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第二章 『絶望階段』 とある高校に出没する階段落下トリックを操る狂人・絶望王子と呼ばれる謎の学生との推理対決です!
2-12.容疑者、佐野舞子の証言
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一月十七日(木曜日、晴れ)
狂人ゲームのタイムリミットまで後二日。赤城刑事は昨夜起きたと思われるある被害者の死亡原因を詳しく説明をする。
「被害者の名は江東第一高校三年生A組の担任、谷口秋人(四十五歳)。死因は自宅マンションの階段からの転落による頭部打撲と外の寒さによる体温低下が原因との事よ。恐らく階段から転げ落ちた時に頭部を打ち付けて脳内出血を起こし、気絶している所にこの夜の寒波だから凍死も仕方ないわね。死亡推定時刻は昨夜の二十三時から~深夜の一時の間で、発見されたのは翌朝の四時過ぎらしいから、その間は誰にも気付かれなかったと言う事になるわ。それが彼にとって決定的な死因となったと言う事かしら。何だか皮肉な話ね。あの王子大輝君の怪我の搬送を遅らせた疑惑を持つ谷口先生がまさか同じ用な形で亡くなられるだなんて、正に何かの因果を感じざる終えないわね。もっと早く誰かが気付いて救急車を呼んでいたら助かったかも知れないのだから。第一発見者は新聞配達員のお兄さんで彼の証言によれば、翌朝の四時過ぎくらいに新聞を配達しようとマンションの階段を登ろうとした所に、血を流し仰向けに倒れている谷口秋人を発見したとの事よ。勿論この新聞配達員のアリバイを調べた結果、ちゃんとアリバイは成立しましたので、彼が犯人である可能性は極めて低いと考えられるわ。それが今言える情報の全てよ」
時刻は七時三十分。一報を聞いた勘太郎と羊野それに緑川の三人は、赤城刑事の乗る赤いポルシェ車の後に連なりながら谷口秋人氏が死亡したとされる彼の自宅マンションの階段へと辿り着く。
現場に着くと地元の警察と既に現場に来ていた川口大介警部が現場検証を指揮していたので、勘太郎達は赤城刑事の細やかな説明を聴きつつ事件が起こったとされる現場を丹念に調べてみる事にした。
既に谷口秋人の遺体はその場から運ばれてしまっていたので死体を見る事は出来なかったが、川口警部が遺体の写真や記録を見せてくれるとの事なので勘太郎と羊野はその申し出を素直に受ける事にした。
「しかし随分と来るのが遅かったな、白い羊と黒鉄の探偵。もう既に谷口秋人氏の遺体は検察が検視の為に持ち去ってしまったぞ。まあ、犯人の追跡では無くただ単に死体を調べるだけだから円卓の星座が定めたルール違反にはならないだろうが、犯人を追跡するのはお前らの仕事なんだから今日こそは何としてでもその絶望王子と言うふざけた狂人の正体を突き止めて来るんだぞ。いいな、分かったな!」
「は、はい。全力を尽くします」
「全力を尽くすのは当然だ。今日こそは結果を見せろと言ってんだよ!」
「そんな理不尽な。捜査を開始してからまだ二日目なんですけど」
「もう二日だ。後今日と明日しか無いんだぞ。もっと気を引き締めて事に当たらんか! お前のこれからの捜査への姿勢次第で人の命の在り方が変わるかもしれんのだぞ!」
「そんな事言われても困りますよ!」
物凄いプレッシャーを掛けて来る川口警部に圧倒される勘太郎だったが、考えていても仕方が無いので勘太郎は羊野と共に遺体が見つかったとされる階段付近を調べて見る事にした。
恐らくもう既に階段付近は鑑識に調べられていると思われるので、軽く現場を見渡した勘太郎と羊野は、川口警部が用意した死体の写真に目をやりながら書かれた書類を丹念に読み耽る。
「それで、もう家の中は調べたんですか」
「ああ、どうやら谷口秋人氏は一人暮らしだったらしいが特に怪しい物は何も見つからなかったよ」
「そうですか。それにしてもまた階段落下事件ですか。やはりこの事件にもあの絶望王子が関わっているのでしょうか」
「まだ何の犯行声明も怪しい人を見たと言う目撃者もいない用だが、またあの絶望王子とか言う狂人が絡んでるのかもしれんぞ。何せ死亡した被害者はあの絶望王子が関わる高校の担任教師なのだからな」
「また階段から落ちて死亡した用ですが、また例によって階段から足を踏み外したと言う事ですか?」
「どうやらそうみたいだな。階段には例によって何の仕掛けもしてはいなかったし、彼の体内にもアルコール以外の薬物反応は一切見つからなかった」
「アルコール以外ですか。ならお酒を飲んでいたと言う事ですか?」
「ああ、何でも昨夜は仕事の帰りに行きつけの居酒屋で酒を飲んでいたと言う証言を得ているから、二十三時に自宅のマンションに帰って来た事は間違いないと思うぞ」
「他に谷口先生に代わった事は無かったですか」
