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第三章 『汚れた天馬』 最強の武闘派の狂人現る。人を自由に空から落とす事ができる天空落下トリックを操る狂人・強欲なる天馬との推理対決です!
3-23.長距離用、天空落下トリックの謎
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23
四月十日(金曜日)
時刻は夜の一時丁度。勘太郎と羊野は天馬寺へと上がるエレベーターに乗り込むと、目の前にある天馬寺ではなく、東側鳥居があるその真下の地面に存在するマンホールの前まで来ていた。
赤城刑事の話によればゴミや汚物が詰まりもう既に下水道としての役目は果たしてはいないとの事だが、勘太郎と羊野は構わずその鉄製のマンホールの蓋を専用の鉄の差し込み棒でこじ開ける。
蓋を開けて中を覗いてみるとそこに見えたのは話に聞いた通りの酷く濁った褐茶色の汚物水だった。その汚物水から漂う臭いが酷い悪臭となってその中を覗いた者に無言の警告を発しているかのようだ。
そんな暗闇の中で懐中電灯を照らしながら勘太郎は考える。羊野が鍵型で違法に模倣した合鍵を使いここまで上がって来たのだが、その間誰にも会う事無く簡単にこれた事に酷い違和感を感じてしまう。
もう深夜なのでこの時間帯は信者達は皆就寝しているだろうし、もし起きていたとしても規則の為に外出はもちろん出来ない事は分かってはいるのだが、あまりにも人と出会わない為に逆に不安になっているのだ。
夜風に揺れる木々の音と天馬寺まで続いている木の板で出来た道が不気味に反音し、闇の中から人が歩いて来るかのようにも聞こえてしまう。そんな心許ない状況下の中で崖の下から吹き付ける激しい突風の音に内心勘太郎はかなりビビっていたが、そんな心情など知るよしも無い羊野は自分の考えを淡々と語る。
「天馬寺に乗り込む前に、先ずはこの東側鳥居のマンホールに来ていただきありがとう御座います。と言うわけで一週間前に情報番組に出ていた大塚信次なる大学教授のコメンテーターや天馬寺被害者の会の会長でもある山本拓也さんが一体どうやって殺されたのかと言う事を今から説明しますね。とは言ってもこれはあくまでも私の仮説なのですが大体は合っている物と思いますよ」
「それでこの東側鳥居があるマンホールに連れて来たのは一体どう言う事だよ。このマンホールは汚物水が溜まっているから人を下に落とす事は出来ないと言う結論が出たんじゃ無いのかよ」
「確かに警察の方ではそのような結論に至った見たいですが私の考えは違います。なので先ずは結論から言いますわ、ここから約400メートル以上まで離れた(大塚信次さんや山本拓也さんのような)死体については、このマンホールの穴から落とされたと断言しますわ」
「この東側のマンホールの穴から落とされただとう。お前何を言っているんだ、目の前にあるこの汚物水がお前には見えないのかよ。この汚い汚物水の詰まった穴からは人は落とせないだろ。それともこの汚物水を止めているマンホール官の底には蓋栓でもあるのかよ」
「いいえ、そんな物はありませんよ。もし上手く水を抜いて人を落とせたとしてもその体に付いた汚物でここから落とした事が瞬時に分かってしまうじゃないですか」
「なら一体どうやってここから人を落としたと言うんだよ」
「上げ底ですよ。このマンホール官は他のマンホールとは違い二重構造になっているのですよ」
「二重構造だとう。じゃこのマンホール官はご飯を炊く炊飯器のようにお釜をセットするがごとく、汚物水の入った底のあるマンホール官を被せていたのか。だがそうなるとまた新たな謎が出来るぞ。その汚物水の入ったマンホール官は一体どうやって取り出すんだよ。そのマンホール官だって円形にして120センチはあるし、その長さだって恐らくは10メートルはあるはずだ。そんな長い汚物水の入ったマンホール官を引き上げる事は大型のクレーン車でも使わない限り引き上げる事は出来ないだろう」
「誰がマンホール官を引き上げるだなんて言いました。そんな事標高が230メートルもあるこの山の頂上で出来るわけないじゃないですか」
「水を抜く事もマンホール官を引き上げる事も違うと言うのなら一体どうするんだよ?」
「こうするんですわ!」
