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日常編
31過去の朝霧 奏斗
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31過去の朝霧 奏斗
朝霧 奏斗と私が出会ったのは約10年前だった。機関内部に居れば噂で聞くこともあった。子供にして、回復魔法の使用ができ、身体能力が長けていると国家機関に関わる人間ならば1度は耳にしたことのある名前が「朝霧 奏斗」。
普通の家庭に生まれ、両親共に魔法、異能力の使い人ではない。遺伝ではなく、運命的に発現したこの世界の将来を任された子供とも言われることがあった。
私は15歳でこの機関に入った。義務教育のように9年間の一般教育過程は必須とされているこの世界では、早くに働くとなると中卒の15歳からである。
私の両親は、ただの医者だった。しかし、朝霧同様、両親の遺伝関係なく回復魔法が使えた私は、国家機関からの誘いを受け、ほとんど何の壁もなく、ここに入った。
最初は自分以外にも意外と多くいるのかと思ったが、魔法や能力を使えるのは、ほんの一部。その時は化け物なんていなかったし、国のために働くだけの仕事が殆どだ。私も未来のため、最先端のものを研究することが多かった気がする。
特別な人間とまではいかないが、他の人よりも有能な人間であると少なからず思うこともあった。
働き始めてすぐの事だった。まだ学ぶことが多くあり、忙しなかった時に見慣れない同じくらいの歳の男と、その両親らしき人が機関内にいるのに偶然出会った。
「奏斗」
機関外部からの来客、にも見えない。ましてや子供もいる。しかし、母親がそう子供を呼んだ時に、私は「ああ」とすぐに納得した。
この男が「朝霧 奏斗」か、と。
朝霧 奏斗については、入って数日でもう名前を覚えていた、覚えざるを得なかった。どこに行ってもよく聞いた名前だ。
だが、思っていた奴とは違った。もっと正義のヒーローみたいな顔をした奴だと思っていたし、きっと私とは性格が合わないと思っていた。
しかし、いざ見てみればそいつの顔は死んでいるようだった。来たくもないのに連れてこられた、そう顔に書いていた。親からの呼びかけにも返事をしない。最初は思春期か反抗期かとでも思ったが、隣にいる両親を見て分かった。
私と同じで両親から勝手に、魔法や能力が使える特別な子供だと期待され、嫌になっているのだと。
実際、私も嫌だった。親の期待には答えようとしていた。だが、何故そんなにも子供の将来を決めようとするのだろうと。私はもとから研究員を目指していたから、何の文句もなかった。しかし、こいつは違うのだろう。国の為の仕事はしたくないのだろう。目には光が宿っていなかった。
その時、私に研究のことや機関のことを教えてくれていた人が、その3人の姿を見て駆け寄っていった。私も近づくべきか迷いながら、その人の後ろについて行った。
「朝霧さん、どうされたんですか」
朝霧の両親にそう言いながら、目線は朝霧 奏斗に向いていた。興味があって仕方が無いのだろうなと思った。
身長は同じくらいで、近くによると案外顔が綺麗な形をしているな、くらいには思った。
「この子もあと、2年で卒業ですので、将来自分の勤め先を見ようと思って」
父親の方がそう言った。将来の勤め先、という言葉に朝霧 奏斗はピクっと反応し、顔を歪める。きっと親がそう思い込んでいるだけなんだろうな。
世間話が続く。早く研究室に戻りたいと思いながら、話す大人を見ていた。
朝霧 奏斗はズボンのポケットに手を入れたまま、興味無さげに欠伸をしている。態度は最悪だな、これが第一印象だった。
「咲、先に研究室にこの資料を持って戻っておいてくれ」
私にそう言って、持っていた重たく分厚い資料の山を差し出した。早く帰れると思ったら、この量を1人で運べというこの人に腹が立った。
どうやら、朝霧家族を案内するということだった。朝霧家族を上の人のところに連れていこうとする。
「……っはい、では」
渡された追加の資料を両手で持つ。研究室のドアを開けられるだろうか、なんて考えながら苛立ちながら振り返り研究室まで戻ろうとした。
「……俺、研究室ってとこ行ってみたい」