「いつもの被害者達と同じだよ。階段から転落した後に体の幾つかをアイスピックの用な何かで刺されているから、あの黒い防空頭巾とマントを着けた学生通り魔の犯行で先ず間違いは無いだろう」
「やはりまた黒い防空頭巾とマントを付けた学生通り魔の犯行か。でも本当にそいつはあの江東第一高校に現れた絶望王子と同一人物……いや、もしくは繋がりがある犯人なのですか? もし違っていたら全てが無駄な時間になってしまうんですけど」
「そうかもしれんが今はもうこれに掛かるしかないだろう。あの黒い防空頭巾とマントを付けた学生通り魔が使う階段落下現象に怪しい点があるからこそお前らは江東第一高校にたどり着き、そしてその教室にいる絶望王子に焦点を搾ったのだろう。なら自分の頭を使って最後まで捜査を貫いて見せろ。まあ精々そこにいる白い羊をこき使ってこの難事件を見事に解決して見せる事だな。と言う訳で赤城刑事、引き続きこいつらのお守りはよろしく頼むぞ」
そう言うと川口警部は中年太りの体を揺すりながら他の警察官の所へと歩いて行く。そんな川口警部を見送りながら、今まで黙っていた羊野が淡々と考えを述べる。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですわ、黒鉄さん。あの校内の中に必ず絶望王子はいますから、私達はその犯人をあの中から追い詰めるだけですわ。あ~そうだ、そんな事よりも赤城さん。鑑識が撮ったこの写真には背中の刺し傷の写真も当然あるはずですが、刺し傷の内部を映した写真は無いのですか?」
「刺し傷を映した内部ですって。まだそこまでは調べていないと思うけど何か気になる事でもあるの羊野さん?」
「谷口秋人さんの背中に残されている幾つかの刺し傷には一つだけ変わった傷跡が見受けられるのですよ。それは今までに階段から落ちた人達にも当てはまる事です。だから何だか怪しいと思いましてね、こうして傷口の内部の写真を公開してくれるように頼んでいるのですよ」
「傷口の内部の写真って……そんなの撮ってる訳ないじゃ無い。傷口は数カ所に見受けられるし命に別状は無いタダの小さな刺し傷だから特に調べてはいないと思うわ。それに階段から落ちた時に出来たただの擦り傷だって混じっているし、一つ一つ調べる事はとてもじゃないけど出来ないわよ。でもこの小さな刺し傷が一体何だと言うのよ」
そう反論する赤城刑事に羊野はニコニコしながら谷口先生の背中の写真を見せる。
「いかにも無造作に背中を刺している用に見えますがこの一つの背中の刺し傷だけ何だか変ではありませんか」
「変って何が? 刺し傷の形なんて角度や力の入れ具合によって幾らでも変わるんじゃないの。だからこそ皮膚の破れ方にも様々な違いがあるでしょうしね」
「でもこの背中の真ん中付近にある刺し傷だけ何だか他の刺し傷と微妙にちがうみたいですよ。ちょっと肌の皮膚が十字に破けている用に見受けられます」
「そうかしら、どれどれ?」
言葉巧みに誘導され写真を見る赤城刑事に、羊野は休むこと無く畳み掛ける。
「ではこの背中の刺し傷の跡、急いで調べてくれますね」
「仕方ないわね。それで羊野さんが満足するのなら幾らでも調べて置いてあげるわよ。だからあなた達は絶対に絶望王子の正体を突き止めなさい。いいわね!」
「分かりました。ではもうここには用はないのでそろそろ私達も江東第一高校へ向かいましょうか。と言う訳でまた車の運転の方はお願いしますね、緑川さん」
「ええぇ~っ、また移動するんですか……朝っぱらから叩き起こされてまだかなり眠いんですけど」
「全く同感だぜ。ちょっと車の中で仮眠して行こうぜ」
「そんな時間は無いと思いますがね。何せこれから江東第一高校に出向いて谷口秋人さん殺しのアリバイを容疑者さん達と共に調べないといけませんから」
やる気満々の羊野は眠たげに抗議する勘太郎と緑川の手を握りながら駐車場の方へと歩いて行く。その足取りは何だか楽しげで、これから待ち受けているであろう事件を不謹慎にも楽しもうとする姿勢が嫌でも感じられた。
*
午前の八時丁度。外はかなり肌寒い中、勘太郎と羊野……それにワゴン車の運転をする緑川章子は、昨日訪れた江東区にある江東第一高校の駐車場の中に車を止めていた。
今現在生徒達は登校の真っ最中なので生徒から話を聞くなら今しか無いと思った勘太郎は覚悟を決め、勢いよく車のドアを開ける。
凍てついた地面を踏みしめながら歩き出した勘太郎は、不気味な羊のマスクを被る羊野を後ろに従えながら高校の校舎に向けて堂々と歩き出す。
「と、取り敢えず明日の夜の二十四時のタイムリミットまでもう時間が無い。相手の都合とか権利とか関係無しに生徒達や先生方々から聞き込みをするしか無い用だな。そうでもしないととてもじゃないが今日中に全ての容疑者候補達からアリバイを聞く事は出来ないからな」
そう呟くと勘太郎は始めに校長室で校長先生に挨拶を済ませると、校内放送で三年A組の女子生徒・佐野舞子を生徒指導室に呼び出して貰う事にした。
