11 / 14
第二章 コンプレックスと無条件の愛
11
しおりを挟む
晃との生活を始めて、3か月がたった
仕事も辞め、自宅にいるだけの玲は、暇を持て余していた
「あー…暇すぎる」
初めの内は、ゲームをしたりして楽しんでいたけど、毎日何時間もゲームをするだけってのも、案外疲れるものだと知った
晃の帰りはまちまちで、早い日もあれば、遅い日もある。遅くなる時は必ず連絡をくれている。案外マメなんだなと思ったものだ
ボーっとしていた玲のスマホが鳴る。メールが来ていたので、確認すると晃からだった。今日は早く帰れると書いてある
「晃さん、今日は早く帰って来てくれるのか」
そう言う玲は、どこか嬉しそうにしていた
「ご飯作っておこうかな」
いそいそと、キッチンへ向かう玲。エプロンをして、料理を始める。けして得意と言う訳でもない料理を、勉強して練習しているのは、他でもない晃の為だった
喜んでほしい、ただそれだけのために
晃は玲が作ったご飯を、いつも「美味しい」と言って食べてくれる。初めの頃は、お世辞にも美味しいと言えなかった料理でも、美味しいといって喜んでくれた
そんな晃の気持ちが、玲にはとても嬉しくて
今では、味もそうだが健康面でも、きちんと考えて料理するまでになっていた。玲の努力は結果となり、味はそこそこで、作る事が出来る様になっていた
料理の合間で、お風呂を沸かす。最早、専業主婦のような生活をしている玲
―――ガチャ
料理を終え、食卓に並べている時、リビングのドアが開き、晃が入って来た
「ただいま、玲」
「おかえりなさい、晃さん」
「今日も食事を作ってくれたんだな。ありがとう」
「これくらいしか、出来ないから」
恥ずかしそうに言う玲を、抱き寄せ
「いつも、ありがとうな。愛してる、玲」
甘い甘い空気を漂わせながら、愛しくて堪らないと言わんばかりの声音で言う晃
晃は、玲にいつも愛を囁く。それはもう、惜しみなく。そして、その囁く愛が、偽りではない事は、玲にも伝わっていた。と言うよりも、偽りかどうかなど、疑うまでもないのだ
玲は、そんな晃の気持ちが嬉しくて、堪らなかった。玲の不安なんか、消飛ぶくらいには
だけど、この3ヶ月の間、玲は晃の周りにいる人々を、沢山見て来た。そして、やっぱりコンプレックスが刺激され、自分の中にあった、なけなしの自信も崩れそうになっていたのだ
『平凡で、なんの取り柄もない自分は、晃に相応しくない』
そう思えてならない。玲と晃が、番だと言う事は変えようのない事実。だけど、だからこそ晃にとって、玲が番だった事が、不運だったのではと思うのだ
自分よりも、もっと優秀で見目も整っている人が、晃の番だったなら、晃の隣にいても違和感はない。でも、自分はどうだろうか?
晃の隣に立つ自分を想像しても、違和感しか感じない。それに、ほぼ軟禁状態の自分の状況は、晃が自分を番だと知られたくないからなのではないか
不安は憶測の無い疑いまでも生じさせる
晃からの愛は素直に嬉しいし、玲だって晃の事を番だからではなく、愛おしいと思っている。だけど、晃からの愛に、「愛している」と返せないでいた
仕事も辞め、自宅にいるだけの玲は、暇を持て余していた
「あー…暇すぎる」
初めの内は、ゲームをしたりして楽しんでいたけど、毎日何時間もゲームをするだけってのも、案外疲れるものだと知った
晃の帰りはまちまちで、早い日もあれば、遅い日もある。遅くなる時は必ず連絡をくれている。案外マメなんだなと思ったものだ
ボーっとしていた玲のスマホが鳴る。メールが来ていたので、確認すると晃からだった。今日は早く帰れると書いてある
「晃さん、今日は早く帰って来てくれるのか」
そう言う玲は、どこか嬉しそうにしていた
「ご飯作っておこうかな」
いそいそと、キッチンへ向かう玲。エプロンをして、料理を始める。けして得意と言う訳でもない料理を、勉強して練習しているのは、他でもない晃の為だった
喜んでほしい、ただそれだけのために
晃は玲が作ったご飯を、いつも「美味しい」と言って食べてくれる。初めの頃は、お世辞にも美味しいと言えなかった料理でも、美味しいといって喜んでくれた
そんな晃の気持ちが、玲にはとても嬉しくて
