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僕は、この国の皇太子として生まれた。父である国王にもしもの事があったら僕が国王になる。そのため子供の頃からずっと家庭教師が付きっきりで自由時間なんてほとんどない。信じてくれないかもしれないけど、僕の自由時間は2日で1時間だけだった。子供の頃からずっと厳しい躾けと教育を受け続けて17歳になった。

婚約者もいた。マリア・スペードだった。彼女は聖女で親が勝手に決めた僕の婚約者だった。

何もかもがんじがらめの中にいるみたいだった。そんな時に僕は彼女に出会えた。フランシス.ルイーズという名の女性だった。

彼女は僕の婚約者になれるような由緒正しい貴族の令嬢ではなく、貧しい農民の生まれだった。「 私は聖女の力を持っているの。でもいつもマリアに手柄を横取りされているのよ。私は貧い生まれだから我慢するしかないの。」

愛しい人にそう言われて僕は怒り狂った。そんな時に僕にチャンスが来た。国王が亡くなって僕が国王になったのだ。僕はマリアを断罪し国外へと追放してフランシスを聖女にして妻にした。

マリアは抗議した。「 私がいなくなれば、この国には想像も出来ない災いがもたらされます。この国は私の力、私の魔力で守られているんですよ。今まで休みなく、国の為皆の為に働いて来たのに!!」

だが僕は彼女を無視して身分を剥奪し、国外へと追いやった。「 やった!やってやったぞ!」僕は自由を噛みしめて喜びに震えた。ところがすぐに災害が立て続けに起こった。その上火災があり、作物は全滅し水まで枯れてしまった。フランシスが聖女の祈りを捧げても事態は少しも良くならなかった。

「 フランシス頑張ってくれ。」フランシスは自分には聖女の力など無い事を白状した。

「どうしよう。どうしたらいいのかわからないよー!国王とは名ばかりで聖女がいなければ国を平和に治める事など出来無いなんて!」僕はマリアを探して謝ったが許してもらう事は出来なかった。

この国は衰退して国民達は皆別の国に逃げてしまった。全部僕の責任だ。

ああ、どうしたらいいんだろう。無駄だと思いながら僕はマリアに手紙を送り続けている。もう全て遅いのだろうけど。

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