因みに生徒指導室は校長先生に頼み込んで場所を提供して貰った部屋だ。
「失礼します」と引き戸を開ける佐野舞子に勘太郎と羊野は愛想良くパイプ椅子へと誘う。 これから何が始まるのか少し不安な表情を見せる佐野舞子に勘太郎は笑顔を向けながら行き成り本題を話し始める。
「貴方に来て貰ったのは他でもありません。今日の四時頃、三年A組の担任の谷口秋人先生が自宅マンションの階段で既に亡くなった状態で発見された事はもう知っていますよね」
「ええ、今日学校に登校して来たらみんなその話題で持ち切りでした。私もびっくりしています」
「そうですよね。自分の担任教師が亡くなったのですからびっくりしない方が可笑しいですよね。でも佐野舞子さん、貴方は担任の谷口先生の事を余り良く思っていなかったはずですよね。昨日私達に協力してくれている時もそんな事を話していましたしね」
「確かに余り好きでは無いと言いましたけど、それが一体何だと言うのですか。まさか私、疑われているのですか?」
「いえいえ、別にそういう訳ではありませんが、貴方には昨日五階の表階段に現れた絶望王子かも知れないと言う疑いがありますからね。だから一応アリバイを聞いてこいと相棒の羊野の奴がうるさいんで是非ともご協力の程をよろしくお願いしますよ」
「絶望王子の疑いですか」
「ええ、勿論俺も佐野舞子さんを疑いたくはありませんが……何せあの逃げ道が全て塞がれた校舎内から絶望王子に扮した犯人が逃げ出すのは先ず不可能ですから。なのであの校舎内にいた人物に必ず犯人が混じっていると言うのが私達の考えです。そして今回起きた谷口先生の階段落下事件の件も決して無関係では無いと考えています。なので今ここで貴方のアリバイを話して貰いますよ。貴方の疑いを晴らす為にもね」
「わ、分かりました。それで私への疑いが晴れるのなら何でも話します」
そう言うと佐野舞子は勘太郎の質問に素直に応じる姿勢を見せる。果たして真面目で責任感溢れる学級委員こと佐野舞子は本当に犯人では無いのだろうか。疑惑溢れる佐野舞子への尋問が始まる。
「昨夜の二十三時から~一時までの間、貴方はどこにいたのかを教えて下さい」
「どこにいたって……家にいたに決まっているじゃないですか」
「それを証明してくれる人はいますか」
「家の両親に聞いてみて下さい。その時間はもうベットの中ですから」
「つまり自分の部屋で寝ていたのですね。でもその間、誰にも会ってはいませんよね。ならこっそり家を飛び出して谷口先生の家で待ち伏せする事ももしかしたら可能ではないですか」
「いえいえ、それは不可能ですよ。私の家から谷口先生のマンションまで行くには車で一時間程掛かりますし。もし自転車で行ったとしたら片道二~三時間は掛かる距離です。勿論私はまだ車の免許やバイクの免許は持ってはいませんので移動は不可能です」
「そうですか。まあ、そうでしょうね」
まあ、当然の答えか。分かってはいた事だがな。
そう思いながら、早くも佐野舞子のアリバイが成立し掛けたその時、部屋のカーテンを閉めていた羊野が代わりに質問をする。
「でももし協力者が車で家に迎えに来てくれていたら、行けなくはないですよね。何せ犯人は二人は確実にいるみたいですから」
その羊野の言葉に佐野舞子の眉間が微かに上がる。
「もし私が犯人なら、私の寝顔を気まぐれで確認しに来るかも知れない親を気にしながら外へ出るなんて愚行は絶対にしないですよ。だってアリバイを作るんならもっと的確にそして完璧にしたいですからね」
「ええ、貴方の性格なら恐らくそうでしょうね。少しのミスも不安も許さない。そんな計画を立てそうですからね。でも予め親に『今日は疲れたから朝まで起こさないで』とか言えば、親はお越しに来ないことを貴方は知っていたのでは無いのですか。もしそうならこっそりと裏口から家を出れば車で待機している協力者と合流することももしかしたら可能かも知れませんよ」
「なるほど、私一人なら移動は出来ないけど協力者が一緒なら移動は可能と考えている訳ですか。中々面白い考えですけど、でもそれはあくまでも羊野さんのただの憶測ですよね。谷口先生の家まで移動したと言う証拠もありませんし」
「ええ、勿論証拠はありませんが、谷口先生の家まで車で移動したのなら当然町中の道路を移動したと言う事ですよね。なら昨夜の二十二時から深夜の二時の間にその車が通ったと思われる町中に仕掛けられている防犯カメラをしらみつぶしに探せばもしかしたら貴方と協力者が乗っていた車が見つかるかも知れませんね」
「流石は羊野さんですね。もし犯人が車や徒歩で移動して来たのなら犯行現場から逆算して犯人が移動して来たと思われる通路から防犯カメラを調べればもしかしたら犯人は見つかるかも知れないと言う訳ですか。今のように予め容疑者が決まっていれば尚やりやすいでしょうしね。まあでも、その協力者の車とやらに私が乗っていたらの話ですけどね」
「と言う事は他の移動方法ももしかしたらあると言う事でしょうか」
