白い羊と黒鉄の探偵 ~狂人達が暗躍し掲げる不可能犯罪に白い羊と黒鉄の探偵が挑む~

藤田作磨

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第二章 『絶望階段』 とある高校に出没する階段落下トリックを操る狂人・絶望王子と呼ばれる謎の学生との推理対決です!

2-10.一年前に亡くなった王子大輝の呪い

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「おい内田、お前……教室にあったエリカのカバンからスマホを盗んだんだろう。俺の気が変わらない内に早くエリカのスマホを返せよ。今なら蹴り一発で許してやるからよ」

「そうよ、お前が私のカバンからスマホを引っこ抜いて持ち去った所を他の生徒が見てたんだから、言い逃れは出来ないわよ! 早く出しなさいよ。あれが無いと私、家に帰れないじゃないのよ! たく~っ、この目眩が酷い時に余計な事をしてくれるわね」

「おい、まだ目眩と頭痛がするのかよ。いい加減に病院に行った方がいいんじゃないのか」

「もう夕方の十八時なんだから外来はやってないでしょう。病院には明日の朝に必ず行くわよ。それにしてもあのいかれた羊女、好き放題やりやがって!」

「俺も顔を好き放題殴られたけど、エリカはスタンガンで背中に電流を流された上に特大のビンタを喰らって横に半回転したからな。目眩と頭痛の原因は恐らくそれじゃないのか?」

「今度あったら絶対にただじゃ置かないからな!」

「て言うか、もうあんないかれた奴には二度と会いたくないぜ!」

「そ……そうよね。私も出来たらもう二度と関わりたくないわ」

 時刻は夕方の十八時丁度。深紅の太陽が夕焼けと共に沈み、闇夜を引き連れた月が万遍の星空に神々と輝くそんな頃。駐車場に一台のワゴン車が駐車する。人の出入りが全くない駐車場に降り立った勘太郎・羊野・緑川の三人は凍て付く風に晒されながら江東第一高校の正門前へと歩き出す。

 辺りはもう既に暗くなりかけていたせいか電柱の上に設置してある蛍光灯は鈍く光り、木々や校舎を不気味に照らす。その古びた電灯の真下で目頭を押さえながら迫る綾川エリカとそんな彼女を気遣う用に話す玄田光則は、黒い防空頭巾と黒マントを身に着けた男子学生・内田慎吾に詰め寄り何かを要求している用だった。
 そんな喝上げの用な場面を見てしまった勘太郎は、またかと言う顔をしながら仕方なく彼らの元へと歩み寄る。

「き、君達こんな暗いところで何をしているんだ。もしかして何かもめ事かな?」

 行き成り声を掛けられた綾川エリカと玄田光則の二人はその声に体を硬直させると恐る恐る勘太郎達の方を振り返る。

「まさか……」

 綾川と玄田の目に飛び込んで来たのは、つい四時間前に自分達に叩きのめされた黒服のへっぽこ探偵と眼鏡を掛けた三つ編みの見慣れない女性、そしてその少し後ろを堂々と歩く白い羊のマスクを被った羊野の姿だった。
 その姿を見た二人の緊張は一気にピークに達する。
 まるで猛獣から逃げるかの用に大慌てで体の向きを変えた二人は、悲鳴を上げながら校舎の方へと走り出す。

「ひいいいいいぃぃぃぃーっ、で、出たあぁぁ。白い羊のマスクの女だ! 捕まったら今度こそ八つ裂きにされるぞ。は、早く校舎の中にいる天野君や大鬼君に知らせないと!」

「うそ、嘘よ。なんであいつらがここにいるのよ。特にあの羊女は警察に逮捕されてしばらくはムショから出てこれないんじゃないの。あれだけの傷害事件を起こしてるのになんでこんなに早く出てこれるのよ!」

 とても信じられないという顔で必死に逃げる二人は、よたよたとまだ覚束ない足取りで明かりが付く校舎の中へと消えて行く。

「あ、行っちまったよ。羊野、お前があんな事するからいけないんだぞ」

「あら、私彼らと仲直りしようと思っていましたのに、顔を見ただけで逃げるなんて残念ですわ」

「羊野さん、本当にそう思ってます? とても信じられないんですけど」

「あらあら緑川さんまでそんな事を言うのですか。私って結構信用が無いのですね」

 そんなどうでもいい会話をしながら、三人は倒れている内田慎吾の前で立ち止まる。

「大丈夫かい。君は確か内田慎吾君だったよね。一体どうしたんだ」

 そう言いながら勘太郎は内田慎吾に優しく手を差し述べる。そんな勘太郎の態度に始めはただ戸惑っていた内田慎吾だったが、その人物が昼休みに助けに来てくれた人だと分かるとその差し伸べた手を恐る恐る掴んで見せる。

「あ、ありがとうございます、もう大丈夫ですから」

「スマホがどうとか言っているみたいでしたが、どうかしたんですか?」

「僕も詳しくは分かりませんが話によると、何でも綾川さんがスマホを誰かに盗まれたみたいで……それでその盗んだ相手が僕だと言うんですよ。僕が綾川さんのカバンからスマホを盗んだ所を見た生徒がいるとか言っていたけど、僕は本当に綾川さんのスマホなんて盗んじゃいないんだ。それなのにあんな因縁を付けて来るだなんて、いくら何でもひどいですよ!」

「ええ、どうせあんなのは有りもしない嫌がらせですよ。きっと羊野さんにやられた憂さ晴らしにまた有りもしない話をでっち上げてるに決まってますよ!」

 そう言って内田を弁護するのは、内田の弱々しい姿に同情した緑川章子である。緑川は内田に会うのは今日が初めてだが大体の話はもう既に勘太郎に聞いているので、実際に見た絶望王子の姿にかなりいたたまれないでいる様子だった。そんな彼女も高校時代は割と虐められていた方なので今の内田慎吾の境遇にかなり同情的なのかも知れない。そんな緑川の発言に羊野が冷静に話に割って入る。

「果たして本当にそうでしょうか。もしかしたら本当にスマホが無くなったのかも知れませんよ。だってそんな嘘の為に今もこんな遅くまで校舎内に残っているとは流石に思えませんからね。それにそうまでして内田慎吾君に絡むのは、他に一連の事件の犯人と関連づける何かがあるのだと思いますよ」

「関連づけるも何も、内田君が絶望王子の姿をしているからじゃないのか。まあ、あの姿を半ば強制的にさせているのは他ならぬあの不良達でもあるから、その同じ姿をした絶望王子が人を階段から突き落としているのならそれを疑わない方が可笑しいだろう」

「でもそれだけの理由で内田君を……あの黒い防空頭巾を被った学生通り魔と疑うには流石に無理があると思いますがね。だってそうでしょう。犯人がもし絶望王子の存在を知っているのなら誰でも絶望王子の姿を真似られますからね」

