私のお父様とパパ様

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連載―私はお父様とパパ様がいれば幸せです―

パパ様とカフェデートで遭遇1

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 メアリー=シルバニア。
 魔王の棲む家と恐れられるシルバニア公爵家の一人娘。プラチナブロンドは手入れを欠かさないので痛み一つもなく、深い青の瞳は自分の頭を撫でてくる男性を見上げていた。
 瞳の色は同じだが、髪の毛の色が違う。純銀の髪を持つその男性を「パパ様」とメアリーは呼んだ。
 今二人がいるのはメアリーが眠る際に使用する寝台の上。昼寝から起きたメアリーを起こしにパパ様ことアタナシウスがやって来た。起きた娘の頭を飽きずに撫でてくるので、メアリーは苦笑した。


「もう、パパ様。頭がぺったんこになってしまいますわ」
「そうなったらパパが戻してあげよう」
「まあ、パパ様ったら」
「ふふ。今日は久しぶりに休みの日だから、僕とお出掛けする?」
「パパ様と? うん!」


 そうと決まれば有言実行。アタナシウスは魔法でメアリーを外出用の衣装に着替えさせた。深い青のドレスにオパールを装飾にしていた。髪も綺麗に結い上げられ、青い蝶の髪飾りが着けられていた。寝台から立つとアタナシウスから手を差し出された。


「さあ、お手をどうぞ、メイ」
「ふふ、はい」


 まるでお姫様のような扱いだ。パパ様やもう一人いる父親にしたら、自分は同じなんだろう。
 現在皇室に皇女はいない。皇子が一人いる。皇太子として日々帝国の為に尽くしている反面、婚約者であるメアリーに対し非常に冷たい。
 空間魔法で屋敷から街へ移動したメアリーは、何処へ行きたい? と自分に向いたアタナシウスに「パパ様に任せるわ」と頼んだ。街へあまり行かないメアリーは、よく街へ足を運んではプレゼントを買ってくれるアタナシウスに任せた方が適任だと思った。


「お腹は空いてる? 近くに人気のカフェがあるんだ」
「楽しみ。そこに行きたい」
「よし、行こう」


 差し出された手を握ってアタナシウスの言う人気のカフェを目指した。小さい頃から毎日見ている背中は、背が伸びてもずっと大きいまま。メアリーの身長が低いせいなのもあるが、きっと何年、何百年経とうがこの背中の向こうにはいけない。
 メアリーを気遣って歩幅を合わせてくれるアタナシウスとエスコートしてもいつも自分のペースで歩きメアリーが何度も躓きそうになっても合わせない皇太子。

 不老の血とシルバニアの力を欲した周囲が皇帝にただ一人の皇子の婚約者にメアリーをと声を止めなかった。皇室に不老の血は流さないと、先代当主と当時の皇帝とで話はつけられ、歴代の皇帝達はその決まりを守ってきた。
 現皇帝アーレントも例外ではない。当主が先代の双子の息子に変わっても同じ。
 現実は二人の婚約は成立している。これは、周囲の声があまりにもうるさかったのと止めるのがいい加減面倒になった皇帝・双子により、条件付きで婚約が結ばれた。


(皇太子殿下は、私が嫌いなのよね……)


 初めて会った時から拒絶の空気を纏い、幼馴染の公爵令嬢には定期的にプレゼントを贈ったりデートをしているのに、婚約者の自分に対してはプレゼントも贈らないデートの誘いもしない。
 吐きたくなる溜息を堪えたメアリーはでも、と抱いた。


(パパ様やお父様が側にいてくれるし、偶に皇帝陛下が内緒で屋敷を訪れるから、なくてもいいのだけれどね)


 プレゼントも父親達や皇帝が贈ってくるので皇太子からのプレゼントを欲しいという気持ちも最初の頃にあっただけで成人間近な今は全くない。


「ねえパパ様」
「なあに」


 甘ったるい声と顔は娘のメアリーにしか向けられない。
 今から言おうとしている事を声にしたら、パパ様を困らせてしまうのではと思うもメアリーは勇気を持って口にした。


「今度、皇帝陛下に謁見を求められないかな?」
「アーレントに? 態々求めなくても、明明後日には来るよ」
「え」


 初耳である。
 曰く、東方の島国から遥々やって来た商人が珍しい商品を皇帝に紹介したらしく、品々を気に入った彼が選別した後シルバニア邸に来るのだとか。


「僕やティッティも話を聞いて楽しみにしてるんだ。メイも来る?」
「うん!」
「分かった。それでアーレントに謁見をってどうして?」


 今度はメアリーが訳を話す側となった。
 来月に皇太子の誕生日パーティーが開催される。幼馴染――更に言えば恋人である公爵令嬢に夢中でありながらも、婚約者としての義務を忘れてないらしい皇太子は毎回メアリーを迎えに来る。その度に不機嫌そうな顔を見せられ、馬車内でも同じだからパーティーが始まる前にメアリーの気が滅入ってしまう。
 それでもメアリーが義務を放棄したら、シルバニアが侮辱される。
 実際はそんな事はないのだが、パパ様とお父様の役に立ちたいメアリーは思わない。


「皇太子殿下の好きな物を教えてもらおうかなって」
「皇太子の?」
「来月、誕生日パーティーがあるでしょう?  私、殿下の好きな物を知らなくて……」


 段々と声が小さくなっていく。婚約してから何年経過しているのだと、自分を溺愛してくれるアタナシウスも呆れただろう。俯きかけたら、優しい声で呼ばれる。


「メアリーが用意しなくても、シルバニア家としては用意する。メアリーは気にしなくていい」
「それに、僕やティミトリス、アーレントが君達の婚約に反対なのは知ってるでしょう?  その内婚約解消をするのだから、贈る意味がない。メイが贈らなくても、彼には恋人がいるんだ。欲しければその恋人にねだればいい」
「パパ様ったら……」


 言い方は酷いが間違いがないのでメアリーはそれ以上言わなかった。
 婚約者との定期的なお茶でも恋人を連れて来るのに、メアリーの欠席を許さないのも皇太子の考えは不明である。仲を見せ付けているつもりなのだろうが、最初の頃の期待は既にないからメアリーにしたら面倒なのと一人黙ったまま時間が過ぎるのを待つのが苦痛だけ。

 誕生日パーティーの前にも一度お茶がある。
 苦痛でも、義務は果たしたいメアリーは我慢の道を選ぶ。



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