「なんでそうなるんですか。私は犯人では無いと言っているんですよ!」
まるでワザとプレッシャーを与えるかの用な羊野の言葉攻めに佐野舞子は向きになってこれに応戦する。恐らく羊野の考えでは、もしも佐野舞子が犯人なら……犯行を行う為に移動した経路やその可能性をガンガン攻めて行けば何かボロを出してくれるのではないかと言う計算からだろう。
普通に考えて、家にいたと証言する佐野舞子のアリバイを崩す事は正直容易ではないのでワザと揺さぶりを掛けて相手がどう反応するのかを確認するのが彼らの本来の目的の用だ。
「それでは質問を変えましょう。貴方は虐めの現状を変えようと一年前から谷口先生に相談しに行っていましたよね。でもいつも話をはぐらかされてまともに話を聞いてはくれなかったと他の先生方や周りの生徒から証言を得ています」
「ええ、確かに、谷口先生には天野君達の度が過ぎるイジメをどうにかして欲しいと何度も訴えました。でもその努力や願いは一向に叶いませんでしたけどね」
「まあ、そのお陰で貴方もあの不良達から報復を受けた用ですがそれで屈する貴方ではありませんよね。何せ貴方が中学時代の頃、ある生徒からの虐めが原因でまだ小学六年生だった妹さんが自殺していますからね」
「な、なんだって!」
その思いも寄らない羊野の言葉に勘太郎は絶句し、話を聞いていた佐野舞子は羊野を激しく睨みつける。
「過去に死んだ妹の自殺と今回の谷口先生の事件と何か関係があるんですか!」
「直接的には何の関係もありませんが、でも貴方の苦い経験を呼び覚ます切っ掛けくらいにはなったのではありませんか。話では妹さんを自殺で亡くされた時、貴方は妹が出す苦痛のサインに気づけなかった事に苦悩していたそうじゃないですか。そして当時の貴方は虐めていた生徒だけでは無く、虐めをワザと見過ごしていた担任教師にも非難の怒りをぶつけている。でも結局は全てをうやむやにされて誰も責任を追う事も無くその事件は終わっている。そんな過去を持つ貴方になら、こんな憶測も考えられますよね。例えば、理不尽な人達を野放しにする社会に絶望した貴方は、生徒達が嘲り嫌う絶望王子に扮して世間の人達に復讐し始めたのでは無いかと言う可能性です。行き成り不良達に犯行を行ったら流石にバレるかも知れないので、素行の悪い関係ない人達をワザと巻き込んで謎の通り魔の犯行に見せかけようと考えたのではないでしょうか。そう全てはあの不良達を一人ずつ確実に死傷させる為に。だからこそ王子大輝君の搬送をワザと遅らせた容疑を持つ谷口先生も今回のターゲットに入れたのだと私は考えています。そう考えるのなら虐めを異常に忌み嫌う佐野舞子さんの言動も当然理解できるし、その動機も十分に成り立つとは思いませんか」
「何処でそんな家の事情を穿り返して来たのかは知らないけど、全くの的はずれだわ。私はそんな事で人殺しなんかしませんよ。大体私が関わっていると言う証拠はあるのですか」
「ありませんよ。さっきも言った用にただの憶測ですから」
「ただの憶測で犯人に仕立て上げられてはこちらも溜まった物ではないわ。先ず私を犯人だと決めつけるのならちゃんとした証拠を提示してからにして頂戴!」
「証拠はまだありませんが肝心のアリバイも貴方には無いと言っているのですよ。二十三時から一時までの二時間、貴方が寝ている所をご両親が見ていないのならアリバイは無いのと一緒ですからね。それにこの事件の裏にはあの円卓の星座が陰で主催する狂人ゲームが絡んでいますから犯人側にも後二日以内に他の残りのターゲット達を死傷させなけねばならないと言うクリアー条件があるはずです。なので絶望王子は必ずまたその姿を現すと思いますよ」
「円卓の星座……ターゲット? 一体貴方は何を言ってるの」
何だか心配そうに佐野舞子と羊野瞑子を見詰める勘太郎はチラチラと二人の様子を見守っていたが、佐野舞子の妹が過去に虐めが原因で亡くなっていると聞きつい口を出してしまう。
「お、お前なんだその情報は、佐野舞子さんが中学時代に虐めが原因で、また小学生だった妹さんを自殺で亡くされていただなんて、そんな情報昨日の段階では話にすら無かったじゃないか!」
「ええ、昨日予め赤城さんに疑わしいと思われる容疑者達の家族構成なんかを調べてくれとお願いしていましたからね。そして翌朝早くに赤城さんから、佐野舞子さんの妹さんの情報が届いたのですよ」
「なるほど、その妹さんの事を聞いてしまったら話の内容は大きく変わってくるな。これまでの不良達に対する佐野舞子さんの動機に殺意が込められていても別に可笑しくは無いと言う事か。流石に疑いたくは無いがな」
「私も最初は彼女が犯人である可能性は限りなく低いと思っていましたが、自殺した妹さんの存在が出てきたのなら彼女が犯行に至る可能性をもう一度考え直す必要がありますね」
「私はやっていないと先程から言っているでしょう!」
「ならもう少しだけ私の質問に付き合って下さいな……ねえ、佐野舞子さん!」