今では、味もそうだが健康面でも、きちんと考えて料理するまでになっていた。玲の努力は結果となり、味はそこそこで、作る事が出来る様になっていた
料理の合間で、お風呂を沸かす。最早、専業主婦のような生活をしている玲
―――ガチャ
料理を終え、食卓に並べている時、リビングのドアが開き、晃が入って来た
「ただいま、玲」
「おかえりなさい、晃さん」
「今日も食事を作ってくれたんだな。ありがとう」
「これくらいしか、出来ないから」
恥ずかしそうに言う玲を、抱き寄せ
「いつも、ありがとうな。愛してる、玲」
甘い甘い空気を漂わせながら、愛しくて堪らないと言わんばかりの声音で言う晃
晃は、玲にいつも愛を囁く。それはもう、惜しみなく。そして、その囁く愛が、偽りではない事は、玲にも伝わっていた。と言うよりも、偽りかどうかなど、疑うまでもないのだ
玲は、そんな晃の気持ちが嬉しくて、堪らなかった。玲の不安なんか、消飛ぶくらいには
だけど、この3ヶ月の間、玲は晃の周りにいる人々を、沢山見て来た。そして、やっぱりコンプレックスが刺激され、自分の中にあった、なけなしの自信も崩れそうになっていたのだ
『平凡で、なんの取り柄もない自分は、晃に相応しくない』
そう思えてならない。玲と晃が、番だと言う事は変えようのない事実。だけど、だからこそ晃にとって、玲が番だった事が、不運だったのではと思うのだ
自分よりも、もっと優秀で見目も整っている人が、晃の番だったなら、晃の隣にいても違和感はない。でも、自分はどうだろうか?
晃の隣に立つ自分を想像しても、違和感しか感じない。それに、ほぼ軟禁状態の自分の状況は、晃が自分を番だと知られたくないからなのではないか
不安は憶測の無い疑いまでも生じさせる
晃からの愛は素直に嬉しいし、玲だって晃の事を番だからではなく、愛おしいと思っている。だけど、晃からの愛に、「愛している」と返せないでいた
11
あなたにおすすめの小説
つぎはぎのよる
伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。
同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
冷血宰相の秘密は、ただひとりの少年だけが知っている
春夜夢
BL
「――誰にも言うな。これは、お前だけが知っていればいい」
王国最年少で宰相に就任した男、ゼフィルス=ル=レイグラン。
冷血無慈悲、感情を持たない政の化け物として恐れられる彼は、
なぜか、貧民街の少年リクを城へと引き取る。
誰に対しても一切の温情を見せないその男が、
唯一リクにだけは、優しく微笑む――
その裏に隠された、王政を揺るがす“とある秘密”とは。
孤児の少年が踏み入れたのは、
権謀術数渦巻く宰相の世界と、
その胸に秘められた「決して触れてはならない過去」。
これは、孤独なふたりが出会い、
やがて世界を変えていく、
静かで、甘くて、痛いほど愛しい恋の物語。
僕、天使に転生したようです!
神代天音
BL
トラックに轢かれそうだった猫……ではなく鳥を助けたら、転生をしていたアンジュ。新しい家族は最低で、世話は最低限。そんなある日、自分が売られることを知って……。
天使のような羽を持って生まれてしまったアンジュが、周りのみんなに愛されるお話です。
この世界で、君だけが平民だなんて嘘だろ?
春夜夢
BL
魔導学園で最下層の平民としてひっそり生きていた少年・リオ。
だがある日、最上位貴族の美貌と力を併せ持つ生徒会長・ユリウスに助けられ、
なぜか「俺の世話係になれ」と命じられる。
以来、リオの生活は一変――
豪華な寮部屋、執事並みの手当、異常なまでの過保護、
さらには「他の男に触られるな」などと謎の制限まで!?
「俺のこと、何だと思ってるんですか……」
「……可愛いと思ってる」
それって、“貴族と平民”の距離感ですか?
不器用な最上級貴族×平民育ちの天才少年
――鈍感すれ違い×じれじれ甘やかし全開の、王道学園BL、開幕!
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる