白い羊と黒鉄の探偵 ~狂人達が暗躍し掲げる不可能犯罪に白い羊と黒鉄の探偵が挑む~

藤田作磨

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第二章 『絶望階段』 とある高校に出没する階段落下トリックを操る狂人・絶望王子と呼ばれる謎の学生との推理対決です!

2-14.容疑者、佐藤彦也の証言

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「失礼します」

 小枝愛子が教室へと戻り続いて生徒指導室に現れたのは、少し緊張しながら教室へと入って来る三年A組ダーツ部部長・佐藤彦也だった。

 佐藤は如何にも怪しげな二人の白黒探偵にかなり興味を抱いている用だったが、自分も容疑者として疑われていると知り体がぎこちなく震えている用だ。そんな彼が中央のパイプ椅子に座ると声を震わせながら甲高い声を上げる。

「事情聴取……これから俺は事情聴取を受けるんですよね。つまり昨日五階に現れたと言うあの絶望王子や昨夜亡くなった谷口先生への関与を否定する為にも自分のアリバイを証明しなけねばならないと言う訳ですか」

「まあ、平たく言えばそう言う事です。佐藤君、色々と話を聞かせて貰いますよ」

 勘太郎のその言葉に佐藤彦也は答える気になった用だ。勘太郎は佐藤彦也の言動に注意しながら話を進める。

「昨夜の二十三時から一時までの間、貴方は何処で何をしていましたか」

「何って、家でネットゲームをしていましたよ。アイアンクエストって言うファンタジー世界を舞台としたソーシャルネットワークゲームですよ」

「アイアンクエストって確か、テレビのCMにも出ている奴ですよね。ええ、やった事はありませんが噂くらいは知っていますよ」

「そのゲームを昨日は深夜の二時までやっていましたので、疑うんでしたら昨日一緒に狩りに行った仲間達にでも聞いてみて下さいよ。後で俺のフレンドリーリストを教えますから」

「そ、そうですか。でもそのゲームを貴方本人がやっていたとは限りませんよね。もしかしたら貴方じゃ無い誰かが貴方の部屋に隠れてそのゲームを代わりにしていても言い訳ですし」

「まさか母親にでもそのゲームをやらせて俺は外に出かけたとでも言いたいのかよ。そんなのは先ずあり得ない事だぜ。俺の父親や母親もパソコンどころからスマホも満足に使えない古い人間だからな」

「そうですか、ネットゲームをしていたのですか。ならアリバイはあると言う事になるのかな?」

 これからどうした物かと言う勘太郎の視線に応えるかの用に、隣で見ていた羊野が直ぐさま話に加わる。

「でも自室でネットゲームをしている間、ご両親とは会っていないのですよね。当然貴方の証言だけと言う事になります。なら代わりに別の人間が貴方の部屋でネットゲームをやっていたとしても別に気付かれ無いと言う事になります。つまり貴方のアリバイには大きな穴があると言う事ですわ」

 羊野のその冷静な指摘に佐藤彦也は激しく頭を掻き毟る。

「何だよ、俺の言葉が信じられないとでも言うのかよ。ふ、ふざけるな!」

「実際貴方の証言だけで誰も目撃者がいないのですから疑われても仕方が無いのではないでしょうか。まあ、貴方がネットゲームをサーバー上の仲間達と一緒にやっていたと言うのなら貴方のアリバイを調べる手段が無い訳では無いのですが」

「何だよ、そんな方法があるのかよ。じゃそれで調べてくれよ」

「ですがそれを行うには今日は時間がありませんので明日にでも貴方のアリバイをハッキリさせたいと思っています。そんな事よりです。話は変わりますが佐藤君はダーツ部の部長さんらしいですが、ダーツを投げた際のボードまでの距離の規定は確か二メートル三七センチだと思ったのですが、ダーツの針ってそこまで正確にボードの真ん中付近まで届く物なのでしょうか?」

「家の部活員は皆半分遊びで活動している所があるからな。だから皆そんなに上手くは無いが、本格的に行っているダーツの上級者ならボードの真ん中に当てる事も可能だぜ」

「つまり、この校舎内にはそのダーツの上級者は誰もいないと言う事ですね」

「まあ、そう言う事だな。だが同じ針を飛ばす競技でも物凄く上手い達人はいるがな」

「達人……? それは一体なんの達人なのですか」

「吹き矢だよ、吹き矢。あんたらも科学部に行ったのなら明日の冬祭りで行われる科学部の出し物は見ただろう」

「ええ、確か科学部の出し物は射的でしたね。でも玩具の空気ライフルを買うお金が無いから吹き矢で代用しようと言ってたんですよね」

「ああ、その吹き矢の玄人があの小枝愛子何だよ」

「へえぇ~っそうなのですか全然知れませんでした。昨日はそんな事は一言も言っていませんでしたからね。だから貴方も田中さんに作って貰ったそのダーツの針の入った小型ケースを持っているのですね」