そう言うと羊野は怪訝な顔をする佐野舞子に視線を落としながら、その時の状況を根掘り葉掘り聞くのだった。
一月十七日(木曜日、晴れ)
狂人ゲームのタイムリミットまで後二日。赤城刑事は昨夜起きたと思われるある被害者の死亡原因を詳しく説明をする。
「被害者の名は江東第一高校三年生A組の担任、谷口秋人(四十五歳)。死因は自宅マンションの階段からの転落による頭部打撲と外の寒さによる体温低下が原因との事よ。恐らく階段から転げ落ちた時に頭部を打ち付けて脳内出血を起こし、気絶している所にこの夜の寒波だから凍死も仕方ないわね。死亡推定時刻は昨夜の二十三時から~深夜の一時の間で、発見されたのは翌朝の四時過ぎらしいから、その間は誰にも気付かれなかったと言う事になるわ。それが彼にとって決定的な死因となったと言う事かしら。何だか皮肉な話ね。あの王子大輝君の怪我の搬送を遅らせた疑惑を持つ谷口先生がまさか同じ用な形で亡くなられるだなんて、正に何かの因果を感じざる終えないわね。もっと早く誰かが気付いて救急車を呼んでいたら助かったかも知れないのだから。第一発見者は新聞配達員のお兄さんで彼の証言によれば、翌朝の四時過ぎくらいに新聞を配達しようとマンションの階段を登ろうとした所に、血を流し仰向けに倒れている谷口秋人を発見したとの事よ。勿論この新聞配達員のアリバイを調べた結果、ちゃんとアリバイは成立しましたので、彼が犯人である可能性は極めて低いと考えられるわ。それが今言える情報の全てよ」
時刻は七時三十分。一報を聞いた勘太郎と羊野それに緑川の三人は、赤城刑事の乗る赤いポルシェ車の後に連なりながら谷口秋人氏が死亡したとされる彼の自宅マンションの階段へと辿り着く。
現場に着くと地元の警察と既に現場に来ていた川口大介警部が現場検証を指揮していたので、勘太郎達は赤城刑事の細やかな説明を聴きつつ事件が起こったとされる現場を丹念に調べてみる事にした。
既に谷口秋人の遺体はその場から運ばれてしまっていたので死体を見る事は出来なかったが、川口警部が遺体の写真や記録を見せてくれるとの事なので勘太郎と羊野はその申し出を素直に受ける事にした。
「しかし随分と来るのが遅かったな、白い羊と黒鉄の探偵。もう既に谷口秋人氏の遺体は検察が検視の為に持ち去ってしまったぞ。まあ、犯人の追跡では無くただ単に死体を調べるだけだから円卓の星座が定めたルール違反にはならないだろうが、犯人を追跡するのはお前らの仕事なんだから今日こそは何としてでもその絶望王子と言うふざけた狂人の正体を突き止めて来るんだぞ。いいな、分かったな!」
「は、はい。全力を尽くします」
「全力を尽くすのは当然だ。今日こそは結果を見せろと言ってんだよ!」
「そんな理不尽な。捜査を開始してからまだ二日目なんですけど」
「もう二日だ。後今日と明日しか無いんだぞ。もっと気を引き締めて事に当たらんか! お前のこれからの捜査への姿勢次第で人の命の在り方が変わるかもしれんのだぞ!」
「そんな事言われても困りますよ!」
物凄いプレッシャーを掛けて来る川口警部に圧倒される勘太郎だったが、考えていても仕方が無いので勘太郎は羊野と共に遺体が見つかったとされる階段付近を調べて見る事にした。
恐らくもう既に階段付近は鑑識に調べられていると思われるので、軽く現場を見渡した勘太郎と羊野は、川口警部が用意した死体の写真に目をやりながら書かれた書類を丹念に読み耽る。
「それで、もう家の中は調べたんですか」
「ああ、どうやら谷口秋人氏は一人暮らしだったらしいが特に怪しい物は何も見つからなかったよ」
「そうですか。それにしてもまた階段落下事件ですか。やはりこの事件にもあの絶望王子が関わっているのでしょうか」
「まだ何の犯行声明も怪しい人を見たと言う目撃者もいない用だが、またあの絶望王子とか言う狂人が絡んでるのかもしれんぞ。何せ死亡した被害者はあの絶望王子が関わる高校の担任教師なのだからな」
「また階段から落ちて死亡した用ですが、また例によって階段から足を踏み外したと言う事ですか?」
「どうやらそうみたいだな。階段には例によって何の仕掛けもしてはいなかったし、彼の体内にもアルコール以外の薬物反応は一切見つからなかった」
「アルコール以外ですか。ならお酒を飲んでいたと言う事ですか?」
「ああ、何でも昨夜は仕事の帰りに行きつけの居酒屋で酒を飲んでいたと言う証言を得ているから、二十三時に自宅のマンションに帰って来た事は間違いないと思うぞ」
「他に谷口先生に代わった事は無かったですか」
「いつもの被害者達と同じだよ。階段から転落した後に体の幾つかをアイスピックの用な何かで刺されているから、あの黒い防空頭巾とマントを着けた学生通り魔の犯行で先ず間違いは無いだろう」
「やはりまた黒い防空頭巾とマントを付けた学生通り魔の犯行か。でも本当にそいつはあの江東第一高校に現れた絶望王子と同一人物……いや、もしくは繋がりがある犯人なのですか? もし違っていたら全てが無駄な時間になってしまうんですけど」
