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「 僕は騙されて婚約破棄しちゃったんだよ、うわーん。」なんて、言い訳しても今さら遅いんですよね。
しおりを挟む「 サファイア、お前との婚約は破棄させてもらう。だからお前は聖女もクビだ。」
婚約者のミハイル王子が私を指差して怒鳴り散らした。
春ウララかなパーティの席で、会場にいる人々はザワザワした。
私は驚きはしない。
王子の側で彼をうっとりした目で見つめているベゴニアのせいだ。
ベゴニアが王子に、自分が本当の聖女であると、いつも私に手柄を取り上げられていると、嘘をついたのだ。
ベゴニアはまるで息を吐くように嘘をついた。
その場面を私はまざまざと見せてもらった。
全て精霊達のおかげだ。
平気で嘘を付く人達を私は知っている。
私の両親がそうだ。
両親は私を怒鳴り、殴って蹴って、いつも無視した。
生きているのが不思議なくらい、ご飯も少ししかもらえなかった。
それでも人々は私を見て、
「 ご両親がしっかりしてらっしやるから、きちんとしたお嬢様がお育ちになって。」
と、まず両親を誉めた。
確かに両親の事を人に話した事は無い。
よその家の事はわからないし、どこもこんな感じかなぁと思っていたから。
優しいお母さんやお父さんは絵本の中だけに存在する、人々の夢だと本気で思っていた。
あ、又変な事、思い出しちゃった。
思い出したく無いのに。忘れたいのに、私は子供の頃のことを、今でもはっきりと憶えている。
こんな嘘つきの嘘を信じて、聖女の私を軽んじるなんて。
ベゴニアの目を見て、醸し出す雰囲気を見て、妬みや、そねみや嫌み、いろんなみに支配されてるのが、わからないのかなぁ。
嘘に嘘を重ねて、その場限りの嘘で取り繕っているのに、つじつまが合わない話をおかしいって思わないのかしら。
もういいわ。
他の女が良いなら、仕方ない。
幸せになれる気がしない。
これっぽっちもしない。
「 わかりました。出て行きます。」
「 ほら、わかりましたって言ったわ。認めましたわ。私が聖女よ。やったわ。やったー!」
ベゴニアと王子は抱き合って、はしゃいでる。
私は精霊達に頼んで、皆さんの目の前に真実を映してもらった。
聖女が無実の罪で追放される事、この国が近く滅びる事も知らせた。
私は城を出た。
私の後ろには国民の列が続いた。
国民の皆さんを守る為に結界を張り巡らせ、行きたい所まで送り届けた。
沢山の国が人々を受け入れてくれて、私も安心した。
祖国には魔獣が侵入して、山は燃えて、水はニガヨモギの味になった。
「 僕は騙されただけなんだよー。許してよう。僕は悪く無いのにー。」
元婚約者がそんな事を言っている映像を見ると、残念な人だなぁって思った。
良かった。
私は自分で幸せになるもん。
あ、復讐なんてしてませんよ。
神様の言う通りですから。
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