初めて聞いた言葉はそれだった。興味も無いくせにそんなことを言った朝霧 奏斗に両親も、私についていた人も、私も驚いた。
「……で、では研究室の方を案内しに」
「いい、この女に連れて行ってもらうから。 父さんと母さんは上のお偉い方と会ってきなよ」
この女、それが自分を指していることに気づくのに数秒かかる。
私は心の底からめんどくさいと思った。
コソッと「失礼のないようにな」と睨まれながら言われた。機嫌を損ねることがあれば、ここで働かないと言われかねない。そうなれば私は機関を、追い出されるだろう。
「……こっちです」
両手に資料を持ったまま、くいっと行く方向を示した。めんどくさい仕事押し付けやがって……と思いつつも、重たい資料をふらふらとしながら運んでいく。
「……大人の話を聞くのなんてうんざりだよな」
朝霧 奏斗はそう一言言って資料の山から少しだけ紙を掬うように取り上げた。両手への負担が減り、「あれ」と思ったが、朝霧 奏斗が持ってくれているとは思わなかった。
「……貴方はここに来たくなさそうだな」
失礼のないように、なんて言われたが普通に同年代と話す話し方で朝霧 奏斗に問いかける。
「……国のお偉いおじいさん方にこき使われるんだろ、そんなのゴメンだな。 それに俺がやっても見返りは俺じゃなくあの二人に行く」
…………嫌なことにこいつとは気が合う気がしてきた。
「……お前、名前は」
「……………咲、咲 夢花だ。 お前よりも年上だ」
お前と言われ、イラッとしたのでお前で返した。自分から名乗ろうともしない。いや、しなくても分かっているだろう、ってことか。
「……ふぅん、アンタ何やってんの? 研究?」
2つ年下らしい朝霧 奏斗は名前を聞いておきながら、私をアンタとしか呼ばない。ただのクソガキのようだ。
「…………まぁ、そうだ」
「……………ここ、いて楽しい?」
馬鹿にしたようにそんな質問を投げかけてくる。楽しい? 研究は好きだが……、全てが楽しく自分のやりたいことが出来るわけではないため、楽しいかと聞かれると悩んでしまう。
「………やっぱり、ただの雑用じゃねぇか」
ボソッと口悪くそう言うクソガキ、それが私のよく知る「朝霧 奏斗」である。
朝霧 奏斗と私が出会ったのは約10年前だった。機関内部に居れば噂で聞くこともあった。子供にして、回復魔法の使用ができ、身体能力が長けていると国家機関に関わる人間ならば1度は耳にしたことのある名前が「朝霧 奏斗」。
普通の家庭に生まれ、両親共に魔法、異能力の使い人ではない。遺伝ではなく、運命的に発現したこの世界の将来を任された子供とも言われることがあった。
私は15歳でこの機関に入った。義務教育のように9年間の一般教育過程は必須とされているこの世界では、早くに働くとなると中卒の15歳からである。
私の両親は、ただの医者だった。しかし、朝霧同様、両親の遺伝関係なく回復魔法が使えた私は、国家機関からの誘いを受け、ほとんど何の壁もなく、ここに入った。
最初は自分以外にも意外と多くいるのかと思ったが、魔法や能力を使えるのは、ほんの一部。その時は化け物なんていなかったし、国のために働くだけの仕事が殆どだ。私も未来のため、最先端のものを研究することが多かった気がする。
特別な人間とまではいかないが、他の人よりも有能な人間であると少なからず思うこともあった。
働き始めてすぐの事だった。まだ学ぶことが多くあり、忙しなかった時に見慣れない同じくらいの歳の男と、その両親らしき人が機関内にいるのに偶然出会った。
「奏斗」
機関外部からの来客、にも見えない。ましてや子供もいる。しかし、母親がそう子供を呼んだ時に、私は「ああ」とすぐに納得した。
この男が「朝霧 奏斗」か、と。
朝霧 奏斗については、入って数日でもう名前を覚えていた、覚えざるを得なかった。どこに行ってもよく聞いた名前だ。
だが、思っていた奴とは違った。もっと正義のヒーローみたいな顔をした奴だと思っていたし、きっと私とは性格が合わないと思っていた。
しかし、いざ見てみればそいつの顔は死んでいるようだった。来たくもないのに連れてこられた、そう顔に書いていた。親からの呼びかけにも返事をしない。最初は思春期か反抗期かとでも思ったが、隣にいる両親を見て分かった。