「そうかもしれんが今はもうこれに掛かるしかないだろう。あの黒い防空頭巾とマントを付けた学生通り魔が使う階段落下現象に怪しい点があるからこそお前らは江東第一高校にたどり着き、そしてその教室にいる絶望王子に焦点を搾ったのだろう。なら自分の頭を使って最後まで捜査を貫いて見せろ。まあ精々そこにいる白い羊をこき使ってこの難事件を見事に解決して見せる事だな。と言う訳で赤城刑事、引き続きこいつらのお守りはよろしく頼むぞ」
そう言うと川口警部は中年太りの体を揺すりながら他の警察官の所へと歩いて行く。そんな川口警部を見送りながら、今まで黙っていた羊野が淡々と考えを述べる。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですわ、黒鉄さん。あの校内の中に必ず絶望王子はいますから、私達はその犯人をあの中から追い詰めるだけですわ。あ~そうだ、そんな事よりも赤城さん。鑑識が撮ったこの写真には背中の刺し傷の写真も当然あるはずですが、刺し傷の内部を映した写真は無いのですか?」
「刺し傷を映した内部ですって。まだそこまでは調べていないと思うけど何か気になる事でもあるの羊野さん?」
「谷口秋人さんの背中に残されている幾つかの刺し傷には一つだけ変わった傷跡が見受けられるのですよ。それは今までに階段から落ちた人達にも当てはまる事です。だから何だか怪しいと思いましてね、こうして傷口の内部の写真を公開してくれるように頼んでいるのですよ」
「傷口の内部の写真って……そんなの撮ってる訳ないじゃ無い。傷口は数カ所に見受けられるし命に別状は無いタダの小さな刺し傷だから特に調べてはいないと思うわ。それに階段から落ちた時に出来たただの擦り傷だって混じっているし、一つ一つ調べる事はとてもじゃないけど出来ないわよ。でもこの小さな刺し傷が一体何だと言うのよ」
そう反論する赤城刑事に羊野はニコニコしながら谷口先生の背中の写真を見せる。
「いかにも無造作に背中を刺している用に見えますがこの一つの背中の刺し傷だけ何だか変ではありませんか」
「変って何が? 刺し傷の形なんて角度や力の入れ具合によって幾らでも変わるんじゃないの。だからこそ皮膚の破れ方にも様々な違いがあるでしょうしね」
「でもこの背中の真ん中付近にある刺し傷だけ何だか他の刺し傷と微妙にちがうみたいですよ。ちょっと肌の皮膚が十字に破けている用に見受けられます」
「そうかしら、どれどれ?」
言葉巧みに誘導され写真を見る赤城刑事に、羊野は休むこと無く畳み掛ける。
「ではこの背中の刺し傷の跡、急いで調べてくれますね」
「仕方ないわね。それで羊野さんが満足するのなら幾らでも調べて置いてあげるわよ。だからあなた達は絶対に絶望王子の正体を突き止めなさい。いいわね!」
「分かりました。ではもうここには用はないのでそろそろ私達も江東第一高校へ向かいましょうか。と言う訳でまた車の運転の方はお願いしますね、緑川さん」
「ええぇ~っ、また移動するんですか……朝っぱらから叩き起こされてまだかなり眠いんですけど」
「全く同感だぜ。ちょっと車の中で仮眠して行こうぜ」
「そんな時間は無いと思いますがね。何せこれから江東第一高校に出向いて谷口秋人さん殺しのアリバイを容疑者さん達と共に調べないといけませんから」
やる気満々の羊野は眠たげに抗議する勘太郎と緑川の手を握りながら駐車場の方へと歩いて行く。その足取りは何だか楽しげで、これから待ち受けているであろう事件を不謹慎にも楽しもうとする姿勢が嫌でも感じられた。
*
午前の八時丁度。外はかなり肌寒い中、勘太郎と羊野……それにワゴン車の運転をする緑川章子は、昨日訪れた江東区にある江東第一高校の駐車場の中に車を止めていた。
今現在生徒達は登校の真っ最中なので生徒から話を聞くなら今しか無いと思った勘太郎は覚悟を決め、勢いよく車のドアを開ける。
凍てついた地面を踏みしめながら歩き出した勘太郎は、不気味な羊のマスクを被る羊野を後ろに従えながら高校の校舎に向けて堂々と歩き出す。
「と、取り敢えず明日の夜の二十四時のタイムリミットまでもう時間が無い。相手の都合とか権利とか関係無しに生徒達や先生方々から聞き込みをするしか無い用だな。そうでもしないととてもじゃないが今日中に全ての容疑者候補達からアリバイを聞く事は出来ないからな」
そう呟くと勘太郎は始めに校長室で校長先生に挨拶を済ませると、校内放送で三年A組の女子生徒・佐野舞子を生徒指導室に呼び出して貰う事にした。
因みに生徒指導室は校長先生に頼み込んで場所を提供して貰った部屋だ。
「失礼します」と引き戸を開ける佐野舞子に勘太郎と羊野は愛想良くパイプ椅子へと誘う。 これから何が始まるのか少し不安な表情を見せる佐野舞子に勘太郎は笑顔を向けながら行き成り本題を話し始める。
