白い羊と黒鉄の探偵 ~狂人達が暗躍し掲げる不可能犯罪に白い羊と黒鉄の探偵が挑む~

藤田作磨

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第五章 『喰人魔獣』 東京内で襲う正体不明の魔獣が人々を恐怖のどん底に突き落とす。黒いライオンを操る狂人・暴食の獅子との推理対決です!

5-17.勘太郎が持つ探偵としての力(イメージラフイラストあり!)

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 何だか、しんみりしてしまったみたいだな。部屋の気分を変えてテレビでもつけるか。

 そう思った勘太郎は、その場の気分を変える為に、徐にテレビをつける。

「あ、じゃ私は珈琲を淹れますね。少し落ち着いたら私と一緒に下に降りましょう。黄木田店長も大変心配していましたから、挨拶くらいはしておいて下さいね。それにまた現場に戻るに辺り、黒鉄先輩にはいろいろと渡したい物がありますからね」

「俺に渡したい物だって?」

「ええ、黒鉄先輩に渡したい物です。玄関までは持ってきているのですが、中々重くて」

 そう言うと緑川章子は棚の上に置いてある二つのマグカップを手に取るとインスタントコーヒーの瓶の蓋を開けながら珈琲を淹れる準備をする。
 ポットを持ち緑川がコーヒーを淹れていると、テレビに映るニュース番組には、最近よく東京近辺の各公園で見つかっていると言う変死体についての報道がされていた。

 もう夜の報道ニュースではちらほらと黒いライオンに関する目撃情報が出ているせいか、その公園内で何かの動物に食い殺されたかのような無残な人の死体とその周辺で蠢く謎の黒いライオンの姿がハッキリと目撃されているとの事だ。その黒いライオンらしき物の存在が取り上げられる度に周りの報道関係者達も中々姿を見せない謎の黒いライオンの神出鬼没差に驚き、その不気味さと恐怖で加熱する現地での話題はかなりの騒動になっていた。

 そんなテレビに映し出される光が丘公園内で起きた事件現場と、そこに集まる報道陣の渦中の中に見慣れた人物の姿が目に入る。

「ん? あの人は、まさか」

 その人物とは警視庁捜査一課・特殊班(小太りの体型がトレードマークの)川口大介警部である事が直ぐに分かった。
 川口警部はいつものように渋い顔をしながらマイクを向ける報道陣達の前に堂々と立つと大きく深呼吸をしながらその顔をテレビのカメラに向ける。
 どうやらこれからこの事件の概要と重大な記者会見がテレビを見ている国民に向けて発表されるようだ。
 そんな不思議な光景を見ながら勘太郎と緑川はテレビを見ながらこれから始まる川口警部の会見を静かに見守る。

「あれって、川口警部ですよね」

「ああ、そのようだな。あれは間違いなく川口警部だな」

「一体なんなんですかね。今回の事件に関連した記者会見か何かでしょうか?」

「多分そうだと思うんだが、まあ内容を聞いてみようぜ」

 そんな事を緑川と勘太郎が話していると、テレビの中の川口警部が一つ咳払いをしながら緊張をした面持ちで話し出す。


「ゴホン、報道の関係者諸君がご指摘するように東京中の各公園内で何かの動物に食い殺されたかのような死体がいくつかは確かに見つかってはいますが、その危険な動物をどうやって捕まえるかや周囲の一般市民の安全はどうやって守っていくのかなどいろいろと不安と疑念は尽きないでしょうがどうか安心して下さい。その変死体の周辺で目撃されていると言うその謎の黒いライオンらしき動物の事ですが、率直に言って何の問題もありません。なぜなら他の目撃者達が見たというその黒いライオンは本当は最初からこの東京の野外には一匹たりとも存在してはいないからです。あれは大きな犬か何かと見間違えたか他の都市伝説的な根も葉もない情報に騙されて勘違いをした物とも考えられます。それが我々警察の出した最終的な見解であり、明確な答えです。なので黒いライオンなどという生き物は最初から存在してはいません。全ては誰かの作り話です」