そう言うと羊野は手に持った鉄の差し込み棒でマンホール官の横を力強く押すとその汚物水は勘太郎の目の前から消える。その汚物水が消えたマンホールの穴の底には下が見えないくらいに続く無限の闇が広がっていた。
「あ、穴だと。行き成りマンホールの下に底なしの穴が出来たぞ。つまりこのマンホールの下には最初から下水道は通ってはいなかったんだな。すっかり騙されてしまったぜ。確かこのマンホールの穴の下には荷物を積み卸し出来るトンネルで出来た荷物置き場があるんだったな。その真下までこのマンホール官は続いているのか。確かにこのマンホールの穴から人を落とす事が出来れば、この真下で待ち構えているトラックの荷台のボックスの上に黙っていても人を落とす事が出来るからな。その荷台のボックスの上は当然開閉が可能なボックスを使用していると言った所か。そしてその荷台の中に車のような障害物でも置いて置けばその車ごと所定の現場に戻す事が出来るから犯行もかなり楽になるからな。これが山本拓也さんが死んだ天空落下トリックの正体か」
「まあ、そうなのですが、この天空落下トリックは遠距離用に特化した天空落下トリックです。このトリックに短距離用の天空落下トリックを交互に合わせてこそ、この天空落下トリックは完成するのですよ」
「短距離用の天空落下トリックと長距離用の天空落下トリックだと? そんな事よりだ。その消えてしまった汚物水は一体どこに消えてしまったんだ。暗闇のせいかよく消えた瞬間が見えなかったんだが?」
「仕方ないですね」と言いながら羊野が引っかけていた鉄の差し込み棒を引くと汚物水の入ったマンホール官が半分だけその顔を現す。その状況から勘太郎はついにそのトリックの正体に気づく。
「そうか、汚物水の入ったマンホール官を上に上げるんじゃない。そのまま横にずらす、或いはスライドさせる仕組みになっていたのか。まさか汚物水の詰まったマンホールの穴が横にスライドして新たな穴が現れるとは誰も思わないだろうからな。それに汚い汚物水には誰も触りたくも無ければ臭いも嗅ぎたくは無いと言う心理も相まって、こんな場所から人を落とす事は不可能だと言う思いを無意識的に抱かせている。そうまさに人の心理的な盲点をついたトリックだぜ!」
勘太郎がこのトリックの仕掛けに心底感心していると、羊野のスマホ携帯電話が音を立てて着信音がなる。羊野はその携帯電話に出るとしばらくその電話の相手と話し込んでいる様だったが、静かに電話を切るとその羊面のマスクの顔を勘太郎に向けながら話出す。
「赤城刑事さんからです。たった今民家の家の中をそのまま改造した屋敷の中から6トントラックが発見されたそうですわ」
「民家を改装しただとう。まさか民家の家の中にそのまま6トントラックが入っていたのか」
「はい、どうやら小さな車庫と家の中はつながっていて家の中にトラックをそのまま止める事が出来る仕組みになっているそうです。外から見たらまさかごく普通の民家の家の中にトラックが丸ごと隠されているとは夢にも思わないでしょうから、今まで誰にも気付かれなかったのでしょうね」
「そのトラックが民家に入る瞬間でも目撃されているなら誰かの証言を得ることも出来たのだろうが、そこは一番気をつけて慎重に行動していただろうから誰にも分からなかったと言った所か。いや例え見られていたとしても人の世間への関心はそこまでは無いから偽装トラックは絶対に見つからないという自信と自負が何処かにあったのかも知れないな。だからこそ本物のナンバープレートの番号を持つ運送用のトラックの近くに偽物のナンバープレートの番号を持つ運送用のトラックを隠していたんだな」
「それとこの偽装トラックの荷台にはまるで荷台の壁で包み込むかのように見えないように釣り上げ用のクレーンが上手く隠されていましたから、この6トントラックの元は恐らくはクレーン車を改造したトラックだったのでは無いのかと推察されます」
「そうか、その荷台の中に隠されている釣り上げ用のクレーンを使って死体を乗せた廃車を元の現場に戻していたのか。当然人がその場に入ってこないように通路の周りには工事中の看板でも立てて現場を見られないように上手く偽装していたのだろうぜ」
そう結論づけた勘太郎は羊野が被る白い羊のマスクの真っ赤な眼光を見つめると、もう一つの疑問を堂々と聞く。
「このマンホール官を利用した遠距離用のトリックの事は十分に理解はしたが、逆に短距離用の天空落下トリックとは一体どう言う代物なんだ? もうお前にはその正体が分かっているのだろ。ならもったいづけずに教えてくれよ」
