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第八章 『白面の鬼女』 大雪が降る北海道の山頂で繰り広げられる生き残りを賭けたシリアルキラーとの推理戦に白黒探偵が挑む!
8-2.疑惑漂う死体探しの依頼
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『あなたがこの黒鉄探偵事務所の主にして、黒鉄の探偵と呼ばれている黒鉄勘太郎さんですね。あなたに折り入ってお願いしたい依頼があるのですが、よろしいでしょうか?』
優しく微笑みながらその女性は客室に用意された黒革の長椅子へと座る。
勘太郎はそんな彼女に淹れたての珈琲を勧めながら後ろの柱に立てかけてある柱時計に目をやる。
時刻は十四時三十分。
月日が一月下旬に入り、窓を叩く冷たい冷風が外の気温の低さを告げているかのようだ。
そんな窓の音がガタガタと鳴る来客用の室内で勘太郎は木製テーブルに置いてある珈琲に砂糖を入れながらこの目の前にいる女性がわざわざ海を越えて遠くから来た理由を考える。
彼女の話によれば北海道の大雪山が聳え立つ麓の小さな町から来たとの事だが、一部の山の絶景が有名な観光名所にもなっているそんな所からわざわざこの探偵事務所に来た理由が正直分からない。
一体どんな用件でこの探偵事務所に来たのかは知らないが、こんな遠くにある小さな一探偵事務所にではなく、もっと近場で大きな探偵事務所に頼めば余分なお金を使うこともないしいろんな意味で効率的なはずだ。
それに北海道からこの千葉県までわざわざ来なくても電話か黒鉄探偵事務所のサイトの依頼内容書き込み欄に記入すればそれだけでいいはずなのである。
そんな事を考えながら勘太郎はその意識をフと窓の外から聞こえてくる人の声へと向ける。
寒風に紛れて外を歩く学生達や家族連れの楽しげで賑やかな声が路上を通りすぎるたびに聞こえて来る。
それもそのはずここは駅からも近く商店街や駅ビルなどもある為、サラリーマンや主婦・果ては学生といった人通りも多く、町全体がいろんな人達で賑わっているからだ。
大抵の品物なら何でも揃うこの町の環境は活気があり、様々な人の熱気が活力となってこの町全体を包んでいるかのようだ。ここに住む住人なら誰もがそう感じている、そんな住みやすい町だ。
そんな商店街から少し進んだ所にこの黒一色のビルはある。
ビルの二階に掲げられている看板には黒鉄探偵事務所と字がデカデカと書かれている。
そうつまり今勘太郎と依頼人の女性がいるこの事務所こそが黒鉄探偵事務所なのである。
事務所の中は昭和初期を思わせる古いながらも赴きのあるシックな造りになっており、部屋の中は皆黒で統一されている。
当の勘太郎は特にアンティーク好きと言う訳では無いのだが、このビルの前の持ち主で今は亡きオーナーでもあった、初代・黒鉄の探偵こと黒鉄志郎が生前黒色にこだわった物が好きだった為、その息子でもある二代目・黒鉄の探偵こと黒鉄勘太郎が、その名とこの黒ビルをそのまま受け継いでいるのだ。
そんな時代遅れを思わせる部屋の中で、勘太郎は先ほど彼女が言っていた言葉の意味を考える。
この女性が黒鉄探偵事務所の事を何処で聞いてきたのかは知らないが、この女性は勘太郎が黒鉄の探偵と呼ばれている事を知っている。それを知り、わざわざこの黒鉄探偵事務所を訪ねてきたと言う事に勘太郎は何か嫌な予感を感じてならない。
別に隠している訳では無いのでその通り名を知っている人達はかなりいるのだが、その名を持つが故に迫り来る危険やいざこざもいろんな意味でかなり多いのだ。
なので勘太郎は当然のように目の前にいる依頼人の女性に警戒心を持ってしまう。
勘太郎はある仕事の依頼をする為に行き成り現れた素性も知らない女性に視線を向けながら、今回の依頼人女性の服装を確認する。
見た目の年齢では、おそらくは二十代後半と言った所だろうか。長い黒髪を後ろで結び、その端正な美人顔には黒縁の眼鏡をかけている。
背は細身の長身で、まるでモデルの用な体型をしている。
もうすっかり肌寒い冬でもあるので厚手の黄色いセーターに下はジーンズを綺麗に履きこなしている、そんな服装だ。
そして彼女が座っている長椅子の隣には大きなバックと共にいい匂いが香る紺色のコートがそっと置かれていた。
その清潔感漂う身だしなみとほんのりと香る爽やかな香水の匂いから考えて、どうやら彼女はエチケットには気を遣う女性のようだ。
そんな彼女の全体を確認した勘太郎は和やかな笑みを向けながら行き成り探偵事務所を訪れた依頼人の女性に話かける。
「確かに私が黒鉄の探偵と呼ばれている黒鉄勘太郎ですが、その依頼内容を聞く前に、先ずはあなたのお名前を聞かせて貰ってもよろしいでしょうか」
勘太郎の言葉を聞いた黒縁の眼鏡を掛けた依頼人の女性は、顔を赤く染めながら緊張と恥ずかしさの為か思わず立ち上がる。
「し、失礼しました。私の名前は『如月栄子』と言います。ね、年齢は二十七歳の乙女座です!」
「如月栄子さんですか。ではこちらも改めて自己紹介をさせて頂きます。自分は黒鉄探偵事務所を経営している黒鉄勘太郎と言います。この黒鉄探偵事務所は俺の親父が経営していた探偵事務所だったんですが、二~三年前に他界しましてね、今はその後を引き継いだその息子である俺が二代目・黒鉄の探偵として不肖ながらもそう名乗らせて貰っています」
礼儀正しく頭を下げるその勘太郎の言葉に依頼人の如月栄子は少し微妙な顔をする。
「私は初代・黒鉄の探偵の事は全く知りませんが、私がいろんな噂で知っている怪人殺しの探偵と言ったら間違いなくあなたの事です。そうですよね、黒鉄勘太郎さん!」
(え、狂人殺しではなくて怪人殺しだって……一体なんの事だ!)
勘太郎は依頼人でもある如月栄子の言葉の意味に困惑する。
「それは一体どういう事ですか?」
「初代・黒鉄の探偵の事は正直分からないけど、今の黒鉄の探偵は力も知力も才能もまるで無いへっぽこ探偵として有名ですよね」
その如月栄子の歯に着せぬ言葉に勘太郎は思わず椅子からズッコケそうになる。
(この人は、俺が密かに気にしている事をズケズケと素直に言って来る人物のようだな。まあ特に悪気は無いのだろうが……初対面の赤の他人にまで自分の劣等感を指摘されると流石に傷付くぜ)
そんな暗い思いを引きずりながらも勘太郎は崩れたオールバックの髪型を片手でそっと直すと、冷静さを装いながら椅子へと戻る。
「ハハハ、否定はしませんよ。確かに私は他の探偵の同業者や知り合いの警察の関係者からはよ~くへっぼこ探偵だの駄目探偵だのと言われていますが、今現在は名探偵だった父に少しでも近づける用にと日夜精進と努力を惜しまないつもりでいます。そしてその過程で依頼の仕事を確実に積み重ねて行く事によって、少しずつではありますが段階を踏みながら成長をしていくつもりです。なのでどうか今後とも温かい目で見てくれたら幸いです!」
勘太郎は更に低姿勢になりながらも相手の出方を伺うが、そんな如月栄子から出た言葉は意外な物だった。
「いえいえ、何も私は黒鉄さんの事をけなしている訳ではありませんよ」
(いや、今ハッキリとへっぼこ探偵とあなたに言われたんだが……)と思う勘太郎の心境などは知る由も無い如月栄子は更に話を続ける。
「私が、風の噂で知っている黒鉄の探偵は他の同業者の探偵達が噂をする用に、才能も知力も武力も無いただのへっぽこ探偵と皆が言っていましたけど、よ~く調べた結果、私の見解は彼らとは違います」
「一体どう違うと言うんですか」
取りあえず話を聞いて見ようとする勘太郎の態度に、如月栄子は真剣な顔を向けながら落ち着いた声で話す。
