61 / 104
第三章 二人の聖女編
3-9.黒神子・天足のアトリエの猛襲
しおりを挟む
3ー9.黒神子・天足のアトリエの猛襲
(残るは後、二十四人の異世界召喚者達。こいつらに奪われた、仲間の七色魔石を取り戻すには一体どうしたらいいんだ。目の前にいるあの魔法剣士の女性から七色魔石を奪う事ができればそのまま逃げる事もできるんだが、流石にそれは難しいか)
地面に転がる突然のリーダーの死に誰もが驚愕し警戒を抱く中、ラエルロットは不格好な黒い木刀を拾い上げると悠然と異世界召喚者達を睨みつける。
覚悟を決めた思いと闘志は凄まじく、誰一人逃すまいと周りを囲んでいるはずの異世界召喚者達の方が逆になぜか動けないほどだ。精神的に圧倒しているラエルロットの決意が、本来数の上でも力の面でも圧倒的に有利なはずの異世界召喚者達に謎の警戒心を抱かせる。
そんな中であってもただ一人冷静にラエルロットの謎の力を分析する魔法剣士の女性はリーダーでもある聖戦士の男の死亡を確認すると、厳しい視線をラエルロットに送る。
「ウチのリーダーがあなたに与えるはずだった斬撃による一撃を、痛みや感触といったリアルな感覚だけをそのままカウンターのように触覚や痛覚といった感覚を通してリーダーの体に返すだなんて、一体なんなのよその古代の遺物は。見た感じ特に切られた所もないしダメージは全くないように見えるんだけど、その呪いの効力によってその痛みによる感覚を実体験してしまったみたいね。おかげでウチのリーダーはその激痛と衝撃に耐えられなくなり、そのままショック死をしてしまったわ。そしてあなたがその黒い木刀の呪いにかからないのはその呪いをかけた人物と直接契約をしているからでしょ。しかもその呪いはなぜか異世界召喚者達が普通に体の回りに展開しているオートガードシステムをも無視して直接相手側の体にその攻撃を返す事ができる。だからレベル35の聖戦士でもあるリーダーがたかだかレベル1のまだ冒険者ですらないこの星に住むごく一般的なモブキャラごときに負けたのね。いや、違うわね、あの遙か闇なる世界の魔女の一人とどうやら本当に面識があるみたいだから、もうただのモブキャラと侮る事はできないか。ならそんな危険な古代の遺物を平然と持ち歩いているあんたは絶対に普通の人じゃないわよね。あんた一体何者よ?」
その魔法剣士の女性の疑問を投げ掛ける言葉にラエルロットは改めて堂々と自分の名前を名乗る。
「遙か闇なる世界の黒神子の一人、英雄殺しのレスフィナの眷属にして、冒険者になって勇者職を目指すラエルロットだ。異世界召喚者の魔法剣士の女よ、あんたが奪ったその魂のカケラとも言うべき七色魔石を全て返してもらうぞ!」
「ふん、ウチのリーダーを汚い策略と罠でまぐれにも葬る事ができたからといって粋がるな。もうその呪いの効力はわかったんだから、その黒い木刀に直接触れなければ過敏に恐れる必要はないわ。どんなに粋がってもあんたと私達の力の差は歴然なんだからあなたが圧倒的に不利な事は変わらないわ。そしてあんたにこの状況を覆す手段はもうどこにもないのよ!」
まるで全てを見通したかのように話す魔法剣士の女性にラエルロットはわざとらしく不適な笑みを向けると、一世一代の大博打とも言うべきはったりを噛ます。
「本当にこの呪いがその程度で済むと思っているのか。もしかしたらその聖戦士の男が古代の遺物に触れた事によって、その呪いの効力の範囲が大幅に拡散し広がっているかも知れんぞ。つまりだ、お前らが軽率にも俺に攻撃をしたら、地面に転がる愚かな聖戦士のようにその攻撃は全てお前達に返ってしまうと言うことだ。この話がただのはったりだと……嘘だと思うなら、是非とも構わずに攻撃をしてみてくれ。俺は一向に構わないからよ。だがその時は覚悟しろよ。その攻撃は何倍にも加算されて、呪いの力で増長した全てのダメージがお前達に返って行く事になるだろうからよ!」
必死に凄みながら叫ぶラエルロットの威嚇に周りにいる異世界召喚者達は皆その場から動けないまま尻込みをするが、目の前にいる魔法剣士の女性だけはラエルロットの言動を深く見つめると手に持つレイピアを鞘に納める。だが代わりに反対側の左腕を豪快に振り上げると、左手の手のひらを広げながらラエルロットの目の前で素早く振りかぶる。
「なら試してみましょうか。その呪いとやらが本当に私たちにもかかっているかをね」
「へぇ?」
頭をかしげながら疑問符で答えたラエルロットは、その一秒後に横へと豪快に吹き飛ぶ。
「ぐっわあぁぁぁ!」
女魔法剣士の豪快な平手打ちを右頬で受けたラエルロットはそのまま横に吹き飛ぶと勢いのままに地面へと倒れる。その姿を見た魔法剣士の女性は自分自身になにも起きないことを確認すると安心した笑みを浮かべながらラエルロットを見下ろす。
「フフフ、どうやら呪いの効果は私にはないみたいね。でもまだ安心は出来ないから今度は私が持つレイピアの刃をあなたの腕に突き刺して見ますか。それで全てがわかるわ!」
計算高く極めて慎重に迫る魔法剣士の女性は腰に下げている鞘からレイピアを抜き放つと、ラエルロットとの間合いに入って来る。
その瞬間、地面に倒れているラエルロットは素早く起き上がるとまるで条件反射のようにその手に持つ黒い不格好な木刀を相手にたたき込もうと下から上に向けて袈裟懸けを噛ます。
だがその起死回生の攻撃を寸前の所で難なく避けた魔法剣士の女性はラエルロットの左腕にめがけて手に持つレイピアの刃先を深々と突き立てる。
「遅い!」
グサリ!