「それを語るにはここでは駄目ですわ。まあ私が敢えて語らなくても今から高田傲蔵和尚に会いに行けば嫌でもその正体が分かると思いますよ。と言うわけで私はこれからパーティーの出し物の準備がありますのでここからは別行動にさせて貰いますわ」
「べ、別行動だとう。お前、ここまで来てか。この大事な局面で一体何をしに、そしてどこに行くんだよ」
「それは秘密ですわ。せっかくあの高田傲蔵和尚と強欲なる天馬さんが黒鉄さんの登場を手ぐすね引いて待っているのですから、私もそれなりにサプライズのプレゼントを用意しなけねばと心弾ませている所ですわ」
「お前が言うと不安しか残らないが、まあ他に何か考えがあるのならその行動を止めはしないぜ。例えお前がどんな悪巧みをしていたとしても俺はお前を信じているからな」
「その台詞は裏を返せば春ノ瀬桃花さんと春ノ瀬達郎さんにもしもの事があったら承知しないぞと遠回しに釘を刺しているようにしか聞こえないのですが」
「そう聞こえるんだったらその思いを心にとどめながら行動を実行しろ!」
「ホホホホーッ、分かりましたわ、黒鉄さん。では後ほど高田傲蔵和尚のお部屋で合流しましょう。私もできるだけ急いで駆け付けますから、判断をミスって早死にだけは勘弁して下さいよ。もしあなたが死んでしまったらここにいる信者達だけではなく、春ノ瀬桃花さんや春ノ瀬達郎さんのお命の保証もしかねますからね」
「俺が死んだらお前と交わした契約が切れるからその後お前は好き勝手に動けると言う事か。それともただ単純に俺の死に悲しみ敵討ちをしてくれると言う事かな?」
「ホホホホッ、ただ単にあなたに死なれては円卓の星座との面白い狂人ゲームが終わってしまって、私は警察にもそして組織にも追われる身になってしまいますからね。そうなるといろいろと不都合が生じるのですよ。ただそれだけですわ。黄木田喫茶店で飲むコーヒーがもう飲めなくなるのは悲しい事ですからね」
「お前の心配している所はそこかい! まあ、お前らしいと言えばお前らしい答えだが、俺も黄木田店長の淹れるコーヒーは飲みたいからな。だから何としてでも生きて帰らないとな」
「その意気ですわ、黒鉄さん。では後ほど天馬寺の中でお会いしましょう」
そう言うと二人は交互に別れながら、羊野はエレベーターのある裏倉庫の方に戻り。勘太郎の方はそのまま真っ直ぐに天馬寺の方にと向かうのだった。
四月十日(金曜日)
時刻は夜の一時丁度。勘太郎と羊野は天馬寺へと上がるエレベーターに乗り込むと、目の前にある天馬寺ではなく、東側鳥居があるその真下の地面に存在するマンホールの前まで来ていた。
赤城刑事の話によればゴミや汚物が詰まりもう既に下水道としての役目は果たしてはいないとの事だが、勘太郎と羊野は構わずその鉄製のマンホールの蓋を専用の鉄の差し込み棒でこじ開ける。
蓋を開けて中を覗いてみるとそこに見えたのは話に聞いた通りの酷く濁った褐茶色の汚物水だった。その汚物水から漂う臭いが酷い悪臭となってその中を覗いた者に無言の警告を発しているかのようだ。
そんな暗闇の中で懐中電灯を照らしながら勘太郎は考える。羊野が鍵型で違法に模倣した合鍵を使いここまで上がって来たのだが、その間誰にも会う事無く簡単にこれた事に酷い違和感を感じてしまう。
もう深夜なのでこの時間帯は信者達は皆就寝しているだろうし、もし起きていたとしても規則の為に外出はもちろん出来ない事は分かってはいるのだが、あまりにも人と出会わない為に逆に不安になっているのだ。
夜風に揺れる木々の音と天馬寺まで続いている木の板で出来た道が不気味に反音し、闇の中から人が歩いて来るかのようにも聞こえてしまう。そんな心許ない状況下の中で崖の下から吹き付ける激しい突風の音に内心勘太郎はかなりビビっていたが、そんな心情など知るよしも無い羊野は自分の考えを淡々と語る。
「天馬寺に乗り込む前に、先ずはこの東側鳥居のマンホールに来ていただきありがとう御座います。と言うわけで一週間前に情報番組に出ていた大塚信次なる大学教授のコメンテーターや天馬寺被害者の会の会長でもある山本拓也さんが一体どうやって殺されたのかと言う事を今から説明しますね。とは言ってもこれはあくまでも私の仮説なのですが大体は合っている物と思いますよ」
「それでこの東側鳥居があるマンホールに連れて来たのは一体どう言う事だよ。このマンホールは汚物水が溜まっているから人を下に落とす事は出来ないと言う結論が出たんじゃ無いのかよ」
