悪女は可哀想な婚約者を解放してやりたい

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期待外れとなっても次がある

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 リスト侯爵家が主催した『交流会』は無事終わり、他の貴族と今まで関わりを持たなかったヒルデガルダからすれば、ノアンとヒリスの既成事実作りに成功した時点で『交流会』に参加した意義は達成された。一応オーギュストの顔を立てる為に他家の令嬢や夫人と言葉を交わした。多数はノアンやヒリスについて面白おかしく言葉を並べられるも、二人の純愛にしか興味がないヒルデガルダの心を騒がせた者は一人もいなかった。偶にヒルデガルダ自身に興味を持つ人もいた。騎士団や魔法士団に属する身内がいたり、本人が在籍したりする場合だ。魔導公爵と恐れられるオーギュストの養女もまた同等の力を持つ故、強さの秘訣を知りたいのだとか。生まれ持っての魔力量が能力を示す為、後天的に魔力を増量させる術はほぼない。ノアンに関しては死亡リスクが極めて高い魔法石の取り込みに成功しただけだ。
 後は本人がきちんと取り込んだ魔力の操作を完璧に行えれば、オーギュストやヒルデガルダを除いて王国で一、二を争う強い魔法使いになれる。

 馬車で帰路につく四人。車内での会話は主にノアンとヒリスの今後について。
 あの後ヒルデガルダは上半身を露わにしたノアンを眠らせ、ベッドで寝かされているヒリスをノアンの上に移動させた。

 そこにリスト侯爵夫妻を呼び出し、客室に入ったら二人の有様を見せつけた。


「王子まで眠らせる必要ありました?」
「あった。口を開かれてはうるさいからな。眠らせて、目が覚めたら全部終わっていた方が王子も諦めがつくだろう」


 実際そうなった。
 騒ぎを大きくしたくなかったからと二人を強制睡眠に掛けたと話し、即城へ連絡をしてもらい、二人を密かに駆け付けた騎士に渡した。一行の中にマクレガー公爵もいた。顔を青褪めさせ、ノアンの衣服の乱れとヒリスの乱れていないドレスを見るやヒリスがノアンを襲ったと勘違いをした。
 ヒルデガルダ的には都合が良かった為、何があったか問われても肩を竦めるだけにした。


「屋敷に着いたら私は城へ行く。ヒルデガルダ、お前も来るんだ」
「ああ」
「なんだ、今日は素直だな」
「最後がどうなるかは見届けたい」


 ヒルデガルダが行くなら僕も行くと言いそうなアイゼンは何も言わない。視線をやると意味を察し「僕はお留守番をしておくよ。人間界の貴族事情に首は突っ込まないさ」と語る。


「貴族事情は魔界でもうお腹一杯さ」
「魔界には戻らないともう伝えてあるのか?」
「戻ったら送るよ。その前に、リュカの父親を捕獲しないとだけど」
「明日、妾が捕まえに行く」


 抵抗をされても大した暇潰しにはならないだろうが、体を動かすという点においてはまだマシな部類となる。
 馬車はサンチェス公爵邸に到着。四人が降りたのを待っていたのか、屋敷からラウラやオルチナ、リュカが出て来た。


「オ、オーギュスト様、ヒルデ姉様」


 駆け寄るリュカの両手には皿に載ったチーズケーキが。これは? とオーギュストがのんびりと後を追い掛けるラウラやオルチナに訊いた。


「今日、リュカ様と買いに行った街で評判のチーズケーキです。『交流会』から戻られたオーギュスト様やお嬢様達と食べたいとリュカ様が」
「チーズケーキか。夕食の後に皆で頂こう」
「はい!」


 よしよしとリュカの頭を撫でてやり、屋敷に入ろうと促せば、オルチナから残念なお知らせがあると伝えられる。屋敷に入れば分かるらしく、言われるがまま入ったら——天井から垂れる縄に男が吊るされていた。全身酷い火傷を負い、辛うじて生きている状態。