ラエルロットは一瞬何が起きたのか分からなかったが、レイピアの一突きで左腕を貫通した刃先と流れでる血を認識すると猛烈な痛みと恐怖で声にならない悲鳴を上げる。
「う……うっあぁぁぁ……腕が……左腕が痛い。剣が貫通した。うわあぁぁぁ!」
「どうやら私の左腕は大丈夫みたいね。これならあなたを安心して殺せるわ」
冷酷に言葉をかけると魔法剣士の女性はラエルロットの左腕を貫通したレイピアの刃先を豪快に引き抜くと、飛び散る大量の血を見ながら血に染まる刃先を一振りする。
「もういいかしら、そろそろ死んで貰っても」
冷たい目を向けながら迫る魔法剣士の女性は二激目の最後の一突きをなんの躊躇いもなくラエルロットの心臓に目がけて突き付ける。その一撃は確実にラエルロットの心臓に当たるかと思われたが、その一撃は間一髪の所で間に割って入って来た何者かに阻まれる。
その素早いレイピアの一撃を寸前の所で止めたのは今まで姿を表さなかった監視役の試験官でもあるダグラスである。ダグラスは魔法剣士の女性が持つレイピアの刃先を自慢の大検で止めると、両腕に怒りの血管を浮かばせながらそのまま力任せに大きく振り被る。
「うっりゃあぁぁぁぁぁあぁーーぁぁ!」
ダグラスが持つ大検による豪快な一振りで後ろへと吹き飛ばされた魔法剣士の女性は、体勢を立て直しながら大きくバク宙をするとそのまま華麗にこうを描き地面へと着地する。
「まさか今になって伏兵が駆けつけて来るとは、命拾いをしたわね。しかも中々の手練れのようじゃない。その見た目と年齢からしてあんたらの上官と言った所かしら。おそらくレベルは30から~40くらいか。でもあなた一人が今頃応援に駆けつけた所で一体なにができるというの。その黒い木刀を持つ男以外はみんな死亡したか、或いは七色魔石に返られてしまったわよ」
警戒しながら話す魔法剣士の女性の言葉にダグラス試験官は回りを確認し必死に情報を集めるが、ラエルロットの『あいつらは……仲間達は……皆勇敢にも必死に戦いました。二人は死亡し、残りの四人は七色魔石を抜かれて石に返られてしまいました』という報告を聞き、驚愕と無念の声を上げる。
「くそおぉぉぉぉ、俺が少し離れた間に異世界召喚者の奴ら、好き勝手な事をしやがって。許さん、ゆるさんぞ。道半ばで倒れていったダンとエアルの二人の少年少女の無念を晴らす為にも、まだ望みのあるその囚われたマーズ・ブルース・レイヤ・そしてミランシェの四人の七色魔石だけはなんとしても返してもらうぞ!」
「フフフフ、粋がるなよおじさん。その年齢からしてかなりの手練れのようだけど、こちらは全部で二十四人もいるんだから、あなた達二人に勝ち目はないわよ!」
女魔法剣士の勝ち目がないという言葉を聞き、「はっ!」と冷静さを取り戻した試験官のダグラスは我に返ると何かを思い出したのか、ラエルロットにだけではなく、周りにいる異世界召喚者達にも向けて大きな声で叫ぶ。
「そうだった、今はこんな事をしている場合じゃないぞ。早くここから逃げないと奴がここに来てしまう。あいつがこの場所に気づく前に早くここから逃げるんだ!」
いきなり慌てふためきながらとんちんかんなことを言うダグラスの態度に状況を掴めないでいる魔法剣士の女性は警戒しながらもその訳を聞く。
「いきなりなに言ってんのよ、あんた。ここから逃げろって、今現在あなた達を取り囲んでいる私達に言う台詞じゃないわね。まさか思わせ振りなことを言ってここから逃げる隙でも探っているのかしら?」
「そんなんじゃねえよ。俺はこいつらと違って少し離れた所にいたから転送後は別の階にあるフロアに飛ばされていたんだが、そこである奴と不幸にも遭遇してしまって、今まで命からがら逃げ回っていたんだ。途中で謎のカラクス鳥にここまで道案内されてお前達がいるこのフロアに導かれた訳だが、あいつもここにいる人間達の臭いや気配を察知して必ずここに来るはずだ。もしもあいつに見つかったらいくらレベル30から35の力を持つ異世界召喚者達が大勢いても、あいつを倒す事もましてや逃げ切る事もできないだろう。だからこの場所を察知される前にできるだけ遠くに逃げるんだ。早くしろ!」
「手練れでもあるダグラス試験官さえも逃げるのが精一杯で、しかもこれだけ大勢いる異世界召喚者達を前にして戦わずに逃げろと言い切るだなんて、相手は一体どんな化け物なんですか?」
怪訝な顔を向けながらいうラエルロットに、ダグラス試験官は周りに注意を払うと緊張した面持ちで言う。
「く、来る……ネズミ顔の頭部を持つ黒いローブに身を包んだ小柄な駿足の化け物が。十二人いる遙か闇なる世界の黒神子の一人、この世界で最も足の速い最速の魔女、天足のアトリエが!」
「遙か闇なる世界の黒神子、天足のアトリエだとう!」
明らかに動揺を隠せないでいるダグラス試験官のその態度に遠巻きに様子を見ていた他の異世界召喚者達が真偽を疑りながらも各々が言葉を述べる。
「あの遙か闇なる世界の天足のアトリエが、ここに来ているの。ちょっと信じられないんだけど」
「そうだよな。もしも仮にその話が本当なら、なんであのおっさんは今の今まで逃げ切る事ができたんだよ。その最速の魔女から速さで逃げ切る事なんてまず絶対にできないはずなのに!」
「全くだわ。いくらこの絶望的な状況を打開したいからって見え透いた嘘はやめて貰いたいものね。流石に往生際が悪いわよ」
各々がまさかと思いながらも否定的な言葉を投げ掛けていると、フロア全体からその疑問に満ちた言葉を否定するかのような謎の女性の声が皆の耳に届く。
「そんなに否定しなくても、もうここに来ているでちゅう。でもまさかこのフロアに人が沢山いるだなんて、驚きでちゅう。一体こんな所に集まって何をしていたのですか。是非とも教えてほしいでちゅう!」
いつの間にかその声が異世界召喚者達がいるフロアの奥から聞こえた事で皆が一斉に後ろを振り返ると、そこにはまるで子供のような小柄な背丈をした一人の女性が立っていた。
その華奢な体に纏う黒いローブの上に見える顔はまごうこと無きネズミの顔で、その両手には誰かの生首が二つ無造作に抱えられていた。
「見た感じ人の生首のようだが、一体だれの生首を持っているんだ?」
ラエルロットが誰にとも無くボソリと思わず呟くと、その問いに答えるかのように異世界召喚者達の中にいた戦士職の二人の男の体が同時に倒れる。
ドサリ、ドサリ!