「まあ確かに、真似ようと思ったらそれ程難しい姿じゃないからな」

「でもあの内田慎吾君を彼らは必要以上に疑っている……それは何故でしょうか」

「それは……」

「答えは簡単ですわ。内田慎吾君が犯人だと思う、何か別の根拠があるからですよ。だから彼らは内田君があの仲間達を次々と怪我をさせている絶望王子だと決めつけている。しかもそれをいい事にその状況を上手く利用している本当の絶望王子がこの校舎内にいるのだとしたら、その犯人が絶望王子になりすまして綾川エリカさんのカバンからスマホを盗み取ったとも考えられますわ」

「内田慎吾君になりすました絶望王子が綾川エリカからスマホを盗み取っただって……一体何の為にそんな事を?」

「そんなのは決まってますわ。次の犯行に利用する為ですわ」

「次の犯行だと。お前の言う事がもし本当なら今校舎内に戻った綾川エリカと玄田光則の身が危ないかも知れないじゃないか!」

「まあ、彼らの身がどうなろうと私としては知った事ではありませんが、あの階段落下事件を作り上げた犯人が今もこの校舎内にいるのなら今が犯人を捕まえる絶好のチャンスなのかも知れませんね。もしかしたら犯人は今まさにその罠を発動させようとしているのかも知れませんからね」

「不味いぞそれは……なら俺達も校舎の中に入ってみるか。校舎内にはまだ残っている生徒や先生達が江東第一冬祭りの出し物の制作作りをしているみたいだしな。それにさっきのあの二人の話だと、他に天野良夫や大鬼力もまだ校舎内にいるみたいだから安否だけでも確認しないとな」

「ええ~、別にほっといてもいいんじゃないですか。彼らは自業自得ですよ」

「そういう訳にはいかないだろう。例えどんな人間であろうと絶望王子の被害に遭わせる訳にはいかないからな!」

  不満を漏らす羊野と緑川をなだめながら勘太郎が校舎に走り出そうとした時、校舎内の電気が一斉に消え視界が真っ暗になる。

「な、なんだ。行き成り電気が消えたから周りが見えないぞ。もしかして停電か?」

 勘太郎が思いを口にしたその数秒後、何事も無かったかの用に元通りに電気が付く。

「わあっ、びっくりしましたね。今のは一体何だったのでしょうか?」

「ホホホ~っ、どうやら始まった見たいですわね。いますよ恐らく……あの悪い絶望王子がこの校舎の中に」

「くそ、しまった!」

 その宣言とも言える羊野の言葉を聞いた勘太郎は直ぐさま走り出す。そんな焦りと不安をあざ笑うかの用に人の悲鳴が校舎の外まで響き渡る。

「ぎゃああぁぁっ! 誰かぁ~誰かあぁぁ、早く来てくれ! 綾川が……エリカが!」

「待っていろ、今行くぞ!」

 表玄関入り口の扉を開けた勘太郎の目に飛び込んで来たのは、靴棚が並ぶ一階の階段の下で倒れている綾川エリカとその彼女を助け起こそうとする三人の不良学生達の姿だった。

「やめろ。倒れている人を無闇に起こすな。頭を打っているかも知れないだろう。今救急車を呼んでやるからそれまで待つんだ!」

 そう言うと勘太郎は慌てふためいた様子で携帯電話を取るが、その行為を倒れていたはずの綾川エリカが止める。

「その必要は無いわよ……頭は打ってないから」

 転倒した時に打ったと思われる足をさすりながら綾川エリカがフラフラと立ち上がる

「エリカ、お前無事だったのか。停電になったと同時に行き成り階段から落ちるだなんて、びっくりさせるんじゃねえよ!」

「ごめん、目眩もあったし……行き成り電気が消えたから足下が狂ったのよ」

 本気で心配する玄田光則に綾川エリカは本当に大丈夫だと体を動かしながらアピールする。そんないい雰囲気の二人を溜息交じりに見つめる天野良夫と大鬼力だったが、その視線を今度は行き成り現れた勘太郎に向ける。

「またあんたか。一体今度は何のようだよ。へっぽこ探偵さん」

「昼間はあんな目に合ったと言うのに懲りずに良く来るぜ。また俺達に蹴られに来たのかよ!」

 馬鹿にした口調でニヤニヤと笑う天野良夫と大鬼力の二人に、玄田光則の緊張した声が飛ぶ。

「き、気をつけろ。このへっぽこ探偵はまたあの頭の可笑しな白い羊の女を連れて来ているぞ! 何故かは知らないがもう既に警察署から出て来たみたいなんだ!」

「なんだってぇ? 昼頃に警察に連れて行かれたばっかだぞ。まだ三~四時間しか経ってないのになんでこんなに早くムショから出てこれるんだよ。いくら何でも出て来るのが早過ぎるだろ!」

「俺は自慢の右拳を大怪我までさせたれたと言うのに。あの羊女の事は天野君のご両親が何とかしてくれたんじゃなかったのかよ!」

「そのはず何だが、可笑しいな。パパとママにはちゃんとメールで、頭の可笑しな羊女に襲われたからちゃんと傷害罪で訴えてくれと知らせておいたんだけどな?」

 不思議がる天野良夫と大鬼力の二人に勘太郎は注意を促す。

「俺達の事はどうでもいいだろ。そんな事よりも今は綾川エリカが落ちたこの階段落下事故の事だ!」

「綾川が階段から落ちたからって何だてんだよ。まさかこれも王子大輝の呪いか何かだと言うんじゃねえだろうな。馬鹿馬鹿しい!」

「ですが他の被害者達と同じ用に綾川エリカさんもまたこの校舎の階段で転倒している。それは紛れもない事実です。そしてその謎を解かない限りみんな安心してこの校舎の階段を使用できないはずです」

「まあ、確かにそうなんだがな」

「そんな訳で綾川さんに質問です。停電になった時何か変わったことはありませんでしたか?」

 その勘太郎の質問に綾川エリカは面倒くさそうに答える。

「特に何も変わったことはなかったけど。ただ行き成り停電になったからびっくりして階段から足を踏み外しただけよ」

「つまり誰かに体を押されてもいなけねば、足を引っかけられてもいないと」

「ええそうよ。つまり私が勝手にすっ転んで階段から落ちたのよ。だから呪いでも何でも無いのよ」

「そうですか。でも綾川エリカさんが言っている目眩とは一体何が原因なんですかね」

「あんたの連れて来たあの羊女があれだけの事をやらかしておいて、それをあんたが言うんかい!」

 そう四人の不良達が一斉に叫んだ時、行き成り現れた羊野に綾川エリカは背後を取られる。

「ひいぃぃぃー、羊女! いつの間に私の後ろにいるのよ!」

 恐怖で引き攣る綾川エリカの顔を両手でがっしりと掴んだ羊野は白い羊のマスクを外すと、彼女の顔をマジマジと見る。

「ひいぃぃぃっ、何なのよこいつ。怖すぎる。この意味不明の行動が非常に怖すぎるわ。それに私の目をじ~と凝視しながらさっきから一言も話さないんだけど。一体私に何がしたいのよ、こいつ。まさか私にメンチを切っている訳じゃないでしょうね? でもそう言うのとも何だか違うみたいだし……よく分からないわね。あ、あなた達見てないで早く私を助けなさいよ!」

