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働き蜂の妖精さん①
しおりを挟むクロワッサンとチョコクロワッサンを食べ終え、次は妖精を見に行きましょうと言うカレンデュラ様の提案に従い、街の一番大きな花壇がある広場へとやって来た。最初にグレン様と言い合いをして別れた場所だ。少し前に周囲を焦った様子で見回し走り去って行ったグレン様の側にクリスタベル殿下はいなかった。てっきり、あのまま殿下と一緒に花祭りを楽しむものかと思っていたのに。
……会ったところで言われるのは文句だけ。クリスタベル殿下みたいには接してくれないグレン様に会いたくない。これでは殿下に嫉妬していて嫌になる。小さく溜め息を吐いたら側にいたカリアス様に気付かれた。何でもありせんと笑って見せると「そう?」と怪訝にしながらも聞かないでいてくれた。有難い。
ずっと探されるのも申し訳ないので、魔法で造り出した蝶に私の言葉を乗せてグレン様の許へ飛ばした。グレン様の魔力を辿って飛んで行くからすぐに辿り着ける。
「グレンが気になる?」とカリアス様。
「気になるというより、探してもらわなくて結構ですと蝶に言伝を頼みました」
「そう……」
後は帰るなり、やっぱり殿下と合流するなりして楽しんだらいい。
広場に着くと人の多さが違った。花祭りの主役ともいえる場所だから人が集中する。何処に妖精がいるのかとカレンデュラ様に訊ねたら、よく知っているたおやかな声が飛んできた。三人揃って振り向くと三人の護衛を引き連れたクリスタベル殿下がいた。
少々剥れているのはグレン様と別れたから? 若干、睨まれているのは気のせいと思いたい。
挨拶を述べるとカレンデュラ様の夕日と蜂蜜色を混ぜた不思議な瞳が愉しげに煌めいた。
「ご機嫌よう王女殿下。供を連れて賑やかですわね」
「ご機嫌ようベルローズ夫人。カリアス様と……あら、少し前にグレンを置いて行ったロリーナ様ではありませんか」
うわ……嫌な言い方……事実ですけども。
「ふふ。聞きましたわ、婚約を解消なさるのですってね? おめでとう。早くグレンを解放してあげて」
「……まるで私がずっとグレン様を縛り付けていたみたいな言い方ですね」
「本当の事じゃない。ロリーナ様みたいな性悪がグレンの側に居続けたのが抑々の間違いよ。グレンは元々私の婚約者になる筈だったのよ? それをシュタイン公爵様がカラー侯爵家の魔法技術欲しさで」
この方はグレン様と私の婚約の事情までは知らないのか。……一目惚れされていた、なんて知っていたら私が想像するよりも悲惨な嫌がらせをされそうだから知らなくて正解で、これからも知らないままでいてほしい。
「政略結婚は何処の家でも、王家でもあるではありませんか。グレン様と私の婚約が両家にとって利益となるなら、それに従うまでです」
「グレンが尚可哀想だわ。お父様やお母様は私の為を思って何度もシュタイン公爵夫妻を説得して下さったのよ? グレンにも、ロリーナ様は踊り子がカラー侯爵を誘惑して生まれた卑しい娘で絶対に好きにならないでってお願いしていたの。ふふ、グレンは貴女が大嫌いだから私の願い通りになって良かったわ」
「っ……」
他人の心なんて殿下にとっては無価値に等しく、自分だけの都合を優先する。可愛らしく微笑んで護衛達は頬を赤らめるが私からすれば最低で嫌悪が凄まじい。
「お友達にもグレンに言ってもらったの。ロリーナ様がどれだけ酷い方か。グレンってば、最初は信じてくれなかったけど徐々に信用してくれてね。後はグレンの方からロリーナ様に婚約破棄をしてくれるのを待って、私に婚約を申し込んでくれるのを待っていたの。なのにグレンってば、頑なにロリーナ様とは絶対に婚約破棄も解消もしないなんて意地を張っちゃって」
幼少期から交流のある殿下や周囲に私の悪口を聞かされ続けたグレン様が私を嫌うのは仕方なかった。でも、それが真実なのか偽りなのかの確認くらいは出来た筈では? ときっとグレン様がいたら口にしていた。
側にいるカリアス様を一瞥してサラリと視線を元に戻した。見てはいけない。カリアス様があまりに無の相貌を見せていらっしゃる。
カレンデュラ様は…………一瞥してすぐに逸らした。深い笑みが恐ろしい。
カレンデュラ様は紡いだ。
「働き蜂な妖精さん達、レイチェルを馬鹿にした人間の小娘を少し揶揄ってやりなさい」
蜂!?
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