「あなたは民間のただのしがない探偵にも関わらずこの一~二年の間に幾つもの未解決事件を解決したと言う実績がありますよね。それもみんな人が死んでいるような凶悪な事件ばかりです。ですがその事件の全てが警察が解決したことになっていて、あなたが事件に関わった証拠や事実さえも綺麗に跡形もなく消されている事も結構多いです。これってどう考えてもおかしいですよね。そこで私はネットの匿名の掲示板や事件の謎を追っているサイトを調べて見る事にしました。2チャンネルだか5チャンネルとかという所です。そしたらある興味深い噂が囁かれているサイトを見つける事が出来ました。その掲示板に書き込んでいる人物は過去にあなたに事件を解決して貰った人だと言っていましたがその正体は未だに謎のままです。どうやら彼は常に回りを警戒していて、非常に自分の素性がバレるのを恐れているようでした。その人は自分の事を『緑の眼鏡ちゃん』と名乗っていました。それとその話に必要以上に食いついていた人物がいてその人は自分の事を『真実を探る子馬ちゃん』と名乗ってその話に参戦していたのを覚えています。狂人がどうとか言っていましたが、肝心な事は何も書かれてはいませんでしたし、私はこの二人が書き込んでいる会話がなんの事かが分からず、半分も理解できませんでした」
(一体どこの誰かは知らないがかなり危険な事をしている奴がいるようだな。過去に狂人が関わる事件に巻き込まれた誰かがその謎の秘密組織の事を掲示板に書き込んで、狂人達が関わっているかも知れないと思われる事件の事を調べているのか。流石にそれはやばすぎるだろ。でも恐らくはあの壊れた天秤がその事に気付いていないとは思えないから、恐らくは特に組織の運営に影響を与えるほどの情報は何も書かれてはなかったからその人達の書き込みはほっとかれているのかも知れないな。もしもその書き込んだ人物が何かのやばい情報を得ているのだとしたらとっくの昔にこの世からあの世へと消されているだろうからな)
勘太郎がそんな事を考えていると如月栄子が少し不満げな顔を向けながら声を掛ける。
「黒鉄勘太郎さん、ちゃんと話を聞いていますか」
「あ、すいません、ちょっと考え事をしていました。どうぞ、話を続けてください」
「つまり私はその掲示板に書かれてある狂人達が関わる様々な事件の内容を見て、この変わった探偵事務所の事を知ったのです。その掲示板にはこんな書き込みがされていました。『日本の警察やましてや名探偵と呼ばれている人達にすらも手に負えないあの狂った秘密組織に対抗する事が出来るのは日本広しと言えども私が知る限り、この人達しかいない。それが関東にある黒鉄探偵事務所に所属をしている闇の秘密組織の創設者が主催する狂人ゲームの挑戦者に選ばれた人達だけだ。この事務所に所属をしている探偵は、ある組織と渡り合う為に警視庁の上層部や政治家のトップから日本の法律をもねじ曲げる力と権限を与えられていて、狂人達が関わる事件を解決する為なら例えどんな法律違反や損害の被害をも帳消しにする事が出来る権限を持っているとの事だ。そして黒鉄の探偵と呼ばれている者が他の探偵達と大きく違う点は、二代目・黒鉄の探偵には凶悪・凶暴な悪知恵の働く狡猾な『白い羊』と呼ばれている羊の化け物が常に傍についていて、その白い羊の力を借りて、どんな難解な事件をも即座に解決に導く事が出来るのだとか』前に私が見た掲示板にはそのような事が書かれてありましたわ。その白い羊というのが一体なんなのかは分かりませんが……ここに書かれてある黒鉄の探偵と言うのは、ズバリあなたの事ですよね、黒鉄勘太郎さん」
そう確信し、勘太郎を見詰める如月栄子の目には一点の曇りも無いようだ。そんな期待に満ちた眼差しに圧倒されたのか勘太郎は思わずたじろいでしまう。
「そ、それは……」
「フフフ、どうやらあなたには他の探偵達や警察には無い、隠された秘密の力があるみたいですわね。姿を消せる奇っ怪な化け物や怪力無双の怪しげな怪人すらもたじろいでしまう程の事件解決能力に私は全てを賭けて見る事にしたのですよ」
「さ、流石にそれは買い被りすぎだと思うのですが」
……。
一旦話が途切れしばしの沈黙の後、何やら意味ありげな眼差しを送る如月栄子に軽い咳払いで返した勘太郎は「ハハハ~、中々面白い噂話ですね」と言いながら、テーブルに置かれてある珈琲カップを震える手で一口飲む。
ほろ苦く奥深い味わいが口の中一杯に広がり、コクのある珈琲の香りと程良い熱の温度が喉越しに伝わる。
その珈琲の一口で心の落ち着きを取り戻した勘太郎は、心の中で大いに叫ぶ。
(なんかいつものように噂話にとてつもない尾ひれがついてるんだけど~!)と。
勘太郎はそんな噂話から話題を変えるかのように話を切り出す。
「それで、肝心の依頼内容の方は一体どんな物なのでしょうか。先ずは話を聞いて見ないことにはこちらの方としても出来るかどうか判断がつきかねますが」
「え、ええ、そうですわね。そうでしたわ!」
何かにはじかれたかのように言葉が口から出た如月栄子は、手元のテーブルに置かれてある珈琲カップを手に取ると、一口飲んでから目を伏せ静かに語り出す。
「私の依頼内容はただ一つです。私と共に北海道の大雪山周辺にある、とある山頂の上に聳える山荘ホテルに行って貰って、一年半前の7月の山頂で行き成り消息が分からずに行方不明となっている私の妹を捜して欲しいと言うのがこの依頼の内容の全てです!」
目を伏せ静かに頭を下げる如月栄子の決意を込めた言葉に、話を聞いていた勘太郎は思わず顔を曇らせる。
(一年半前にいなくなった妹の捜索だってぇぇ! しかも消息を絶った場所は北海道にある大雪山の雪山の山頂だと言うのか。行方不明になったその時期は7月と言う事もあり流石に雪は降ってはいなかったのだと思うが、その妹さんがいなくなってからはかなりの月日が経っている。と言う事は、つ、つまりだ……それはその山の山頂の何処かにある、その妹さんの遺体の捜索を一緒に手伝ってくれと言うことか。おおかた山の頂上で行方不明になった妹さんの捜索が時間切れで早々と打ち切られてしまい、捜索隊が引き上げてしまったと言った所か。そして妹さんの亡骸をなんとしてでも見つけ出して手厚く供養してあげたいという気持ちが積もりに積もって諦めきれない姉の如月栄子さんが藁にもすがる思いで仕方なくこの千葉県までわざわざ来たのだろうが、でもなんでその捜索の依頼に黒鉄探偵事務所が絡んで来るんだ。ただの死体の捜索ならなにも黒鉄探偵事務所限定でなくてもいいはずだ。それに俺は、浮気調査や人に飼われているペットの捜索、果ては現在家出中の少年や少女の捜索とかなら依頼を受けたことがあるが、人の遺体探しの捜索はさすがにやった事がないぞ。て言うか、はっきり言って死体の捜索なんて正直やりたくもないしな。と言う訳で何とかこの話を断る方向にまとめねばなるまい)
「如月栄子さん、その捜索の依頼は流石に頼むところが違うのではないでしょうか。ウチは便利屋ではありませんので、生きているのならともかく、標高の高い山頂で約一年半もその妹さんは見つかってはいないのですから、そういった死体の捜索前提で妹さんを探すことは我が社としてはいたしてはおりません。それに仮に遺体を探すにしたって今は冬の一月上旬ですよね。山頂は当然寒いでしょうし雪も降っているでしょうから、死体の捜索は流石に無理があるのではないでしょうか。死体の捜索に行って二次被害にでも遭ってしまったら本末転倒ですからね。それにもしかしたら山を降りて普通に何かの事情で身を隠して家出をしているだけかも知れませんよ。まだその山頂の上で死んだと決まった訳ではないのですからその妹さんの友人や当時付き合っていた男性とかによ~く話を聞いて見てからでも遅くは無いのではないでしょうか!」
「いえ、そこはもう散々調べましたわ」
「本当ですか。まだあなたの知らない友人が、その妹さんにはいるかも知れませんよ」
勘太郎はこの依頼をなんとか断ろうともっともらしい理由を並べていたが、断られる事は事前に分かっていたのか如月栄子は顔にかけてある黒縁の眼鏡を右手の人差し指でグイッと上げながら不気味にニヤリと笑う。
「先ずは最初の疑問でもある、なぜ冬のこの時期にわざわざ私の妹の遺体を探さなければならないのかを説明しますね。それはその山頂に続くロープウェイと山荘のホテルが諸般の事情のために二~三年ほど閉鎖をすると言う事が分かったからです。なので私は予てよりその山荘の持ち主でもあるオーナーの方に連絡を取りそしてお願いをして、どうにか一月の下旬一杯なら山頂に入ってホテルも好きに使っていいと言う許しと了解を得る事が出来ました。恐らくはこのホテルのオーナーさんがこの山頂で私の妹が行方不明になった事に同情して山頂での捜索の為にいろいろと協力をしようと思って下さったのでしょうが、その山頂に滞在出来る期限が決められてしまいましたので一月の下旬の捜索になったと言う訳なのです。まあ、ロープウェイが使えなくても夏なら山道を上って来て山頂を目指す事もできますが、その捜索の為の人手を集める事も出来ませんし、このチャンスを逃したら後を二~三年はその山頂には行けないですからね」