「きゃあぁぁあぁぁぁぁーーぁぁ、首が二人の首がないわ。いつの間に。ついさっきまでピンピンしていたのに!」
「あのネズミ顔の魔女の接近に全く気づかなかった。あのネズミ顔の魔女はいつこの部屋に入って来て、二人の首を切断したんだ。全く見てはいないし気づきもしなかった!」
「本物だ、本物の天足のアトリエだ。早くここから逃げないと!」
「逃げるだとう、あいつが本物の天足のアトリエなら奴のスピードから逃げ切れる物かよ。それに奴に後ろを見せたらそれこそおしまいだぞ。どうやっても逃げられないのなら、せめて円陣を組んであいつを攻撃した方がいいんじゃないのか。もしも俺達の怒濤の連係攻撃で一瞬でもひるませる事ができたら、その時はみんなちりぢりになって、脇目も向かずに全速力で逃げようぜ。奴から逃げ切るにはもうそれしかない!」
一人の重戦士の男が言葉を発したのと同時に瞬時に首が無くなり、再び皆が驚愕しながらもその視線をネズミ顔の魔女に戻した時、その両手には先ほどとは違う別の人物の生首が四つほど握りしめられていた。
その瞬間首を失った異世界召喚者達の体が今度は四体ほど、首の付け根から大量の血を噴水のように吹き上げながらその場に力なく倒れる。
ドサリ、バタリ、ズッシリ、ズサン!
「うわぁぁぁぁぁぁーー出たあぁぁぁぁ、天足のアトリエが攻撃して来たぞ。みんなバラバラになるんじゃない。固まって円陣を組むんだ。早くしろ!」
「あいつにはオートガードシステムが効かないのか。みんな己の死にすら気づくことも無く一瞬で瞬殺されたぞ。有り得ない、こんな事は流石に有り得ないよ。どんだけチートなんだよ!」
「あの速さを認識して、尚且つ同じような速さで動けないと、おそらくあいつには攻撃を当てる事もできないぞ」
「任せろ、俺に考えがある。スピード自慢の相手を捕らえて負かす方法なら、いろんな漫画を読破し熟知した俺ならあいつの動きを止めることは造作も無い事だ!」
戦う決意を固めたのか神官職の男が自信たっぷりに前へと出ると、何かの呪文を唱えながら足下に煙り玉を投げつける。
パッシュゥゥゥーーン!
どうやら目くらましに使う煙玉のようだが、回りの視界が白い煙で見えにくくなった事で互いの行動は限りなく分かりにくくなったはずである。
そう考えた名も知らない異世界召喚者の神官職の男は、自分が考えた天足のアトリエを打倒する作戦を頭の中で再確認する。
(相手が物凄い驚異のスピード自慢だというのなら奴を止める方法は二つだ。一つは、回りにいる奴らには決して見えない神力の光の束で作り上げた糸を俺の体の回りに展開して、周りのガードを固める事だ。俺達神官職が崇める女神様の神力で作り上げた特殊な糸の螺旋は絶対に断ち切る事はできない。なのでもしもその光の糸に触れたが最後、その瞬間相手の体は結界と化した光の糸のローリングデフェンスで焼き切れ、俺の体に到達する前にその体は瞬時に輪切りにされる事だろう。そう奴は自らの速さが命取りとなるのだ。そして二つ目の罠は、俺の足下の地面の回りに水溜まりのように張り巡らせてある超強力な接着魔法だ。そして当然この煙幕も接着魔法のトラップを隠す為の物だ。だからいくら天足のアトリエが超スピードで動けたとしても俺の間合いに近づいたが最後、獲物がゴキブリホイホイに捕まるがごとくその自慢の足は地面にひっついてその場に固定されてしまう事だろうぜ!)
絶対的な自信を胸に神官職の異世界召喚者の男は天足のアトリエの攻撃を今か今かと待ち構えていると、突然回りを覆う煙をかき分けながら猛スピードで一人の異世界召喚者の仲間の体が神官職の男の間合いに投げ込まれる。その瞬間お互いのオートガードシステムのシールドバリアが激しいスパークを起こし、その衝撃で神官職の男の周りに展開していた見えざる光の糸はその場で掻き消える。
「ちくしょう、仲間の異世界召喚者を俺に投げつけて来やがった。その衝撃でせっかく回りに張り巡らせていた神聖魔法の糸の輪が掻き消えてしまった。くそぉぉ、もう一度早く詠唱をし直さないと」
物凄く焦りながらも再び詠唱を唱え直そうとした瞬間、神官職の男の体から頭が瞬時に無くなる。
「ば、バカな……?」
信じられないというような顔をしながら首だけとなった神官職の男に、天足のアトリエは得意げに語る。
「なぜ、下の地面に広がる粘着魔法に引っかからないのかが不思議でならないのでチュね。なら教えてあげるでちゅう。私の能力は足の速さだけがイメージ的には強く印象づけられるみたいですが、実は私のこのスピードを生かす上で最も重要で必要不可欠な能力は、驚異的な視力と聴力、そして正確無比の反射神経なのでチュよ。その三つが合わさってこそ初めて、私の天足が完成するのです。なのであなたが自分の回りの地面に何かの罠を仕掛けて魔法を展開していた事は最初の段階で知っていました。なので障害物を投げつけて、先ずはあなたの回りを螺旋状に囲んでいた光の輪を粉砕消滅させてから一瞬のウチにその首をいただく事にしました。因みに地面に広がっていた粘着魔法をどうやって避けたかというと、地面に足をつけずに空気を足掛かりに、いいえ空中を走って来ましたから粘着魔法に触れる事はなかったのです。私は、数秒だけなら、その速さを生かして空中を走る事ができまちゅからね。それが答えなのでチュが……もう死んでいますよね。せっかく丁寧に説明してあげたのに、残念でチュウ!」
天足のアトリエはその手に持つ生首をまるでいらないゴミのように地面へと放り投げると、今現在この場にいる異世界召喚者達の中では一番強い(と思われる)魔法剣士の女性に目を合わせる。
「お前達は異世界召喚者達でちゅね。ならあなた達もこの研究所内にあるあれを破壊しに、或いは手に入れる為に来たという訳でチュね。でもあれは絶対に誰にも渡さないでチュ。あれは私が必ず見つけ出して、完膚なきまでに破壊して置くでちゅ。だからあなた達はここで、みんな仲良く死んでほしいでチュ。この星に住む女性がそうポンポンと大量生産のように聖女なんかになれたら正直うっとうしいですからね!」