 そう言うと羊野はポケットから筆箱くらいの小型のケースを取り出し机の上に置くと、それを見た佐藤彦也は目を見開きながらそれが何なのかを確認する。

「これって家の部室にあるダーツの針の入った小型ケースじゃないですか。どうしてここにあるんだよ」

「それは私がダーツ部の部室に忍び込んで勝手に持ってきたからですわ」

 お前何勝手なことをしているんだよ。と言うような視線を勘太郎と佐藤彦也が向けていると、羊野は何も悪びれる様子も無く淡々と話始める。

「このダーツの針の入っている小型のケースは用務員の田中友男さんが作った物ですね。これと同じ用な物を科学部の部室で見ましたからね」

「ああ、これは田中さんに作って貰ったんだよ。留め金を外すと蓋が勝手に開く仕組みになっているんだよ」

「そうなのですか、地味に凄い仕掛けですね。市販の物は皆ケース箱から手で外すタイプの奴ですからね。これなら片手でも取り出すことが出来てとても便利と言う訳ですか。中々器用な仕事をしますね。田中さんと言う人は」

「ああ、そうだな。まあ、手も器用なんだが吹き矢の技術を教えてくれたのも、その田中さんだと言う話だぜ」

「つまり小枝愛子さんは田中さんから吹き矢の技術を伝授されたと言う事ですか」

「そう言う事になるな。つまりは師弟関係と言う事さ。実は俺も小枝が持っていた吹き矢のケース箱を見て、それを作ったと言う田中さんに頼み込んでやっと作って貰ったんだよ。何せデザインもシンブルで格好いいし、何より使いやすいからな」

 佐藤彦也は机に置かれたダーツの針の入った小型のケース箱を手でさすりながらしみじみと言う。

「どうやらかなりのお気に入りの用ですね。それに小枝さんとも仲はいい用ですしね。その反面あの不良達とは随分と仲が悪そうじゃないですか。何でも人の噂ではあの不良達によく殴られてカツアゲをされていたとか」

 羊野がその話をすると佐藤彦也の顔が見る見ると怒りの表情へと変わる。どうやら普段からかなりのご立腹の用だ。

「ああ、あいつらからはよく殴られたり蹴られたりして金をむしり取られてるぜ。あいつらはお布施とか授業料とか言って金を奪って行くが、どうやら今は王子大輝君の亡霊が現れて内心かなりビビりまくっている用だな。ハハハッいい気味だぜ」

「そんな事を私達の前で言っていいんですか。貴方も昨日現れた絶望王子の疑いが掛けられているのですよ」

「別に構わないぜ。むしろ俺が絶望王子に成り代わって復讐したいくらいだ。まあ、実際誰が絶望王子の姿に扮してあんな事をしていたのかは知らないが、あの不良達に恨みを持つ人間はこの高校内には山ほどいるだろうからな。誰だって容疑者になり得る可能性は持っていると思うぜ」

「つまり貴方は昨日現れた絶望王子では無いと言いたいのですね」

「ああ、残念ながら俺じゃ無いな。まあ、その絶望王子にあの不良達を陥れる計画を持ち出されたら間違いなく二つ返事で引き受けるんだけどな……俺の所に話が無かった事は本当に残念だぜ!」

「そこまであからさまに言いますか」

「あいつらはそこまで憎まれても可笑しくは無いクズ野郎共なんだよ。別にあいつらが絶望王子に殺されたとしても自業自得じゃないのか。あの小枝愛子に面白半分に罪をなすりつけて、王子大輝君を足蹴にして階段から突き落としたんだからな」

「でもあの不良達は小枝さんがぶつかって階段から落ちたと証言していますが」

「その言葉を信じるのかよ。正直この高校であいつらの言葉を信じている生徒は誰一人としていないぜ。みんなあの不良達が突き落としたと思っているからな」

 そう言うと佐藤彦也は鼻息を鳴らしながら興奮気味に言う。

「最後に一つ聞いてもいいですか」

「な、何だよ」

「その不良グループの仲間の一人の綾川エリカさんのスマホが昨日から紛失しているのですが見たことはありませんか」

「綾川がスマホを持っているのは知ってるけど、俺は盗んじゃいないぜ。あいつらじゃ有るまいし、俺は人の物を盗んだりはしないからな。そんなのは俺のプライドが許さん!」

「つまり彼女のスマホに触った事は無いのですね」

「ああ、ないな。て言うか奴のスマホなんか触りたくもねぇーぜ!」

 そう言うと佐藤彦也はまるで溜まりに溜まったストレスを吐き捨てるかの用に、あの不良達に向けた罵詈雑言を並べるのだった。
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