姫と妖の園

神無月 花

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妖狐の郷

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  新学期に入って初めての土曜日。今日は特に予定も無い。つまり、今日と明日は、柚葉様と一緒に過ごせる。そう思うとウキウキする。
僕はふと鏡を見た。....やばい。すごいにやけてる。こんな顔、柚葉様には見せられないな。 



そんな時、携帯電話が鳴った。


樟葉「はい。もしもし。」


電話は父上からだった。 


《樟葉、お前、今日こちらに来られるか?》


樟葉「急にどうしたんですか。」


《“姫”に会ってみたいのだ。》 


樟葉「…柚葉様を妖狐のただ中に連れていく事は出来ません。」


《お前が守ればよいだろう。それに、私は“姫”を襲うような事はせん。》


樟葉「…わかりました。」 




   樟葉「柚葉様。」


樟葉は、隣の部屋....柚葉の部屋のドアをノックすると、柚葉に声を掛けた。 


  柚葉「なに?」


    樟葉「今日、何か予定はございますか?」


柚葉「予定はないわよ。それでなに?」


  樟葉「柚葉様に妖狐の里を御案内したくて…駄目ですか?」


柚葉「………いくわ。」


  樟葉「わかりました。」 



こうして、この日は、僕は久々の里帰り、柚葉様にとっては初の妖界に行く日となった。




   樟葉「そうだ、柚葉様。妖狐の郷に行く前に、こちらの服に着替えて下さい。」



   そう言って、樟葉が柚葉に渡したのは、巫女が穿くような緋い袴と、赤地に白い花が描かれた羽織、白衣(びゃくえ)、という三点の和服だった。


柚葉「樟葉。わたし、着物なんて着れないわよ。着たことないもの。」


  樟葉「大丈夫です。柚葉様なら必ず着れます。では、僕は一度失礼しますね。」


そう言うと、樟葉は部屋を出て行ってしまった。
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