「そうかお前はこの研究所その物を破壊しにここに来たのか。新たな高性能の力を持つ聖女を作り上げる事ができる可能性を持つこの研究所を、その新薬その物を抹消する為に、だけどそうはさせないわ。私たちとしてもその新薬は必要なのよ!」
「ぬかせ、異世界召喚者ども。その新薬は異世界召喚者達にも、ましてや天足のアトリエにも渡さないぞ。絶対にだ。その新薬はこの星の、この緑ある大地に住む全ての人達の希望なのだ。その聖女になれる画期的な新薬はノシロノ王国に住む人達の物だ。だからここで勝手な事は絶対にさせないぞ!」
天足のアトリエの目的を聞き、魔法剣士の女性は勝手な主張を叫ぶが、その話を聞いていた試験官のダグラスは怒りながらも二人の敵の目的を改めて知る。
怒りながらも叫ぶダグラス試験官の決意を聞いた天足のアトリエは少しだけダグラスの方に視線を向けていたが直ぐにターゲットを再び魔法剣士の女性に戻すと、不気味な雰囲気を漂わせながら淡々と近づく。
「く、来るか、天足のアトリエ。みんな話を聞いて。ここは私が少しでも時間を稼ぐからあなた達は今すぐにできるだけ遠くに逃げて頂戴。私のことは気にしないでみんな自分の事だけを考えて各々の意思と独断で逃げなさい。みんなバラバラに逃げれば恐らく数人は生き残れるはずよ。みんなの幸運を祈っているわ!」
「副隊長、あんた死ぬ気か!」
大きな声で回りの仲間達に最後の命令を下すと、魔法剣士の女性は手に持つレイピアを緊張した面持ちで再び構え直す。
「来るなら来てみなさい。天足のアトリエ!」
「まあ、いいでちゅ、逃げた他の奴らはいつでも殺せるし、今は目の前にいるこの魔法剣士の女と、誰かの手助けで私から逃げ切ったあのおじさんの方を先に仕留めるでちゅ!」
余裕を見せているのか天足のアトリエはゆっくりとした足取りで真っ直ぐに歩み寄ると、何も考える事無く魔法剣士の女性の間合いの中に入る。その瞬間ダグラス試験官はまるで何かにはじかれたかのようにしながらいきなり走り出し、魔法剣士の女性に声をかける。
「おい、異世界召喚者の魔法剣士の女、一時休戦だ。俺とお前とで協力して天足のアトリエの足を止めるぞ!」
「し、仕方が無いわね。僅かな確率だけど、互いに生き残る道はもうそれしかないか。なら二人で攻撃を合わせるわよ!」
「フフフフ、無駄な事でチュ。わざわざここまで歩いてきたのは、私がただ単に早いだけの黒神子ではないと言うことをお前達に見せつける為でチュ。その力の差に絶望しながら死んでいけでちゅ!」
「「ぬかせぇぇぇぇぇーーぇ!」」
両腕を広げながら一~二メートルまで接近して来た天足のアトリエに、魔法剣士の女性とダグラス試験官は互いに物凄い早さの剣速で剣を振り回しながら何度もその体を切り飛ばそうとするが、至近距離で振り回す二人の攻撃をまるで精密機械のように寸前の所で全て交わしてみせる。
「ば、バカな、この至近距離でレイピアを振り回しているのに、天足のアトリエの体に当てるどころか触れる事さえできない。一体どうなっているの?」
「くそぉぉ、やはり攻撃を当てることさえできないか。なんという驚異的な反射神経と視力を持つ化け物なんだ!」
「もう気が済みましたか。ではそろそろあなた達、二人の首を貰い受けますが、いいですよね」
天足のアトリエが不敵に笑いながら動こうとした瞬間、ラエルロットが持つ黒い不格好な木刀の一振りがアトリエの足を完全に止める。
「させるかあぁぁぁぁぁぁ!」
本来なら難なくよけて直ぐに攻撃に移るのだろうが、地面に叩き込まれる黒い不格好な木刀から感じるその同列の力の流れを感じた黒神子・天足のアトリエは、思わず大きくジャンプをしながら後方へと着地を決める。
「ラエルロットか、お前はいいから逃げろ。お前じゃどう転んだって天足のアトリエに勝つことはできない。いいからここは俺に任せてお前だけでもここから逃げるんだ。今お前に死なれでもしたら……あいつに申し訳が立たないからな!」
(あいつに申し訳がたたない……一体何を言っているんだ。ダグラス試験官とは今日出発前に初めて会ったばかりなのに?)
体勢を立て直しながらラエルロットがそんな事を考えていると、今度は余りの緊張に涙目になる魔法剣士の女性がラエルロットに向けて言う。
「黒い木刀のお兄さん、あなた……なぜ私を助けたの?」
「別に助けるつもりはなかったが、つい体が勝手に動いてしまったんだよ。目の前で助けを求める誰かが殺されそうになっていたら、やはり助けてしまうだろ。中には自分の心の弱さに負けて逃げてしまう者もいるが、それでも正しく生きようとする者も少なからずはいるはずだ。それが正常な心を持つ本来の人の姿だろ。いろいろとわだかまりや思う所も勿論あるが、俺はあえてお前を助けるぜ。その行為が、正しいと思う正義の信念が、いつか人と人の思いをつないでくれると信じて!」
「そう、それがあなたにとっての信念であり、常識なのね。あなたの言動を見て思っていたんだけど随分とお優しい冒険者志願者のようね。ヘドがでるわ!」
「ゲロならここでは吐くなよ。この黒神子・アトリエから逃げ切ったら、その借りとしてお前が奪った四人の七色魔石を返してもらうからな。もしもそのまま逃げようとしたら地の果てまで追いかけて行って必ず奪った七色魔石を取り返してやるぜ!」
魔法剣士の女性に対し逃がさない宣言をするラエルロットに不審な目を向ける天足のアトリエは、警戒しながらもラエルロットに声をかける。
「その黒い木刀から流れる強力な呪いの力は、まさか遙か闇なる世界の黒神子の力か。しかもその見るからに怪しい木刀は……もしかして古代の遺物ではないでちゅか。そうですよね。そしてその疑惑付きの黒い木刀を持つあなたは一体何者でちゅか?」
正体を明かせと叫ぶ黒神子・天足のアトリエの問いに対し、ラエルロットは本日二回目となる口上と名を明かす。
「遙か闇なる世界の黒神子・英雄殺しの異名を持つ、レスフィナの眷属にして、冒険者を志す、ラエルロットだ!」