「人手って、あなた以外にその捜索を手伝ってくれる人達がいるのですか?」
「はい、います。ウチの妹が所属をしていた大学の登山サークルの人達です。みんな私の妹の為に無償で捜索を手伝ってくれると言ってくれました。ですので尚更今しか無いのですよ。人が沢山集まってくれる今なら私の妹の亡骸の破片だけでも探せるはずです」
「探すとしてもなにか手がかりはないのですか」
「その手がかりは妹が生前通っていた大学の同じ部員の登山サークルの人達が、妹がいなくなったとされる場所を知っているとの事なので、当日はその彼らに道案内をして貰うつもりです」
「なるほど、登山サークルの人達ですか。その妹さんの行方不明事件にその大学生達が絡んでいるという訳ですね。だから一年半前にその山頂でいなくなった妹さんに責任を感じて共に探すと言ってきた訳ですか」
「ええ、多分そうだと思います。一年半前の七月にその登山サークルの大学生達は皆、ウチの妹と共にそのいなくなったとされる山の山頂に登山に行っていますからね。そして彼らと別行動をしていたウチの妹はそのまま山頂の森の中で行方不明になったと聞いています」
「なるほど、だからその大学生の登山サークルの人達は皆、貴方と共に妹さんの捜索を手伝ってくれると言う事ですね」
「はい、そう言うことです。でも二~三年も間が開いてしまったらその大学生達も大学を卒業してしまいますからね、だからこそ今しかないのですよ。今しか……」
そう言いながら如月栄子は視線を下に向けながらどこか遠い目をする。
「そして二つ目の疑問は、なぜ黒鉄探偵事務所の探偵が限定なのかと言う話ですが、普通の便利屋や探偵ではあの鬼女には誰も太刀打ち出来ないからです!」
その如月栄子の言葉に勘太郎は思わず不思議な顔をしながら首を傾げる。
「太刀打ち出来ないって、一体なんの事ですか。その山にはヒグマでも出るんですか?」
「確かにヒグマも普通にいますが、それよりももっと恐ろしい物ですわ。その山には女性の鬼が出るんですよ」
「はあ~、女性の鬼ですか? なんですかそれは、その山に伝わる山岳怪談か何かですか」
なんか胡散臭いという思いが顔に出た勘太郎に、如月栄子は真剣な顔で語る。
「迷信とかじゃないわ、本当にいるのよ、あの山には確かに白髪頭の得体の知れない正体不明の謎の女の霊が。その姿を見た人達だって何人もいると言う話ですし」
「白髪頭の……女性の幽霊ですか……」
内心ビクビクしながらも冷静な態度を崩さない勘太郎に畳み掛けるかのように、如月栄子は恐怖と緊張に満ちた顔を向けながらその体をこわばらせる。
「ある噂では、三年前くらいからその山の頂上付近では謎の白髪の女の霊がたまに出没するとの話です。何でもその山に伝わる昔話では、その山の山頂付近で戦で命からがら逃れて来たどこかの豪族の姫が身内の裏切りに遭って、その身元が分からないくらいに火で顔を焼かれた挙げ句に、無残に殺されたという言い伝えがあるそうです。その豪族の姫の霊が恨みと怨念を糧に鬼女となって今もこの山を敵を求めて徘徊しているという話です。そしてその伝承に出て来る昔話が、三年前くらいから現実の物となった。実際に頂上の森の中やもう既に廃墟となっている廃別荘や山荘のホテルの周辺でその鬼女らしき女性の姿を目撃したという人が多数いますからね」
「民間の昔話に出て来る伝説の鬼女か、なるほどな、そんな恐ろしい話が現実の物となったと言うのなら、その話を昔から信じている地元の人達は誰一人としてその山には行きたくはないだろうな。まあ、にわかには信じられない話だがな!」
「ある目撃者の話によればその鬼女はボサボサの白髪頭をした目も鼻も口も無い真っ平らな顔をした女性で、血のシミの付いた赤いワンピースを着て現れるのだそうです。両手には鎖の分銅の付いた鎖鎌を持っていて、間近で出会ってしまった者達に謎の奇声を上げながら荒々しく襲い掛かるのだとか。そしてそのおぞましくも恐ろしい鬼女の姿を見た幾多の登山者の人達は皆口々にこう呼んでいます……『白面の鬼女《はくめんのきじょ》』と」
その恐ろしげな名前を聞いた瞬間、勘太郎の体は汗を掻きながら震えだし、一気に鳥肌が立つ。
(こ、怖い……怖すぎる……怖すぎるだろう。その話は……)
「今から一年前、その山の頂上に現金輸送車を襲撃した三人の強盗犯が逃げ込んだとの事ですが、不幸にもその山の鬼女と遭遇してしまい、二人が無残にも殺されて、残る一人がその恐怖から精神に異常をきたして心の病気になってしまったとの事です。そしてその生き残った人の話によれば、その鬼女は物凄く神出鬼没で、外の雪道を歩いていた鬼女が、いつの間にか建屋の中に居るその犯人の真後ろにいたと証言していましたから、恐らくはその鬼女は呪いの力で瞬時に遠くからその人のいる近くへと瞬間移動が出来る物と考えます。そう地元の人達も皆が口々に語っていましたから先ず間違いないです!」
「遠くから近くに瞬時に瞬間移動ですか……確かに人には出来ない化け物じみた芸当ですね。まあその話が本当だったらの話ですが」
「もう本当ですよ探偵さん、信じて下さいよ。一年前に東京のテレビでも結構大きなニュースになったはずですよ。現金輸送車強盗の三人の犯人が大雪山の山の頂上にあるホテルで謎の殺人鬼に殺されてその強奪して来た現金を全て奪われたという事件を。警察官や警察犬がその鬼女の行方を捜したにも関わらず、その殺人鬼の行方は全く分からず、ついには未解決事件になった。あの事件です」
「確かにそんな事件が北海道の方でありましたね。溺れげに覚えていますよ。あの警察犬が犯人の臭いを追えなかっただなんて、不思議な話もある物ですね。山の中なら臭いも途切れないと思っていたのですがね。雪山じゃ雪に足裏の摩擦臭は残りにくいのかな?」
にわかには信じられない如月栄子の怪談のような話に、勘太郎は珈琲カップを持ち上げながら考える。
「瞬間移動で人を襲う。顔の無い……白面の鬼女か」
そう呟きながら黙り込む勘太郎の耳に、いつもの用に明るい声が飛ぶ。
「いいじゃないですかその依頼、何だか面白そうですわ。如月栄子さんの妹さんの死体の捜索に、その山の周辺に出没するとされる瞬間移動が出来る妖怪のような鬼、白面の鬼女ですか。両手に鎖鎌を持ち、近くにいる者達に問答無用で襲いかかって来るだなんて、中々に刺激的でメルヘンで、そして物凄く夢のあるお話じゃないですか!」
(夢じゃ無くて悪夢しか無いだろうと思いながら勘太郎は、ドアを開けて客間に現れたその女性に顔を向ける。
「羊野か……俺はまだこの依頼を受けるとは一言も言ってはいないのだが」
「ぜひ共受けるべきですわ、黒鉄さん。こんなに面白そうな事件……じゃなくて、こんな痛ましい事件を放って置くのはさすがに良心が痛みますわ。ここは私達が微力ながらもその力をお貸しして差し上げないと、その鬼女とか言う女性の幽霊もさすがに浮かばれないのではないでしょうか」
「いやいや意味が分からんわ。それにお前に良心なんて物があったとは驚きだな」
「いやですわ黒鉄さん、私にだって人を慈しみ敬う心くらいはありますわ」
「そう言うのなら、先ずはその隠すに隠しきれない好奇心を止めてから俺に改めて申し開きをして見るんだな。そんなお前の言葉を俺は全て否定してやるがな!」
「フフフ、相変わらず意地が悪いですわね。黒鉄さんは」
「いやいや、お前ほどでは無いとは思うがな」
「ホホホホホホーッ、黒鉄さんは相変わらず面白い冗談をいいますわね」
「ハハハハハハ~ッ、冗談を言っているつもりは毛頭ないが、その言葉お前にそっくり返してやるよ、羊野」
勘太郎とその羊野と呼ばれている女性は他愛も無い言葉をお互いに掛け合っていたが、その羊野の姿を見ていた依頼人の如月栄子は驚きと怪しげな目を向けながら何かを考える。それもそのはず、羊野と呼ばれているその女性の姿が物凄く異常でかなり怪しげだったからだ。
その羊野と呼ばれている女性は上には冬用のワイシャツを身につけ、首には赤いネクタイを絞め、下には厚手のロングスカートを履き、そして極めつけに顔には精巧に作られた白い羊のマスクを深々と被っている。そんな正体不明の可笑しな仮装をした女性が行き成り現れたのだから間近でその姿を見た如月栄子もさぞ驚いた事だろう。
