どうしてこうなった

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二人空を飛んで行こう

 

 魔法使いに見つからない少量の魔力で使用する魔法を纏い、姿を隠してジルの実家に辿り着いた。ノーバート公爵家から追手はまだ来ていない。クレオンが眠らされ、レインリリーの姿がないとバレるのは時間の問題。商店の裏口からジルの実家に入った。鍵は裏口で育てている鉢植えの下に隠しているらしく、不用心ではと口にすると「案外、見つからないですよ」と悪戯っ子な笑みで言われるとレインリリーは苦笑した。
 突然帰って来た息子が黄金の美を纏った女性を連れて戻ったのを目玉が飛び出るのはと心配するくらいに瞠目する両親に謝罪しつつ、嘘を交えて簡単に事情を説明した。

 駆け落ちではないが似たようなものになり、クリスティ伯爵家の庭師を解雇されたジルを自分の従者として連れて行きたいと申し出た。

「ジルの給金はきちんと払います。彼の衣食住も安心してください。ただ、魔女である私の従者になるので実家へ帰せるのは年に一度となってしまいます。ご両親には大変申し訳ありませんが……どうかジーー」
「ジル……お前の仕えていたお嬢様は魔女だったのか?」とジルの父。

「俺も知ったのはつい最近だよ。でも、魔女だろうとお嬢様であるのは変わらない。ノーバート公爵に嫁いだままだとお嬢様は幸せにならないし、俺はお嬢様が心配だから一緒に行くと決めたんだ。父さんや母さん達には絶対迷惑を掛けないから」

 両親は驚きながらもジルが決めたのなら止める気はない、ただ、手紙くらいは定期的に送ってくれという事で納得してもらった。ジルの母が着なくなった服を借り、髪を隠す為の布を有り頭に被せた。

「ありがとうございます」
「ジル、お嬢様にしっかりお仕えするのよ。こんな美人なお嬢様に仕えるなんて滅多にないんだから!」
「分かってるって」

 魔女と言っても魔法使いよりも凄い魔法使いの認識だけで警戒も怖がられることもなく、ジルを頼まれ必ずと頷いた。

 ジルの母が手早く作ったサンドイッチを頂くと二人はまた裏口から外へ出た。空を見上げ魔法使いがいないのを確認し、商店に加護の魔法を掛けた。もしもノーバート家や魔法使いがジルの実家である此処を尋ねても危害を加えられないように。魔法使いなら、掛けられた加護の意に反する行動を取れば攻撃されると即座に見抜いてくれる。のを期待する。

「どうやって移動しますか?」
「魔法使いがいないなら、一気に飛んで行くわ」

 差し出した手をジルは握った。気恥ずかしい思いはお互いあれど、クレオンや魔法使いから逃げるのはレインリリーが一気に空を飛んで行くしかない。
 浮遊しかけると「あ、お嬢様。クリスティ伯爵家はどうしますか?」と聞かれ、飛ぶのを止めた。

「どうするって?」
「散々、お嬢様を馬鹿にしたんですから、仕返しをしたって罰は当たりません!」
「うーん、興味ないのよあの人達に。お母様の形見や遺骨はちゃんと別の場所に移動させてあるし、大事な物は何一つ残してないの」
「でも」
「ジルは気にするみたいね。そうね……私が何もしなくても勝手に落ちていくわよ」

 父の利き腕じゃない方の腕を骨折させた魔法は追加要素があり、二度と骨はくっ付かない。ずっと片腕のまま不便な生活を強いられる。ストレスの溜まった父は何れエヴァやニコルにも当たり散らす。今までストレスの発散場所は母やレインリリーだった、それらがいなくなれば愛する妻や娘へ行くのも時間の問題となる。

「クレオン様がやってくれそうかも」
「公爵様が?」
「私がいなくなったと知ったクレオン様は必ずクリスティ伯爵家に突撃するわ。で、お父様達の私への仕打ちを知って勝手に罰してくれそう」
「そうでしょうか……」
「ええ。クレオン様が私にと義務で送っていた支度金は全部ニコルや後妻の遊びで無くなって、贈り物も全部あの二人が使っているか売り払っているかのどちらかよ」
「今まで公爵様は気付いていなかったのでしょうか? お嬢様に贈った品をお嬢様が使用していない事に」
「レインリリーを嫌っていたクレオン様が気付く筈ないでしょう」

 きっと、事実を知ったら横領で二人を訴える。

 レインリリーが何もしなくてもクリスティ伯爵家は勝手に落ちていき、クレオンは探していた初恋の魔女に二度と会えなくなり一人悲しみを背負って生きていく。彼が他に好きな女性が出来るなら、今度こそはどんな噂があろうとそれが真実か確かめ大切にしてほしい。

 ジルの手を握り空に飛ぶ。

 振り返らず、真っ直ぐ目的地へ急ぐレインリリーを——メデイアを——見つめ続けるジルであった。
  

  
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