【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ

文字の大きさ
169 / 188

SS ニーグリの巫女様選定大会 後編

しおりを挟む
「そ、そんな……!」

 トイレから戻ってきたマディンは血にまみれて汚れたゴスロリを目にして膝から崩れ落ちる。

「だ、誰がこんな酷いことを……!」

 四つん這いのまま床板を右手で強く叩く。鈍い音が虚しく響いた。

 ゴスロリには血が滴っており、床下に血溜まりを作っている。今から洗ったところで血はなかなか落ちないし乾くはずもない。

 大会委員に相談してみようか、とマディンは考えた。しかし漆黒のゴスロリはニーグリ公認の巫女の正装である。それを汚したとなるとどんな咎を受けることかと考えるだけで恐ろしかった。

 アマラの命令で悪魔は人を害しない。ただしそれは秩序を守る者だけだ。ニーグリを冒涜したと思われれば悪魔はきっと自分を許さない。そう考えると身震いがした。

「でもここで逃げたら余計に疑われるかもしれない。勇気を出すのよマディン。私は絶対巫女になるんだから!」

 しかし逃げようにも逃げられるわけがないのも理解していた。逃げたらノーチャンスなのだからなんとかするしかなかった。そして必死に考える。

 血塗れの漆黒のゴスロリ衣装見た。今更洗って乾かすなど不可能に近い。悪魔の協力でも得られればなんとかなるかもしれないがそんなツテもない。ならばこのまま使うしか無かった。

「血塗れのゴスロリ……。だったら方法なんて一つしかないじゃない」

 マディンの出番は幸いかなり後だ。その僅かな時間にマディンは賭けることにした。立ち上がり、急いで控え室を出る。そしてとある場所を目指して走り出した。





「さー、大会も盛り上がってまいりました!   次の候補はスルント君です」

 タキシードのような格式張った衣装を身に着け、司会の悪魔は次の候補者を呼ぶ。ステージの奥にはカーテンがあり、そこから名前を呼ばれたスルントが姿を見せた。

 長い黒髪は女性から買い取った黒髪で作り上げたウィッグである。それは陽の光に照らされ、漆黒のゴスロリと相まって怪しい美しさを見せていた。

 その怪しい美しさの最大の功労者は間違いなくスルントの人を見下したような笑顔である。その尊大かつ居丈高な態度がその表情に現れていた。

「おおっと! これはなかなかの美しさですね。そのゴミを見るような人を刺す視線が素敵ですよー! あなたにでしたら踏まれたいと思ってしまいますね」

 司会の悪魔がスルントの表情を褒める。それを聞きスルントは思わず高笑いをあげた。

「おーっほっほっほっ! この私が巫女に選ばれたなら愚民どもには私に踏まれる栄誉を授けて差し上げますわ!」

 身体にはしっかりとシナを作り、女性らしいS字曲線を意識する。そしてステージ下の観衆を見下ろすように宣言した。

「うおおおおーっ! お、俺は踏まれたいぞーーーっ!!」

 巫女が男の娘だろうが皆ノリノリであった。なぜならこのニーグリンドの民は皆クリフォト教に改宗しており、その教義の中にはしっかりと示されているのだ。

 男の娘は至高の存在である、と。

 ニー様が男の娘なのは至高の存在だからであり、それは一つの美の頂点なのだと説いているのだ。それにより女装は市民権を得、一部の男性の間では男の嗜みにまで昇華されていた。

「キャーーーッ! 素敵っ、踏んでー!」

 そして女性陣からも黄色い声があがる。当然女性にも忌避感などなく、むしろ可愛い男の娘は女性にモテるほどであった。

「素晴らしいわ! これはなかなかニー様してるじゃない」
「おおっとぉ! ここで審査員長リティス様の二ー様してるが出ましたぁっ!」

 二ー様してる。

 この言葉こそクリフォト教における男の娘への最高クラスの褒め言葉である。それをニーグリンドの王アマラの側近であるリティスから聞けたのだ。観衆がこの言葉の重みをわからないわけがなかった。