その白一色の服装をした女性が静かに羊顔のマスクを脱ぐと、白銀に光る長い髪を手ぐしで整えながら目の前にいる如月栄子に挨拶をする。
「こんにちは、依頼人の方ですね。私は黒鉄探偵事務所で探偵助手として働いている羊野瞑子と言う者ですわ、どうぞお見知りおきを」
「私は如月栄子と申します。その出で立ちは……そうですか、あなたが白い羊と呼ばれている方ですね。あなたの数々のご活躍は誰かさんが話していたネットの書き込みで知りました。まさかそのご本人とこうして出会う事ができただなんて、お会いできて光栄です!」
「羊野のきめ細かい美しい白い肌と細身ながらも引き締まったその体を見ながら如月栄子は怪しく笑う。
「フフフ、なるほど、もしかして羊野さんの羊と言う名字の一字って、そういうことなのですか。なるほどね。でもこんな可愛らしい女性が……凶暴凶悪で悪知恵の働くあの白い羊とは、にわかには信じられませんわ」
「ほほほほ、どうやら私に関するあらぬ噂が勝手に一人歩きをしているようですが、黒鉄の探偵の伝説だけは正真正銘の本物ですわ。全て黒鉄勘太郎さんに任せてくださいな。そうすればあなたの持ち込んだ事件など直ぐに黒鉄さんが解決して見せますわ。どうか大船に乗ったつもりでいてください。そうですよね、黒鉄さん!」
「なに勝手な事をほざいてんだよお前は、お前のあらぬ過度なでまかせと宣伝のお陰でまた俺のプレッシャーが急上昇するだろうが。もうそういうデマ話はいい加減にやめてくれ。俺達のことを知らない人が聞いたら真に受けてしまうだろうが!」
「いえいえ、数ある事件を解決して狂人を倒して来たのは全て本当の事でしょ。いやですわ黒鉄さん、余り自分の功績を否定しないでくださいな。あらぬ謙遜は時に嫌みに感じますわよ」
「だから違うわ。お前の証言次第で話がややこしくなるだろう!」
「でもどうやら依頼人の如月栄子さんの方は私達の事を認めてくれた見たいですよ」
「な、なんだって?」
そう言いながら勘太郎が如月栄子の方を向くと、如月栄子は何やら期待を込めた眼差しを向けながら妖艶且つ怪しい笑顔でほくそ笑む。
(や、やばい、この依頼は何だか非常にやばい、やばすぎると俺の勘が細胞レベルで警告を発している。この依頼は決して絶対に受けてはならないのだと……)
「いや、俺達は曲がりなりにも探偵な訳だし、死体の捜索は専門外じゃないのか。それを俺達に頼むのはお門違いと言うか……」
「もしかしていい年をして怖いのですか。まさかとは思いますが幽霊とか妖怪の存在を信じている口ですか。安心して下さい、そんな不可思議で漫画やお伽話のような物はこの地球上には存在しませんから。高山病にでも掛かった誰かが吐き気や目眩、そしてその後に幻覚を見ただけの良くある事例ですわ。それにあんなのは怖い怖いと思っているから怖いのです。鬼女なんて者は、とち狂ったただの女性が山頂で暴れているだけのただの人間かも知れないじゃないですか。なのでなにも心配は入りませんわ!」
「だ、だけどその鬼女は瞬間移動を使うらしいし、そんな事は幽霊や妖怪でも無い限りは絶対にできない芸当だろ。百メートルほど先にいた距離を一瞬で縮めて、ホテルの中にいる人の真後ろに行き成り現れるだなんて、これはもう人間技じゃ無いぜ。そんな事は絶対に人間には出来ない事だからだ!」
不安げに言う勘太郎に羊野は不気味に笑みをこぼしながらその白い顔を近づける。
「つまりこれはあの謎の秘密組織・円卓の星座が掲げている、不可能犯罪ならぬ不可能な案件と言う事になりますわね。もしかして黒鉄さんはこの事件にはあの円卓の星座の狂人が絡んでると思っているのですか?」
「今までの経験上その可能性も充分にあると言う事だ。もしもその山にのこのこと行ってしまったら物凄く大変な事になるかも知れないぞ。ここは用心の為にこの依頼は断るべきだ!」
「え、断る……なぜですか、物凄くやりがいのある依頼なのに。まあ断るのは黒鉄さんの勝手ですが、もしもその白面の鬼女とやらが今回の狂人ゲームの相手なら、もしも断ったらその仕返しにその山に行く予定の如月栄子さんや大学の登山サークルの人達がみんな殺されてしまうかも知れませんよ。それでもいいのですか」
「な、なんだって!」
その羊野の言葉に勘太郎は思わず如月栄子の顔を見る。そんな勘太郎の視線を待っていたかのように如月栄子は静かにこの依頼をしに来たもう一つの理由を話し出す。
「私があなたにこの依頼を頼むのはあなた方が狂人と呼ばれている謎の殺人鬼達と戦って来た凄腕の探偵だと知ったからです。それに経験も豊富そうなので鬼女が現れた際はあなた方が何とかしてくれると信じています。それに掲示板に書き込んでいる人達もあなた方の事をかなり褒めていましたから、捜索中はあなた方に守って貰う事にしたのですよ。まあ命には代えられませんからね」
「確かにそうでしょうが……しかしだね……」
「それに実は私もあの白面の鬼女と呼ばれている女性はただの気の狂った人間だと考えていますので、そんな私達を守る為にもあなた方をボディガードとして雇いたいのです。何しろ相手は謎の鬼女なので、そんな正体不明な者に警察が動いてくれる訳がないですし、普通の便利屋や探偵ではあの鬼女の悪意に皆あっさりと殺されてしまう事でしょう。だからこそあなた方に直接遭ってこの依頼を引き受けて貰いたかったのですよ。メールや電話ではただの冷やかしや悪戯だと思われてまともに取り合ってはくれないと思いましたので直接この探偵事務所に出向かせて貰ったという次第です!」
その切実な如月栄子の言葉に、勘太郎は腕組みをしながら大いに悩む。
もしもこの事件にあの円卓の星座の狂人が絡んでいるというのなら、この依頼を断ったらその瞬間ペナルティーとして如月栄子さん達が殺されてしまうかも知れない。その事で思い悩んでいる勘太郎に羊野が畳み掛けるかのように話し出す。
「百メートルの距離を走る人類で……今現在の世界で最速の記録保持者は、二○○九年にジャマイカのウサイン・ボルトさんが出した九秒五八が最も速い記録なのだそうです。でもその山頂に出没するとされる白面の鬼女は百メートルの距離を超スピードで走るのでもなければましてや空を飛んで来る訳でも無く、ただの一瞬で瞬間移動が出来るという事です。その不可思議な謎の正体を私はどうしても知りたいのですよ。一体どのような仕掛けを使い、このトリックを完成させているのかをね」
「だ、だが、もしも本当にその鬼女が、疑う余地の無い正真正銘の幽霊や妖怪の類いの者だったらどうするんだよ。もしも円卓の星座の狂人が一切関わってはいない本物の化け物なら当然仕掛けなんかは無いと言う事になるが、それでも行きたいのか!」
「ええ、ぜひお願いしますわ」
その羊野の視線とその言葉は目の前にいる勘太郎にではなく、何故か革張りの長椅子に座る如月栄子に向けられる。
羊野のそのやる気のある言葉を聞いた如月栄子は静かに羊野に笑みを向けると、その視線を今度は勘太郎の方へと向ける。
「どうやら白い羊のお嬢さんの方は行くつもりのようですわね。して黒鉄の探偵さんの返答の方はどうでしょうか?」
如月栄子の威圧ある催促に、勘太郎は黒鉄探偵事務所の所長としての最終決断を下す。
(羊野、お前には悪いが、今回のこの依頼は何だか不気味過ぎるし、異常に怖すぎる。なのでキッパリとお断りさせて貰うよ。それに多分この事件にはあの円卓の星座の狂人は一切絡んではいないと思われるし、恐らくは如月栄子も大丈夫なはずだ。その証拠にまだ狂人ゲームの挑戦状も届いてはいないからな。それに例え俺達がその捜索に参加をしなくてもその妹さんの亡骸は探せるし、特に問題はないはずだ。そうだとも、そうに違いない。俺はそう信じるぞ。そして遠路はるばるここまで来てくれた如月栄子さんには悪いが、名のある有名な別の探偵事務所を紹介する事で、ここはどうにか承諾してもらう事にしよう……)
考えがまとまった勘太郎は久しぶりに来た仕事の依頼を断腸の思いで断る為、改めて勇気を振り絞る。
(よ~し……言うぞ。断るぞ!)
そんな事を考えながら一呼吸を置くと、その瞬間羊野に勢いよく足の指を踏まれた事で勘太郎は思わずその左足の指先を抱き抱える。
踏み……ギュゥゥゥゥーッ!
