悪女は可哀想な婚約者を解放してやりたい

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大人の時間②

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 下着姿でオシカケやオーギュストの前に姿を見せた回数は何回かあった。その度に服を着ろと二人に怒られた。全裸じゃないのだから怒る理由が何処にあるのか、と人間になってもイマイチ理解しきれない部分はある。
 裸を見るのはラウラや風呂の時手伝う他の侍女達だ。いくらヒルデガルダでも異性に堂々と裸を見せる真似はしない。

 恋愛小説では、男女が肌を重ねるのは愛し合うからだと書いてあった。人間は愛し合う男女しか性行為をしないのかと読みながら感心してしまったのをよく覚えている。魔族は欲望に何よりも忠実だ。故に、愛がなかろうと快楽を優先して肌を重ねる。異性の体液を摂取しないと生きられない淫魔は別として。


「ヒルダでも恥ずかしいんだ?」
「……まあ……」


 夜着を脱がされ、全裸になったヒルデガルダは揶揄うアイゼンからぷいっと目を背けた。自分が体験しようとしていると分かってしまった事が一つあった。


「アイゼン」
「うん?」
「妾が魔族だった頃、お前が綺麗なご令嬢としている時に何度か鉢合わせしただろう? あの時のお前の気持ちが妾にも漸く分かった」
「……へ?」


 アイゼンらしくない間抜けな声。チラリと顔を見やると声色と同じで間抜け面を晒していた。ただ、美形というのは間抜け面でも綺麗だなと初めて知った。


「親しい相手でも無防備な姿を見られるのはとても恥ずかしいというのを身を以て知ったよ……一度だけではなくて悪かった」
「あ……あー……いや……いいよ。……そういう風に解釈するか……」


 歯切れが悪く、最後に至っては声が小さくて聞こえなかった。アイゼン? と呼ぶと気のせいか落ち込んでいる。もう一度アイゼン、と呼ぶ。


「……ああ、やっと君の相手が出来るんだ。考えを変えるよ」
「?」


 独り言を言って自分を納得させたアイゼンを怪訝に見ていれば、目が合って微笑まれる。顔を近付け、キスをするアイゼンに好きなようにさせた。
 触れるだけの口付けを繰り返し、ゆっくりと唇が下へ降りていく。首筋を唇でなぞり、胸の辺りまで降りると豊満な膨らみに触れた。微かに反応した身体が嬉しくて、先端の周りを舌でなぞっていく。真ん中には触れず、周りだけを丹念に舐め、もう一つの膨らみは指先で周りをなぞる。


「……擽ったい……」
「ヒルダだから丁寧にしたいんだ」


 余裕に見えて声には艶が含まれ、表情も若干赤い。ぴんっと尖った先端を見やると報せもなく口内に入れた。反対も指で摘まんだ。背が宙に浮き、ヒルデガルダから漏れた声は抑えられたせいで出されなかったがさっきまでと違うものである。
 口内に含んだ先端を舌先で転がし、痛くない程度に吸い付いてまた舐める。指で弄っている方は摘んで、爪で引っ掻いて、指の腹で転がして刺激を与えるのを止めない。

 長い生で女性を丁寧に抱いた経験は一度もないアイゼンは、処女である彼女が痛がらないよう努めて丁寧に愛撫をしていく。


「っ……ん……」
「声、我慢しなくていいんだよ。我慢する方が辛いよ」


 と言われても自分じゃない声が出て抑えようとしたくなる。答えず、そっぽを向いた。アイゼンは嫌な顔をせず、寧ろ、ヒルダらしいと笑ってまた胸の愛撫を再開する。あの時ノアンにした以上に執拗で、未経験なヒルデガルダでは思いつかない動作で快楽を与えられる。違うのは腕を拘束しているか、していないかの部分。室内にヒルデガルダの魔力を充満させ、腕を縛らなくても身動きは封じていたのに縛ったのは誰が上なのかを明確に分からせたかったからだ。
 この空間に誰が上か、下かはない。主導権を握っているのはアイゼンであるがヒルデガルダが嫌だと言ったらすぐに止める。


「……んっ」


 胸を愛撫していたアイゼンがゆっくりと下へ降りていく。唇を肌で触れながら降り、腹にキスを落とすと顔を上げた。


「力入れないでね」


 両膝にアイゼンの手が置かれ、両脚を開かれた。
 普通は誰にも見せない場所を見られる。屈辱だとか、嫌悪とかはない。恥ずかしさだけはある。


「っあ……!」


 胸を愛撫されている時からムズムズとするそこを凝視されている気がし、恥ずかしいがアイゼンを見れず目を逸らしていたら急に強い刺激に襲われた。驚いて下を見やれば、脚の間にアイゼンが顔を埋めていた。声を発しようとしたのに、出たのは思っていた声とは違った。自分でさえ触れたことのない場所に生温かい感触が好き勝手動いている。気持ち悪さはない。擽ったいのとも違う。


「ん……、……ちゃんと丁寧に解さないと痛いのはヒルダだから……ゆっくりしていくね」
「う……ん……、わか……った……」


 そういえば恋愛小説の描写で女性の初めての性行為はとても痛いとされていた。痛みに強いヒルデガルダでも痛みを感じる程なのか。
 表面や入口を舐め続け、時折割れ目の上にある突起に吸い付いては舐める。この時だけヒルデガルダも反応が大きくなる。呼吸が荒くなり、声も段々抑えられなくなったタイミングで中心に舌を挿入された。初めて入る異物に身体が強張るものの、太腿を撫でる手付きと宥めるアイゼンの声により身体から力を抜いていった。