「黒神子・レスフィナの眷属……あの人類の敵とまで言われた英雄殺しのレスフィナの眷属だと言うのでチュか。あなたがでチュか。またとんでもない嘘をいう人族でちゅね!」
「やはり、信じないか。まあ~わかってはいたけどな」
ラエルロットは寸前の所で命を救う形となった魔法剣士の女性とダグラス試験官に背を向けると、堂々と黒い不格好な木刀を構える。
圧倒的な力と速さを持つ黒神子・天足のアトリエの猛威にラエルロットは、目の前にいるネズミ顔の頭部をにらみつけながら、これからどうした物かと深く考えるのだった。
遥か闇なる世界の黒神子、天足のアトリエです。
(残るは後、二十四人の異世界召喚者達。こいつらに奪われた、仲間の七色魔石を取り戻すには一体どうしたらいいんだ。目の前にいるあの魔法剣士の女性から七色魔石を奪う事ができればそのまま逃げる事もできるんだが、流石にそれは難しいか)
地面に転がる突然のリーダーの死に誰もが驚愕し警戒を抱く中、ラエルロットは不格好な黒い木刀を拾い上げると悠然と異世界召喚者達を睨みつける。
覚悟を決めた思いと闘志は凄まじく、誰一人逃すまいと周りを囲んでいるはずの異世界召喚者達の方が逆になぜか動けないほどだ。精神的に圧倒しているラエルロットの決意が、本来数の上でも力の面でも圧倒的に有利なはずの異世界召喚者達に謎の警戒心を抱かせる。
そんな中であってもただ一人冷静にラエルロットの謎の力を分析する魔法剣士の女性はリーダーでもある聖戦士の男の死亡を確認すると、厳しい視線をラエルロットに送る。
「ウチのリーダーがあなたに与えるはずだった斬撃による一撃を、痛みや感触といったリアルな感覚だけをそのままカウンターのように触覚や痛覚といった感覚を通してリーダーの体に返すだなんて、一体なんなのよその古代の遺物は。見た感じ特に切られた所もないしダメージは全くないように見えるんだけど、その呪いの効力によってその痛みによる感覚を実体験してしまったみたいね。おかげでウチのリーダーはその激痛と衝撃に耐えられなくなり、そのままショック死をしてしまったわ。そしてあなたがその黒い木刀の呪いにかからないのはその呪いをかけた人物と直接契約をしているからでしょ。しかもその呪いはなぜか異世界召喚者達が普通に体の回りに展開しているオートガードシステムをも無視して直接相手側の体にその攻撃を返す事ができる。だからレベル35の聖戦士でもあるリーダーがたかだかレベル1のまだ冒険者ですらないこの星に住むごく一般的なモブキャラごときに負けたのね。いや、違うわね、あの遙か闇なる世界の魔女の一人とどうやら本当に面識があるみたいだから、もうただのモブキャラと侮る事はできないか。ならそんな危険な古代の遺物を平然と持ち歩いているあんたは絶対に普通の人じゃないわよね。あんた一体何者よ?」
その魔法剣士の女性の疑問を投げ掛ける言葉にラエルロットは改めて堂々と自分の名前を名乗る。
「遙か闇なる世界の黒神子の一人、英雄殺しのレスフィナの眷属にして、冒険者になって勇者職を目指すラエルロットだ。異世界召喚者の魔法剣士の女よ、あんたが奪ったその魂のカケラとも言うべき七色魔石を全て返してもらうぞ!」
「ふん、ウチのリーダーを汚い策略と罠でまぐれにも葬る事ができたからといって粋がるな。もうその呪いの効力はわかったんだから、その黒い木刀に直接触れなければ過敏に恐れる必要はないわ。どんなに粋がってもあんたと私達の力の差は歴然なんだからあなたが圧倒的に不利な事は変わらないわ。そしてあんたにこの状況を覆す手段はもうどこにもないのよ!」
まるで全てを見通したかのように話す魔法剣士の女性にラエルロットはわざとらしく不適な笑みを向けると、一世一代の大博打とも言うべきはったりを噛ます。
「本当にこの呪いがその程度で済むと思っているのか。もしかしたらその聖戦士の男が古代の遺物に触れた事によって、その呪いの効力の範囲が大幅に拡散し広がっているかも知れんぞ。つまりだ、お前らが軽率にも俺に攻撃をしたら、地面に転がる愚かな聖戦士のようにその攻撃は全てお前達に返ってしまうと言うことだ。この話がただのはったりだと……嘘だと思うなら、是非とも構わずに攻撃をしてみてくれ。俺は一向に構わないからよ。だがその時は覚悟しろよ。その攻撃は何倍にも加算されて、呪いの力で増長した全てのダメージがお前達に返って行く事になるだろうからよ!」
必死に凄みながら叫ぶラエルロットの威嚇に周りにいる異世界召喚者達は皆その場から動けないまま尻込みをするが、目の前にいる魔法剣士の女性だけはラエルロットの言動を深く見つめると手に持つレイピアを鞘に納める。だが代わりに反対側の左腕を豪快に振り上げると、左手の手のひらを広げながらラエルロットの目の前で素早く振りかぶる。
「なら試してみましょうか。その呪いとやらが本当に私たちにもかかっているかをね」
「へぇ?」
頭をかしげながら疑問符で答えたラエルロットは、その一秒後に横へと豪快に吹き飛ぶ。
「ぐっわあぁぁぁ!」
女魔法剣士の豪快な平手打ちを右頬で受けたラエルロットはそのまま横に吹き飛ぶと勢いのままに地面へと倒れる。その姿を見た魔法剣士の女性は自分自身になにも起きないことを確認すると安心した笑みを浮かべながらラエルロットを見下ろす。
「フフフ、どうやら呪いの効果は私にはないみたいね。でもまだ安心は出来ないから今度は私が持つレイピアの刃をあなたの腕に突き刺して見ますか。それで全てがわかるわ!」
計算高く極めて慎重に迫る魔法剣士の女性は腰に下げている鞘からレイピアを抜き放つと、ラエルロットとの間合いに入って来る。
その瞬間、地面に倒れているラエルロットは素早く起き上がるとまるで条件反射のようにその手に持つ黒い不格好な木刀を相手にたたき込もうと下から上に向けて袈裟懸けを噛ます。
だがその起死回生の攻撃を寸前の所で難なく避けた魔法剣士の女性はラエルロットの左腕にめがけて手に持つレイピアの刃先を深々と突き立てる。
「遅い!」
グサリ!