 黒いライオンの存在を即座に否定した川口警部の思いがけない言葉に、話を見守っていた警視庁捜査一課殺人班の刑事達は皆が驚き、周りで話を聴いていた報道関係者達は皆一斉に騒ぎ出す。
 なぜなら他の人達に目撃されているという黒いライオンは東京中の各公園に現れ、夜の外を徘徊していると各テレビ局がもう既に大々的に報道していたからだ。しかも捜査一課・殺人班の刑事達は今までの捜査でこの黒いライオンが確実に存在しているという明確な物的証拠を既に沢山持っている。
 なのでこの事件を担当している川口警部に今までに上がっている情報や物的証拠の全てが見事に覆された事で他の刑事達はその情報が全て闇に葬られた事に皆が憤り。その会見に各報道関係者達は疑問と不信を抱いたままその視線を目の前に立つ川口警部に向ける。
 そんな興奮冷めあらぬ疑いの目を向けながら一人の若き報道関係者が川口警部の言葉に反論で返す。

「ば、馬鹿な。でもその黒いライオンは実際にこの東京にある公園のいずこかに現れて人を襲い食い殺しているのは紛れもない事実でしょ。それにその黒いライオンの傍には食い散らかされた人の死体とその証拠となる物的証拠が沢山残っていて。その死体の周辺では夜の闇に蠢くその黒いライオンの姿を見たと言う目撃者が何人もいるんですから、もうその黒い肉食獣の犯行は誰が見ても明らかなはずです。なのに川口警部はその黒いライオンの残してある証拠やその存在を敢えて否定しようとしている。なら何故否定をするのかを私達にも分かりやすく説明して下さいよ。そこの所は一体どう考えているのですか。今日の朝方に光が丘公園内で見つかったと言う何かの肉食獣に喰われた男女の死体の事はどう説明して貰えるのですか?」

「ああ、今日の朝方に見つかったあの男女の変死体は、あれからよ~く調べた結果、ただの野良犬に死体を荒らされた物だと言う事が判明した。死体に残されていた歯形や毛や糞尿や足跡にいたるまで調べたが、あれは肉食獣のライオンの物ではなく野良犬の仕業の物であると言う事が後に判明した。だから各報道関係者の方々ももうこれ以上は無闇に黒いライオンがいるという間違った報道を伝えるのは辞めて貰いたいと言うのが我々警察側の見解です。なので東京近辺に住む人達は間違った噂話に惑わされないで下さい。黒いライオンなどは初めから存在はしてはいませんし、その死体を食いあさっていた野生化した野良犬達の方は保健所の係員達と協力をして罠式の檻を設置して捕まえて行きたいと思っています」

  その川口警部の話す新たな説明にざわつく報道陣達はまるで全てが信じられないと言う顔をしながら、更に話を続ける川口警部に直ぐさま注目をする。

「なのでこの事件はその目撃者が見たと言うあの噂の黒いライオンの仕業ではありません。二日前に代々木公園内で起きた三人のホームレスの事件も同じです。その姿無き黒いライオンを目撃したと言う人は、恐らく皆……大型犬の黒い犬か何かと見間違えて勘違いをしていたのでしょうなぁ。それに夜の各公園内はかなり暗かったみたいなので動物の見間違えがあっても何ら不思議ではないと思われます。更にその更なる可能性があるとするのなら、あらぬ噂だけが先行した集団催眠的な物と言う可能性も十分に考えられます。人は何か強い不安や恐怖に苛まれた時はその冷静な判断力を失うと言いますからなぁ。ハハハハハハハーッ!」

