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第137話 隣国滅亡
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「……以上が調査報告になります」
アルテア教会の神殿内の応接室。そこでクリフォトの種の調査報告をギルドマスターとエストガレス王国の教会トップである大司教様他お偉い様方に行った。
実際の依頼主はウォレンスのアルテア教会なんだけど、ギルドマスターの判断で王国のアルテア教会の大司教クラスにも報告するべきとなったのだ。
行方不明になったCランクパーティ『星月の瞬き』についてはわからなかったけど、恐らく生きてなどいないだろう。
「この調査報告に間違いはないのかね?」
「ありません。ウォレンスの街のクリフォトの種は既に撤退しています。ですので再調査をするのは難しいでしょう」
その内容を信じたくないのか信じられないのか、教会のお偉い様方が険しい顔をして聞いてくる。そしてサルヴァンの回答にお互いが顔を見合わせ頭を抱える者も多かった。
「こんな馬鹿げた話を信じろと言うのかね君たちは。公爵級悪魔と遭遇して何故生きていられるのだ」
「見逃されただけです。報告書にあるように教祖のアマラという男が隣の国で何か企んでいるそうですから忙しいのでしょう」
サルヴァンの返答にお偉い様方は渋い顔をしている。サルヴァンもちょっと眉がヒクヒクしているあたり、うんざりしているのかもしれない。
「何かとは何かね?」
「確実なことはわかりません。想像の域を出ない話ならできますが、それでよろしければ話させてもらいます」
「かまわん、話したまえ」
「わかりました。ルウ、頼む」
そしてサルヴァンが僕に話を振る。このやり取りは想像の範疇だ。だからこの話を僕がすることになるのは決定事項なんだよね。
「では僕の方から説明させてもらいます。アマラの隣国での狙いはクーデターによる王位の簒奪だと思います」
「ぶはははははっ! そんなことができるわけないだろう。そのアマラは元々ストリートチルドレンだったのだろ? そんな奴に王になる資質も方法も存在せんわ」
僕の話に教会のお偉い様方は爆笑し、涙まで流している者もいた。まぁ、こんな話信じろという方が無理だろう。平常心平常心。
「ええ、普通ならそうでしょう。ですがクリフォトの木の神話はご存知のはずです。そしてクリフォトの木に選ばれた人間は貴族などではなく平民だったはずですよね」
「確かにエスペラントの建国神話ではそのような話になっておるな。ではそのアマラという男は神話の再現を狙っていると?」
「恐らく。隣国というのがどの国を指すのかまではわかりませんけど、公爵級の悪魔がついている以上そう遠くない未来に大きな何かが起こると考えていいと思います」
アマラが何かを企んでいるのは間違いないのだ。そして信徒を集める最も手っ取り早い方法として王になり、クリフォトの種を国教とする方法を思いついてもおかしくはない。
「克肖者ルウ、公爵級悪魔の存在をアルテア様に誓って嘘はないと言えるのですね?」
「ええ、嘘偽りはございません」
ただ一人僕の話に笑わなかった大司教様が僕を見据え確認する。当然ボ僕もその視線をまっすぐ受け止めて答えた。
「そうですか、ならば備えは必要でしょう」
「大司教様! あのような荒唐無稽な話を信じるというのですか?」
大司教様はふいっ、と視線を下に逸らす。そして信用してくれたようだ。
「龍炎光牙は侯爵級悪魔ドレカヴァクを打ち滅ぼした英雄達です。二人もの聖人を排出していますし、嘘を言って自らを貶める真似はしないでしょう」
「それは確かにそうですが……」
うん、嘘をつく理由全くないよね。そんな嘘を広めたら罪に問われてもおかしくないんだからさ。
「報告御苦労様でした。ウォレンスの教会からもそのうち報告は来るでしょうが、直接話が聞けて良かったと思います。国王陛下には私の方から奏上し、情報収集をお願いしようと思います」