「そう言われてもな。この羊女に手を出すとまた怪我をさせられそうだしな」

 そう言って怖じ気づく三人を見た綾川エリカは、仕方なく黒服の探偵に助けを求める。

「た、探偵さん……黒服の探偵さん。この白い羊のマスクの女性を何とかしてよ。私の顔をじ~と覗き込んで何のつもりか分からないけど、とにかく不気味で気持ち悪いのよ。私がやめてと話し掛けてもこいつは一言も話さないし……頭のネジが何本かいかれてるんじゃないの?」

「おい羊野、一体何のつもりかは知らないがいい加減その手を話してやれよ。綾川さんが本気で怖がってるだろう」

 その勘太郎の声を聞いた羊野が綾川エリカの顔から漸《ようや》く両手を話す。

「大丈夫か、エリカ。おい、へっぽこ探偵、そのいかれた羊女を俺達に近づけないでくれ。もうあんたらには関わりたくないからな!」

「そういう訳にはいきませんよ。俺達もこの階段落下事件を調べないと帰れないんで」

「あんたらが追っている事件は近藤や金田が襲われた事件であって、この高校の階段事件じゃねえだろう! 直接関係ない事件に首突っ込んでんじゃねえよ!」

「この高校の階段事件が俺達が追う事件と関係ないかはまだ分かりませんし。その関連性を調べる為にこの高校で先生方や生徒達に話を聞いてるんですから協力して下さいよ。あなた達の何気ない情報がこの事件を解決する鍵になるかも知れませんからね」

「よく言うぜ全く、その探偵が生徒に怪我をさせやがって」

「俺、理不尽にもあんたらに蹴られた事をもうお忘れですか。でもここはお互い痛み分けと言う事にしましょうよ。いがみ合っていても始まりませんし」

「痛み分けだと。どう見てもこっちの方が被害重大だろ。後二~三発お前の顔を殴らせろや!」

「俺は別に構いませんが、今度俺の相棒が切れたら止めてやれる自信がありませんのでそれでよろしければいつでもどうぞ」

 そう言うと勘太郎は意味ありげにニヤリと笑う。

「て、てめ~、俺達を脅すつもりか!」

「あんた見かけによらず性格が悪いな」

 青い顔をしながら勘太郎を見る天野良夫・大鬼力・玄田光則の三人の沈黙を破るかの用に綾川エリカが話し出す。

「私達だって何も何の理由も無しにあの内田慎吾を問い詰めて疑っている訳じゃないのよ。それなりの疑いがあるからやっているのよ」

「お、おいエリカ、お前余計なことは……」

「もういいじゃ無い。知ってる事は全部話してあげましょうよ。それでこの白黒探偵さん達は納得するんでしょ」

「まあ、そうなんですが、やはり何か意味があってあの内田慎吾君を虐めてたんですね」

「別に虐める気はなかったけど、あいつが余りにも強情で自分の非を認めなかったからちょっとやり過ぎただけよ」

「それで、内田慎吾君がこの全ての事件の犯人だと思える根拠は一体何ですか?」

「一年前、王子大輝君が階段から落ちた時、私見たのよ。階段から転がり落ちる王子大輝君と小枝愛子の二人に、その瞬間を目撃した天野君・大鬼君・玄田君・近藤君・金田君・それに私を入れた六人……全部で八人の他にその現場を覗いていた九人目の影をね」

「九人目の影だって。まさかその覗いていた人物があの内田慎吾君だと言うんですか」

「ええ、壁の陰からそっと覗いているのを私は見たわ。一瞬顔を出しただけだったからあの場にいた人達は誰も気付かなかっただろうけど私はあいつの姿を見ていたのよ。だから私達はあいつが全ての犯人だと思ったのよ」

「う~ん、でも仮にもしその内田慎吾君がその一年前に起きた階段落下事故を目撃していたとして、あの一連の事件を引き起こす動機にはなり得ないと思うのですが、何か彼の思いを引き立てる強い動機でも無いとそう簡単に人を危める事は出来ませんよ。例えば何か強いショッキングな物でも目撃して復讐を決意したとかね」

「そ、それは……」

 口をつぐみ押し黙る綾川エリカの前に天野良夫が慌てて割って入る。

「そこまでだ、綾川はもう何も話さなくていい。探偵さんももういいだろう。今日は綾川もいろいろあって疲れてるし、話は明日にしてくれよ」

 なんか慌てて言葉を遮られた用で腑に落ちなかったが仕方なく勘太郎はその言葉を受け入れる。

「分かりました。話はまた明日にしましょう。綾川さんが内田君に取られたと言っていたスマホの件はこちらでも内田君に聞いておきませんで、明日はちゃんと病院に行って下さいね。もしかしたら頭を打っているかも知れませんので」

「ええ、そうさせて貰うわ。無くなったスマホの件はお願いね」

 そう言って頭を摩る綾川エリカの姿を見つめながら勘太郎は思う。

 一年前に起きたあの王子大輝が階段から落ちた事故の現場にあの内田慎吾が実は人知れず関わっていたと言う事実。そしてその事に気付いた不良達が疑心暗鬼となりその目撃者でもある内田慎吾君を今も疑っている。でも仮にあの不良達の言う用にもし内田慎吾がこの一連の事件を起こした犯人だったのだとしたら、その動機は絶対に一年前の事故に関わる事件と言う事になる。そうでなけねばこの階段落下事件を作り上げる意味が全く無いからだ。ただ単に復讐がしたいのなら他に復讐方法などいくらでもあるからだ。でもこの犯人は敢えて階段落下に関わるトリックで相手を死傷させている。そこに必ずこの犯人のこだわりと動機があると考えられるからだ。

「しかしあの内田慎吾君があの現場を覗いていたとは、これは是非とも内田慎吾君に話を聞かないとな。もしかしたら何か新たな情報が聞けるかも知れない」

「内田慎吾君なら恐らくまだ校門前に緑川さんと一緒にいると思いますので話は聞けると思いますよ」

 そう言葉を交わした勘太郎と羊野は、まだ校門前にいると思われる内田慎吾の元に向かおうと一歩足を踏み出す。するとその瞬間天野良夫のスマホの着信音が響き、その音に驚いた天野良夫は学ランのポケットから自分のスマホを取り出すと、近くにいた綾川・大鬼・玄田と顔を見合わせながらその掛かって来た電話に出る。