「確かに警察の方ではそのような結論に至った見たいですが私の考えは違います。なので先ずは結論から言いますわ、ここから約400メートル以上まで離れた(大塚信次さんや山本拓也さんのような)死体については、このマンホールの穴から落とされたと断言しますわ」
「この東側のマンホールの穴から落とされただとう。お前何を言っているんだ、目の前にあるこの汚物水がお前には見えないのかよ。この汚い汚物水の詰まった穴からは人は落とせないだろ。それともこの汚物水を止めているマンホール官の底には蓋栓でもあるのかよ」
「いいえ、そんな物はありませんよ。もし上手く水を抜いて人を落とせたとしてもその体に付いた汚物でここから落とした事が瞬時に分かってしまうじゃないですか」
「なら一体どうやってここから人を落としたと言うんだよ」
「上げ底ですよ。このマンホール官は他のマンホールとは違い二重構造になっているのですよ」
「二重構造だとう。じゃこのマンホール官はご飯を炊く炊飯器のようにお釜をセットするがごとく、汚物水の入った底のあるマンホール官を被せていたのか。だがそうなるとまた新たな謎が出来るぞ。その汚物水の入ったマンホール官は一体どうやって取り出すんだよ。そのマンホール官だって円形にして120センチはあるし、その長さだって恐らくは10メートルはあるはずだ。そんな長い汚物水の入ったマンホール官を引き上げる事は大型のクレーン車でも使わない限り引き上げる事は出来ないだろう」
「誰がマンホール官を引き上げるだなんて言いました。そんな事標高が230メートルもあるこの山の頂上で出来るわけないじゃないですか」
「水を抜く事もマンホール官を引き上げる事も違うと言うのなら一体どうするんだよ?」
「こうするんですわ!」
そう言うと羊野は手に持った鉄の差し込み棒でマンホール官の横を力強く押すとその汚物水は勘太郎の目の前から消える。その汚物水が消えたマンホールの穴の底には下が見えないくらいに続く無限の闇が広がっていた。
「あ、穴だと。行き成りマンホールの下に底なしの穴が出来たぞ。つまりこのマンホールの下には最初から下水道は通ってはいなかったんだな。すっかり騙されてしまったぜ。確かこのマンホールの穴の下には荷物を積み卸し出来るトンネルで出来た荷物置き場があるんだったな。その真下までこのマンホール官は続いているのか。確かにこのマンホールの穴から人を落とす事が出来れば、この真下で待ち構えているトラックの荷台のボックスの上に黙っていても人を落とす事が出来るからな。その荷台のボックスの上は当然開閉が可能なボックスを使用していると言った所か。そしてその荷台の中に車のような障害物でも置いて置けばその車ごと所定の現場に戻す事が出来るから犯行もかなり楽になるからな。これが山本拓也さんが死んだ天空落下トリックの正体か」
「まあ、そうなのですが、この天空落下トリックは遠距離用に特化した天空落下トリックです。このトリックに短距離用の天空落下トリックを交互に合わせてこそ、この天空落下トリックは完成するのですよ」
「短距離用の天空落下トリックと長距離用の天空落下トリックだと? そんな事よりだ。その消えてしまった汚物水は一体どこに消えてしまったんだ。暗闇のせいかよく消えた瞬間が見えなかったんだが?」
「仕方ないですね」と言いながら羊野が引っかけていた鉄の差し込み棒を引くと汚物水の入ったマンホール官が半分だけその顔を現す。その状況から勘太郎はついにそのトリックの正体に気づく。
「そうか、汚物水の入ったマンホール官を上に上げるんじゃない。そのまま横にずらす、或いはスライドさせる仕組みになっていたのか。まさか汚物水の詰まったマンホールの穴が横にスライドして新たな穴が現れるとは誰も思わないだろうからな。それに汚い汚物水には誰も触りたくも無ければ臭いも嗅ぎたくは無いと言う心理も相まって、こんな場所から人を落とす事は不可能だと言う思いを無意識的に抱かせている。そうまさに人の心理的な盲点をついたトリックだぜ!」
勘太郎がこのトリックの仕掛けに心底感心していると、羊野のスマホ携帯電話が音を立てて着信音がなる。羊野はその携帯電話に出るとしばらくその電話の相手と話し込んでいる様だったが、静かに電話を切るとその羊面のマスクの顔を勘太郎に向けながら話出す。
「赤城刑事さんからです。たった今民家の家の中をそのまま改造した屋敷の中から6トントラックが発見されたそうですわ」