 光が丘公園の中でマスコミを集めながら緊急の会見をする川口警部をテレビごしに見ていた緑川は、その不思議そうな顔を勘太郎に向ける。

「黒鉄先輩、これは一体どういう事ですか。まさか今さら黒いライオンの存在を隠して偏向報道で情報を隠蔽するだなんて、ちょっと無理が有り過ぎるのではないのですか。もう既に何人もの人間があの黒いライオンの姿を見ていると言うのに、今更あれはただの野良犬の仕業でしたと言われても皆は納得はしませんよ。警察としてはもうこれ以上無駄な不安と恐怖が広がらないようにと、例え嘘を言ってでもマスコミを使って情報規制を掛けたいのでしょうが、もう黒いライオンの話がこんなにも広まってしまった以上はもうこれ以上の隠しごとは流石に出来ませんよ。それはあの川口警部も分かっているはずなのですが?」

「ああ、そうなんだよな。何で今さら黒いライオンの存在を否定するような事なんて言うんだ。今さらそんな事をしてももう遅いし意味がないだろう」

「報道関係者や一般市民には意味が無くても、もしかしたら黒いライオンを操る犯人には意味があるんじゃないのですか」

 ボツリと呟いた緑川の何気ない言葉に、勘太郎は「はっ」と声を上げる。

「ま、まさかとは思うが、公共の電波を使って中々姿を見せない犯人を遠回し的に挑発をしているんじゃないだろうな。こんなあから様なわかりきった挑発に、果たしてあの暴食の獅子は乗って来てくれるのだろうか?」

「話に聞くと暴食の獅子は、かなり自意識の高い傲慢で目立ちたがり屋な狂人らしいですからね。黒いライオンを使った自分の魔獣トリックをこんな形で完全否定されたら必ず何らかのリアクションや行動を起こすと、警察側は考えたのでしょうか」

「警察側と言うよりは、こんな危険な賭に転じる馬鹿はあいつしかいないと俺は思うのだがな。まさかとは思うが羊野の奴が、あの川口警部に何かよからぬ計画を持ちかけてあんな会見をさせたのかな。だからこそ川口警部はわざわざマスコミ関係者達を集めて、黒いライオンは最初からいなかったと言う報告の記者会見をわざとしたのかも知れないな。その記者会見を見たあの暴食の獅子が果たしてどう動くのかを見極める為に」

 そんな事を呟いていると、勘太郎の考え通りにテレビの中に映し出されている川口警部がテレビカメラに顔を向けながら、まるで相手を馬鹿にするかのように大きな声で笑う。

「ハハハハハハハ、テレビを通して何処かでこの俺の会見を見ているかな。黒いライオン擬きを操るとされる犯人よ。俺自身はその黒いライオンとやらを直接見てはいないから全くと言っていいほどその黒いライオンもどきの事を信じてはいないが、もしも本当にその黒いライオンとやらがいるのだとしたら『その胡散臭い、滑稽なライオンもどきとやらを』直接目の前で見てみたい物だぜ。まあ、そんな不死身のライオンもどきが本当に入ればの話だがな。そうだな、何ならその黒いライオンもどきとやらを使ってこの俺を見事に食い殺して見るといい、この俺を見事に食い殺す事が出来れば……暴食の獅子……お前が操る黒いライオンの存在とその信憑性を認めてやるよ。まあ、お前にそんな勇気があればの話だがな!」

 態とらしくその事件に関わる犯人を挑発しながらテレビのカメラの前からその姿を消した川口警部はもう二度とテレビのカメラに姿を見せることは無かったが、その川口警部の言動をリアルタイムで見ていた勘太郎は口に含んでいたコーヒーの液体を思わず吹く。

 ぶっううぅぅーっ!