こうして報告は終わり、僕らはまたいつもの日常へと戻ることになった。まずは休息が必要ということで一週間はアプールで過ごすことになるかな。その後はダンジョン制覇を目指すことになるだろう。
それから一年と数ヶ月程経ったある日、僕たちはダンジョンから戻ってくるなり王太子となったエリオット殿下に呼び出しを受けることになった。
そして王太子殿下の執務室で僕はライミスさんと王太子殿下の口からとんでもない話を聞かされる。
「龍炎光牙の諸君、心して聞いてほしい。隣国のフォルトゥナで政変が起こり、フォルトゥナは滅亡した」
隣国が滅んだ話なら政治と無関係な僕たちを呼び出すわけがない。となると考えられることは1つか。
「新しく興った国の名はニーグリンド。そして新しい王の名はアマラ。彼は自らを人魔王アマラと名乗り、クリフォト教を国教と定めアルテア教会の根絶を宣言したんだ」
「……世界中にケンカ売ったんですね」
この大陸の殆どはアルテア教を国教と定めている。そんな中でアルテア教の根絶を宣言するなんてまず神聖エスペラント教国が黙っちゃいないだろう。
「奇しくもルウ君が危惧した通りになったわけだ。近い内にエスペラントを盟主として戦争が起こるだろうね。 そうなったら君たちの力を借りたいと思っている。協力してくれるね?」
「もちろんです。猶予はどのくらいあると思いますか?」
「うーん、そうだね。クリフォトの方は国を興したばかりだからね。常識で考えるならそんなすぐに戦争の準備なんてできるわけがない。エスペラントの方も最初は交渉から入るはずだ。向こうに公爵級悪魔が付いていることは知っているはずだからね。情報収集も無しに戦争は起こさないと思う。同盟の締結などもあるだろうし年内は大丈夫なんじゃないかな?」
年内が大丈夫ならその間にダンジョン制覇を成し遂げたいところだ。残す階層は後5階だからいけるだろう。
「我々も戦争を想定し、軍備の増強を図る予定だ。ダンジョン制覇を早いうちに成し遂げてほしい」
「はい殿下。必ずやダンジョンを制覇してご覧に入れましょう」
アマラのやつ、一体何を求めてクリフォトの木をこの世界に根付かせるつもりだ?
どんなつもりにせよ、その野望は絶対阻止しないとね。
アルテア教会の神殿内の応接室。そこでクリフォトの種の調査報告をギルドマスターとエストガレス王国の教会トップである大司教様他お偉い様方に行った。
実際の依頼主はウォレンスのアルテア教会なんだけど、ギルドマスターの判断で王国のアルテア教会の大司教クラスにも報告するべきとなったのだ。
行方不明になったCランクパーティ『星月の瞬き』についてはわからなかったけど、恐らく生きてなどいないだろう。
「この調査報告に間違いはないのかね?」
「ありません。ウォレンスの街のクリフォトの種は既に撤退しています。ですので再調査をするのは難しいでしょう」
その内容を信じたくないのか信じられないのか、教会のお偉い様方が険しい顔をして聞いてくる。そしてサルヴァンの回答にお互いが顔を見合わせ頭を抱える者も多かった。
「こんな馬鹿げた話を信じろと言うのかね君たちは。公爵級悪魔と遭遇して何故生きていられるのだ」
「見逃されただけです。報告書にあるように教祖のアマラという男が隣の国で何か企んでいるそうですから忙しいのでしょう」
サルヴァンの返答にお偉い様方は渋い顔をしている。サルヴァンもちょっと眉がヒクヒクしているあたり、うんざりしているのかもしれない。
「何かとは何かね?」
「確実なことはわかりません。想像の域を出ない話ならできますが、それでよろしければ話させてもらいます」
「かまわん、話したまえ」
「わかりました。ルウ、頼む」
そしてサルヴァンが僕に話を振る。このやり取りは想像の範疇だ。だからこの話を僕がすることになるのは決定事項なんだよね。
「では僕の方から説明させてもらいます。アマラの隣国での狙いはクーデターによる王位の簒奪だと思います」
「ぶはははははっ! そんなことができるわけないだろう。そのアマラは元々ストリートチルドレンだったのだろ? そんな奴に王になる資質も方法も存在せんわ」