 この言葉を聞きスルントは勝利を確信する。ライバルであるマディンの正装は血まみれのはず。そんな衣装では勝てるわけがないと思っていたからだ。

 観衆の声援に応えながら手を振り、スルントはステージの奥へと消えていく。そしてその後も審査は続いたが、それ以上の評価を得た者は誰もいなかった。




「さぁ、次は前評判の高かった男の娘、マディン君の登場です。どのような男の娘を見せてくれるのでしょうか?」

 司会がマディンの名を呼ぶとステージの奥から血まみれのゴスロリを着たマディンが現れた。その姿に会場の観衆達からどよめきがあがる。

 観衆が驚いたのは血まみれのゴスロリだけではない。右手に握られたオークの生首にも視線が集まっていた。

「おおっと、マディン君のゴスロリが血まみれだ! こ、これは?」

 マディンは妖艶な笑みをたたえ、右手に持ったオークの生首を観衆に向ける。そしておもむろに足元に落とすと、その生首を足げにした。

「二ー様の美を理解できぬ豚に生きる価値なんてないの。ふん!」

 そして力いっぱい足に力を入れ、その頭を踏み潰した。ぐしゃりと音を立て頭がひしゃげると血が流れて血溜まりができあがる。

 もちろんこれには仕掛けがあり、魔物の解体場で手に入れた際に骨をある程度砕いてもらったのだ。そのためマディンの力でも踏み潰せたのである。

「なるほど、血まみれなのはオークを罰した返り血を浴びたからか!」
「すげぇ! ゾクゾクするぜ」

 この演出がウケ、歓声があがる。

「いい! いいですよぉっ、二ー様へのリスペクトもそうですが美しさの中に見せるこの荒々しさ。惚れてしまいそうです!」

 司会の悪魔が褒めちぎると益々歓声があがった。司会は審査員長のリティスに視線を送りコメントを求める。

「ああっ、ゾクゾクするわぁ。その妖艶な笑み、血まみれのゴスロリと相まってなかなか、いいえ。凄く二ー様しているわ!」
「おおっとぉ! なかなか二ー様を超える凄く二ー様が出ましたぁっ! こ、これは決まったかぁっ!?」

 リティスの最高の賛辞に観衆が湧く。その勢いは留まることを知らず、マディンの名前と二ー様へのラブコールが止まらなかった。

 そして演出の締めとばかりにマディンは手についていたオークの血を舌先で舐め取った後、唇の周りについた血も舐め取って見せる。そのときの恍惚に充ちた表情が観衆達のハートを撃ち抜いた。

「さ、最高でしゅう~っっっ!」
「うおおおお、めっちゃ二ー様してるぅ! そこに痺れる憧れるぅっ!」

 中には萌え殺され、気絶する者まで現れ、マディンの出番は今大会最高の盛り上がりを見せたのだった。





 そして大会もついに審査発表まで進み、ステージには8人の男の娘が並んでいた。

「発表します。このメレーズの街の巫女様に選ばれたのはエントリーナンバー8番のマディン君です。おめでとうございます!」

 司会がマディンの名を告げると会場は覆いに盛り上がり、マディンコールが飛び交う。一方のスルントはというと、悔しさのあまり恐ろしいほどの変顔をしていた。よっぽど強く唇を噛み締めたのか血も流れている。

 そんなことはお構いなしにステージの前に出たマディンは観衆に手を振り声援に応えていた。そして審査員長のリティスが近づくとその手に持ったトロフィーを手渡した。

「おめでとう、マディン。今回はレベルの高い戦いだったけど、貴方が一番二ー様していたわ。貴方には二ー様に仕える巫女となるために二ー様と一夜をともにする栄誉が与えられるの。楽しみになさい」
「に、二ー様と……!」

 あの麗しの二ー様に初めてを捧げれると思うとマディンの股間が熱を帯びる。たとえ男の娘だろうとあれほどの美貌である。マディンにしてみれば全然オッケー、いやむしろ願ったりかなったりであった。

 しかしマディンは知らない。捧げる初めてが童貞ではなく処女の方であることを。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

異世界で世界樹の精霊と呼ばれてます

空色蜻蛉
ファンタジー
普通の高校生の樹(いつき)は、勇者召喚された友人達に巻き込まれ、異世界へ。 勇者ではない一般人の樹は元の世界に返してくれと訴えるが。 事態は段々怪しい雲行きとなっていく。 実は、樹には自分自身も知らない秘密があった。 異世界の中心である世界樹、その世界樹を守護する、最高位の八枚の翅を持つ精霊だという秘密が。 【重要なお知らせ】 ※書籍2018/6/25発売。書籍化記念に第三部<過去編>を掲載しました。 ※本編第一部・第二部、2017年10月8日に完結済み。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...