ラエルロットは一瞬何が起きたのか分からなかったが、レイピアの一突きで左腕を貫通した刃先と流れでる血を認識すると猛烈な痛みと恐怖で声にならない悲鳴を上げる。
「う……うっあぁぁぁ……腕が……左腕が痛い。剣が貫通した。うわあぁぁぁ!」
「どうやら私の左腕は大丈夫みたいね。これならあなたを安心して殺せるわ」
冷酷に言葉をかけると魔法剣士の女性はラエルロットの左腕を貫通したレイピアの刃先を豪快に引き抜くと、飛び散る大量の血を見ながら血に染まる刃先を一振りする。
「もういいかしら、そろそろ死んで貰っても」
冷たい目を向けながら迫る魔法剣士の女性は二激目の最後の一突きをなんの躊躇いもなくラエルロットの心臓に目がけて突き付ける。その一撃は確実にラエルロットの心臓に当たるかと思われたが、その一撃は間一髪の所で間に割って入って来た何者かに阻まれる。
その素早いレイピアの一撃を寸前の所で止めたのは今まで姿を表さなかった監視役の試験官でもあるダグラスである。ダグラスは魔法剣士の女性が持つレイピアの刃先を自慢の大検で止めると、両腕に怒りの血管を浮かばせながらそのまま力任せに大きく振り被る。
「うっりゃあぁぁぁぁぁあぁーーぁぁ!」
ダグラスが持つ大検による豪快な一振りで後ろへと吹き飛ばされた魔法剣士の女性は、体勢を立て直しながら大きくバク宙をするとそのまま華麗にこうを描き地面へと着地する。
「まさか今になって伏兵が駆けつけて来るとは、命拾いをしたわね。しかも中々の手練れのようじゃない。その見た目と年齢からしてあんたらの上官と言った所かしら。おそらくレベルは30から~40くらいか。でもあなた一人が今頃応援に駆けつけた所で一体なにができるというの。その黒い木刀を持つ男以外はみんな死亡したか、或いは七色魔石に返られてしまったわよ」
警戒しながら話す魔法剣士の女性の言葉にダグラス試験官は回りを確認し必死に情報を集めるが、ラエルロットの『あいつらは……仲間達は……皆勇敢にも必死に戦いました。二人は死亡し、残りの四人は七色魔石を抜かれて石に返られてしまいました』という報告を聞き、驚愕と無念の声を上げる。
「くそおぉぉぉぉ、俺が少し離れた間に異世界召喚者の奴ら、好き勝手な事をしやがって。許さん、ゆるさんぞ。道半ばで倒れていったダンとエアルの二人の少年少女の無念を晴らす為にも、まだ望みのあるその囚われたマーズ・ブルース・レイヤ・そしてミランシェの四人の七色魔石だけはなんとしても返してもらうぞ!」
「フフフフ、粋がるなよおじさん。その年齢からしてかなりの手練れのようだけど、こちらは全部で二十四人もいるんだから、あなた達二人に勝ち目はないわよ!」
女魔法剣士の勝ち目がないという言葉を聞き、「はっ!」と冷静さを取り戻した試験官のダグラスは我に返ると何かを思い出したのか、ラエルロットにだけではなく、周りにいる異世界召喚者達にも向けて大きな声で叫ぶ。
「そうだった、今はこんな事をしている場合じゃないぞ。早くここから逃げないと奴がここに来てしまう。あいつがこの場所に気づく前に早くここから逃げるんだ!」
いきなり慌てふためきながらとんちんかんなことを言うダグラスの態度に状況を掴めないでいる魔法剣士の女性は警戒しながらもその訳を聞く。
「いきなりなに言ってんのよ、あんた。ここから逃げろって、今現在あなた達を取り囲んでいる私達に言う台詞じゃないわね。まさか思わせ振りなことを言ってここから逃げる隙でも探っているのかしら?」
「そんなんじゃねえよ。俺はこいつらと違って少し離れた所にいたから転送後は別の階にあるフロアに飛ばされていたんだが、そこである奴と不幸にも遭遇してしまって、今まで命からがら逃げ回っていたんだ。途中で謎のカラクス鳥にここまで道案内されてお前達がいるこのフロアに導かれた訳だが、あいつもここにいる人間達の臭いや気配を察知して必ずここに来るはずだ。もしもあいつに見つかったらいくらレベル30から35の力を持つ異世界召喚者達が大勢いても、あいつを倒す事もましてや逃げ切る事もできないだろう。だからこの場所を察知される前にできるだけ遠くに逃げるんだ。早くしろ!」
「手練れでもあるダグラス試験官さえも逃げるのが精一杯で、しかもこれだけ大勢いる異世界召喚者達を前にして戦わずに逃げろと言い切るだなんて、相手は一体どんな化け物なんですか?」
怪訝な顔を向けながらいうラエルロットに、ダグラス試験官は周りに注意を払うと緊張した面持ちで言う。
「く、来る……ネズミ顔の頭部を持つ黒いローブに身を包んだ小柄な駿足の化け物が。十二人いる遙か闇なる世界の黒神子の一人、この世界で最も足の速い最速の魔女、天足のアトリエが!」
「遙か闇なる世界の黒神子、天足のアトリエだとう!」
明らかに動揺を隠せないでいるダグラス試験官のその態度に遠巻きに様子を見ていた他の異世界召喚者達が真偽を疑りながらも各々が言葉を述べる。
「あの遙か闇なる世界の天足のアトリエが、ここに来ているの。ちょっと信じられないんだけど」
「そうだよな。もしも仮にその話が本当なら、なんであのおっさんは今の今まで逃げ切る事ができたんだよ。その最速の魔女から速さで逃げ切る事なんてまず絶対にできないはずなのに!」
「全くだわ。いくらこの絶望的な状況を打開したいからって見え透いた嘘はやめて貰いたいものね。流石に往生際が悪いわよ」
各々がまさかと思いながらも否定的な言葉を投げ掛けていると、フロア全体からその疑問に満ちた言葉を否定するかのような謎の女性の声が皆の耳に届く。
「そんなに否定しなくても、もうここに来ているでちゅう。でもまさかこのフロアに人が沢山いるだなんて、驚きでちゅう。一体こんな所に集まって何をしていたのですか。是非とも教えてほしいでちゅう!」
いつの間にかその声が異世界召喚者達がいるフロアの奥から聞こえた事で皆が一斉に後ろを振り返ると、そこにはまるで子供のような小柄な背丈をした一人の女性が立っていた。
その華奢な体に纏う黒いローブの上に見える顔はまごうこと無きネズミの顔で、その両手には誰かの生首が二つ無造作に抱えられていた。
「見た感じ人の生首のようだが、一体だれの生首を持っているんだ?」
ラエルロットが誰にとも無くボソリと思わず呟くと、その問いに答えるかのように異世界召喚者達の中にいた戦士職の二人の男の体が同時に倒れる。
ドサリ、ドサリ!
「きゃあぁぁあぁぁぁぁーーぁぁ、首が二人の首がないわ。いつの間に。ついさっきまでピンピンしていたのに!」
「あのネズミ顔の魔女の接近に全く気づかなかった。あのネズミ顔の魔女はいつこの部屋に入って来て、二人の首を切断したんだ。全く見てはいないし気づきもしなかった!」
「本物だ、本物の天足のアトリエだ。早くここから逃げないと!」
「逃げるだとう、あいつが本物の天足のアトリエなら奴のスピードから逃げ切れる物かよ。それに奴に後ろを見せたらそれこそおしまいだぞ。どうやっても逃げられないのなら、せめて円陣を組んであいつを攻撃した方がいいんじゃないのか。もしも俺達の怒濤の連係攻撃で一瞬でもひるませる事ができたら、その時はみんなちりぢりになって、脇目も向かずに全速力で逃げようぜ。奴から逃げ切るにはもうそれしかない!」
一人の重戦士の男が言葉を発したのと同時に瞬時に首が無くなり、再び皆が驚愕しながらもその視線をネズミ顔の魔女に戻した時、その両手には先ほどとは違う別の人物の生首が四つほど握りしめられていた。
その瞬間首を失った異世界召喚者達の体が今度は四体ほど、首の付け根から大量の血を噴水のように吹き上げながらその場に力なく倒れる。
ドサリ、バタリ、ズッシリ、ズサン!