「そう……良い子……んう……」


 時間を掛けて中心を広げられ、異物への違和感がなくなったのを見計らい、顔を上げたアイゼンの手が秘部に触れる。くちゅりと音を立てて指が一本入れられた。違う異物が入って体を強張らせたヒルデガルダを気遣いながら、身体から力が抜けたのを見逃さず奥へ奥へ入れる。


「大丈夫? ヒルダ」
「っ、あ、ああ……」
「痛みを少しでも減らす為だから我慢して。直に痛みの感覚が消えていくよ」


 ゆっくりとした動作で手を左右に動かし始められ、痛みの度合いが強くなる。割れ目の上の突起をアイゼンがまた舐めた。驚きながらも舐められる快感が中にある指の痛みを消して身を委ねた。





「……そろそろ、いいかも」


 時間を掛けて中を解したアイゼンは指を二本抜いた。最初は一本だけでもきつくて痛がっていたヒルデガルダもアイゼンの丁寧な愛撫で指が二本になっても問題なかった。
 シャツを脱ぎ捨てたアイゼンの上半身を涙目でぼうっと見る。下の服に手を掛けていたアイゼンが視線に気付いた。


「どうしたの」
「アイゼンは……鍛えているんだなと……」
「……王子様と比べてる?」
「お前と比べると多分柔らかい気がする……」
「ああ……そっか。まあ……この国は戦争が大好きって訳じゃないし、平和だから王族が積極的に体を鍛える必要がないからじゃない」


 声色が若干不機嫌になったかと思えば、急に上機嫌になる。猫みたいな奴だとぼんやり考えつつ、体に蓄積されて消えない熱をどうにかしてほしくて堪らない。体力お化けとオシカケに言われるヒルデガルダも消耗している。ゴソゴソとしているアイゼンの名を呼ぼうとした直後、大きく両脚を開かれ、中心にとても熱いモノを何度か擦られると――一気に挿入された。


「ん……っ!!」
「ヒルダ……っ」


 長い時間かけて与えられた快楽が消し飛ぶ痛み。ベッドシーツを強く握りしめ、呼吸をしようとするが息をすうだけで激痛が走り吸えない。


「ヒルダ……触ってあげるから身体から力を抜いて」


 そう言うと胸の先端を舐め、指で弄るアイゼンの声に従いヒルデガルダは慎重に息を吐く。慎重に、慎重に呼吸を繰り返せばアイゼンの愛撫もあって身体から力が抜けていった。

 繋がっている場所から感じる固さと大きさに驚いてしまう。よくこれを受け入れているな、と。誰も彼も激痛に耐えて肌を重ねる。魔族にとっては快楽を得る為。人間にとっては愛を確かめ合う為。今のヒルデガルダとアイゼンはどちらかと言うと前者に近い。
「ヒルダ」と呼んだアイゼンにキスをされる。


「動いても……いいかな」
「……いい……」
「痛かったらすぐに言って」
「その内慣れる……」
「そうだね……」


 ヒルデガルダの了承を得たアイゼンはゆっくりと、でもヒルデガルダを感じるように腰を動かし始めたのであった。





 ●○●○●○


 翌朝、意識が浮上し、重い瞼を上げたヒルデガルダが最初に見たのはあどけない寝顔を晒すアイゼンであった。
 二人とも衣服は着ている。しかし、下腹部に感じる鈍痛や腰の痛みは本物である。つまり、昨夜アイゼンと肌を重ねたのは事実。

 ちらりと外を見ると薄暗く、オシカケが起こしに来るまで時間がある。


「……お前は、妾が好きなんだな……」


 自分を抱いていた時のアイゼンは終始嬉し気で初めてを貰えて喜んでいた。
 精を一度放出しても収まらず、謝りながら合計四度精を出された。終わった頃にはさすがのヒルデガルダも体力が限界だった。まともに動けたアイゼンに体を綺麗に洗われ、シーツも新品に変えてもらうと夜着を着せられた。
 一緒に寝ていてもお互い衣服を着ていたら騒がれないとアイゼンが言うから。


「……」


 起こさないよう蜂蜜色の髪を撫でる。ずっと嫌な気持ちは起きなかった。これがオーギュストやオシカケだったらどうだっただろうと想像し、……寒気がしてすぐに止めた。


「……ん? ヒルダ……」


 ぼんやりとした薄い青の瞳がヒルデガルダを映す。


「もう少し寝ていてもいい。まだ朝じゃない」
「そっか……体は大丈夫?」
「ああ。アイゼン」
「なあに」
「お前なら、何回でも相手をしても嫌じゃない」
「……そっか。嬉しいよヒルダ」


 額をコツンと合わせ鼻頭にキスをされた。
 アイゼンに抱き寄せられ更に体を密着し、心地良い温もりに微睡んだ。

 朝になってオシカケが起こしに来ると「マクレガー公爵令嬢からお手紙が届いてますよ」とアイゼンがベッドにいることをスルーされた。




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