「貴方に来て貰ったのは他でもありません。今日の四時頃、三年A組の担任の谷口秋人先生が自宅マンションの階段で既に亡くなった状態で発見された事はもう知っていますよね」
「ええ、今日学校に登校して来たらみんなその話題で持ち切りでした。私もびっくりしています」
「そうですよね。自分の担任教師が亡くなったのですからびっくりしない方が可笑しいですよね。でも佐野舞子さん、貴方は担任の谷口先生の事を余り良く思っていなかったはずですよね。昨日私達に協力してくれている時もそんな事を話していましたしね」
「確かに余り好きでは無いと言いましたけど、それが一体何だと言うのですか。まさか私、疑われているのですか?」
「いえいえ、別にそういう訳ではありませんが、貴方には昨日五階の表階段に現れた絶望王子かも知れないと言う疑いがありますからね。だから一応アリバイを聞いてこいと相棒の羊野の奴がうるさいんで是非ともご協力の程をよろしくお願いしますよ」
「絶望王子の疑いですか」
「ええ、勿論俺も佐野舞子さんを疑いたくはありませんが……何せあの逃げ道が全て塞がれた校舎内から絶望王子に扮した犯人が逃げ出すのは先ず不可能ですから。なのであの校舎内にいた人物に必ず犯人が混じっていると言うのが私達の考えです。そして今回起きた谷口先生の階段落下事件の件も決して無関係では無いと考えています。なので今ここで貴方のアリバイを話して貰いますよ。貴方の疑いを晴らす為にもね」
「わ、分かりました。それで私への疑いが晴れるのなら何でも話します」
そう言うと佐野舞子は勘太郎の質問に素直に応じる姿勢を見せる。果たして真面目で責任感溢れる学級委員こと佐野舞子は本当に犯人では無いのだろうか。疑惑溢れる佐野舞子への尋問が始まる。
「昨夜の二十三時から~一時までの間、貴方はどこにいたのかを教えて下さい」
「どこにいたって……家にいたに決まっているじゃないですか」
「それを証明してくれる人はいますか」
「家の両親に聞いてみて下さい。その時間はもうベットの中ですから」
「つまり自分の部屋で寝ていたのですね。でもその間、誰にも会ってはいませんよね。ならこっそり家を飛び出して谷口先生の家で待ち伏せする事ももしかしたら可能ではないですか」
「いえいえ、それは不可能ですよ。私の家から谷口先生のマンションまで行くには車で一時間程掛かりますし。もし自転車で行ったとしたら片道二~三時間は掛かる距離です。勿論私はまだ車の免許やバイクの免許は持ってはいませんので移動は不可能です」
「そうですか。まあ、そうでしょうね」
まあ、当然の答えか。分かってはいた事だがな。
そう思いながら、早くも佐野舞子のアリバイが成立し掛けたその時、部屋のカーテンを閉めていた羊野が代わりに質問をする。
「でももし協力者が車で家に迎えに来てくれていたら、行けなくはないですよね。何せ犯人は二人は確実にいるみたいですから」
その羊野の言葉に佐野舞子の眉間が微かに上がる。
「もし私が犯人なら、私の寝顔を気まぐれで確認しに来るかも知れない親を気にしながら外へ出るなんて愚行は絶対にしないですよ。だってアリバイを作るんならもっと的確にそして完璧にしたいですからね」
「ええ、貴方の性格なら恐らくそうでしょうね。少しのミスも不安も許さない。そんな計画を立てそうですからね。でも予め親に『今日は疲れたから朝まで起こさないで』とか言えば、親はお越しに来ないことを貴方は知っていたのでは無いのですか。もしそうならこっそりと裏口から家を出れば車で待機している協力者と合流することももしかしたら可能かも知れませんよ」
「なるほど、私一人なら移動は出来ないけど協力者が一緒なら移動は可能と考えている訳ですか。中々面白い考えですけど、でもそれはあくまでも羊野さんのただの憶測ですよね。谷口先生の家まで移動したと言う証拠もありませんし」
「ええ、勿論証拠はありませんが、谷口先生の家まで車で移動したのなら当然町中の道路を移動したと言う事ですよね。なら昨夜の二十二時から深夜の二時の間にその車が通ったと思われる町中に仕掛けられている防犯カメラをしらみつぶしに探せばもしかしたら貴方と協力者が乗っていた車が見つかるかも知れませんね」
「流石は羊野さんですね。もし犯人が車や徒歩で移動して来たのなら犯行現場から逆算して犯人が移動して来たと思われる通路から防犯カメラを調べればもしかしたら犯人は見つかるかも知れないと言う訳ですか。今のように予め容疑者が決まっていれば尚やりやすいでしょうしね。まあでも、その協力者の車とやらに私が乗っていたらの話ですけどね」
「と言う事は他の移動方法ももしかしたらあると言う事でしょうか」
「なんでそうなるんですか。私は犯人では無いと言っているんですよ!」
まるでワザとプレッシャーを与えるかの用な羊野の言葉攻めに佐野舞子は向きになってこれに応戦する。恐らく羊野の考えでは、もしも佐野舞子が犯人なら……犯行を行う為に移動した経路やその可能性をガンガン攻めて行けば何かボロを出してくれるのではないかと言う計算からだろう。