「うわぁぁぁぁぁぁーー出たあぁぁぁぁ、天足のアトリエが攻撃して来たぞ。みんなバラバラになるんじゃない。固まって円陣を組むんだ。早くしろ!」
「あいつにはオートガードシステムが効かないのか。みんな己の死にすら気づくことも無く一瞬で瞬殺されたぞ。有り得ない、こんな事は流石に有り得ないよ。どんだけチートなんだよ!」
「あの速さを認識して、尚且つ同じような速さで動けないと、おそらくあいつには攻撃を当てる事もできないぞ」
「任せろ、俺に考えがある。スピード自慢の相手を捕らえて負かす方法なら、いろんな漫画を読破し熟知した俺ならあいつの動きを止めることは造作も無い事だ!」
戦う決意を固めたのか神官職の男が自信たっぷりに前へと出ると、何かの呪文を唱えながら足下に煙り玉を投げつける。
パッシュゥゥゥーーン!
どうやら目くらましに使う煙玉のようだが、回りの視界が白い煙で見えにくくなった事で互いの行動は限りなく分かりにくくなったはずである。
そう考えた名も知らない異世界召喚者の神官職の男は、自分が考えた天足のアトリエを打倒する作戦を頭の中で再確認する。
(相手が物凄い驚異のスピード自慢だというのなら奴を止める方法は二つだ。一つは、回りにいる奴らには決して見えない神力の光の束で作り上げた糸を俺の体の回りに展開して、周りのガードを固める事だ。俺達神官職が崇める女神様の神力で作り上げた特殊な糸の螺旋は絶対に断ち切る事はできない。なのでもしもその光の糸に触れたが最後、その瞬間相手の体は結界と化した光の糸のローリングデフェンスで焼き切れ、俺の体に到達する前にその体は瞬時に輪切りにされる事だろう。そう奴は自らの速さが命取りとなるのだ。そして二つ目の罠は、俺の足下の地面の回りに水溜まりのように張り巡らせてある超強力な接着魔法だ。そして当然この煙幕も接着魔法のトラップを隠す為の物だ。だからいくら天足のアトリエが超スピードで動けたとしても俺の間合いに近づいたが最後、獲物がゴキブリホイホイに捕まるがごとくその自慢の足は地面にひっついてその場に固定されてしまう事だろうぜ!)
絶対的な自信を胸に神官職の異世界召喚者の男は天足のアトリエの攻撃を今か今かと待ち構えていると、突然回りを覆う煙をかき分けながら猛スピードで一人の異世界召喚者の仲間の体が神官職の男の間合いに投げ込まれる。その瞬間お互いのオートガードシステムのシールドバリアが激しいスパークを起こし、その衝撃で神官職の男の周りに展開していた見えざる光の糸はその場で掻き消える。
「ちくしょう、仲間の異世界召喚者を俺に投げつけて来やがった。その衝撃でせっかく回りに張り巡らせていた神聖魔法の糸の輪が掻き消えてしまった。くそぉぉ、もう一度早く詠唱をし直さないと」
物凄く焦りながらも再び詠唱を唱え直そうとした瞬間、神官職の男の体から頭が瞬時に無くなる。
「ば、バカな……?」
信じられないというような顔をしながら首だけとなった神官職の男に、天足のアトリエは得意げに語る。
「なぜ、下の地面に広がる粘着魔法に引っかからないのかが不思議でならないのでチュね。なら教えてあげるでちゅう。私の能力は足の速さだけがイメージ的には強く印象づけられるみたいですが、実は私のこのスピードを生かす上で最も重要で必要不可欠な能力は、驚異的な視力と聴力、そして正確無比の反射神経なのでチュよ。その三つが合わさってこそ初めて、私の天足が完成するのです。なのであなたが自分の回りの地面に何かの罠を仕掛けて魔法を展開していた事は最初の段階で知っていました。なので障害物を投げつけて、先ずはあなたの回りを螺旋状に囲んでいた光の輪を粉砕消滅させてから一瞬のウチにその首をいただく事にしました。因みに地面に広がっていた粘着魔法をどうやって避けたかというと、地面に足をつけずに空気を足掛かりに、いいえ空中を走って来ましたから粘着魔法に触れる事はなかったのです。私は、数秒だけなら、その速さを生かして空中を走る事ができまちゅからね。それが答えなのでチュが……もう死んでいますよね。せっかく丁寧に説明してあげたのに、残念でチュウ!」
天足のアトリエはその手に持つ生首をまるでいらないゴミのように地面へと放り投げると、今現在この場にいる異世界召喚者達の中では一番強い(と思われる)魔法剣士の女性に目を合わせる。
「お前達は異世界召喚者達でちゅね。ならあなた達もこの研究所内にあるあれを破壊しに、或いは手に入れる為に来たという訳でチュね。でもあれは絶対に誰にも渡さないでチュ。あれは私が必ず見つけ出して、完膚なきまでに破壊して置くでちゅ。だからあなた達はここで、みんな仲良く死んでほしいでチュ。この星に住む女性がそうポンポンと大量生産のように聖女なんかになれたら正直うっとうしいですからね!」
「そうかお前はこの研究所その物を破壊しにここに来たのか。新たな高性能の力を持つ聖女を作り上げる事ができる可能性を持つこの研究所を、その新薬その物を抹消する為に、だけどそうはさせないわ。私たちとしてもその新薬は必要なのよ!」
「ぬかせ、異世界召喚者ども。その新薬は異世界召喚者達にも、ましてや天足のアトリエにも渡さないぞ。絶対にだ。その新薬はこの星の、この緑ある大地に住む全ての人達の希望なのだ。その聖女になれる画期的な新薬はノシロノ王国に住む人達の物だ。だからここで勝手な事は絶対にさせないぞ!」
天足のアトリエの目的を聞き、魔法剣士の女性は勝手な主張を叫ぶが、その話を聞いていた試験官のダグラスは怒りながらも二人の敵の目的を改めて知る。
怒りながらも叫ぶダグラス試験官の決意を聞いた天足のアトリエは少しだけダグラスの方に視線を向けていたが直ぐにターゲットを再び魔法剣士の女性に戻すと、不気味な雰囲気を漂わせながら淡々と近づく。
「く、来るか、天足のアトリエ。みんな話を聞いて。ここは私が少しでも時間を稼ぐからあなた達は今すぐにできるだけ遠くに逃げて頂戴。私のことは気にしないでみんな自分の事だけを考えて各々の意思と独断で逃げなさい。みんなバラバラに逃げれば恐らく数人は生き残れるはずよ。みんなの幸運を祈っているわ!」
「副隊長、あんた死ぬ気か!」
大きな声で回りの仲間達に最後の命令を下すと、魔法剣士の女性は手に持つレイピアを緊張した面持ちで再び構え直す。
「来るなら来てみなさい。天足のアトリエ!」
「まあ、いいでちゅ、逃げた他の奴らはいつでも殺せるし、今は目の前にいるこの魔法剣士の女と、誰かの手助けで私から逃げ切ったあのおじさんの方を先に仕留めるでちゅ!」
余裕を見せているのか天足のアトリエはゆっくりとした足取りで真っ直ぐに歩み寄ると、何も考える事無く魔法剣士の女性の間合いの中に入る。その瞬間ダグラス試験官はまるで何かにはじかれたかのようにしながらいきなり走り出し、魔法剣士の女性に声をかける。
「おい、異世界召喚者の魔法剣士の女、一時休戦だ。俺とお前とで協力して天足のアトリエの足を止めるぞ!」