「もしもし。おい、お前は誰だよ。一体誰のスマホを勝手に使っていると思ってるんだ。とっととそのスマホを持ち主の所に返しやがれ!」

 その天野良夫の口ぶりからしてその電話を掛けて来た人物はどうやら綾川エリカさんのスマホを使って天野良夫のスマホに掛けて来たらしいのだが、今まで強気で話していた天野良夫の顔が瞬く間に青ざめる。

「天野君、一体どうしたんだよ」

「そうよ、早くその盗んだ人に私のスマホを返す用に言ってよ!」

 その玄田と綾川の言葉に急かされる用に天野良夫は持っているスマホを無言のまま前へとかざすとスマホの通話機能を大音量にしてみんなに聞かせる。
 その大音量から聞こえる言葉は勘太郎と羊野の耳にもハッキリと届いた。

『わ、私は王子大輝こと絶望王子……死者の世界からお前達に復讐する為に……この江東区に舞い戻った……復讐者だ……故に復讐はもう既に……開始されている。次の生け贄は果たして……誰かな。私は王子大輝こと絶望王子……死者の世界からお前達に復讐する為に……』

とその言葉をまるで壊れた蓄音機の用に機械的に繰り返すだけなのだが、だがその効果は覿面てきめんで天野良夫を始めとした四人の不良達は皆怯えながら各々が顔を見渡す。

「な、なんだよこれ。王子大輝って……あいつは去年階段事故で死んだんだから電話を掛けて来るなんてありえねえだろう!」

「絶望王子って……やっぱりあの一連の事件の黒い防空頭巾を被ったマント姿の学生通り魔はやはり王子大輝が扮した絶望王子なのね。やっぱり私達をあの世から殺しに来たんだわ!」

「そんな事がある物か。わ、分かったぞお前は内田だな。表の校門から隠れて電話を掛けているんだな。そうだろう……そうに決まってる。ハハハハッ魂胆が見え見えなんだよ。てめえ~後でこの落とし前は付けさせて貰うからそのつもりでいろよ!」

 ガッキイイイイーン……ガラガラ~ゴロン!

 そう天野良夫が叫んだ瞬間後ろの方で大きな金属音が響き、床下にぶつかる何かが大きく跳ね上がる。

「うわゎっーっ、な、なんだ。今の音は一体?」

 勘太郎が後ろを振り向くと床には大きな傷が付き、その近くには金属性のバットが造作に転がる。この状況から察するにこの金属バットはどうやら上から落ちてきた用だ。
 そんな勘太郎が上を見上げるよりも早く四人の不良達の声が驚きとなって校内にこだまする。

 彼らが驚くのも無理は無い。何故なら5階の最上階の階段の手すりから顔を出し見下ろすその黒い防空頭巾の姿は間違いなくあの絶望王子その物だったからだ。
 肝心の防空頭巾の中の顔は黒い網で覆われているせいか全く見えなかったが、子供の用に奇妙な笑いを発するその姿は物凄く不気味としか言いようがなかった。
 だがそんな絶望王子を見て一つだけハッキリとした事がある。それは五階のフロアの階段にあの絶望王子が現れた時点で内田慎吾の疑いは晴れたと言う事だ。何せ今彼は緑川と共に外の校門前にいるはずだからだ。
 そんな勘太郎の冷静な分析を余所に、周りにいた天野良夫・大鬼力・綾川エリカ・玄田光則の四人は上を見上げながらとても信じられないと言う顔で叫ぶ。

「あ、あの絶望王子がなんで五階にいるんだよ。確か内田はまだ外の校門前にいるんだよな。だったらあの五階にいる絶望王子は一体誰なんだよ!」

「あの絶望王子が一階にいる俺達に向けて金属バットを投げてきたのか。たまたま誰にも当たらなかったから良かった用な物の、もし当たっていたら怪我じゃ済まなかったかも知れないな」

「つまりあの絶望王子は確実に俺達を殺す為に上からあの金属バットを投げたと言う事か。ちくしょう、ふざけやがって。何処の誰かは知らないが絶対に許さないぞ! 綾川はここにいろよ。行くぞお前ら!」

 そう言うと天野良夫・大鬼力・玄田光則の三人は五階に向けて階段を駆け上る。

「待てお前ら、それは余りにも危険だ。奴の挑発には絶対に乗るな。恐らくあの絶望王子の狙いはお前達を誘き出す事だ!」

「もう聞こえてませんわよ」

「くそ~っ、なら俺達も行くぞ!」

 そう言って階段を上ろうとする勘太郎を羊野が止める。

「待って下さい、黒鉄さん。ただやみくもに駆け上がってもあの絶望王子を捕り逃がす可能性の方が高いですわ。そうでなければあそこまで堂々と私達に顔は見せませんから」

「一体何が言いたいんだよ」

「つまりです、今から駆け上がっても絶望王子は先ず絶対に捕まえられないと言う事です。恐らくは事前に脱出経路を準備しているのかも知れませんよ」

「脱出経路か……多分そうかもな。だがだからと言って奴を追わない訳には行かないだろう!」

「ただ無闇に追撃するのは効率が悪いし無駄な努力で終わると言っているのですよ。せっかくあの絶望王子を捕まえる事の出来るチャンスが来たと言うのに」

「ああ、そうだよ。だから早く奴の後を追わないと行けないんだろう」

「まあ、追う事に関しては否定はしませんがやり方に異論があるのですよ。せっかく犯人が上の建屋にいるのですから、ここは追うのでは無く絶望王子が降りてくると思われる全ての通路に見張りを置いて完全に逃げ道を塞いでから上へと追い込みましょう」

「なるほど、つまりは罠網漁と同じか。獲物が逃げないように全ての入り口を封鎖してからじっくりと絶望王子を探しに行くと言う事か。でも今は俺とお前しかここにはいないぞ。その人員は一体どうやって集めるんだよ?」

「大丈夫ですわ。あれだけの音を響かせたのですから、もうすぐあの方々が現れますわ」

「現れるって誰がだよ?」

 その勘太郎の疑問に応えるかの用に廊下の方から数人の大人の声と走る音が聞こえて来る。そう廊下から現れたのは職員室から出て来た三人の先生達である。そう職員室は一階にあるので嫌でもさっきの金属バットの音は一階フロア中に響いた用だ。その三人の大人達の中にはあの数学顧問で三年A組の担任の谷口秋人先生と作業着を着た用務員の田中友男、そして三年A組の教室を初めて訪れた時にすれ違った如何にも真面目そうなナイスミドルの先生だ。その三人の大人達は皆徐に落ちている金属バットを見つめると、そのまま視線を勘太郎と羊野に向ける。どうやら彼らは勘太郎と羊野を疑っているようだ。