「い、痛い、お前ぇーぇぇ、何すんじゃいぃぃ!」
その痛みにすかさず抗議をする勘太郎を無視した羊野は、満遍の笑顔をこぼしながら代わりに話し出す。
「勿論そのお依頼は、黒鉄探偵事務所の二代目・黒鉄の探偵こと黒鉄勘太郎が責任を持ってお引き受け致しますと、今そう言おうとしていたんですよね。人の為に親身になって行方不明者の遺体の捜索と如月栄子さんの身辺の警備を承諾するだなんて流石は黒鉄さんですわ!」
「いや、そうじゃ無くてだな……お、お前な!」
無邪気に微笑む羊野と如月栄子に向けて勘太郎は直ぐさま今の言葉は全て間違いだと否定の言葉を述べようとするが時既に遅く、羊野がもう既に『お引き受けする』と言ってしまった手前、今更『いえ、やはり出来ません』とは言えず、勘太郎は思わず複雑な顔をする。
そんな勘太郎の決意を固めさせるかのように最後のシメとばかりに勘太郎の前へと歩み寄った如月栄子は、万遍の笑顔を向けながら勘太郎の手を力強く握る。
「依頼を引き受けてくれてありがとう御座います。では私は一足先に北海道に戻りますので、一週間後の捜索には絶対に間に合うように来て下さいね。前金と飛行機のチケットを二人分あなたに渡して起きますので、詳しい話は現地に着いてからにしましょう。では失礼します」
「あ、ちょっと、待って、待ってくれ。まだ行くと決まった訳では……っ!」
勘太郎に反論する余裕と隙を与える事無く急ぎばやに黒鉄探偵事務所を出た如月栄子は、直ぐさま人が行き交う商店街の中へと消えて行く。そんな如月栄子を止める事が出来なかった勘太郎は、このなんとも不可思議で恐ろしげな依頼を断れなかった事に後に激しく後悔をすることになるのだった。
『あなたがこの黒鉄探偵事務所の主にして、黒鉄の探偵と呼ばれている黒鉄勘太郎さんですね。あなたに折り入ってお願いしたい依頼があるのですが、よろしいでしょうか?』
優しく微笑みながらその女性は客室に用意された黒革の長椅子へと座る。
勘太郎はそんな彼女に淹れたての珈琲を勧めながら後ろの柱に立てかけてある柱時計に目をやる。
時刻は十四時三十分。
月日が一月下旬に入り、窓を叩く冷たい冷風が外の気温の低さを告げているかのようだ。
そんな窓の音がガタガタと鳴る来客用の室内で勘太郎は木製テーブルに置いてある珈琲に砂糖を入れながらこの目の前にいる女性がわざわざ海を越えて遠くから来た理由を考える。
彼女の話によれば北海道の大雪山が聳え立つ麓の小さな町から来たとの事だが、一部の山の絶景が有名な観光名所にもなっているそんな所からわざわざこの探偵事務所に来た理由が正直分からない。
一体どんな用件でこの探偵事務所に来たのかは知らないが、こんな遠くにある小さな一探偵事務所にではなく、もっと近場で大きな探偵事務所に頼めば余分なお金を使うこともないしいろんな意味で効率的なはずだ。
それに北海道からこの千葉県までわざわざ来なくても電話か黒鉄探偵事務所のサイトの依頼内容書き込み欄に記入すればそれだけでいいはずなのである。
そんな事を考えながら勘太郎はその意識をフと窓の外から聞こえてくる人の声へと向ける。
寒風に紛れて外を歩く学生達や家族連れの楽しげで賑やかな声が路上を通りすぎるたびに聞こえて来る。
それもそのはずここは駅からも近く商店街や駅ビルなどもある為、サラリーマンや主婦・果ては学生といった人通りも多く、町全体がいろんな人達で賑わっているからだ。
大抵の品物なら何でも揃うこの町の環境は活気があり、様々な人の熱気が活力となってこの町全体を包んでいるかのようだ。ここに住む住人なら誰もがそう感じている、そんな住みやすい町だ。
そんな商店街から少し進んだ所にこの黒一色のビルはある。
ビルの二階に掲げられている看板には黒鉄探偵事務所と字がデカデカと書かれている。
そうつまり今勘太郎と依頼人の女性がいるこの事務所こそが黒鉄探偵事務所なのである。
事務所の中は昭和初期を思わせる古いながらも赴きのあるシックな造りになっており、部屋の中は皆黒で統一されている。
当の勘太郎は特にアンティーク好きと言う訳では無いのだが、このビルの前の持ち主で今は亡きオーナーでもあった、初代・黒鉄の探偵こと黒鉄志郎が生前黒色にこだわった物が好きだった為、その息子でもある二代目・黒鉄の探偵こと黒鉄勘太郎が、その名とこの黒ビルをそのまま受け継いでいるのだ。
そんな時代遅れを思わせる部屋の中で、勘太郎は先ほど彼女が言っていた言葉の意味を考える。
この女性が黒鉄探偵事務所の事を何処で聞いてきたのかは知らないが、この女性は勘太郎が黒鉄の探偵と呼ばれている事を知っている。それを知り、わざわざこの黒鉄探偵事務所を訪ねてきたと言う事に勘太郎は何か嫌な予感を感じてならない。
別に隠している訳では無いのでその通り名を知っている人達はかなりいるのだが、その名を持つが故に迫り来る危険やいざこざもいろんな意味でかなり多いのだ。
なので勘太郎は当然のように目の前にいる依頼人の女性に警戒心を持ってしまう。
勘太郎はある仕事の依頼をする為に行き成り現れた素性も知らない女性に視線を向けながら、今回の依頼人女性の服装を確認する。
見た目の年齢では、おそらくは二十代後半と言った所だろうか。長い黒髪を後ろで結び、その端正な美人顔には黒縁の眼鏡をかけている。
背は細身の長身で、まるでモデルの用な体型をしている。
もうすっかり肌寒い冬でもあるので厚手の黄色いセーターに下はジーンズを綺麗に履きこなしている、そんな服装だ。
そして彼女が座っている長椅子の隣には大きなバックと共にいい匂いが香る紺色のコートがそっと置かれていた。
その清潔感漂う身だしなみとほんのりと香る爽やかな香水の匂いから考えて、どうやら彼女はエチケットには気を遣う女性のようだ。
そんな彼女の全体を確認した勘太郎は和やかな笑みを向けながら行き成り探偵事務所を訪れた依頼人の女性に話かける。
「確かに私が黒鉄の探偵と呼ばれている黒鉄勘太郎ですが、その依頼内容を聞く前に、先ずはあなたのお名前を聞かせて貰ってもよろしいでしょうか」
勘太郎の言葉を聞いた黒縁の眼鏡を掛けた依頼人の女性は、顔を赤く染めながら緊張と恥ずかしさの為か思わず立ち上がる。
「し、失礼しました。私の名前は『如月栄子』と言います。ね、年齢は二十七歳の乙女座です!」
「如月栄子さんですか。ではこちらも改めて自己紹介をさせて頂きます。自分は黒鉄探偵事務所を経営している黒鉄勘太郎と言います。この黒鉄探偵事務所は俺の親父が経営していた探偵事務所だったんですが、二~三年前に他界しましてね、今はその後を引き継いだその息子である俺が二代目・黒鉄の探偵として不肖ながらもそう名乗らせて貰っています」
礼儀正しく頭を下げるその勘太郎の言葉に依頼人の如月栄子は少し微妙な顔をする。
「私は初代・黒鉄の探偵の事は全く知りませんが、私がいろんな噂で知っている怪人殺しの探偵と言ったら間違いなくあなたの事です。そうですよね、黒鉄勘太郎さん!」
(え、狂人殺しではなくて怪人殺しだって……一体なんの事だ!)
勘太郎は依頼人でもある如月栄子の言葉の意味に困惑する。
「それは一体どういう事ですか?」
「初代・黒鉄の探偵の事は正直分からないけど、今の黒鉄の探偵は力も知力も才能もまるで無いへっぽこ探偵として有名ですよね」
その如月栄子の歯に着せぬ言葉に勘太郎は思わず椅子からズッコケそうになる。
(この人は、俺が密かに気にしている事をズケズケと素直に言って来る人物のようだな。まあ特に悪気は無いのだろうが……初対面の赤の他人にまで自分の劣等感を指摘されると流石に傷付くぜ)
そんな暗い思いを引きずりながらも勘太郎は崩れたオールバックの髪型を片手でそっと直すと、冷静さを装いながら椅子へと戻る。
「ハハハ、否定はしませんよ。確かに私は他の探偵の同業者や知り合いの警察の関係者からはよ~くへっぼこ探偵だの駄目探偵だのと言われていますが、今現在は名探偵だった父に少しでも近づける用にと日夜精進と努力を惜しまないつもりでいます。そしてその過程で依頼の仕事を確実に積み重ねて行く事によって、少しずつではありますが段階を踏みながら成長をしていくつもりです。なのでどうか今後とも温かい目で見てくれたら幸いです!」
勘太郎は更に低姿勢になりながらも相手の出方を伺うが、そんな如月栄子から出た言葉は意外な物だった。
「いえいえ、何も私は黒鉄さんの事をけなしている訳ではありませんよ」
(いや、今ハッキリとへっぼこ探偵とあなたに言われたんだが……)と思う勘太郎の心境などは知る由も無い如月栄子は更に話を続ける。
「私が、風の噂で知っている黒鉄の探偵は他の同業者の探偵達が噂をする用に、才能も知力も武力も無いただのへっぽこ探偵と皆が言っていましたけど、よ~く調べた結果、私の見解は彼らとは違います」
「一体どう違うと言うんですか」
取りあえず話を聞いて見ようとする勘太郎の態度に、如月栄子は真剣な顔を向けながら落ち着いた声で話す。