「し、仕方が無いわね。僅かな確率だけど、互いに生き残る道はもうそれしかないか。なら二人で攻撃を合わせるわよ!」
「フフフフ、無駄な事でチュ。わざわざここまで歩いてきたのは、私がただ単に早いだけの黒神子ではないと言うことをお前達に見せつける為でチュ。その力の差に絶望しながら死んでいけでちゅ!」
「「ぬかせぇぇぇぇぇーーぇ!」」
両腕を広げながら一~二メートルまで接近して来た天足のアトリエに、魔法剣士の女性とダグラス試験官は互いに物凄い早さの剣速で剣を振り回しながら何度もその体を切り飛ばそうとするが、至近距離で振り回す二人の攻撃をまるで精密機械のように寸前の所で全て交わしてみせる。
「ば、バカな、この至近距離でレイピアを振り回しているのに、天足のアトリエの体に当てるどころか触れる事さえできない。一体どうなっているの?」
「くそぉぉ、やはり攻撃を当てることさえできないか。なんという驚異的な反射神経と視力を持つ化け物なんだ!」
「もう気が済みましたか。ではそろそろあなた達、二人の首を貰い受けますが、いいですよね」
天足のアトリエが不敵に笑いながら動こうとした瞬間、ラエルロットが持つ黒い不格好な木刀の一振りがアトリエの足を完全に止める。
「させるかあぁぁぁぁぁぁ!」
本来なら難なくよけて直ぐに攻撃に移るのだろうが、地面に叩き込まれる黒い不格好な木刀から感じるその同列の力の流れを感じた黒神子・天足のアトリエは、思わず大きくジャンプをしながら後方へと着地を決める。
「ラエルロットか、お前はいいから逃げろ。お前じゃどう転んだって天足のアトリエに勝つことはできない。いいからここは俺に任せてお前だけでもここから逃げるんだ。今お前に死なれでもしたら……あいつに申し訳が立たないからな!」
(あいつに申し訳がたたない……一体何を言っているんだ。ダグラス試験官とは今日出発前に初めて会ったばかりなのに?)
体勢を立て直しながらラエルロットがそんな事を考えていると、今度は余りの緊張に涙目になる魔法剣士の女性がラエルロットに向けて言う。
「黒い木刀のお兄さん、あなた……なぜ私を助けたの?」
「別に助けるつもりはなかったが、つい体が勝手に動いてしまったんだよ。目の前で助けを求める誰かが殺されそうになっていたら、やはり助けてしまうだろ。中には自分の心の弱さに負けて逃げてしまう者もいるが、それでも正しく生きようとする者も少なからずはいるはずだ。それが正常な心を持つ本来の人の姿だろ。いろいろとわだかまりや思う所も勿論あるが、俺はあえてお前を助けるぜ。その行為が、正しいと思う正義の信念が、いつか人と人の思いをつないでくれると信じて!」
「そう、それがあなたにとっての信念であり、常識なのね。あなたの言動を見て思っていたんだけど随分とお優しい冒険者志願者のようね。ヘドがでるわ!」
「ゲロならここでは吐くなよ。この黒神子・アトリエから逃げ切ったら、その借りとしてお前が奪った四人の七色魔石を返してもらうからな。もしもそのまま逃げようとしたら地の果てまで追いかけて行って必ず奪った七色魔石を取り返してやるぜ!」
魔法剣士の女性に対し逃がさない宣言をするラエルロットに不審な目を向ける天足のアトリエは、警戒しながらもラエルロットに声をかける。
「その黒い木刀から流れる強力な呪いの力は、まさか遙か闇なる世界の黒神子の力か。しかもその見るからに怪しい木刀は……もしかして古代の遺物ではないでちゅか。そうですよね。そしてその疑惑付きの黒い木刀を持つあなたは一体何者でちゅか?」
正体を明かせと叫ぶ黒神子・天足のアトリエの問いに対し、ラエルロットは本日二回目となる口上と名を明かす。
「遙か闇なる世界の黒神子・英雄殺しの異名を持つ、レスフィナの眷属にして、冒険者を志す、ラエルロットだ!」
「黒神子・レスフィナの眷属……あの人類の敵とまで言われた英雄殺しのレスフィナの眷属だと言うのでチュか。あなたがでチュか。またとんでもない嘘をいう人族でちゅね!」
「やはり、信じないか。まあ~わかってはいたけどな」
ラエルロットは寸前の所で命を救う形となった魔法剣士の女性とダグラス試験官に背を向けると、堂々と黒い不格好な木刀を構える。
圧倒的な力と速さを持つ黒神子・天足のアトリエの猛威にラエルロットは、目の前にいるネズミ顔の頭部をにらみつけながら、これからどうした物かと深く考えるのだった。
遥か闇なる世界の黒神子、天足のアトリエです。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
「え、俺なんかしました?」無自覚チート《概念編集》で石ころを魔石に、なまくらを聖剣に書き換えて、国を追われた聖女様と世界を救う
黒崎隼人
ファンタジー
◆◇◆完結保証◆◇◆
◆◇◆毎日朝7時更新!◆◇◆
「え、俺なんかしました?」
ごく普通の大学生、朝霧 海(あさぎり かい)が迷い込んだのは、剣と魔法が息づく異世界エーテルディア。右も左も分からぬままモンスターに襲われた彼を救ったのは、聖なる光を操る謎の美少女、ルミナだった。
彼女は言った。『あなた、一体何者なの?』と。
カイ自身も知らない、触れたモノの”理”を書き換えるチート能力《概念編集(リアライター)》。
「ただの石」が「爆ぜる魔石」に? 「なまくらの剣」が「伝説級の聖剣」に!?
無自覚に規格外の力を振るうカイは、やがて国を追われる訳ありの少女ルミナと共に、巨大な陰謀に立ち向かう運命に巻き込まれていく。
これは、一人の平凡な青年が、大切な人を守るために世界の理すら書き換えて最強へと至る、王道異世界ファンタジー!
【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立
黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」
「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」
ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。
しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。
「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。
だが、彼らは知らなかった。
ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを!
伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。
これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
本条蒼依
ファンタジー
氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
