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国民に重税を課し贅沢三昧の王族に嫁ぐなど願い下げですわ。私は聖女を辞めてこの国を出て行きます。

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赤子の頃からの記憶がある。私は人の頭の上に光が見えた。その光の強さや太さ長さ勢いは、人によってさまざまに違う。

人の周りにいる沢山の人やら天使様も見えた。いつも3人の天使様と遊んでいた。握手をしようとして手がすり抜けるのを見て、実体は無いのだと悟った。

両親は私の言葉を信じる事は無く、私は嘘つき呼ばわりされた。思い出すのも辛く悲しい幼少期を送った。

「 俺は目に見えるものしか信じないぞ!」
父親は目をひん剥き、大声で唾を飛ばして真っ赤になって私を殴った。

蹴り飛ばして胸を踏み付けた。息が出来なかった。両親には私に見えているものが何も見えていないのだと、あきらめた。

私は両親からの愛を知らない。

それでも幼稚園へ行き出すと私の世界は広がった。私の能力は認められ、聖女になる為の学校へ入学した。

毎日一生懸命努力して聖女となり国を守る。この国は豊かなはずだ。なのに貧富の差が激しく餓死者や自殺者が出る始末。

なぜなら王族が国民に重税を課しているから。
王子の婚約者となった私には、いろんなものが見えて来た。

こんな自分の事しか考えられない人達の家族になるなんて嫌だなぁと思った。

そしたら、思ったとうりになった。

「 お前とは婚約破棄だ。聖女をかたる悪人めが。この国を出て行け!」

婚約者のパトリック・バロンは、薄いピンクの花が咲く春の訪れを祝うパーティの席で私に言った。

大勢の前で私に指差してポーズまで決めて叫んだ。

どうやら私の、聖女であり王子様の婚約者という立場を狙う学院のチューリップが、王子に嘘を吹き込んだらしい。

チューリップは勝ち誇った目をして私を睨みつけている。

どんな授業でも魔法でも私に勝った事など無いのに、
「 最後に勝ったのは私よ。」
と、彼女が呟いたのを私は聞き逃さなかった。

私は了承した。口角が上がって笑顔になりそうになるのを必死で堪えて、苦虫を噛み潰したような顔をした。

( 結婚嫌だなぁと思ってたら、婚約破棄されちゃった。ヒャッホー!)
心の中はこんな感じで、私の周りではご先祖様達や守護霊様達や天使様達が踊り出している。
でも、周りの人達には何も見えていない。

「 わかりました。出て行きます。」
私は実家にもこの国にも何の未練もない。ただ国民の皆様にはお知らせした。
王族の悪行と、もうすぐこの国が滅亡する事を。

私の後ろには国民の列が出来た。私は皆を結界で守り祖国を後にした。

守る者のいないくなった国に魔獣が侵入した。山は噴火し、地面は燃えて、水はニガヨモギの味になった。
祖国は地獄のような光景となった。
私は復讐などしていない。全ては神様の言う通り。

周りの国は難民を受け入れてくれた。私達はここで幸せになると心に誓い、助け合って幸せに暮らした。
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