「ゲホゲホ、自分を食い殺して見ろって、川口警部その挑発はあまりにも危険な行為だ。それが分からない川口警部ではないはずなんだが。まさかこの行為にも何か人には言えない裏側があるのか。俺にはただ単に川口警部が犯人を無謀にも挑発している用にしか見えないんだが。それにあの態とらしくも危険を返り見ない態度は、あれは明らかに川口警部の本来の言動ではない。川口警部は犯人に向けてあんな挑発めいた危険な行動は絶対にしないはずだからだ。流石にあの行動には感情に身を任せたかのような冷静さを欠いた姿が目に映るからな。だとするならば、川口警部にあんな危険な真似を敢えてさせる事の出来る人物は俺が知る限り一人しかいないと言う事になる」

「と言う事はやはりあの羊野さんが川口警部に、暴食の獅子の居場所とその正体を探る為だと言う言葉で焚きつけて川口警部にあんな危険な行為をさせたと言う事ですか。あの川口警部が犬猿の仲とも言うべき羊野さんの策略に従うだなんて、未だに信じられません」

「まあ、それだけ今回の狂人ゲームでは川口警部に取っても猫の手を借りたいくらいに切羽詰まっていると言う事なのだろうぜ。何せ後二日とちょっとでこの狂人ゲームも終わりを迎えるのだからな。もしも後二日いないに犯人の正体とあの黒いライオンのトリックの謎を暴けなかった時は警察側の負けと言う事になるのだからな。それはもうあの川口警部だって羊野の悪巧みにすらもすがりたくはなるさ。しかし羊野の奴め……あいつは無駄に暴食の獅子を挑発して一体何を考えているんだ。あんな芝居がかった川口警部の挑発にあの暴食の獅子がむざむざと乗るとはどうしても思えないんだが?」

 そんな事を話しながら勘太郎と緑川が手に持つコーヒーを美味しそうに飲んでいると、緑川のスマホの携帯電話の着信音が部屋の中に流れる。
 そのスマホをポケットから素早く取り出した緑川はスマホを耳に当てると、落ち着いた優しげな声でその電話に出る。

「はい、もしもし緑川です。あ、ご苦労様です。はい……わかりました。黒鉄先輩にはそう伝えておきます。では失礼します」

 礼儀正しく話していた緑川は誰もいない相手に頭を下げながら和やかに話していたが、話が終わると電話を切り勘太郎に向けて言う。

「赤城文子刑事からです。川口警部や羊野さん達は皆、水元公園に向かったそうなので黒鉄先輩にも至急現場に来る用にとの事です」

「水元公園だって、何で水元公園なんだ?」

「理由は分かりませんが、みんなそこに集まってあの黒いライオンの捜索をするみたいですよ」

「そうか、わかった。ならちょっくら行って来るか。それにしても緑川、いつ赤城先輩の電話番号なんかを教えて貰ったんだよ。お前と赤城先輩にはそんなに近しくなる接点はないはずだろう」

「最近教えて貰ったんですよ。この黒鉄探偵事務所に関わっている以上いつか赤城文子刑事に電話をする時が来るのではないかと思いましてね。でもその予感はどうやら当たった用です」

「ああ、どうやらそのようだな。俺への連絡係に体良く使われているみたいだな」

「それくらいのことなら私は全く気にはしませんよ」

「そうか、なら水元公園に行こうか。悪いが緑川は車を出してくれ!」

 軽く身支度を整えながら客間を出た勘太郎は廊下を歩いていると玄関にある大きな代物に気付く。その大きな代物とはここに来た時に緑川がわざわざ持って来ていた大きなリュックサックだった。緑川はそのリュックサックを重そうに手に取ると近くで困惑している勘太郎に向けてそのリュックサックを手渡す。

「な、なんだよ、これは?」

 突然の大きな荷物に不思議がる勘太郎を見ながら緑川はその大きなリュックサックの中身の説明をする。

「フフフフ、勿論私が考えに考えた、あの黒いライオンに挑む際に使う必要不可欠な品物の数々ですよ。私なりにあの黒いライオンに遭遇した時に役立ついろんな代物を考えて見ました。ですのでここぞと言う時はこのリュックサックにある物を使って下さい。喰人魔獣対策用に役立つ物ばかりを敢えて厳選したので、命の危険や絶体絶命の危機に繋がる時にでも使って下さい」