「民家を改装しただとう。まさか民家の家の中にそのまま6トントラックが入っていたのか」
「はい、どうやら小さな車庫と家の中はつながっていて家の中にトラックをそのまま止める事が出来る仕組みになっているそうです。外から見たらまさかごく普通の民家の家の中にトラックが丸ごと隠されているとは夢にも思わないでしょうから、今まで誰にも気付かれなかったのでしょうね」
「そのトラックが民家に入る瞬間でも目撃されているなら誰かの証言を得ることも出来たのだろうが、そこは一番気をつけて慎重に行動していただろうから誰にも分からなかったと言った所か。いや例え見られていたとしても人の世間への関心はそこまでは無いから偽装トラックは絶対に見つからないという自信と自負が何処かにあったのかも知れないな。だからこそ本物のナンバープレートの番号を持つ運送用のトラックの近くに偽物のナンバープレートの番号を持つ運送用のトラックを隠していたんだな」
「それとこの偽装トラックの荷台にはまるで荷台の壁で包み込むかのように見えないように釣り上げ用のクレーンが上手く隠されていましたから、この6トントラックの元は恐らくはクレーン車を改造したトラックだったのでは無いのかと推察されます」
「そうか、その荷台の中に隠されている釣り上げ用のクレーンを使って死体を乗せた廃車を元の現場に戻していたのか。当然人がその場に入ってこないように通路の周りには工事中の看板でも立てて現場を見られないように上手く偽装していたのだろうぜ」
そう結論づけた勘太郎は羊野が被る白い羊のマスクの真っ赤な眼光を見つめると、もう一つの疑問を堂々と聞く。
「このマンホール官を利用した遠距離用のトリックの事は十分に理解はしたが、逆に短距離用の天空落下トリックとは一体どう言う代物なんだ? もうお前にはその正体が分かっているのだろ。ならもったいづけずに教えてくれよ」
「それを語るにはここでは駄目ですわ。まあ私が敢えて語らなくても今から高田傲蔵和尚に会いに行けば嫌でもその正体が分かると思いますよ。と言うわけで私はこれからパーティーの出し物の準備がありますのでここからは別行動にさせて貰いますわ」
「べ、別行動だとう。お前、ここまで来てか。この大事な局面で一体何をしに、そしてどこに行くんだよ」
「それは秘密ですわ。せっかくあの高田傲蔵和尚と強欲なる天馬さんが黒鉄さんの登場を手ぐすね引いて待っているのですから、私もそれなりにサプライズのプレゼントを用意しなけねばと心弾ませている所ですわ」
「お前が言うと不安しか残らないが、まあ他に何か考えがあるのならその行動を止めはしないぜ。例えお前がどんな悪巧みをしていたとしても俺はお前を信じているからな」
「その台詞は裏を返せば春ノ瀬桃花さんと春ノ瀬達郎さんにもしもの事があったら承知しないぞと遠回しに釘を刺しているようにしか聞こえないのですが」
「そう聞こえるんだったらその思いを心にとどめながら行動を実行しろ!」
「ホホホホーッ、分かりましたわ、黒鉄さん。では後ほど高田傲蔵和尚のお部屋で合流しましょう。私もできるだけ急いで駆け付けますから、判断をミスって早死にだけは勘弁して下さいよ。もしあなたが死んでしまったらここにいる信者達だけではなく、春ノ瀬桃花さんや春ノ瀬達郎さんのお命の保証もしかねますからね」
「俺が死んだらお前と交わした契約が切れるからその後お前は好き勝手に動けると言う事か。それともただ単純に俺の死に悲しみ敵討ちをしてくれると言う事かな?」
「ホホホホッ、ただ単にあなたに死なれては円卓の星座との面白い狂人ゲームが終わってしまって、私は警察にもそして組織にも追われる身になってしまいますからね。そうなるといろいろと不都合が生じるのですよ。ただそれだけですわ。黄木田喫茶店で飲むコーヒーがもう飲めなくなるのは悲しい事ですからね」
「お前の心配している所はそこかい! まあ、お前らしいと言えばお前らしい答えだが、俺も黄木田店長の淹れるコーヒーは飲みたいからな。だから何としてでも生きて帰らないとな」
「その意気ですわ、黒鉄さん。では後ほど天馬寺の中でお会いしましょう」
そう言うと二人は交互に別れながら、羊野はエレベーターのある裏倉庫の方に戻り。勘太郎の方はそのまま真っ直ぐに天馬寺の方にと向かうのだった。
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