアン様に似合い過ぎていて。
凝視したら気付かれる。すっと視線を元に戻した。
外にはロードクロサイト家の家紋がある馬車が待機していて。側にいた馭者が扉を開けて私とリアン様は馬車に乗り込んだ。私達が座るのを確認して扉は閉められた。
どうしよう……すごく緊張してしまう。目の前にいるのがリアン様でリアン様と2人だけだから意識しないでいるのが無理だ。
会話がないと空気が重い。
話題はないかと探ってみるも何もなかった。
「リアン様……」
ないのに無意識に私はリアン様の名を紡いでしまい、狭い空間だから当然彼の耳にも私の声は入り。青の瞳が私に「何?」と待っていた。
腹を括ろうと当たり障りのない話題を選んだ。
「ロードクロサイト家でもこの様な催しはありますか?」
「似たようなものはあるよ。ただ、定期的にはない、かな。年に1度あるくらいだ」
「そうなのですね」
良かった……ちゃんと会話が成立している。
この会話を切っ掛けにカンデラリア家に到着するまで私達の声が途切れる事はなかった。
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