「いや、仮にそんな時が来たら恐らく俺はあの黒いライオンに真っ先に食われてもうこの世にはいないような気がするんだが……」

「まあ、その時は運が悪かったと言う事で素直に諦めて下さい。あ、それとリュックサックの中身は後で確認して下さいね」

 そう言いながら緑川は何やら意味ありげに笑う。

 玄関を出て一階に降りるともうすっかり雨は上がり、綺麗な夜空が顔を覗かせる。その一階の路上には、既にスタンバイ済みの黄木田店長が黄木田喫茶店と書いてある業務用のワゴン車の運転席に乗りながら、勘太郎が降りて来るのを静かに待っていた。

 勘太郎は急ぎ黄木田店長の傍まで来ると、黄木田店長はワゴン車の運転席から静かに降りながらその手に持つ長方形のボックスを勘太郎に手渡す。そのボックスの蓋を開けてみるとその中には作りたてのサンドイッチが綺麗に箱詰めされていた。

「黄木田店長……これは」

「どうせ今日はまだ何も食べてはいないのでしょ。ならサンドイッチでもお腹の中に入れて起きなさい。腹が減っては戦は出来ぬとも言いますからね」

「はい、ありがとう御座います。黄木田店長。それといろいろと気を遣って貰って、ご迷惑をお掛けしました」

「やっと部屋から出てきましたか。ならもうどうやら決意は固まった用ですね。フフフ、若い内は大いに悩んで自分を見つめ直しながら少しずつでもいいですから前に進んで行きなさい。人生における数々の失敗や悔しい気持や経験は、そのどれもが決して無駄な経験では無いという事がいつかは分かる日が必ず来るでしょうからね。そしてその失敗を教訓にしながら一つ一つ焦る事無く地道に積み上げて行けばいいのですよ。そうです黒鉄さんはまだ若いのですから焦る必要は全くありません。何故なら貴方の探偵としての経験はまだまだ発展途上の段階ですからね。ですのであなたの成長を賭けた挑戦はまだまだこれからだと言う事です!」

 黄木田店長の暖かみのある優しい励ましに、勘太郎は感無量になりながらも更に黄木田店長にその頭を下げる。俺はこんなにも自分の事を気に掛けてくれていた人達に迷惑を掛けていたのだなあ~と思いながら、ただひたすらに反省をする。
 そう思うと思わず目頭が熱くなるが、勘太郎は涙を必死にこらえながら黄木田店長が玄関先に用意してくれたワゴン車の後部座席に素早く乗り込むと、大きなリュックサックと箱詰めのサンドイッチを自分の隣にそっと置く。

「じゃそろそろ行こうか、緑川」

「ええ、そうですね。そろそろ行きましょう」

「黄木田店長、このワゴン車、またいつものようにお借りします」

「ええ、行ってきなさい。本来なら黒鉄の拳銃を直ぐにでも君に持たせたい所だが、あれは今はまだ各パーツが分解されていて整備中だから、今はまだ直ぐにはアレを渡す事は出来ない。だが明日の朝にならどうにかアレの整備を間に合わせて黒鉄さんに渡す事が出来るはずだ。なのでそれまでは辛抱をしてもらえないだろうか」

「そうですか……では明日の朝に黒鉄の拳銃を改めて取りに来ます」

 笑顔でお願いをするそんな勘太郎を見ながら黄木田店長は、ワゴン車のドア越しにその白い口髭を生やした顔を間近まで近づける。その瞳はまるで子を思う親のような心境の目だ。
 そんな優しい眼差しを向ける黄木田店長は、勘太郎の抱えている悩みについて軽く助言をする。

「黒鉄さん、あなたはいつもことある事に『自分には何も才能が……力が知識が無い』とか時々悩みを口にして悩んでいるみたいでしたが、黒鉄さんが持つ力とは、能力とか才能とか技術とか知識とか、地位や肩書きとかと言ったような、そんな目に見えるような物では決して無いと私は思います。黒鉄さんの持つ力とはもっと違った別の何かです!」