「この落ちている金属バットが床に当たって大きな音が響いたんだな。まさかあなた達がこの金属バットを上から落としたんじゃないだろうな?」

 疑いの目で見つめる真面目そうな男の先生に勘太郎が急いで答える。

「いいえ、それこそまさかですよ。金属バットを落としたのは、この校舎内に巣くう犯人が直々に落としたんですよ」

 すると今度は用務員の田中友男が話に割って入る。

「犯人とは一体誰の事を言っているのですか。不良学生達の事じゃ無いのですか?」

「いいえ、彼らではありません。それどころか今現在天野君達はその犯人を目下追跡中です。なのでその犯人を捕まえる為にも俺達に協力して下さい!」

「協力とは具体的にどうしたらいいんですか?」

 その質問に床から羊のマスクを拾い上げた羊野が手短に話し出す。

「現在、黒い防空頭巾に黒マントを羽織った絶望王子が五階に潜伏しているのを私達は確認済みです。なので先生達と用務員さんには犯人が下に降りられそうな階段をそれぞれ別れて見張ってて欲しいのです。犯人の逃げ道さえ塞いでしまえばもう袋のネズミですからね」

「分かりました。では私は外の非常階段を見張っています。もし密かに逃げてくるなら人気の少ない非常階段を使う可能性が非常に高いですからね」

 そう言うと用務員の田中友男は外にある一階の非常階段へと走り出す。

「では私は一階の裏階段を見張っていますよ。教頭としてバットを投げ付ける用なやからは見過ごす訳にはいきませんからね」

 自分を教頭と名乗ったその男の名は相馬光太。この江東第一高校の教頭先生が自ら一階裏階段の見張りを買って出る。

「じゃ俺は表階段で綾川と共に誰か降りてこないか見張ってますよ」

 その谷口秋人先生の言葉を聞いた勘太郎と羊野は、先に五階に向かった天野達の後を追う為階段を上り始める。

「これで犯人は袋のネズミですわ。後は各階を虱潰しらみつぶしに探して絶望王子を見つけるだけですわ!」

「先に五階に向かった天野達が心配だ。無茶な事はしてないといいが」

「そうですわね。下手に犯人を追い詰めると何をされるか分かりませんからね。恐らくは凶器を持っているでしょうし」

「なら、尚更早く急ぐぞ!」

 そう言っている間に勘太郎と羊野は5階のフロアへとたどり着く。電気が付いていない5階の各部屋に電気を付けながら隅々まで探し回った勘太郎と羊野は今度はその捜索範囲を最上階の屋上まで広げる。
 なぜか屋上の鍵が開いていたので犯人は屋上から非常階段で逃げた共考えたが、その考えを羊野があっさりと否定する。

「恐らくあの絶望王子は屋上には来ていませんわ」

「なんでそんな事が分かるんだよ」

「金網の下を見てくださいな。床に煙草の吸い殻が何本かありますでしょ」

「ああ、あるな。これがどうしたんだよ」

「吸い殻に触ってみて下さいな。まだ少し温かいとは思いませんか。しかも仄かに煙草の臭いがしますし。恐らくはついさっきまでこの屋上に人がいたと推測されます」

「こんな暗闇の外で隠れて吸っていたのか。だとしたらそれは間違いなく学生の誰かだな。煙草の銘柄は多分セブンスターかな」

 勘太郎がそう呟くと羊野は息を吸いながら高らかに叫ぶ。

「いい加減に出てきて下さいな。近藤正也さん。貴方がここにいることは分かっているのですから!」

 その羊野の声から数秒後外に出て来たのは、貯水槽の陰から姿を現した近藤正也だった。近藤は口をへの字に曲げながら羊野に噛みつく。

「けっ、まさか床に捨てた煙草の吸い殻で居場所を特定されてしまうとはな。こいつはうかつだったぜ。だがここにいるのが俺だと何故分かったんだ?」

「簡単な事ですわ。天野君達の不良の面々が目下絶望王子を追跡中でしたので後は貴方くらいしか隠れて煙草を吸う人はいないと考えたまでの事ですわ」

「いや~俺達の他にも不良学生はまだまだいるだろう」

「まあ、他にも不良達はいるとは思いますが、絶望王子の姿を見て隠れる用な人は貴方しかいないと思ったまでの事ですわ。何故なら大概の人は絶望王子の姿を見たらそれは内田慎吾君だと思ってしまいますが。でも貴方はそうは思わなかった……違いますか」

「ちっ、お前は屋上で俺の一部始終でも見ていたのかよ、きもちわりい~な。でも確かにお前さんの言う通りだぜ。俺は絶望王子の姿を見たからこの貯水槽の陰に隠れたんだよ。あの絶望王子はどう見ても内田慎吾じゃなかったからな」

「貴方がここで見た事を全て教えて貰えますか」

「ああ、いいぜ。俺も綾川エリカが無くしたと言うスマホを一緒に探していたんだが、急に煙草が吸いたくなったから屋上を探して来るとか言ってここで煙草休憩をしていたんだよ。だけど校舎の電気が全て消える現象と何処かにぶつかる金属の音で俺は屋上入り口から5階の階段を覗いたんだよ。そしたらそこにあの絶望王子が立っていたんだ」

 その近藤正也の話を聞いて勘太郎は、思わず生唾を大きく飲み込む。

「幸いその絶望王子の頭を上から覗く用な形になっていたから見つからなかったが、もし屋上にいる事がバレたら今度こそあの絶望王子に殺されると思ったから怖くなってこの貯水槽の裏に隠れていたんだよ」

「なるほど、だったら私達の姿を見たら出て来てもいいと思うのですが」

「暗くて誰が屋上に来たのかよく分からなかったし、煙草を隠れて吸っていた手前出るに出れなかったんだよ。そのくらいは察しろよ!」

 身勝手にも怒り出す近藤正也に勘太郎はまあまあと言いながら彼を宥める。

「では近藤君も俺達の後に付いてきて下さい。あの正体不明の絶望王子はまだこの校舎内の何処かに潜んでいますから」

 そう言うと勘太郎は羊野と近藤正也を引き連れてまだ電気が付いている四階のフロアへと下り立つ。
 静まり返った四階の廊下は所々から漏れる教室の光で不気味に照らし出され。加湿器から噴出する水蒸気の音だけが周りの静けさに得て抗うかの用だ。そんな各教室を勘太郎と羊野、それにその後ろを付いて来る近藤正也が一つ一つ調べ始める。

「屋上と5階のフロアには誰もいなかったが、四階の各教室にはまだ人がいるようだな」

「そうみたいですね。どうやら幾人かの生徒達は居残って三日後の冬祭りに展示する出し物を作っているらしいですよ」

「ならそちらの方にも顔を出して見るか。もしかしたら何か目撃しているかも知れないからな」

 三年B組・D組・E組の教室の電気は既に消えている用だったが、A組とC組の教室それに科学部の部室にだけはまだ電気が付いている用だ。その事を知った勘太郎は科学部の部室の引き戸を勢いよく開ける。

「失礼します。誰かいますか?」

 恐る恐る部屋の中を見渡すとそこにいたのは、セミロングの髪型がよく似合う三年A組の学級委員長・佐野舞子だった。
 佐野舞子の方も始めはビックリした様子だったが、勘太郎の顔を見ると直ぐに安堵の顔へと変わる。

「た、探偵さんでしたか、もうビックリさせないで下さいよ。さっきトイレにいたら行き成り電気が消えちゃうし、本当心臓に悪いですよ。まあ直ぐに電気が付いたから良かったんですけどね」

「佐野さんでしたか。小枝さんとは一緒では無いのですか」

「私が科学部の部室に来た時には小枝さんはいませんでした。一体どこに行ったのかしら? お手洗いから出て来たら今度は天野君達とばったり会って、絶望王子の格好をした凶暴な犯人を探していると言うじゃ無いですか。だから私もビックリして科学部の部室で一人で作業をしている小枝さんの安否を確認しに来たんですよ」

「で、その小枝さんは一体どこに行ったのですか」

「わかりません。まさか私と同じ用にトイレにでも行ったのかしら。まあ小枝さんの事も気になりますが、その絶望王子は一体何をしたんですか。天野君達が血相を変えて四階まで来たと言う事は何かをしたんですよね、その絶望王子は」

「一階の表階段下にいる私達に向けて五階の階段から金属バットを投げつけて来たんですよ。本当にビックリしましたよ」

「金属バットをですか。それで皆さんは大丈夫だったんですか」

「幸運にも誰にも当たりませんでしたから良かったんですけど、天野君達が怒ってしまって五階までその(絶望王子の姿をした)犯人を探しに行ったと言う訳ですよ」

「その絶望王子は内田慎吾君じゃないのですね」

「ええ、違います。その時内田君は外の校門前に俺達の連れと一緒にいましたから、五階に先回りする事は先ず不可能だと思います」

「ならその絶望王子は一体誰なのでしょうか?」

「それはまだ分かりませんが、その絶望王子を逃さない為に一階の全ての階段に見張りを付けておきましたからその正体が分かるのも時間の問題と思われますよ。つまりこれで犯人は袋のネズミと言う訳です」

「なるほど、なら後はこの校舎内にいる犯人をゆっくり捜せばいいと言う訳ですね」

「まあ、そう言う事です。因みに四階のフロアには生徒は後何人残っているのですか?」

「A組の教室には私を入れた六人で、C組の教室には確かまだ十人ほどいたはずです。そして科学部の部室には小枝さんが一人でいました」

「小枝さんが一人でですか……それで天野君達は今どこにいるのですか」

「多分三年A組の教室にいると思いますよ。教室にいる人達に絶望王子を見たかどうかを聞いていましたからね」

「そうですか。なら俺達も三年A組の教室に急ぎましょう」

「いいえ、私はここで小枝さんを待ちます。多分もう少しで戻ってくると思いますから。彼女が部室に戻ったら私も彼女を連れて三年A組の教室に向かいますわ」

「そうですか。分かりました。俺達も小枝さんを見かけたら科学部の部室で佐野さんが待っていると伝えて起きますよ」

 そう言うと勘太郎は科学部の部室を後にし、三年E組の教室から調べ始める。電気をつけ掃除用のロッカーの中や人が入れそうな戸棚の中を探していると、急に体をモジモジさせながら近藤正也が勘太郎にある事を訴える。

「そう言えば俺、屋上で夜風に当たりながら緊張していたから急に大きい方がしたくなって来たぜ。ちょっとトイレに行ってもいいか」

「ええ、まあそう言う事なら仕方ありませんね。俺達はこのまま教室一つ一つを調べて行きますので近藤君はトイレを済ませたらそのまま三年A組の教室に向かって下さい」

「分かった、そうするよ」

 そう言うと近藤正也は急ぎ足で三年E組の教室を出て行く。

「どうやらここには誰もいないようだな。次行くぞ、羊野」

 そんな感じで三年D組の教室やその途中にある用務員室の中を丹念に探した勘太郎と羊野は、三年C組の教室の中に十人ほどの生徒達を見付けると直ぐに聞き込みをし始める。その後聞き込みを終えた二人はそのまま三年B組の教室へと向かう訳だが、勘太郎と羊野が三年B組の教室についた時にはもう既に十分程の時間が経過していた。

「ここも特に変わった様子は無い用だな。最後は三年A組の教室の教室に行くぞ」

「そうですね。そこで皆さんを一度集めてそれぞれのアリバイを聞くとしましょう。もしかしたらその中に絶望王子がいるかも知れませんよ」

 羊野が三年B組の教室の引き戸を開けたのと同時に、突然裏階段の方から大きな悲鳴が響き渡る。その声の主が女性の物だと確信した勘太郎は大急ぎで裏階段の方へと走る。
 裏階段に着くと階段に一番近い三年A組の生徒達は皆一斉に階段下で倒れている女子生徒を無言のまま静かに凝視する。そんな生徒達を押しのけながら勘太郎はその階段下で倒れている人物の顔を直ぐさま確認する。

「なっ!」

 そこに倒れていたのは、体をくの字に曲げながら唸り声を上げている小枝愛子だった。
 絶句し動けないでいる生徒達の間を通過した勘太郎は、直ぐさま倒れている小枝愛子に駆け寄る。

「小枝さん大丈夫ですか。しっかりして下さい! 一体何があったんですか?」

「わ、私……ちょっと裏階段の所にある加湿器の水を取り換えようと思って近づいたら、行き成り停電になってビックリしたけど……気を取り直して加湿器に水の入った容器をセットしていたら後ろから行き成り誰かに押されて……気付いた時には階段から転落していたんですよ。その倒れている私の前をあの絶望王子は笑いながら堂々と通り過ぎて行きましたから、恐らく私を階段から突き落としたのは間違いなくあの絶望王子だと思います」

「ぜ、絶望王子だって!」

「私は倒れて意識が朦朧だったけど、あの不気味な雰囲気からして……あれは絶対に内田君じゃありませんでした」

「つまり絶望王子の姿をした犯人が裏階段を下って一階へと向かったと言う事か」

 その勘太郎の言葉を聞いた天野良夫は、大鬼力と玄田光則に向けて気合いを入れる。

「よし、行くぞお前ら。あの絶望王子の後を追うぞ!」

「まて、お前ら。もうあの絶望王子の後は追わなくてもいいんだ。一階にはちゃんと見張りを付けて置いたからあの絶望王子も無闇には下には降りられないはずだ。何せ一階には先生達大人を貼り付けて置いたからな」

「だから絶望王子は絶対に下には降りないと……探偵さんはそう言いたいのか。だがなぜそんな事が言い切れるんだよ。階段に貼り付けている見張りは一人だけなんだろう。だったら追い詰められた犯人が強引にその囲いを突破するかも知れないじゃないか。相手が一人だけなら尚更だ」