僕の話に教会のお偉い様方は爆笑し、涙まで流している者もいた。まぁ、こんな話信じろという方が無理だろう。平常心平常心。
「ええ、普通ならそうでしょう。ですがクリフォトの木の神話はご存知のはずです。そしてクリフォトの木に選ばれた人間は貴族などではなく平民だったはずですよね」
「確かにエスペラントの建国神話ではそのような話になっておるな。ではそのアマラという男は神話の再現を狙っていると?」
「恐らく。隣国というのがどの国を指すのかまではわかりませんけど、公爵級の悪魔がついている以上そう遠くない未来に大きな何かが起こると考えていいと思います」
アマラが何かを企んでいるのは間違いないのだ。そして信徒を集める最も手っ取り早い方法として王になり、クリフォトの種を国教とする方法を思いついてもおかしくはない。
「克肖者ルウ、公爵級悪魔の存在をアルテア様に誓って嘘はないと言えるのですね?」
「ええ、嘘偽りはございません」
ただ一人僕の話に笑わなかった大司教様が僕を見据え確認する。当然ボ僕もその視線をまっすぐ受け止めて答えた。
「そうですか、ならば備えは必要でしょう」
「大司教様! あのような荒唐無稽な話を信じるというのですか?」
大司教様はふいっ、と視線を下に逸らす。そして信用してくれたようだ。
「龍炎光牙は侯爵級悪魔ドレカヴァクを打ち滅ぼした英雄達です。二人もの聖人を排出していますし、嘘を言って自らを貶める真似はしないでしょう」
「それは確かにそうですが……」
うん、嘘をつく理由全くないよね。そんな嘘を広めたら罪に問われてもおかしくないんだからさ。
「報告御苦労様でした。ウォレンスの教会からもそのうち報告は来るでしょうが、直接話が聞けて良かったと思います。国王陛下には私の方から奏上し、情報収集をお願いしようと思います」
こうして報告は終わり、僕らはまたいつもの日常へと戻ることになった。まずは休息が必要ということで一週間はアプールで過ごすことになるかな。その後はダンジョン制覇を目指すことになるだろう。
それから一年と数ヶ月程経ったある日、僕たちはダンジョンから戻ってくるなり王太子となったエリオット殿下に呼び出しを受けることになった。
そして王太子殿下の執務室で僕はライミスさんと王太子殿下の口からとんでもない話を聞かされる。
「龍炎光牙の諸君、心して聞いてほしい。隣国のフォルトゥナで政変が起こり、フォルトゥナは滅亡した」
隣国が滅んだ話なら政治と無関係な僕たちを呼び出すわけがない。となると考えられることは1つか。
「新しく興った国の名はニーグリンド。そして新しい王の名はアマラ。彼は自らを人魔王アマラと名乗り、クリフォト教を国教と定めアルテア教会の根絶を宣言したんだ」
「……世界中にケンカ売ったんですね」
この大陸の殆どはアルテア教を国教と定めている。そんな中でアルテア教の根絶を宣言するなんてまず神聖エスペラント教国が黙っちゃいないだろう。
「奇しくもルウ君が危惧した通りになったわけだ。近い内にエスペラントを盟主として戦争が起こるだろうね。 そうなったら君たちの力を借りたいと思っている。協力してくれるね?」
「もちろんです。猶予はどのくらいあると思いますか?」
「うーん、そうだね。クリフォトの方は国を興したばかりだからね。常識で考えるならそんなすぐに戦争の準備なんてできるわけがない。エスペラントの方も最初は交渉から入るはずだ。向こうに公爵級悪魔が付いていることは知っているはずだからね。情報収集も無しに戦争は起こさないと思う。同盟の締結などもあるだろうし年内は大丈夫なんじゃないかな?」
年内が大丈夫ならその間にダンジョン制覇を成し遂げたいところだ。残す階層は後5階だからいけるだろう。
「我々も戦争を想定し、軍備の増強を図る予定だ。ダンジョン制覇を早いうちに成し遂げてほしい」
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