白い羊と黒鉄の探偵 ~狂人達が暗躍し掲げる不可能犯罪に白い羊と黒鉄の探偵が挑む~

藤田作磨

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第一章 『大蛇神の蛇使い』 民間に古くから伝わる大蛇神伝説を利用したトリック使い、狂人・大蛇神の蛇使いとの推理対決です!

13.勘太郎、酒乱の赤城に絡まれる

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 あれから何だかんだで時間は過ぎ、現在時刻は二十一時十二分。
 行為に殺してしまったキングコブラを埋葬する為宿の外へと出た勘太郎と羊野は、丁度いい杉の木を見つけるとその根元に既に死亡したキングコブラの死体を丁寧に埋める。

 軽く手を合わせ祈るその形式的な通例の中、勘太郎は今起きているこの現状を仕切りに考える。

 このキングコブラ……恐らくは誰かが俺の部屋に忍び込んで布団の中に仕掛けて行った物と考えられるが。それを羊野の奴があっさり見つけて逆に殺してしまった。こ、これはこれで良かったのかな?状況から考えてあのキングコブラは恐らく小島晶介が経営する蛇園から盗まれた蛇に先ず間違いないだろう。まだ確認した訳じゃ無いが他にキングコブラを飼っている場所は、この辺りではこの蛇園以外に無いだろうからな。と言う事はだ……そのキングコブラを殺してしまった俺達にその請求が来ると言う事じゃ無いのか。もしそうならそれはかなり面倒くさい事だぞ。一体あのキングコブラが一匹いくらくらいするのかは知らないが、何気に命を狙われた上にその代金まで払わされる事になったら流石に溜まった物じゃないぜ。なのでこの事は俺の心の中にそ~と閉まって置く事にする。

「キングコブラよ……本当にすまんな」

 罪悪感を抱きながら感傷《かんしょう》に浸っていると、行き成り宿の玄関先から声をかけられる。その声のした方を振り返ると、そこには大沢草五郎・宮下達也・小島晶介・池ノ木当麻の四人の姿があった。

「よう探偵達さんじゃないか。この寒い夜に外で一体何をしているんだ」

 声をかけて来た小島晶介の姿を確認した勘太郎は、素早くその場を離れると何事も無かったかの用にその場を誤魔化す。

 ま、不味い。噂をすれば行き成り蛇園の小島晶介さんかよ。ここは何とか誤魔化さねば。

「おや、大沢草五郎社長に・宮下さん・小島さん・池ノ木さんじゃないですか。この宿に来ていたのですか。全然知りませんでしたよ」

「ははは、ちょっと東京から来た刑事さん達に話が合ってな。ついでに三人の社員達も引き連れて部屋に押しかけたんじゃよ」

 そう言葉を口にしたのは紺のコートを着た大沢草五郎である。

「一体どんな要件で訪れたかを聞いてもよろしいでしょうか」

 その羊野の言葉に宮下が代わりに応える。

「勿論蛇神様の事ですよ。あの後また美弥子さんが占いをしましてね。その占いによると今日か明日……また誰かが蛇神様に祟られて死ぬと言う結果が出たんですよ。だから川口警部に相談しに来たんですよ」

「死ぬって、具体的に誰がですか」

「さあ、それは分かりません。ただそう言う予言が出てしまいましたからどうしたらいい物かとちょっと相談に来た次第です」

「わざわざ四人でですか」

「はい、何せ誰かが死ぬという占いが出たばかりですから、流石にこんな夜更けに草五郎社長を一人にする訳には行きませんから。まあ、一つの安全対策ですよ。いつ大蛇神様に襲われても言いようにね」

 その宮下の言葉に草五郎が不機嫌な顔で噛み付く。

「ふん、大蛇神や祟りなどという世迷い言をワシは一切信じてはいないのだが、周りの奴らが一人になるのは危険だと言って聞かなくてのう。勝手について来たのじゃよ。ワシは一人でも大丈夫だと言うのに」

「何を言ってるんですか、あの大蛇がどこで狙っているか分からないんですよ。ここは常に固まって行動しないと流石に危ないですよ」

 怯えた顔を向ける池ノ木の言葉に、羊野はすかさず質問をする。

「貴方達はいつからこの宿にいたのですか?」

「我々がここに来たのは十九時二十分くらいからです。まだみんな大広間で夕食を楽しんでいましたから待合室で刑事さん達が部屋に戻られるのを待っていたんですよ」

「ここへ来るのが不安なら電話で話を済まそうとは考えなかったのですか」

「直接会って刑事さん達と話したいと草五郎社長が言うもんですから、一緒に付いてきたんですよ。もしここで草五郎社長に何かあったら取り返しの付かない事になりますからね」

「なるほど、確かに大沢草五郎社長に何かあったら会社が危ないですからね。それは守ってあげないとね。しかし十九時二十分ですか……私達や川口警部達が部屋に戻ったのが十九時五十分くらいですから、三十分もあれば誰かが毒蛇くらいは部屋に仕掛けられますわね」

「毒蛇……仕掛け……一体何の話ですか?」

「ちょおぉぉぉぉ~っと、羊野君。ちょっといいかな」

 勘太郎はあたふたしながら慌てて羊野の口を塞ぐ。

 キ、キングコブラの事は……今はまだ言う時では無い。もし俺達が行為に蛇を殺してしまった事がバレたら、いくら請求されるか分からないからだ。だから今はまだ無駄なトラブルは避けて置かないと。