「あなたは民間のただのしがない探偵にも関わらずこの一~二年の間に幾つもの未解決事件を解決したと言う実績がありますよね。それもみんな人が死んでいるような凶悪な事件ばかりです。ですがその事件の全てが警察が解決したことになっていて、あなたが事件に関わった証拠や事実さえも綺麗に跡形もなく消されている事も結構多いです。これってどう考えてもおかしいですよね。そこで私はネットの匿名の掲示板や事件の謎を追っているサイトを調べて見る事にしました。2チャンネルだか5チャンネルとかという所です。そしたらある興味深い噂が囁かれているサイトを見つける事が出来ました。その掲示板に書き込んでいる人物は過去にあなたに事件を解決して貰った人だと言っていましたがその正体は未だに謎のままです。どうやら彼は常に回りを警戒していて、非常に自分の素性がバレるのを恐れているようでした。その人は自分の事を『緑の眼鏡ちゃん』と名乗っていました。それとその話に必要以上に食いついていた人物がいてその人は自分の事を『真実を探る子馬ちゃん』と名乗ってその話に参戦していたのを覚えています。狂人がどうとか言っていましたが、肝心な事は何も書かれてはいませんでしたし、私はこの二人が書き込んでいる会話がなんの事かが分からず、半分も理解できませんでした」
(一体どこの誰かは知らないがかなり危険な事をしている奴がいるようだな。過去に狂人が関わる事件に巻き込まれた誰かがその謎の秘密組織の事を掲示板に書き込んで、狂人達が関わっているかも知れないと思われる事件の事を調べているのか。流石にそれはやばすぎるだろ。でも恐らくはあの壊れた天秤がその事に気付いていないとは思えないから、恐らくは特に組織の運営に影響を与えるほどの情報は何も書かれてはなかったからその人達の書き込みはほっとかれているのかも知れないな。もしもその書き込んだ人物が何かのやばい情報を得ているのだとしたらとっくの昔にこの世からあの世へと消されているだろうからな)
勘太郎がそんな事を考えていると如月栄子が少し不満げな顔を向けながら声を掛ける。
「黒鉄勘太郎さん、ちゃんと話を聞いていますか」
「あ、すいません、ちょっと考え事をしていました。どうぞ、話を続けてください」
「つまり私はその掲示板に書かれてある狂人達が関わる様々な事件の内容を見て、この変わった探偵事務所の事を知ったのです。その掲示板にはこんな書き込みがされていました。『日本の警察やましてや名探偵と呼ばれている人達にすらも手に負えないあの狂った秘密組織に対抗する事が出来るのは日本広しと言えども私が知る限り、この人達しかいない。それが関東にある黒鉄探偵事務所に所属をしている闇の秘密組織の創設者が主催する狂人ゲームの挑戦者に選ばれた人達だけだ。この事務所に所属をしている探偵は、ある組織と渡り合う為に警視庁の上層部や政治家のトップから日本の法律をもねじ曲げる力と権限を与えられていて、狂人達が関わる事件を解決する為なら例えどんな法律違反や損害の被害をも帳消しにする事が出来る権限を持っているとの事だ。そして黒鉄の探偵と呼ばれている者が他の探偵達と大きく違う点は、二代目・黒鉄の探偵には凶悪・凶暴な悪知恵の働く狡猾な『白い羊』と呼ばれている羊の化け物が常に傍についていて、その白い羊の力を借りて、どんな難解な事件をも即座に解決に導く事が出来るのだとか』前に私が見た掲示板にはそのような事が書かれてありましたわ。その白い羊というのが一体なんなのかは分かりませんが……ここに書かれてある黒鉄の探偵と言うのは、ズバリあなたの事ですよね、黒鉄勘太郎さん」
そう確信し、勘太郎を見詰める如月栄子の目には一点の曇りも無いようだ。そんな期待に満ちた眼差しに圧倒されたのか勘太郎は思わずたじろいでしまう。
「そ、それは……」
「フフフ、どうやらあなたには他の探偵達や警察には無い、隠された秘密の力があるみたいですわね。姿を消せる奇っ怪な化け物や怪力無双の怪しげな怪人すらもたじろいでしまう程の事件解決能力に私は全てを賭けて見る事にしたのですよ」
「さ、流石にそれは買い被りすぎだと思うのですが」
……。
一旦話が途切れしばしの沈黙の後、何やら意味ありげな眼差しを送る如月栄子に軽い咳払いで返した勘太郎は「ハハハ~、中々面白い噂話ですね」と言いながら、テーブルに置かれてある珈琲カップを震える手で一口飲む。
ほろ苦く奥深い味わいが口の中一杯に広がり、コクのある珈琲の香りと程良い熱の温度が喉越しに伝わる。
その珈琲の一口で心の落ち着きを取り戻した勘太郎は、心の中で大いに叫ぶ。
(なんかいつものように噂話にとてつもない尾ひれがついてるんだけど~!)と。
勘太郎はそんな噂話から話題を変えるかのように話を切り出す。
「それで、肝心の依頼内容の方は一体どんな物なのでしょうか。先ずは話を聞いて見ないことにはこちらの方としても出来るかどうか判断がつきかねますが」
「え、ええ、そうですわね。そうでしたわ!」
何かにはじかれたかのように言葉が口から出た如月栄子は、手元のテーブルに置かれてある珈琲カップを手に取ると、一口飲んでから目を伏せ静かに語り出す。
「私の依頼内容はただ一つです。私と共に北海道の大雪山周辺にある、とある山頂の上に聳える山荘ホテルに行って貰って、一年半前の7月の山頂で行き成り消息が分からずに行方不明となっている私の妹を捜して欲しいと言うのがこの依頼の内容の全てです!」
目を伏せ静かに頭を下げる如月栄子の決意を込めた言葉に、話を聞いていた勘太郎は思わず顔を曇らせる。
(一年半前にいなくなった妹の捜索だってぇぇ! しかも消息を絶った場所は北海道にある大雪山の雪山の山頂だと言うのか。行方不明になったその時期は7月と言う事もあり流石に雪は降ってはいなかったのだと思うが、その妹さんがいなくなってからはかなりの月日が経っている。と言う事は、つ、つまりだ……それはその山の山頂の何処かにある、その妹さんの遺体の捜索を一緒に手伝ってくれと言うことか。おおかた山の頂上で行方不明になった妹さんの捜索が時間切れで早々と打ち切られてしまい、捜索隊が引き上げてしまったと言った所か。そして妹さんの亡骸をなんとしてでも見つけ出して手厚く供養してあげたいという気持ちが積もりに積もって諦めきれない姉の如月栄子さんが藁にもすがる思いで仕方なくこの千葉県までわざわざ来たのだろうが、でもなんでその捜索の依頼に黒鉄探偵事務所が絡んで来るんだ。ただの死体の捜索ならなにも黒鉄探偵事務所限定でなくてもいいはずだ。それに俺は、浮気調査や人に飼われているペットの捜索、果ては現在家出中の少年や少女の捜索とかなら依頼を受けたことがあるが、人の遺体探しの捜索はさすがにやった事がないぞ。て言うか、はっきり言って死体の捜索なんて正直やりたくもないしな。と言う訳で何とかこの話を断る方向にまとめねばなるまい)
「如月栄子さん、その捜索の依頼は流石に頼むところが違うのではないでしょうか。ウチは便利屋ではありませんので、生きているのならともかく、標高の高い山頂で約一年半もその妹さんは見つかってはいないのですから、そういった死体の捜索前提で妹さんを探すことは我が社としてはいたしてはおりません。それに仮に遺体を探すにしたって今は冬の一月上旬ですよね。山頂は当然寒いでしょうし雪も降っているでしょうから、死体の捜索は流石に無理があるのではないでしょうか。死体の捜索に行って二次被害にでも遭ってしまったら本末転倒ですからね。それにもしかしたら山を降りて普通に何かの事情で身を隠して家出をしているだけかも知れませんよ。まだその山頂の上で死んだと決まった訳ではないのですからその妹さんの友人や当時付き合っていた男性とかによ~く話を聞いて見てからでも遅くは無いのではないでしょうか!」
「いえ、そこはもう散々調べましたわ」
「本当ですか。まだあなたの知らない友人が、その妹さんにはいるかも知れませんよ」
勘太郎はこの依頼をなんとか断ろうともっともらしい理由を並べていたが、断られる事は事前に分かっていたのか如月栄子は顔にかけてある黒縁の眼鏡を右手の人差し指でグイッと上げながら不気味にニヤリと笑う。
「先ずは最初の疑問でもある、なぜ冬のこの時期にわざわざ私の妹の遺体を探さなければならないのかを説明しますね。それはその山頂に続くロープウェイと山荘のホテルが諸般の事情のために二~三年ほど閉鎖をすると言う事が分かったからです。なので私は予てよりその山荘の持ち主でもあるオーナーの方に連絡を取りそしてお願いをして、どうにか一月の下旬一杯なら山頂に入ってホテルも好きに使っていいと言う許しと了解を得る事が出来ました。恐らくはこのホテルのオーナーさんがこの山頂で私の妹が行方不明になった事に同情して山頂での捜索の為にいろいろと協力をしようと思って下さったのでしょうが、その山頂に滞在出来る期限が決められてしまいましたので一月の下旬の捜索になったと言う訳なのです。まあ、ロープウェイが使えなくても夏なら山道を上って来て山頂を目指す事もできますが、その捜索の為の人手を集める事も出来ませんし、このチャンスを逃したら後を二~三年はその山頂には行けないですからね」
「人手って、あなた以外にその捜索を手伝ってくれる人達がいるのですか?」