私と同じで両親から勝手に、魔法や能力が使える特別な子供だと期待され、嫌になっているのだと。
実際、私も嫌だった。親の期待には答えようとしていた。だが、何故そんなにも子供の将来を決めようとするのだろうと。私はもとから研究員を目指していたから、何の文句もなかった。しかし、こいつは違うのだろう。国の為の仕事はしたくないのだろう。目には光が宿っていなかった。
その時、私に研究のことや機関のことを教えてくれていた人が、その3人の姿を見て駆け寄っていった。私も近づくべきか迷いながら、その人の後ろについて行った。
「朝霧さん、どうされたんですか」
朝霧の両親にそう言いながら、目線は朝霧 奏斗に向いていた。興味があって仕方が無いのだろうなと思った。
身長は同じくらいで、近くによると案外顔が綺麗な形をしているな、くらいには思った。
「この子もあと、2年で卒業ですので、将来自分の勤め先を見ようと思って」
父親の方がそう言った。将来の勤め先、という言葉に朝霧 奏斗はピクっと反応し、顔を歪める。きっと親がそう思い込んでいるだけなんだろうな。
世間話が続く。早く研究室に戻りたいと思いながら、話す大人を見ていた。
朝霧 奏斗はズボンのポケットに手を入れたまま、興味無さげに欠伸をしている。態度は最悪だな、これが第一印象だった。
「咲、先に研究室にこの資料を持って戻っておいてくれ」
私にそう言って、持っていた重たく分厚い資料の山を差し出した。早く帰れると思ったら、この量を1人で運べというこの人に腹が立った。
どうやら、朝霧家族を案内するということだった。朝霧家族を上の人のところに連れていこうとする。
「……っはい、では」
渡された追加の資料を両手で持つ。研究室のドアを開けられるだろうか、なんて考えながら苛立ちながら振り返り研究室まで戻ろうとした。
「……俺、研究室ってとこ行ってみたい」
初めて聞いた言葉はそれだった。興味も無いくせにそんなことを言った朝霧 奏斗に両親も、私についていた人も、私も驚いた。
「……で、では研究室の方を案内しに」
「いい、この女に連れて行ってもらうから。 父さんと母さんは上のお偉い方と会ってきなよ」
この女、それが自分を指していることに気づくのに数秒かかる。
私は心の底からめんどくさいと思った。
コソッと「失礼のないようにな」と睨まれながら言われた。機嫌を損ねることがあれば、ここで働かないと言われかねない。そうなれば私は機関を、追い出されるだろう。
「……こっちです」
両手に資料を持ったまま、くいっと行く方向を示した。めんどくさい仕事押し付けやがって……と思いつつも、重たい資料をふらふらとしながら運んでいく。
「……大人の話を聞くのなんてうんざりだよな」
朝霧 奏斗はそう一言言って資料の山から少しだけ紙を掬うように取り上げた。両手への負担が減り、「あれ」と思ったが、朝霧 奏斗が持ってくれているとは思わなかった。
「……貴方はここに来たくなさそうだな」
失礼のないように、なんて言われたが普通に同年代と話す話し方で朝霧 奏斗に問いかける。
「……国のお偉いおじいさん方にこき使われるんだろ、そんなのゴメンだな。 それに俺がやっても見返りは俺じゃなくあの二人に行く」
…………嫌なことにこいつとは気が合う気がしてきた。
「……お前、名前は」
「……………咲、咲 夢花だ。 お前よりも年上だ」
お前と言われ、イラッとしたのでお前で返した。自分から名乗ろうともしない。いや、しなくても分かっているだろう、ってことか。
「……ふぅん、アンタ何やってんの? 研究?」
2つ年下らしい朝霧 奏斗は名前を聞いておきながら、私をアンタとしか呼ばない。ただのクソガキのようだ。
「…………まぁ、そうだ」
「……………ここ、いて楽しい?」
馬鹿にしたようにそんな質問を投げかけてくる。楽しい? 研究は好きだが……、全てが楽しく自分のやりたいことが出来るわけではないため、楽しいかと聞かれると悩んでしまう。
「………やっぱり、ただの雑用じゃねぇか」
ボソッと口悪くそう言うクソガキ、それが私のよく知る「朝霧 奏斗」である。
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