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聖女の私は獣人の血を隠したと断罪され婚約破棄されましたので祖国を出ます。
しおりを挟む私はクリスティ・サーシエルと申します。
私には幼い頃から他の人には見えないものが、いろいろと見えていました。
その能力を高く評価して下さったクローリー王国に招かれました。
そしてクローリー王国の魔法学院で聖女としての修行に励みました。
家族や祖国の人達と離れて、たった一人で誰も知らない人の中で暮らすのは不安でした。
それでも聖女になる為の修行や勉強の楽しさが私を励ましてくれました。
何十人もいる魔法学院生の中から、いったい誰が聖女になるのか?
これが皆んなの希望でした。
その時に一番魔力の優れた者が聖女になれるのです。
一度でも判断を誤ったら、それはこの国の滅亡を意味します。
私達は必死で外から魔獣が侵入しないように結界を張り巡らして聖女様のお手伝いをしました。
そして聖女様に認められて次期聖女に選ばれたのは私だった。
そんな私に少しずつ身体の変化が起こりました。
幼い頃は全く気がつかなかったけれども、成長するにつれて耳が尖って来たような気がします。
心配になり実家の両親に尋ねてみると、母親の祖父のおじいちゃんあたりが獣人だったかもしれないらしいと言われているそうです。
見た事も聞いた事もありませんし、私は何にも知りませんでした。
世代が進み人間との混血が進んで、ほとんど人間の外見になっているから誰も気にしてなかったらしいそうです。
しかし、その事で私を陥れて排除しようとたくらんだのが同じ魔法学院のマリアでした。
クローリー王国主催の春のパーティの席で、婚約者のサミエル・クローリーに婚約破棄を突き付けられました。
「 お前は、獣人の血を隠して王家に入り込もうとした罪人だ!婚約は破棄だ!」
青葉をそよぐ風が薫る美しい空が、さきほどまで晴れていたのに暗雲が垂れ込めだした。
稲光が走って後で春雷がとどろいた。
ピカピカ、ドーンという音の後に雨が降り出した。
それは、まるで私の心模様を映す鏡のようでした。
「 獣人の血の事は、今まで知りませんでした。
隠していたわけではありません。」
「 言い訳をするな!
お前が旧友のマリアをイジメていた事もわかってるんだぞー!」
婚約者のサミエル殿下は私の言葉など全く聞く耳を持たずに大勢の人達の前で私を罵倒しました。
サミエル殿下は顔を真っ赤にして、目を吊り上げて、口からツバを飛ばして叫び狂っています。
その姿を見て私はサミエル殿下と結婚するなど、あり得ないと思いました。
と、言うよりも、いつも私の周りにいるご先祖様達や守護霊様達。
いつも私を助けて下さっている天使様達や精霊達みんなが全力で私に教えてくださいました。
「 逃げて、ここから逃げて。
ここにあなたの幸せはない。
早く逃げて。」
私の頭の中に直接、語りかけてきます。
( それに、もしかして
人とは違う私の魔力は、この獣人の血のおかげかもしれないのに。)
これまで聖女として身を粉にして働いて来ました。
自分の自由な時間など無く、命懸けで一生懸命に働いて来た私にむかって、なんて酷い事を言うんだろう。
「 わかりました。私は出て行きます。」
サミエル殿下の後ろでマリアがニヤリと笑ったのを私は見逃してはいません。
でも、それに気がついたのは私だけみたいですけどね。
私は城を出ました。
この国は滅亡するでしょう。
私は精霊達に頼んで国民達の目の前に、全てを知らせてもらいました。
私の後ろには国民達の列が出来ました。
クローリー王国には魔獣が侵入しました。
山は噴火し、水はニガヨモギの味になって、土地は燃えました。
この世の地獄のような光景が広がっています。
私は国民達の列を結界で守り、それぞれが行きたいところまで送り届けました。
私が復讐したなんて言いふらしてる人がいるみたいですけど、私は復讐なんてしていません。
全ては神さまの言う通りですから。
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