「はい、います。ウチの妹が所属をしていた大学の登山サークルの人達です。みんな私の妹の為に無償で捜索を手伝ってくれると言ってくれました。ですので尚更今しか無いのですよ。人が沢山集まってくれる今なら私の妹の亡骸の破片だけでも探せるはずです」
「探すとしてもなにか手がかりはないのですか」
「その手がかりは妹が生前通っていた大学の同じ部員の登山サークルの人達が、妹がいなくなったとされる場所を知っているとの事なので、当日はその彼らに道案内をして貰うつもりです」
「なるほど、登山サークルの人達ですか。その妹さんの行方不明事件にその大学生達が絡んでいるという訳ですね。だから一年半前にその山頂でいなくなった妹さんに責任を感じて共に探すと言ってきた訳ですか」
「ええ、多分そうだと思います。一年半前の七月にその登山サークルの大学生達は皆、ウチの妹と共にそのいなくなったとされる山の山頂に登山に行っていますからね。そして彼らと別行動をしていたウチの妹はそのまま山頂の森の中で行方不明になったと聞いています」
「なるほど、だからその大学生の登山サークルの人達は皆、貴方と共に妹さんの捜索を手伝ってくれると言う事ですね」
「はい、そう言うことです。でも二~三年も間が開いてしまったらその大学生達も大学を卒業してしまいますからね、だからこそ今しかないのですよ。今しか……」
そう言いながら如月栄子は視線を下に向けながらどこか遠い目をする。
「そして二つ目の疑問は、なぜ黒鉄探偵事務所の探偵が限定なのかと言う話ですが、普通の便利屋や探偵ではあの鬼女には誰も太刀打ち出来ないからです!」
その如月栄子の言葉に勘太郎は思わず不思議な顔をしながら首を傾げる。
「太刀打ち出来ないって、一体なんの事ですか。その山にはヒグマでも出るんですか?」
「確かにヒグマも普通にいますが、それよりももっと恐ろしい物ですわ。その山には女性の鬼が出るんですよ」
「はあ~、女性の鬼ですか? なんですかそれは、その山に伝わる山岳怪談か何かですか」
なんか胡散臭いという思いが顔に出た勘太郎に、如月栄子は真剣な顔で語る。
「迷信とかじゃないわ、本当にいるのよ、あの山には確かに白髪頭の得体の知れない正体不明の謎の女の霊が。その姿を見た人達だって何人もいると言う話ですし」
「白髪頭の……女性の幽霊ですか……」
内心ビクビクしながらも冷静な態度を崩さない勘太郎に畳み掛けるかのように、如月栄子は恐怖と緊張に満ちた顔を向けながらその体をこわばらせる。
「ある噂では、三年前くらいからその山の頂上付近では謎の白髪の女の霊がたまに出没するとの話です。何でもその山に伝わる昔話では、その山の山頂付近で戦で命からがら逃れて来たどこかの豪族の姫が身内の裏切りに遭って、その身元が分からないくらいに火で顔を焼かれた挙げ句に、無残に殺されたという言い伝えがあるそうです。その豪族の姫の霊が恨みと怨念を糧に鬼女となって今もこの山を敵を求めて徘徊しているという話です。そしてその伝承に出て来る昔話が、三年前くらいから現実の物となった。実際に頂上の森の中やもう既に廃墟となっている廃別荘や山荘のホテルの周辺でその鬼女らしき女性の姿を目撃したという人が多数いますからね」
「民間の昔話に出て来る伝説の鬼女か、なるほどな、そんな恐ろしい話が現実の物となったと言うのなら、その話を昔から信じている地元の人達は誰一人としてその山には行きたくはないだろうな。まあ、にわかには信じられない話だがな!」
「ある目撃者の話によればその鬼女はボサボサの白髪頭をした目も鼻も口も無い真っ平らな顔をした女性で、血のシミの付いた赤いワンピースを着て現れるのだそうです。両手には鎖の分銅の付いた鎖鎌を持っていて、間近で出会ってしまった者達に謎の奇声を上げながら荒々しく襲い掛かるのだとか。そしてそのおぞましくも恐ろしい鬼女の姿を見た幾多の登山者の人達は皆口々にこう呼んでいます……『白面の鬼女《はくめんのきじょ》』と」
その恐ろしげな名前を聞いた瞬間、勘太郎の体は汗を掻きながら震えだし、一気に鳥肌が立つ。
(こ、怖い……怖すぎる……怖すぎるだろう。その話は……)
「今から一年前、その山の頂上に現金輸送車を襲撃した三人の強盗犯が逃げ込んだとの事ですが、不幸にもその山の鬼女と遭遇してしまい、二人が無残にも殺されて、残る一人がその恐怖から精神に異常をきたして心の病気になってしまったとの事です。そしてその生き残った人の話によれば、その鬼女は物凄く神出鬼没で、外の雪道を歩いていた鬼女が、いつの間にか建屋の中に居るその犯人の真後ろにいたと証言していましたから、恐らくはその鬼女は呪いの力で瞬時に遠くからその人のいる近くへと瞬間移動が出来る物と考えます。そう地元の人達も皆が口々に語っていましたから先ず間違いないです!」
「遠くから近くに瞬時に瞬間移動ですか……確かに人には出来ない化け物じみた芸当ですね。まあその話が本当だったらの話ですが」
「もう本当ですよ探偵さん、信じて下さいよ。一年前に東京のテレビでも結構大きなニュースになったはずですよ。現金輸送車強盗の三人の犯人が大雪山の山の頂上にあるホテルで謎の殺人鬼に殺されてその強奪して来た現金を全て奪われたという事件を。警察官や警察犬がその鬼女の行方を捜したにも関わらず、その殺人鬼の行方は全く分からず、ついには未解決事件になった。あの事件です」
「確かにそんな事件が北海道の方でありましたね。溺れげに覚えていますよ。あの警察犬が犯人の臭いを追えなかっただなんて、不思議な話もある物ですね。山の中なら臭いも途切れないと思っていたのですがね。雪山じゃ雪に足裏の摩擦臭は残りにくいのかな?」
にわかには信じられない如月栄子の怪談のような話に、勘太郎は珈琲カップを持ち上げながら考える。
「瞬間移動で人を襲う。顔の無い……白面の鬼女か」
そう呟きながら黙り込む勘太郎の耳に、いつもの用に明るい声が飛ぶ。
「いいじゃないですかその依頼、何だか面白そうですわ。如月栄子さんの妹さんの死体の捜索に、その山の周辺に出没するとされる瞬間移動が出来る妖怪のような鬼、白面の鬼女ですか。両手に鎖鎌を持ち、近くにいる者達に問答無用で襲いかかって来るだなんて、中々に刺激的でメルヘンで、そして物凄く夢のあるお話じゃないですか!」
(夢じゃ無くて悪夢しか無いだろうと思いながら勘太郎は、ドアを開けて客間に現れたその女性に顔を向ける。
「羊野か……俺はまだこの依頼を受けるとは一言も言ってはいないのだが」
「ぜひ共受けるべきですわ、黒鉄さん。こんなに面白そうな事件……じゃなくて、こんな痛ましい事件を放って置くのはさすがに良心が痛みますわ。ここは私達が微力ながらもその力をお貸しして差し上げないと、その鬼女とか言う女性の幽霊もさすがに浮かばれないのではないでしょうか」
「いやいや意味が分からんわ。それにお前に良心なんて物があったとは驚きだな」
「いやですわ黒鉄さん、私にだって人を慈しみ敬う心くらいはありますわ」
「そう言うのなら、先ずはその隠すに隠しきれない好奇心を止めてから俺に改めて申し開きをして見るんだな。そんなお前の言葉を俺は全て否定してやるがな!」
「フフフ、相変わらず意地が悪いですわね。黒鉄さんは」
「いやいや、お前ほどでは無いとは思うがな」
「ホホホホホホーッ、黒鉄さんは相変わらず面白い冗談をいいますわね」
「ハハハハハハ~ッ、冗談を言っているつもりは毛頭ないが、その言葉お前にそっくり返してやるよ、羊野」
勘太郎とその羊野と呼ばれている女性は他愛も無い言葉をお互いに掛け合っていたが、その羊野の姿を見ていた依頼人の如月栄子は驚きと怪しげな目を向けながら何かを考える。それもそのはず、羊野と呼ばれているその女性の姿が物凄く異常でかなり怪しげだったからだ。
その羊野と呼ばれている女性は上には冬用のワイシャツを身につけ、首には赤いネクタイを絞め、下には厚手のロングスカートを履き、そして極めつけに顔には精巧に作られた白い羊のマスクを深々と被っている。そんな正体不明の可笑しな仮装をした女性が行き成り現れたのだから間近でその姿を見た如月栄子もさぞ驚いた事だろう。
その白一色の服装をした女性が静かに羊顔のマスクを脱ぐと、白銀に光る長い髪を手ぐしで整えながら目の前にいる如月栄子に挨拶をする。
「こんにちは、依頼人の方ですね。私は黒鉄探偵事務所で探偵助手として働いている羊野瞑子と言う者ですわ、どうぞお見知りおきを」
「私は如月栄子と申します。その出で立ちは……そうですか、あなたが白い羊と呼ばれている方ですね。あなたの数々のご活躍は誰かさんが話していたネットの書き込みで知りました。まさかそのご本人とこうして出会う事ができただなんて、お会いできて光栄です!」
「羊野のきめ細かい美しい白い肌と細身ながらも引き締まったその体を見ながら如月栄子は怪しく笑う。
「フフフ、なるほど、もしかして羊野さんの羊と言う名字の一字って、そういうことなのですか。なるほどね。でもこんな可愛らしい女性が……凶暴凶悪で悪知恵の働くあの白い羊とは、にわかには信じられませんわ」
「ほほほほ、どうやら私に関するあらぬ噂が勝手に一人歩きをしているようですが、黒鉄の探偵の伝説だけは正真正銘の本物ですわ。全て黒鉄勘太郎さんに任せてくださいな。そうすればあなたの持ち込んだ事件など直ぐに黒鉄さんが解決して見せますわ。どうか大船に乗ったつもりでいてください。そうですよね、黒鉄さん!」
「なに勝手な事をほざいてんだよお前は、お前のあらぬ過度なでまかせと宣伝のお陰でまた俺のプレッシャーが急上昇するだろうが。もうそういうデマ話はいい加減にやめてくれ。俺達のことを知らない人が聞いたら真に受けてしまうだろうが!」
「いえいえ、数ある事件を解決して狂人を倒して来たのは全て本当の事でしょ。いやですわ黒鉄さん、余り自分の功績を否定しないでくださいな。あらぬ謙遜は時に嫌みに感じますわよ」
「だから違うわ。お前の証言次第で話がややこしくなるだろう!」
「でもどうやら依頼人の如月栄子さんの方は私達の事を認めてくれた見たいですよ」
「な、なんだって?」
そう言いながら勘太郎が如月栄子の方を向くと、如月栄子は何やら期待を込めた眼差しを向けながら妖艶且つ怪しい笑顔でほくそ笑む。
(や、やばい、この依頼は何だか非常にやばい、やばすぎると俺の勘が細胞レベルで警告を発している。この依頼は決して絶対に受けてはならないのだと……)
「いや、俺達は曲がりなりにも探偵な訳だし、死体の捜索は専門外じゃないのか。それを俺達に頼むのはお門違いと言うか……」
「もしかしていい年をして怖いのですか。まさかとは思いますが幽霊とか妖怪の存在を信じている口ですか。安心して下さい、そんな不可思議で漫画やお伽話のような物はこの地球上には存在しませんから。高山病にでも掛かった誰かが吐き気や目眩、そしてその後に幻覚を見ただけの良くある事例ですわ。それにあんなのは怖い怖いと思っているから怖いのです。鬼女なんて者は、とち狂ったただの女性が山頂で暴れているだけのただの人間かも知れないじゃないですか。なのでなにも心配は入りませんわ!」
「だ、だけどその鬼女は瞬間移動を使うらしいし、そんな事は幽霊や妖怪でも無い限りは絶対にできない芸当だろ。百メートルほど先にいた距離を一瞬で縮めて、ホテルの中にいる人の真後ろに行き成り現れるだなんて、これはもう人間技じゃ無いぜ。そんな事は絶対に人間には出来ない事だからだ!」
不安げに言う勘太郎に羊野は不気味に笑みをこぼしながらその白い顔を近づける。
「つまりこれはあの謎の秘密組織・円卓の星座が掲げている、不可能犯罪ならぬ不可能な案件と言う事になりますわね。もしかして黒鉄さんはこの事件にはあの円卓の星座の狂人が絡んでると思っているのですか?」
「今までの経験上その可能性も充分にあると言う事だ。もしもその山にのこのこと行ってしまったら物凄く大変な事になるかも知れないぞ。ここは用心の為にこの依頼は断るべきだ!」
「え、断る……なぜですか、物凄くやりがいのある依頼なのに。まあ断るのは黒鉄さんの勝手ですが、もしもその白面の鬼女とやらが今回の狂人ゲームの相手なら、もしも断ったらその仕返しにその山に行く予定の如月栄子さんや大学の登山サークルの人達がみんな殺されてしまうかも知れませんよ。それでもいいのですか」
「な、なんだって!」
その羊野の言葉に勘太郎は思わず如月栄子の顔を見る。そんな勘太郎の視線を待っていたかのように如月栄子は静かにこの依頼をしに来たもう一つの理由を話し出す。
「私があなたにこの依頼を頼むのはあなた方が狂人と呼ばれている謎の殺人鬼達と戦って来た凄腕の探偵だと知ったからです。それに経験も豊富そうなので鬼女が現れた際はあなた方が何とかしてくれると信じています。それに掲示板に書き込んでいる人達もあなた方の事をかなり褒めていましたから、捜索中はあなた方に守って貰う事にしたのですよ。まあ命には代えられませんからね」
「確かにそうでしょうが……しかしだね……」
「それに実は私もあの白面の鬼女と呼ばれている女性はただの気の狂った人間だと考えていますので、そんな私達を守る為にもあなた方をボディガードとして雇いたいのです。何しろ相手は謎の鬼女なので、そんな正体不明な者に警察が動いてくれる訳がないですし、普通の便利屋や探偵ではあの鬼女の悪意に皆あっさりと殺されてしまう事でしょう。だからこそあなた方に直接遭ってこの依頼を引き受けて貰いたかったのですよ。メールや電話ではただの冷やかしや悪戯だと思われてまともに取り合ってはくれないと思いましたので直接この探偵事務所に出向かせて貰ったという次第です!」
その切実な如月栄子の言葉に、勘太郎は腕組みをしながら大いに悩む。
もしもこの事件にあの円卓の星座の狂人が絡んでいるというのなら、この依頼を断ったらその瞬間ペナルティーとして如月栄子さん達が殺されてしまうかも知れない。その事で思い悩んでいる勘太郎に羊野が畳み掛けるかのように話し出す。
「百メートルの距離を走る人類で……今現在の世界で最速の記録保持者は、二○○九年にジャマイカのウサイン・ボルトさんが出した九秒五八が最も速い記録なのだそうです。でもその山頂に出没するとされる白面の鬼女は百メートルの距離を超スピードで走るのでもなければましてや空を飛んで来る訳でも無く、ただの一瞬で瞬間移動が出来るという事です。その不可思議な謎の正体を私はどうしても知りたいのですよ。一体どのような仕掛けを使い、このトリックを完成させているのかをね」
「だ、だが、もしも本当にその鬼女が、疑う余地の無い正真正銘の幽霊や妖怪の類いの者だったらどうするんだよ。もしも円卓の星座の狂人が一切関わってはいない本物の化け物なら当然仕掛けなんかは無いと言う事になるが、それでも行きたいのか!」
「ええ、ぜひお願いしますわ」
その羊野の視線とその言葉は目の前にいる勘太郎にではなく、何故か革張りの長椅子に座る如月栄子に向けられる。
羊野のそのやる気のある言葉を聞いた如月栄子は静かに羊野に笑みを向けると、その視線を今度は勘太郎の方へと向ける。
「どうやら白い羊のお嬢さんの方は行くつもりのようですわね。して黒鉄の探偵さんの返答の方はどうでしょうか?」
如月栄子の威圧ある催促に、勘太郎は黒鉄探偵事務所の所長としての最終決断を下す。
(羊野、お前には悪いが、今回のこの依頼は何だか不気味過ぎるし、異常に怖すぎる。なのでキッパリとお断りさせて貰うよ。それに多分この事件にはあの円卓の星座の狂人は一切絡んではいないと思われるし、恐らくは如月栄子も大丈夫なはずだ。その証拠にまだ狂人ゲームの挑戦状も届いてはいないからな。それに例え俺達がその捜索に参加をしなくてもその妹さんの亡骸は探せるし、特に問題はないはずだ。そうだとも、そうに違いない。俺はそう信じるぞ。そして遠路はるばるここまで来てくれた如月栄子さんには悪いが、名のある有名な別の探偵事務所を紹介する事で、ここはどうにか承諾してもらう事にしよう……)
考えがまとまった勘太郎は久しぶりに来た仕事の依頼を断腸の思いで断る為、改めて勇気を振り絞る。
(よ~し……言うぞ。断るぞ!)
そんな事を考えながら一呼吸を置くと、その瞬間羊野に勢いよく足の指を踏まれた事で勘太郎は思わずその左足の指先を抱き抱える。
踏み……ギュゥゥゥゥーッ!
「い、痛い、お前ぇーぇぇ、何すんじゃいぃぃ!」
その痛みにすかさず抗議をする勘太郎を無視した羊野は、満遍の笑顔をこぼしながら代わりに話し出す。
「勿論そのお依頼は、黒鉄探偵事務所の二代目・黒鉄の探偵こと黒鉄勘太郎が責任を持ってお引き受け致しますと、今そう言おうとしていたんですよね。人の為に親身になって行方不明者の遺体の捜索と如月栄子さんの身辺の警備を承諾するだなんて流石は黒鉄さんですわ!」
「いや、そうじゃ無くてだな……お、お前な!」
無邪気に微笑む羊野と如月栄子に向けて勘太郎は直ぐさま今の言葉は全て間違いだと否定の言葉を述べようとするが時既に遅く、羊野がもう既に『お引き受けする』と言ってしまった手前、今更『いえ、やはり出来ません』とは言えず、勘太郎は思わず複雑な顔をする。
そんな勘太郎の決意を固めさせるかのように最後のシメとばかりに勘太郎の前へと歩み寄った如月栄子は、万遍の笑顔を向けながら勘太郎の手を力強く握る。
「依頼を引き受けてくれてありがとう御座います。では私は一足先に北海道に戻りますので、一週間後の捜索には絶対に間に合うように来て下さいね。前金と飛行機のチケットを二人分あなたに渡して起きますので、詳しい話は現地に着いてからにしましょう。では失礼します」
「あ、ちょっと、待って、待ってくれ。まだ行くと決まった訳では……っ!」
勘太郎に反論する余裕と隙を与える事無く急ぎばやに黒鉄探偵事務所を出た如月栄子は、直ぐさま人が行き交う商店街の中へと消えて行く。そんな如月栄子を止める事が出来なかった勘太郎は、このなんとも不可思議で恐ろしげな依頼を断れなかった事に後に激しく後悔をすることになるのだった。
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