白い羊と黒鉄の探偵 ~狂人達が暗躍し掲げる不可能犯罪に白い羊と黒鉄の探偵が挑む~

藤田作磨

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第四章 『罪深い水瓶の底から』 大木槌を持った異形の殺人鬼が封鎖されたデパート内で勘太郎達に迫る。狂人・悪魔の水瓶との推理対決です!

4-17.羊野瞑子に忍び寄る新たな影

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「はあ、はあ、はあ、な、何なのよ、あの羊の女は、この暗闇の中でも当たり前のように自由に動けるみたいだし、決断と動きに一切の迷いがないわ。大抵の人間は私が持つ大木槌を目にしたら一瞬で恐怖し怖じ気づくはずなのに、この羊の女と来たら逆に興奮しながら喜び勇んで私に挑んで来るわ。まるで私との殺し合いを心の底から楽しむかのように。ちくしょう、この女はかなり異常だわ!」

 暗闇が広がる室内の通路を息を切らしながら必死に走る梅塚幸子の姿が見える。どうやらその後ろからゆっくりと歩いてくる羊野から必死に逃げているようだ。

 梅塚幸子の大きな誤算はこの羊野瞑子と言う人物が一体どんな人物なのかと言う事を全く知らなかったと言う点である。民間の一探偵事務所で働くただのコスプレ好きな可笑しな女としか考えていなかった梅塚幸子は改めて彼女と対峙した事で、この羊野瞑子の存在をハッキリと理解する。この女はかなりやばい存在なのだと。

「ちくしょう、ちくしょう。あの壊れた天秤とか言う奴、だましやがったな。何が簡単なゲームよ、嘘をつきやがって。あのへっぽこ探偵と頭の可笑しな羊の女に、こちら側の正体がバレる事無く西条ケミカル化学会社に関わる関係者達を皆殺しに出来れば、その後はこちら側の都合のいいように全てお膳立てをしてくれるとか言っていたのに、一体どうなっているのよ。私が壊れた天秤から授かった殺人トリックの謎を、あいつらは各階に上がるごとに結構短い時間で簡単に解いちゃうし、何よりあの羊の女に至っては滅茶苦茶に強いじゃないのよ。もうあの可笑しな探偵の二人もかなり邪魔になって来たからそろそろ殺してやろうと思って戦いを挑んで見たけど、逆にこっちが殺されそうだわ。まさかあの羊の女が私が雇っていた悪魔の水瓶と同類の存在だっただなんて、そんな話は聞いてはいないわよ!」

「梅塚幸子さん、待って下さい。まだお遊びは始まったばかりですよ。それなのに行き成り私の前から姿を消し、急いで逃げ出すだなんて、なんだか連れないじゃないですか。さっきまでの威勢と殺意は一体どこに行ったのですか。私、追いかけっこはあまり好きでは無いのですが」

「く、来るな、この羊の化け物めぇぇ!」

 正面から羊野に戦いを挑んだ事を後悔した梅塚幸子は荷物を置く倉庫内の中へと入り、そのまま社員用の女子更衣室の前へと辿り着く。
 そんな梅塚幸子が羊野との距離を確認しながら改めて見てみると、十数メートルほど先に不気味な靴の音を響かせながら白い羊の追跡者が堂々と迫る。
 不気味な羊のマスクを向けながら無機質な赤い眼光をギラギラと光らせるその姿は、正に子供の頃にテレビで見た特撮ヒーロー物の恐ろしい怪人を連想させる姿だ。

 そんな羊野に対抗するかのように梅塚幸子は直ぐさま女子更衣室に入ると、その数秒後何やら勝ち誇った顔をしながら梅塚幸子が女子更衣室から勢いよく出て来る。そんな梅塚幸子の右手には、猿ぐつわで口を封じられながらも泣きじゃくる小学生低学年くらいの少女の姿があった。勿論その両手は後ろ手に縛られ、酷い脅しを受けているのか、その場から逃げ出す素振りは一切見られないようだ。

 その綺麗に整えられた淡い黒の制服からして、どうやら何処かの私立の小学校に通う生徒であることだけは間違いないようだ。そんな囚われの身となった不幸な少女は目の前に現れた羊野に最初は救いを求めるような眼差しを向けるが、直ぐにその瞳は絶望の色へと変わる。何故なら目の前に現れた羊野もまた恐ろしい怪人のような姿をしていたからだ。
 そんな絶望的な顔を覗かせる少女の首元に、梅塚幸子は後ろからヘットロックを決めながら羊野を牽制する。

「ち、近づくな。それ以上近づいたらこのいたいけな少女が死ぬ事になるぞ。それでもいいのか。ハハハハハハ、これで形勢逆転だな。こんな事があろうかと前もって人質を一人この更衣室に閉じ込めて置いたんだよ。さあどうする。羊の化け物!」

 その狂気に満ちたあからさまな脅しに普通の人間なら怖じ気づき、その行動も慎重になる物だが羊野は違う。羊野はケラケラと不気味に笑いながら手に持つ二双の包丁を前に突き出しながら堂々と構える。

「ほほほほ、何か勘違いをしていませんか。梅塚幸子さん。私はあのあなたが雇った悪魔の水瓶と同類の人間だと、さっきから何度もそう言っているじゃないですか。こんないかれた格好をしている私がまともな人間な訳ないですよね。つまり人質を盾にとっても私の前では一切無駄だと言う事です。その娘さんの命よりも自分の命を守る事を何よりも迷わず優先しますし、見ず知らずの人間が死んでも心を痛めることは決してありませんわ。だからその子を殺したいのならいつでもどうぞ。その後であなたを八つ裂きにして差し上げますから」

「なっ!」

 さも当然のように言う羊野の言葉に梅塚幸子は絶句し、思わず言葉を詰まらせる。まさかこんな幼気な少女を人質に取っている自分にそんな言葉が返ってくるとは思いもしなかったからだ。梅塚幸子は荒い息を吐きながら再度羊野に叫ぶ。

「本当に分かっているのか。これは脅しじゃないんだぞ。私はやると言ったら本当にやる人間だ。この大木槌でこの少女の頭をかち割り、本気で叩き殺す。それでもいいのか!」

「だからいいと行っているじゃないですか。早くして下さいな。もう面倒くさいなぁ」

 こ、こいつは……もしかしたらわたし以上にいかれているのかも知れない。そう思った梅塚幸子だったが、直ぐにあることを思いつく。

 もしかしたら私にハッタリを噛ましているのかも知れない。

 そう思った梅塚幸子は羊野をにらみつけながら人質となっている少女の姿を前へと突き付ける。

「ハハハ、どうやらこの私にこの少女が殺せないと思っているようだな。なら殺せるという証拠を今ここで見せてやるよ!」

 そう高らかに宣言しながら梅塚幸子は手に持つ大木槌を振り上げる。
 そんな暴走をする梅塚幸子の前に一人の人物が静かに歩み寄る。

 懐中電灯を照らしながら羊野の後ろから現れたその人物は西条ケミカル化学会社の専務、関根孝だった。どうやら関根孝は羊野と梅塚幸子との距離を取りながら後ろから密かについて来ていたようだ。関根孝は今にも大木槌を振り下ろそうとする梅塚幸子に向けて必死に話かける。

「梅塚幸子さん、もう、もうこんな事はやめるんだ。わかった、もうわかったから、その子は解放してやってくれ。その子はあなたの復讐には全く関係がないだろう。その代わり俺がこの頭をあんたに差し出すから。その大木槌で頭を叩き割るなり、汚染水で溺死させるなり好きにしてくれ。そのとち狂わんばかりのやるせない思いを、俺への復讐で果たすんだ」

「西条ケミカル化学会社専務……関根孝!」

「そうだ、俺が関根孝だ。梅塚幸子さん、あんたの最後のターゲットはこの私のはずだ。だからその少女は解放してくれ。頼む、どうか俺の命でこの事件を終わりにしてくれ……」

 自分の命と引き換えにその見ず知らずの少女の命を助けてくれと必死に土下座をする関根孝だったが、梅塚幸子はそんな関根孝の姿を見下ろしながら残酷な決断を告げる。

「ハハハハハハ、自分が働く会社のせいで罪のない人間がまた一人死ぬ事にどうやら耐えられなくなっているようね。いい気味だわ。でも駄目よ。お前はこの少女を守れなかったと言う自責の念を抱きながら惨めにむごたらしく死んで行くのよ。それがあんたを最後まで生かして置いた本当の理由よ。でも中にはあの西条社長のように他の人の命はどうだっていいから、自分の命だけはどうか助けてくれと懇願するクズ野郎もいるがな。まああいつは恐らくもう海月光子が汚染水トリックで殺しているはずだから、後は関根孝、あなたを殺してこの事件の幕を閉じさせて貰うわ!」

「この俺の命はどうなってもいいから頼むよ、梅塚幸子さん。その少女の命と海月リク君の命だけは助けてくれ。あんたにも同じくらいのお子さんがいたからその痛みは分かるはずだろう」

「その私の子供を殺したのはあんた達だろう。殺す、殺す、殺すーぅ。このデパート内にいる残りの人間も全て、できるだけ多く殺してやるわ。それが私の使命なのよ。ハハハハハハ!」

「梅塚さん……頼むよ……」

 悲しく語りかけながら説得を続ける関根孝に、後ろで控えていた羊野が静かに話しかける。

「ご自身の命をかけた説得も結構ですが、別にあなた自身が梅塚幸子さんのお子さんを殺した訳ではないのですから、そんな事であなたが死ぬことはありませんわ。あれはどう見ても梅塚幸子さんの勝手な逆恨みです。それにあなたは会社の方針に従っただけですし、西条社長が決めた手抜き工事の堤防の建設についても反対していた側の人間なのですから、本来なら彼女に恨まれるのはお門違いと言う物なのですがね」

「ええ、だけど俺はこの西条ケミカル化学会社で働く重役の……ナンバー2の専務ですし、上の立場の人間としてその会社の責任は取らなければなりません。今回の我が会社が作った欠陥の堤防のせいで少なくとも十名ものお子さんが川に流され溺死しているのですから。その責任の一旦は全てこの俺にあります。俺はあの時、西条社長の欲にまみれた決断を止められなかった」

 その悲痛な関根孝の言葉に周りの空気が一気に重くなる。

「話は変わりますが、時に関根孝さん。もうお腹の具合は大丈夫ですか。ほらさっきお腹が張って便秘気味だと言っていたじゃないですか」

「お腹の具合……? ああ、ああ、あれか。だ、大丈夫……大丈夫だが……」

「便秘はいけませんよね。ちゃんと下剤はお腹に入れておかないと出る物も出ませんからね」

「ああ、そうだな。ちゃんと下剤はお腹に入れて……いや、飲んで来たから大丈夫だよ」

「そうですか……それなら心おおきなくあの少女を助ける事が出来ますね」

「そ、そうだな。この一件が終わったら心おおきなくトイレに駆け込めるな」

 そんなたわいも無い羊野と関根孝の会話に、話を聞いていた梅塚幸子が目尻をつり上げながら憤慨する。

「何を二人でコソコソと関係の無い話をしているのよ。関根孝の便秘の話なんてこの際どうでもいいのよ。本当になにを考えているのか分からない女ね、あの羊人間は?」

 狂気じみた態度を見せる梅塚幸子の苛立ちを解決するかのように、羊野は梅塚幸子を見つめながら大きな声で呟く。

「良かったですね、梅塚幸子さん。関根孝さんはあなたの復讐の為に自らその命を差し出してくれるそうですよ。これで一通りはあなたの復讐は完成したと言う事になるのでしょうか。でもその大木槌で動く人間の頭をかち割るのは中々骨がいるでしょうから、この私も及ばずながらお手伝いをさせて頂きますね。その後でまた私とあなたとで殺し合いの続きを行いましょう。そんな訳で関根孝さん……大変申し訳ありませんが今この場で死んで下さい。そうすればいろいろと手間が減りますからね」

「へ?」

 そう言いながら羊野は行き成り隣にいる関根孝の腹部にその手に持つ包丁を深々と突き立てる。その刺された腹部からは夥しい赤い血が流れ、その衝撃で関根孝は持っていた懐中電灯を床へと落としてしまう。

「ひ……羊野さん……」

 信じられないと言う顔をしながら震える声でそう呟くと、関根孝は包丁が突き刺さる腹部を押さえながら足下の床へと勢いよく倒れ込む。

 ドタン……。

 その信じられない光景に数秒ほど梅塚幸子は呆気に取られているようだったが、事の状況をようやく理解したのか顔を真っ赤にしながら狂わんばかりに叫び出す。

「な、な、な、何をやっているのよ、あなたは。関根孝は私が、この私がこの手で直接殺さないといけないのに。なんであなたが関根孝を殺すのよ。なぜ、一体なぜよ!」

「いえね、ただ私とあなたとの殺し合いに関根孝さんは正直邪魔でしたから、彼には早々とこの場で死んで貰おうと思いましてね。私が手を下したのですよ。いけませんでしたか」

「いいわけがないじゃない。あんた一体何を考えているのよ。自分の依頼人を直接殺すだなんて。あんたハッキリ言って異常よ!」

「大量の人間達を殺し、関根孝さんをも殺そうとしていた貴方にだけは言われたくはないですね。それじゃそろそろ始めましょうか。あ、何なら今あなたが羽交い締めにしているその少女も私が殺してあげましょうか。ここに転がっている関根孝さんと同じように」

 その羊野の言葉に梅塚幸子はポケットからミニライトを取ると光を照らしながら床に仰向けに倒れている関根孝を見る。
 関根孝の腹部からは大量の赤い液体が流れ。その床は真っ赤な血だまりになっていた。

「ほほほほ、その少女を殺したら次はあなたの番です。梅塚幸子さん。あなたはどんな悲鳴を上げて私を楽しませてくれるのでしょうか。今から楽しみです」

 そんな羊野の異常な発言に梅塚幸子は荒い息を吐きながらマジマジと目の前にいる羊野を見る。どうやら梅塚幸子も羊野の異常性を大いに理解したようだ。

「あなたが円卓の星座の狂人ならこの程度の殺人は平気でやってのけると言う事か。あの黒服の探偵と一緒にいるからそこまで可笑しな事はしないと高をくくっていたけど、どうやら私の認識が甘かったみたいね。この化け物が!」

 そう言い捨てると梅塚幸子は羽交い締めにしていたその少女を床に押し付けると手に持つ大木槌を振り上げながら頭を叩き割る態勢を取る。

「あらあら、やはりその少女は殺しますか。私の脅しに尻尾を巻いて逃げるかと思いましたが、仕方がありませんね。一か八か特攻を仕掛けてみますか。一応死力は尽くしたと言う格好だけでも見せないと後で黒鉄さんに叱られますからね」

 手に持つもう一つの包丁を構えながら梅塚幸子に走り寄ろうとしたその時、行き成り羊野の視界が真っ暗になる。突然の事で一体何が起きたのか一瞬思考が錯乱した羊野は直ぐに気配がする後ろを振り替えようとするが、そんな時間は与えないとばかりに首元と包丁を持っている右腕をがっしりと押さえ込まれる。その力は強力で羊野がいくら暴れても抗えない程に強い力だ。

 くそ、一体誰よ。まさかこの私が人の接近をここまで許すだなんて、とても信じられないわ。ライトの類いの物は一切使ってはいなかったし、物音も全くしなかった。つまり暗闇の中で気配を殺しながらゆっくりと私に近づいたと言う事。こんな事が出来る人物とは一体誰。

 そう思いながら羊野はその人物の顔をどうにかして見てやろうと後ろを振り替えようとするが、がっしりと後ろから首を羽交い締めにされ振り向く事が出来ない。それ以前にどうやら羊野は被ってある白い羊のマスクを瞬時にその謎の人物に剥ぎ取られたらしいので、今は視界が全く見えない状態にあるのだ。
 その謎の人物が装着しているゴム製の手袋の手がまるで万力のようにきつく締まり、羊野の首をジワジワと締め付ける。

「私の邪魔をするだなんて……あなたは一体誰なのよ?」

 その羊野の言葉に、その謎の人物は、奇妙な鳴き声を上げながらその問い掛けに応える。

「ポポポポーッ……ポポポポーッ!」

 その独特の鳴き声はまさか……お前は悪魔の水瓶……海月光子さんか? いや、彼女じゃない。あなたは一体何者!

 そう叫ぼうとした羊野の言葉よりも早く目の前に現れた悪魔の水瓶は、羽交い締めにしている羊野瞑子をそのまま勢いよく壁に叩き付けると、衝撃で体をふらつかせる羊野を再度鷲掴みにしながら今度は反対側の壁に目がけて豪快に投げ飛ばす。
 暗闇で目が見えない事もあり全く受け身を取ることが出来ない羊野はまともに壁へと当たり、その時に頭を打ったのか力なくその場へと倒れ込む。

「がはぁ! ふ、不覚を取りました……」

 薄れゆく意識の中で羊野が床に倒れ込むと、悪魔の水瓶と思われるその人物は羊野の両足を掴みながらそのまま勢いよく近くにある女子更衣室の中まで強引に引きずって行く。
 その姿は暗闇で見えず、闇で蠢く人物のシルエットだけが羊野の目に映る。

 その謎の人物は女子更衣室の中に羊野を放り込むと「ポポポポーッ」と謎の奇声を発しながらその場を後にする。どうにか謎の影を追いかけようと羊野はあらん限りの力を入れるが体に力は入らず、思うように動かす事が出来ない。どうやら羊野は頭を打った事で軽い脳震盪を起こしているようだ。

 バタン!

 ドアが豪快に閉められたその外の廊下では、喜びいさむ梅塚幸子の声が荒々しく聞こえてくる。

「海月光子、どうやら黒服の探偵を速やかに殺して、この私の加勢に来てくれたようね。正直助かったわ。でもなんで直ぐにあの羊の女を殺さなかったのよ。女子更衣室に閉じ込めて一体どう言うつもりよ!」

 そうまくし立てながら梅塚幸子は、その謎の人物の姿をマジマジと見る。目の前にいる悪魔の水瓶が手ぶらな事に勝手に理解をし、都合のいいように解釈をしたようだ。

「ああ、そう言う事か。あの羊の女を殺す、手持ちの武器を持っていないのね。なら私のこの大木槌をあなたに貸してあげるわ。だからこの地べたで今もメソメソと惨めに泣いているウザい少女と、この私を本気でビビらしたあの羊の女を直ぐさま殺して来て頂戴。それが出来たらあなたの息子は特別に助けてあげてもいいわよ。ケケケケ、ハハハハハハハーっ!」

 クソ……あの悪魔の水瓶の奴……本気で……むかつく……わ。あれの中身は多分、海月光子さんじゃない……。

 けたたましく笑い勝ち誇る梅塚幸子の声を聞きながら、羊野の意識はゆっくりと闇の中へと落ちて行くのだった。
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