「もっと違った別の何か、だって?」

「ええ、分かりやすく言うのなら、どんな逆境からでも乗り切る事の出来る決して諦めない心とか……どんな不利な命に関わる状態からでも必ず勝利に繋がる突破口を探し当てる事が出来る運の強さとか……その優しさから変な変人にはよく好かれる悪運の強さとか……そんな力です」

「それってただ単に悪運が強いだけの事じゃないのですか。それに今までの功績はたまたま運が良かっただけの事ですよ。羊野も絶えず俺の隣にいましたからね」

「フフフフ、黒鉄さん、あなたは自分が持つ強運を全く理解してはいないのですね。例えどんなに力が強くて頭が良くてもその運に見放されたら全てがお終いだと言う事です。そう考えるのなら、黒鉄さんの勝利を持ち込む運の強さはこの事件に関わる主人公としては絶対に無くてはならない物だとは思いませんか。勿論その今までに勝ち抜いた様々な事件の結末は羊野さんが持つ非常なまでの情け容赦の無い武力と的確な洞察力と推理力が大きいのは事実ですが、その羊野さんが狂うこと無く事件を解決に導く事が出来る黒鉄さんの頑張りは決して無駄では無いと私は思いますよ。その死にもの狂いの頑張りと何事にも諦めないで突き進む行動の先に、その勝利すらも動かす運命の力があなたには必ずあると私はそう信じています。それは勿論運否天賦に任せたただの偶然では無く、全ての悩みや苦しみや挫折に絶望と言った試練を一つずつ乗り越えて来たからこそ必然的にその立ちはだかる事件を乗り切れたのだと私は思います。恐らくそれが黒鉄さんが持っている力です。その力はこれからの数々の事件を解決していく上では必ず必要な力ですから、その力を持っている黒鉄さんが正直うらやましいです。まあ、その幸運と勝利を引き出すには様々な謎と恐怖と試練を自力で乗り越えて行かない限りは決して掴む事の出来ない力ですがね」

「つまりは努力して・散々思い悩んで・苦労して・その試練と恐怖を乗り越えた先にその少ないチャンスや幸運を掴む隙を自分の力で是が非でも見つけろと言う事か。それは幸運の力とは言わずに必死な悪あがきと言うんだよ。確かに俺はピンチの時ほど頭と勇気をフル回転させてその生死を賭けた状況を何とか乗り越えて来たからな。まあ、それを力や能力と呼ぶのは流石に心許ないが、今は俺が持つ全てをぶつけてあの暴食の獅子に立ち向かうしか道は無いと言う事か。今回も無い頭を使って精々悪あがきをさせてもらうよ。こんな俺の事を信じてくれるみんなの為にも頑張りたいと思うし、力の限り尽くして……足掻いて……努力して今回もこの狂人ゲームを見事に乗り越えて見せるよ。そして何の罪も無い被害者達を一人でも多く狂人達の魔の手から救い出して見せるぜ。ああ、絶対にな!」

「ええ、それでこそあの名探偵だった黒鉄志郎の息子にして、正義のヒーローに憧れる、中二病全開の黒鉄勘太郎さんです。今回も狂人ゲームを見事に乗り切り、あの黒いライオンのトリックの謎や狂人・暴食の獅子の正体を見破れると私は信じていますよ」

「ヒーローに憧れる中二病って……黄木田店長……あなたは俺のことをそんな風に思っていたのですか。俺はもう子供じゃないんですからそんな風に呼ぶのはやめて下さい。恥ずかしいなあ、もう……」

「「いやいや、あなたはまだ精神的には十分に子供ですから」」

 勘太郎の大人発言に、黄木田店長と緑川は顔と手を横に振りながら全力で否定するのだった。

 落ち込む勘太郎を鼓舞し励ます緑川章子と黄木田源蔵の図です。
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