「誰だ」
「リュカ様のお父上ですよ~」
「リュカの?」


 明日ヒルデガルダが捕獲する予定だったリュカの父親は、チーズケーキを買いに街へ現れたリュカ達の前に姿を現し、呆気なく捕獲された。

「連絡を入れるついでに魔界に戻すか」とアイゼンの声に呼応した縄がリュカの父親を解放し、痛い音を鳴らして床に落ちた。首根っこを掴むとそのまま消えた。


「お嬢様の楽しみを奪ってしまって申し訳ないですわ~」
「構わんさ」


 リュカ達に怪我がないのならそれで良し。


「ヒルデガルダ、そろそろ行くぞ」
「ああ」
「ラウラ、オルチナ。私達は今から城へ行く。夕食までには戻るつもりだが、戻らなかったら先にリュカの夕食を進めてくれ」

「は~い」
「はい」


 間延びした返事としっかりとした返事でどれが誰を発したか分かる。くるりと背を向けたアイゼンに続いてヒルデガルダも再び外に出て、差し出された手を取り、一気に城へ飛んだ。

  

 ●○●○●○


 城へ到着するなり、早速二人が向かったのは国王の執務室。扉の前にいる騎士は二人の顔を見るなり「陛下から既に話は聞いております。お二人のご到着を待っておられます」と告げ、執務室の扉を開けた。


「サンチェス公爵……公女も……よく来てくれた」


 部屋の奥にある執務机に腰を掛け、両手を組み項垂れる国王と側に立って項垂れるマクレガー公爵がいた。


「陛下。挨拶の方は省略させて頂きますよ。その方が良いでしょう」
「ああ……」
「ランハイド侯爵や令息には、私の方から新しい婚約者について紹介済みです。先方も前向きに考えご令嬢との顔合わせ日時を今調整しているところです。これでノアン殿下とマクレガー公爵令嬢の再婚約をするに至っての憂いは無くなりますね」
「サンチェス公爵、王命でノアンとヒリスの婚約を破棄し、公女との婚約に拘った理由を知っているだろう」


 この場にいる全員が知っている。
 知っていても見ている側からすればノアンもヒリスも愛する人と引き裂かれた悲劇の男女にしか思えず、また、二人の純愛をずっと見ていたいヒルデガルダからしても再婚約を成し遂げたかった。


「ええ。ですが陛下。最初の頃から申しているように、私もヒルデガルダもノアン殿下との婚約は望まない、碌に関係を築こうとせず殿下を揶揄ってばかりのヒルデガルダだといずれ殿下に限界が来てしまうとも」
「ふむ」


 時間の問題か、ヒルデガルダかノアン、どちらかが諦めれば落ち着くと国王は心の中で考えていたに違いない。今も尚、納得していない面持ちである。

「陛下、発言を」とヒルデガルダ。


「許可しよう」
「ありがとうございます。ノアン様とマクレガー公爵令嬢はこの国で最もお似合いで互いを愛し合う二人です。そんなお二人を知っていた私からすると、やはりノアン様との婚約は私にとって重荷でしかありませんでした」


 更に、と続けた。


「マクレガー公爵令嬢は由緒正しき公爵家の姫君。ノアン様も然り。対して、私はオーギュストに連れて来られた元孤児。サンチェスを名乗ろうと私の肉体にサンチェスの血は一滴も流れておりません。王族に嫁ぐ女性は高貴な血を引いていないと……そうは思いませんか」
「それを上回る魅力が其方にはあったのだ」
「ありがとうございます」
「はあ……」


 褒められれば笑顔で返す。家庭教師に教わったのを披露すると大きな溜め息を吐かれた。国王の望みである強い魔力を持った子の誕生は、ノアンとヒリスでも十分可能性はある。強大な魔力を秘める魔法石をノアンが取り込んだ現状。信じるしかないか、と呟いた国王に一礼をしてオーギュストとヒルデガルダは執務室を後にした。王城内を歩き、さっさと帰るぞとオーギュストが発した時だ。
 背後からオーギュストとヒルデガルダを呼び止める声が。誰だと考えずとも声だけで分かり切っている。

 後ろにいたのはノアン。ヒリスもいる。
 ヒリスは頬を紅潮させ、勝ち誇った笑みでノアンの腕に抱き付いていて。
 ノアンの方は険しい表情は相変わらずだが……気のせいか紫水晶の瞳が昏い。
 ヒリスに呆れる一方、ノアンの様子を訝しむヒルデガルダ。