 そう天野良夫に言われた勘太郎は思わずはっとする。

 確かに……つい先生達や用務員の叔父さんに見張りを頼んでしまったが、あの絶望王子が強引にその囲いを突破する事も考慮しなければいけなかったな。各階段に張り付いている見張りが二~三人いるのならともかく、各階段には一人しかいないからな。もしあの絶望王子が裏階段の一階から外に抜けようと思うなら裏階段の一階で見張りをしている教頭先生と必ず鉢合わせをする事になるはずだ。そうなる前に俺達もその現場に駆け付ける必要があるな。

「よし行くぞ、羊野。俺達もこのまま絶望王子を追跡するんだ。他の生徒さん達は小枝さんをお願いします」

 そう言うと勘太郎は、羊野・天野良夫・大鬼力・玄田光則を引き連れて共に裏階段を降りる事を決意する。

 決意を決めたその時である。行き成り何かが激しくぶつかる音が響き、校舎の壁にぶつかりながらその丸い球体は一階の階段下の方から勢いよく飛んでくる。
 その飛んで来たボールが硬式の野球のボールだと分かると、勘太郎は緊張しながらその飛んで来たと思われる一階の階段下をそっと覗き込む。すると一階の階段の廊下にはあの黒い防空頭巾と段ボールの王冠を被った絶望王子が不気味な笑い声を上げながら四階にいる勘太郎達をじっと見上げていた。

「ば、馬鹿な……あれは絶望王子。ならあそこで見張りをしていた教頭先生は一体どこに消えたんだ」

 何だか悪い予感がした勘太郎は血相を変えながら階段を下って行くが、それと同時に絶望王子もまた黒いマントを飜しながら裏玄関をお急ぎ後にする。

「待て、絶望王子! 教頭先生を一体どこにやったんだ。応えろ!」

 だがそんな勘太郎の必死の叫びも空しく一階にたどり着いた時にはもう既にそこに絶望王子の姿はなかった。

「裏階段に通ずる裏玄関から外に逃げたんだな。畜生このままじゃ奴に逃げられてしまう!」

 そう叫び走り出そうとした勘太郎を羊野は極めて冷静な態度でそれを止める。

「待って下さい、黒鉄さん。何をそんなに焦っているのですか。何だかいつもの黒鉄さんらしくありませんね。いつもなら犯人の追跡よりも先ずは人の安否の確認を最優先にするはずなのに。まあ正直……私としては、赤の他人の事なんてどうでもいい事なのですが」

「確かに羊野の言う通りだ……少し頭に血が上りすぎたか。もう少しで冷静さを欠く所だった」

 羊野に注意をされ冷静さを取り戻した勘太郎は、その場からいなくなった教頭先生を必死に探す。

 絶望王子を追う為外へと出て行く天野達を心配しながら捜索を続ける勘太郎と羊野だっが、そんな教頭先生は羊野の機転で直ぐに見つかる事になる。
 なんと教頭先生は裏玄関の近くにある掃除用のロッカーの中に無造作に入れられていたからだ。
 そんな教頭先生の安否を勘太郎が確認するとただ気絶をしているだけの用なので、教頭先生は階段から下りて来る絶望王子と対峙した際に何らかの方法で気絶させられたと言う事になる。それが一体どんな方法かは知らないがその後教頭先生はそのまま掃除用のロッカーの中に入れられ、勘太郎達の足を止める為の時間稼ぎに使われたと言う事になる。
 そう考えていた勘太郎だったが、どうやら羊野の意見は違う用だ。その証拠に「この教頭先生は、階段から降りて来るあの絶望王子と本当に対峙したのでしょうか?」と言う疑問の声が勘太郎の耳元で囁かれる。

「それは一体どういう事だよ。小枝愛子が四階の階段付近で絶望王子に襲われて、そのまま階段を下って逃げた絶望王子と相馬教頭先生が一階の廊下で鉢合わせをしたからこんな事になったんじゃ無いのかよ」

「なら尚更その話には矛盾がありますわ」

「矛盾だと?」

「だって階段から落ちた小枝愛子さんの悲鳴を聞きつけた私達があの裏玄関に駆け付けたのはほんの数十秒の時間だったはずです。その時間の間にあの絶望王子は階段を四階から一階まで駆け下りて裏玄関から逃げなけねばなりません。でもその為には下で待ち構えているあの相馬教頭先生をどうにかする必要があったはずです」

「そうだな。だがその教頭先生もあえなく絶望王子に襲われて気絶させられる事になる。そして人知れず掃除用のロッカーの中に入れられたんだろう。それの何処に疑問を感じるんだよ。ごく自然の流れだろうが」

「黒鉄さん、それを本気で言っているのでしたら相馬教頭先生に土下座する事をお勧めしますわ。不意を突かれて後ろから襲われたのならともかく。階段から降りてくる相手に教頭先生が全く気付かなかったとは流石に考えづらいです。もし正面から襲われたのなら恐らく相馬教頭先生はそれなりに抵抗したと思いますよ。その必死で抵抗する大の大人を数十秒以内に黙らせて裏玄関の掃除用のロッカーの中に教頭先生を押し込んで、尚且つ野球の硬式ボールを四階まで投げ込むなんて芸当……普通の人間には先ず出来ないと思いますよ」

「でも、でも普通の人間じゃなかったとしたら。例えばあの絶望王子は物凄く強い人間だったのだとしたら、教頭先生も一瞬で秒殺出来るんじゃないのか」

「はあ~っ、だったら何もわざわざ逃げずに階段付近で直接不良達を血祭りに上げればいいじゃないですか。そんなにその絶望王子が強いのならね」

「まあ、確かにそうだな」

「恐らくこの犯人は体力的にも……そして精神的にも自信が無いからこんな絶望王子の姿を借りて悪さをしているのだと私は考えます。出なければあんな階段落下現象なんて言う回りくどいトリックなんか考えないですからね」

「じゃ絶望王子は一体どうやって階段を駆け降りて、尚且つあの相馬教頭先生を秒殺したんだよ」

 その勘太郎の質問に羊野は羊のマスクの頭をさすりながら応える。

「そもそも絶望王子は本当に一階まで駆け下りて相馬教頭先生に遭遇しているのでしょうか。もしかしたら絶望王子はまだこの校舎内にいるのかも知れませんよ」

「何を馬鹿なことを、そんな分けないだろ。だってお前も見ただろう。あの絶望王子が一階にいたのを」

「ええ、確かにいましたけど、そもそもあの一階にいた絶望王子は本当にあの五階にいた絶望王子本人と同一人物だったのでしょうか。もしかしたら絶望王子はもう一人いるのかも知れませんよ」

「絶望王子がもう一人いるかも知れないだと、なんでそんな事が言い切れるんだよ」

「だって普通に考えて、小枝愛子さんを階段から転落させた後のその数秒で階段を降りて相馬教頭先生を秒殺してロッカーに押し込み。そのまま私達のいた四階目がけてボールを投げ込む事なんて事は先ず不可能ですから」