普通に考えて、家にいたと証言する佐野舞子のアリバイを崩す事は正直容易ではないのでワザと揺さぶりを掛けて相手がどう反応するのかを確認するのが彼らの本来の目的の用だ。
「それでは質問を変えましょう。貴方は虐めの現状を変えようと一年前から谷口先生に相談しに行っていましたよね。でもいつも話をはぐらかされてまともに話を聞いてはくれなかったと他の先生方や周りの生徒から証言を得ています」
「ええ、確かに、谷口先生には天野君達の度が過ぎるイジメをどうにかして欲しいと何度も訴えました。でもその努力や願いは一向に叶いませんでしたけどね」
「まあ、そのお陰で貴方もあの不良達から報復を受けた用ですがそれで屈する貴方ではありませんよね。何せ貴方が中学時代の頃、ある生徒からの虐めが原因でまだ小学六年生だった妹さんが自殺していますからね」
「な、なんだって!」
その思いも寄らない羊野の言葉に勘太郎は絶句し、話を聞いていた佐野舞子は羊野を激しく睨みつける。
「過去に死んだ妹の自殺と今回の谷口先生の事件と何か関係があるんですか!」
「直接的には何の関係もありませんが、でも貴方の苦い経験を呼び覚ます切っ掛けくらいにはなったのではありませんか。話では妹さんを自殺で亡くされた時、貴方は妹が出す苦痛のサインに気づけなかった事に苦悩していたそうじゃないですか。そして当時の貴方は虐めていた生徒だけでは無く、虐めをワザと見過ごしていた担任教師にも非難の怒りをぶつけている。でも結局は全てをうやむやにされて誰も責任を追う事も無くその事件は終わっている。そんな過去を持つ貴方になら、こんな憶測も考えられますよね。例えば、理不尽な人達を野放しにする社会に絶望した貴方は、生徒達が嘲り嫌う絶望王子に扮して世間の人達に復讐し始めたのでは無いかと言う可能性です。行き成り不良達に犯行を行ったら流石にバレるかも知れないので、素行の悪い関係ない人達をワザと巻き込んで謎の通り魔の犯行に見せかけようと考えたのではないでしょうか。そう全てはあの不良達を一人ずつ確実に死傷させる為に。だからこそ王子大輝君の搬送をワザと遅らせた容疑を持つ谷口先生も今回のターゲットに入れたのだと私は考えています。そう考えるのなら虐めを異常に忌み嫌う佐野舞子さんの言動も当然理解できるし、その動機も十分に成り立つとは思いませんか」
「何処でそんな家の事情を穿り返して来たのかは知らないけど、全くの的はずれだわ。私はそんな事で人殺しなんかしませんよ。大体私が関わっていると言う証拠はあるのですか」
「ありませんよ。さっきも言った用にただの憶測ですから」
「ただの憶測で犯人に仕立て上げられてはこちらも溜まった物ではないわ。先ず私を犯人だと決めつけるのならちゃんとした証拠を提示してからにして頂戴!」
「証拠はまだありませんが肝心のアリバイも貴方には無いと言っているのですよ。二十三時から一時までの二時間、貴方が寝ている所をご両親が見ていないのならアリバイは無いのと一緒ですからね。それにこの事件の裏にはあの円卓の星座が陰で主催する狂人ゲームが絡んでいますから犯人側にも後二日以内に他の残りのターゲット達を死傷させなけねばならないと言うクリアー条件があるはずです。なので絶望王子は必ずまたその姿を現すと思いますよ」
「円卓の星座……ターゲット? 一体貴方は何を言ってるの」
何だか心配そうに佐野舞子と羊野瞑子を見詰める勘太郎はチラチラと二人の様子を見守っていたが、佐野舞子の妹が過去に虐めが原因で亡くなっていると聞きつい口を出してしまう。
「お、お前なんだその情報は、佐野舞子さんが中学時代に虐めが原因で、また小学生だった妹さんを自殺で亡くされていただなんて、そんな情報昨日の段階では話にすら無かったじゃないか!」
「ええ、昨日予め赤城さんに疑わしいと思われる容疑者達の家族構成なんかを調べてくれとお願いしていましたからね。そして翌朝早くに赤城さんから、佐野舞子さんの妹さんの情報が届いたのですよ」
「なるほど、その妹さんの事を聞いてしまったら話の内容は大きく変わってくるな。これまでの不良達に対する佐野舞子さんの動機に殺意が込められていても別に可笑しくは無いと言う事か。流石に疑いたくは無いがな」
「私も最初は彼女が犯人である可能性は限りなく低いと思っていましたが、自殺した妹さんの存在が出てきたのなら彼女が犯行に至る可能性をもう一度考え直す必要がありますね」
「私はやっていないと先程から言っているでしょう!」
「ならもう少しだけ私の質問に付き合って下さいな……ねえ、佐野舞子さん!」
そう言うと羊野は怪訝な顔をする佐野舞子に視線を落としながら、その時の状況を根掘り葉掘り聞くのだった。
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