 気にするほどでもないか、と自身を納得させ、呆れているオーギュストの一歩前に出た。


「御機嫌ようノアン様、マクレガー公爵令嬢」
「ヒルデガルダ様! もうノアンの婚約者ではなくなったのよ? 名前を呼ばないでちょうだい」
「あら。私が婚約者だった時、ご令嬢はノアン様を呼び捨てにしていたではありませんか。私は何も指摘しなかったのに」
「っ」


 必死なのも、自慢したいのも解してやれる。漸く悪女から解放された愛しい人が側に戻った喜びを、悪女に見せ付けたい気持ちも。
 感情が先走って利口な頭に鈍さが掛かってしまっている。
 ヒルデガルダに指摘され、反論したくても正論なせいで口を出せず、可愛らしい顔で睨むしかヒリスには対抗する術がない。ヒルデガルダがいなければ二人は元通りになる。ノアンから最後に嫌味を聞いてやろうと気を回したのが駄目だったらしい。

 隣にいるオーギュストを呼んだ直後「ヒルデガルダ」とノアンに続きを遮られた。


「怖い顔。どうして喜ばないのです」
「お前がここまでした本当の理由はなんだ」
「以前貴方に言いました。それ以外も、それ以上もありませんわ」
「……お前以上に意味の分からない人間はいないな」
「貴方だろうとマクレガー公爵令嬢であろうと誰であろうと——私を理解する者などおりませんわ」
「……」


 他人を見下し、馬鹿にする悪女の笑みは尚ノアンの神経を逆撫でするのに絶大な効果を持つ。隣にヒリスがいなければノアンは必ず突っ掛かっていた。早くこの場から去りたいヒリスに腕を引っ張られているのにノアンは動かない。ずっとヒルデガルダを睨み続けるだけ。

 オーギュストと共にこの場を去った方が早いものの、最後に悪女らしく嫌味を言うのも悪くない。


「そうだ、言い忘れていました。再婚約おめでとうございます。私に使おうとした媚薬をノアン様にかけたお陰で既成事実作りに成功したマクレガー公爵令嬢に拍手を送らないと」


 パチパチパチ、と暗に肉体関係を持った(実際に持っていなかろうと)お陰で果たした再婚約だと言われ、顔を真っ赤にしながらも何も言い返せないヒリスは悔しさのあまり幾つもの涙を流し始めた。
 ノアンが何か言おうとするが、そうなる前にオーギュストに手を掴まれサンチェス公爵邸へ飛んだ。

 ——一瞬で消えたヒルデガルダとオーギュスト。置いてけぼりを食らったノアンは、何も言えないままに終わってしまい、開き掛けた口を閉ざした。


「ノアン!」


 愛しい——筈のヒリスの声は、どうしてか以前のように愛しいと思えなくなった。


「ヒリス……」
「ノアン……怒ってる? でも……こうやって、また婚約者になれたんだもの。私に後悔はないわ」
「……そうか」


 既にサンチェス公爵を筆頭にこの件については、ヒルデガルダが原因とし、ノアンとヒリスは再び結ばれた相思相愛の男女という印象を付けて回っている。自分の評判が地に堕ちようとどんな悪評が回ろうとあの悪女はそれすら自身の退屈を紛らわせる為の玩具にしかしない。
 実際ヒリスと肉体関係はない。ヒルデガルダともそう。二度襲われ、二度とも最後までしていないのが幸いして。

 強硬手段に出たことで元の関係に戻れたと喜ぶヒリスを複雑且つ、些か昏い目で見下ろすノアン。

 解放されても悪女の——ヒルデガルダ——の姿が頭から離れない。

  

  

  

  

  