 そう勝手に納得した勘太郎は、すかさず話の話題を変える。

「そ、そう言えば夕方頃に村を歩いていたら、蛇のマスクを付けた四人組に襲われたのですが、その事で何か警察からは聞いていますか?」

 その質問に宮下が顔色を曇らせながら答える。

「ええ知ってます。一時間前に、知り合いの警察関係者からその話は聞きました。何でも自首してきた若者達の証言によると、ある謎の人物に頼まれてターゲットを襲撃したみたいですが、逆に頭の可笑しな羊の化け物に返り討ちにされた挙げ句に……その化け物の上司と思われるダークスーツの男に「交番に行って全てを話さないと今度こそ命は無い」と脅されたと言っていました」

 いや、羊野はともかく、俺は全く脅迫なんかはしてねぇぞ。あいつら一体何を言い出すんだよ。

「交番にいた警察官の話では、若者達は皆泣きながら『早く逮捕してくれないと、あの凶暴ないかれた羊女に今度こそ殺されてしまう!』とか言っていたそうですよ。それってやはり貴方達の事でしたか。一体あなた方は彼らに何をしたのですか」

「い、いや、ちょっと余りにお痛が過ぎるから、少し教育的な指導を……」

「あの東京から来たと言う川口警部と言う人、その話を聞いて相当怒っていましたよ」

「ええぇ~っ! マ、マジですか、それは」

 宮下の言葉に勘太郎は思わず縮こまる。そんな二人のやり取りを近くで見ていた羊野が面白そうにニヤケ顔で言う。

「でもこれで、この事件はただの獣害被害の事件では無く、誰かが人為的に仕組んだ物である事を証明した用な物ですわね。まさか向こうからわざわざ尻尾を出してくれるとは思わなかったですけど」

「だ、だからと言ってその人物が大蛇事件を操る黒幕だとは限らないじゃないですか。この事件を面白がって利用しただけの、ただの愉快犯かも知れない。それに東京から来たよそ者を良く思っていない村人も中にはいるかも知れませんし」

「今この場で憶測を言い合っても仕方ないだろう。探偵さん方、大蛇事件に関係があるかもしれない何者かが現れたのならそこからこの事件の糸口を探って見てはいかがかな。何か分かるかもしれんぞ。ではまた何かの情報や証拠を掴んだら直ぐにワシに教えてくれい!お前達には期待しているからな」

「く、草五郎社長、もうそろそろ時間ですので……この辺で」

「そ、そうか。そうだな。では頑張ってワシが納得行く真相を掴んでくれよ。ううう~夜外にいると流石に寒いわい。もう帰るぞ。行くぞ!」

 そう言うと大沢草五郎・宮下達也・小島晶介・池ノ木当麻の四人は、白い息を吐きながらそそくさと駐車場の方へと歩いて行く。

「途中からなんかやたらと話を急かしている用だったが、何か急ぎの用事でもあるのかな?まあ、そんな事はどうでもいいや。確かに外は寒いな。羊野、俺達もそろそろ宿に戻ろうか」

「ええ、そうですわね。確かに今の時期お外は寒いですね」

 白銀の髪を弄りながら羊野が歩き出そうとした時、表玄関の自動ドアが勢いよく開く音が二人の耳に聞こえてくる。
 千鳥足でフラフラと出て来たその人物の赤い顔を見た瞬間、何故彼らが行き成り急ぐ用にその場を後にしたのか、その答えを勘太郎は直ぐに理解した。

「おぉぉ~ぃい、勘太郎!羊野しぁ~ん、起きでぇ~うっ~かぁ」

 口から酒の匂いを漂わせながら現れたのは、高校時代からの勘太郎の先輩にして腐れ縁の知り合い。警視庁捜査一課特殊班こと・赤城文子刑事その人である。

「げぇ、赤城先輩、何しに来たんですか。て言うかあんたもうお酒を飲んでいるんですか。そんなんで明日仕事になるんですか」

「うるしゃ~いぃ、勘太郎、この赤じょぉぉう先輩ぃに説教た~あぁ勘太郎のくしぇ~に生意気だぁ~ぞう。今夜はお前も酒にぃつきぁ~ぃいなさい」

「えええーぇぇ。あんたはジャイ〇ンかよ!」

  普段は真面目な彼女からは想像もつかない程に乱れまくり、何とか逃げようとする勘太郎を捕まえて悪態をつく。

「ざぁ~あ、今夜はひさしぶりにぃ~ぃ、飲みあ~がぁずじょぞお~ぅ。づぎあぇ、がぁ勘太郎ぅ~っ」

「いや明日は、赤城先輩も朝早くから仕事でしょう。お、俺達も仕事何ですよ。だから今夜は流石に飲めませんよ」

「何じゃ~とぅ、この先輩のしゃけがぁ(酒が)、飲めにゃ~いとでも言うのがおぅ」

 ほんと迷惑な先輩だなぁ~と思いつつ勘太郎は目で羊野に助けを求め見渡すが、その肝心の羊野の姿がどこにも見えない。
 勘太郎はヘッドロックをかまして来る理不尽な赤城文子の猛襲に耐えながら玄関先の方へと目を向ける。
 その自動ドアの前にはいつの間にか羊野が隠れる用に立ち、何やら勘太郎の方に向けて口パクでメッセージを送っているのが分かる。
 満遍の笑顔を向けながら送られる羊野の口の動きは分かりやすく。そのまま真似る用に勘太郎が口の動きを読み上げる。

「何々……お・休・み・な・さ・い・だとう。ふ、ふざけんなあぁ!! だ、誰か助けてくれ!」

 酒癖の悪い赤城文子に捕まり。羊野には見捨てられ。その後、勘太郎は半ば強制的に夜が明けるまで酒盛りに付き合わされる羽目になったのは言うまでも無い。
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