「じゃ小枝さんは嘘の証言を言っているとでも言いたいのかよ」

「そうは言っていませんよ。恐らくこの絶望王子は小枝愛子さんを何らかの方法で階段から落下させた後でその場を通り過ぎ、そのまま裏階段を下ったのではないでしょうか。そして既に教頭先生を気絶させていたもう一人の絶望王子の姿を確認した四階にいた絶望王子はそのまま三階のフロアの方へ逃れた。そして後はまた何食わぬ顔をしながら表階段から四階に上がって来れば皆さんと合流できますよね」

「お前まさかここにいる生徒達を疑っているのか」

「それが普通だと思いますよ。だって絶望王子が一人だけならあの数十秒以内に一階を通過する事は先ず不可能ですから。まあ、小枝さんが絶望王子に襲われるまで十分はありましたから、あの四階にいた生徒達なら誰にでも犯行は可能だと思いますよ」

「確かにそうだけど、そうなると疑われる人間は限られて来るぞ」

「そしてもう一つの可能性は、小枝愛子さんがもし狂言を言っていたらと言う可能性です。そもそも私達はその小枝さんを襲ったという絶望王子の姿を見てはいないのですから、小枝さんがあの一階にいた絶望王子とグルという可能性も否定は出来ないと思いますよ」

「小枝さんが犯人の仲間かも知れないと言うのか。確かに小枝さんは自分の罪の意識から心が不安定で不良達にも恨みを持っている印象も見られるが、だからといって犯人の仲間かも知れないと言うのは流石に早計過ぎるんじゃないのか」

「まあ、それも絶望王子に襲われた教頭先生にでも話を聞けばその詳細が分かると思いますがね」

「それが手っ取り早いか。なら早く相馬教頭先生を起こして一体何があったか聞いて見ようぜ」

 勘太郎が相馬教頭先生の体を揺すっていると、突如階段の上から一人の学生が降りてくる。その男子学生は一体何があったのかと言う様な顔で勘太郎と羊野そして倒れている相馬教頭先生を見比べる。

「これは……一体何があったんだよ。教頭先生が倒れているじゃないですか!」

 その話しかけて来た男子学生には見覚えがある。確か一番最初に三年A組の教室に行った時に小枝愛子と一緒にいた佐藤彦也と言う男子生徒だ。
 勘太郎は記憶を思い返しながら佐藤彦也に話しかける。

「確か佐藤さんでしたか。貴方の姿は四階にはなかったと記憶してますが、一体今までどこにいたんですか?」

「何処って、三階のトイレだよ。トイレでゆっくりしながらスマホを弄っていたんだよ。でもさっきは行き成り停電になったから流石にビビったけどな。トイレ中の停電だけは勘弁してほしいぜ」

「つまり、貴方にはアリバイが無いのですね」

 そう言い放った羊野に佐藤彦也は不思議そうに首をかしげる。

「アリバイ……一体何のことだよ?」

「貴方は今三階の男子トイレから裏階段を降りてここに来たと言っていましたが、何故ここに来たのですか」

「何故って、裏階段の方が何だか騒がしかったからついな。トイレに入っている時に、何か金属の用な物が下の階に落ちる音もバッチリと聞いてるし、何かあったんじゃないかと思ってな」

「そうですか。だからここに来たと……」

 佐藤彦也の言い分を確認した羊野は勘太郎の方に顔を向けると自分の考えを話し出す。

「今現在アリバイが無いのは、一人で科学部の部室にいた佐野舞子さんと。途中からトイレに行った近藤正也君。それに絶望王子に階段から突き落とされたと言う小枝愛子さんに。今目の前にいる佐藤彦也君の四人になります。他の四階にいた残りの生徒達は、皆三人以上で行動していましたから犯人にはなり得ないと判断しましたわ」

「あの学生達の中に犯人がいるとは流石に考えたくは無いがな。だが俺達が階段で倒れている小枝愛子に会うまでにおよそ十分くらいの時間があったから、もしかしたら絶望王子が裏階段を下って逃げたと言う事実を演出する為にワザと階段で一騒動を起こしたのかもしれないな。そしてそれを実行できる可能性を持つ人物達が、近藤正也・佐野舞子・小枝愛子・佐藤彦也の四人と言う訳か」

「ええ、そしてその仮説が合っているのなら次に疑うべきはあの一階に突如現れた絶望王子の存在です。でも見ず知らずの人がこんな夜更けに校内を徘徊していたら誰だってその人を疑うと思いますので、その絶望王子の正体はもしかしたら一階にいる誰かである可能性も充分に考えられると思いますよ」

「それはつまり、今一階の表階段下と非常階段で張り込んでいる谷口秋人先生と用務員の田中友男も含まれているのか」

「当然そうなりますね。綾川エリカさんのスマホを事前に盗み、あの不良達を遅くまでこの校内に縛り付ける計画を事前に立てていたのだとしたら、当然ホローする犯人も一階で待機していないとこの計画は成り立ちませんよね。そしてその中には当然ここにいる相馬教頭先生も含まれています」

「相馬教頭先生だって! でも教頭先生は絶望王子の手によって気絶させられてロッカーの中に放り込まれてたんじゃないのか」

「その瞬間を一体誰が見たのですか。私達が見たのは一階にいた絶望王子が裏玄関から外へと逃げる瞬間だけです。どうやら皆さんは絶望王子は外に逃げたと勝手に思い込んでいるみたいですが、私達が階段を降りている間にあの絶望王子は着ていた衣装を何処かに隠して、早々と掃除用のロッカーの中に敢えて隠れたのかも知れませんよ」

「確かに俺達は絶望王子と相馬教頭先生が一緒にいる所を見てはいないから相馬教頭先生の自作自演と言う事も考えられる訳か。まあ、お前の言う用に絶望王子が実は二人いると言う仮説が合っていればの話だがな」

 そう言うと勘太郎は手の中で倒れている相馬教頭先生をマジマジと見詰める。もし相馬教頭先生が本当に犯人なら今の話を聞いている可能性が高いからだ。
 そんな二人が気絶している相馬教頭先生に疑いの目を向けている時、四階の方から数人の男女の学生達が神妙な顔をしながら急ぎ足で階段を下りて来る。その中の一人の女子生徒の手には黒い布きれのような何かが握られていた。

「あ、貴方が噂の探偵さんですか。私……ついさっき四階の女子トイレのゴミ箱の中からこんなのを見つけたんですけど。これって、さっき五階に現れたという絶望王子が脱ぎ捨てたあの衣装ですよね。黒い防空頭巾に黒いボロボロのマント……それと段ボールで出来た幼稚な王冠もちゃんとセットでありますから、どうかと思って?」

 その女子生徒に絶望王子が逃げる際に残したと思われる衣装の品々を見せつけられた勘太郎は、犯人は必ずこの学生達の中に潜んでいると判断する。だがその反面、自分達の考えがどうか間違いで合ってほしいと言う複雑な心境にも駆られるのだった。
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