  ――ヒルデガルダとオーギュストはサンチェス家の屋敷前に着いた。


「遊ぶのはあれで終わりだ。今後は二人を見掛けても遊ぶなよ」
「ああ、妾はな。あの二人がどうするかは知らん」
「近付いて来ないのを祈るしかない」


 何となくノアンは今後もヒルデガルダに突っ掛かってきそうでもある。


「お帰り、ヒルダ」
「アイゼン」


 愛する人と再び婚約したのならもうヒルデガルダに突っ掛かる理由はなくなる。というのにまだ突っ掛かって来る? 何故、と目を丸くすればアイゼンが屋敷から出て来た。


「どうしたの。話は上手く纏まらなかった?」
「そうじゃない。オーギュストが気になることを言うから、ついな」


 訳をアイゼンに話せば「ヒルダのせいだよ」と述べられ、理由を問うた。ヒルデガルダには一つも心当たりがない。


「ヒルダが揶揄い過ぎるあまり、元の婚約者よりヒルダへ意識がいくんだ。オーギュストやヒルダの話しぶりから、王子は元の婚約者との再婚約に前向きじゃないんだろう?」
「時間が経てば王子とて受け入れるだろう」
「さあ? それは本人にしか分からない。一つ言えるのは、元婚約者が想う程、王子は元婚約者を想えなくなっている」
「……」


 仮にアイゼンの推測が当たっているなら、二人の為にしてきたことが全て無駄になる。呆然とするヒルデガルダを呆れと些か哀れむ眼で見やり「人間として生活する上での経験が一つ増えたと思うようにすればいい」と言い残しオーギュストは屋敷に入った。

 残ったアイゼンは次第に項垂れたヒルデガルダを抱き締めた。


「自分の望む筋書きにならなくて落ち込んだ?」
「ああ……まあ……物語のようにいかないとは分かってはいる。だが、あの二人なら物語の登場人物のままでいてくれると願っていた」
「此処は創作の世界じゃない、現実の世界なんだ。思い通りにいかないのが常。ヒルダも良い経験になったと思えばいい」


 さっきのオーギュストと同じ台詞。


「それか、別の組み合わせを探せば? 王子と公爵令嬢だけが純愛カップルじゃあない」
「他の……」


 ヒルデガルダが知る限り、社交界の純愛カップルと言えばノアンとヒリスのみ。他の組み合わせは知らない。幼少期から二人の純愛振りを見ていたせいで他に目がいかなかったのもある。


「そうか……そうだな。お前の言う通りだ。今後は王子やマクレガー公爵令嬢以外を探すとする。屋敷に戻ったら、ラウラに夜会に参加する旨を言う」
「僕も同伴していい?」
「構わないがお前は慣れているだろう」


 魔界の夜会に幾度も参加しているアイゼンには退屈だろうと不思議な気持ちを見せるも、本人は至って楽しみにしている。


「一人だと退屈な場所でもヒルダと一緒ならどんな場所だって楽しい」
「そういうものなのか」
「そういうもの」
「妾にとっては、お前が一番よく分からん」


 ノアンにとっての一番意味不明な相手はヒルデガルダ。
 ヒルデガルダにとってはアイゼンとなる。それでいいと笑うのも然り。
 いいか、とヒルデガルダは一笑し、アイゼンの手を取った。


「屋敷に入って夕食を摂ろう。食後は、リュカ達が買って来たチーズケーキもな」
「食後のデザートもいいけど……」


 腰に腕を回され、引き寄せられると「今夜も……いいよね?」と同意を求めているくせに既に得ている言葉に呆れながらも受け入れた。


「飽きないな」
「飽きないさ。ヒルダだって嫌じゃないだろ?」
「アイゼンが相手なら……まあ……嫌じゃない……」


 他の相手と肌を重ねる……想像するだけで鳥肌が立ち悪寒がする。
 気心が知れているという理由でアイゼンが良いにはならない。いつかこの気持ちを分かる日が来れば、自分に長い片想いをするアイゼンの気持ちに応えてやれる気がする。


「僕はね」
「うん?」
「王子が君に気があるって何となく知ってた」
「妾に? 勘違いだろう」
「いいや。王子は元の婚約者から君に気を移している」
「時間が解決してくれる」


 そうはならない、と口にしかけたアイゼンであるが、これ以上ヒルデガルダに元婚約者の王子を気にしてほしくなく「じゃあ、そう思おう」と頷いた。

 そろそろ行こう、とアイゼンの手を引いて今度こそ屋敷に戻ったのであった。

  

  

  
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