白い羊と黒鉄の探偵 ~狂人達が暗躍し掲げる不可能犯罪に白い羊と黒鉄の探偵が挑む~

藤田作磨

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第八章 『白面の鬼女』 大雪が降る北海道の山頂で繰り広げられる生き残りを賭けたシリアルキラーとの推理戦に白黒探偵が挑む!

8-10.勘太郎、部員達に強制連行される

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「死んだ……人が一人……殺された……あの赤いワンピースを着た、白髪の女に鎌で斬り殺された!」

「あいつはやはりこの山に巣くうと言われている鬼女伝説の鬼……白面の鬼女だ。有り得ない方法で現れて人を襲うという噂は本当だった!」

「に、逃げないと……一刻も早くここから逃げないと、俺達まで殺されてしまうぞ!」

 管理人の小林が殺された事でかなり動揺し、取り乱す斉藤健吾・陣内朋樹・田代まさやが騒ぐ中、あまりの恐怖に絶句していた飯島有が何かを思い出したかのように早口で言う。

「ろ、ロープウェイよ、ロープウェイのゴンドラよ。さっきの小林さんの話だとまだ二十時に出向する特別に動く最終便が残っているはずよ。今から直ぐにでもロープウェイ乗り場に行ったらまだ間に合うはずよ。みんなで早くこの山を降りましょう!」

「ああ、そうだ、そうしよう!」

「ああ、それしか無いぜ!」

 飯島有の意見に皆が賛同する中、息を引き取った管理人の小林の全身にそっと毛布を掛けた大学一年の二井枝玄がぼそりと呟く。

「みんな一緒に移動するのは余りにも危険だと思います。あの白面の鬼女と呼ばれている女が何処で俺達を待ち伏せして狙っているかが分からないんですよ。全員ゴンドラに乗ったその途中で、もしロープウェイのゴンドラを支えているワイヤーを切断でもされたらどうするんですか。ここは少数で助けを呼びに行って、後の人はここで待機をして待っていた方が無難だと思いますよ」

「何言ってんのよ、この山荘ホテルにいたらあのいかれた殺人鬼がいつまた姿を現して襲って来るか分からないのに、こんな所にいつまでも長々となんていられないわよ。私は絶対に……意地でもこの山を下りるわ!」

 その飯島有の決断に大石学部長・斉藤健吾・陣内朋樹・田代まさやが従い、まるで口裏でも合わせるかのように五人は勝手に山を下りて助けを呼びに行く事に決めたようだ。

 管理人の小林が死んだという事実は彼らにはかなり重い出来事だった用で、すぐに山を下りる決断をする。

 白面の鬼女の襲撃や死亡した管理人の小林の事で後回しになってしまったが一階で出向いていなくなった如月栄子の事を思い出す勘太郎はハッと階段の方を見る。

(そ、そう言えば一階に降りた如月栄子さんの安否を確認するのがまだだったな。まさか如月栄子さんもあの白面の鬼女に遭遇して何処かで大怪我……もしくは死亡しているんじゃないだろうな?)

「羊野、ここは登山サークルの部員達に任せて、俺達はまだ姿を見せない如月栄子さんの行方を捜すぞ!」

 嫌な予感を頭で振り払いながら叫んだ勘太郎は羊野瞑子を引き連れて再び階段を駆け下りようとしたが、その瞬間一階の方から誰かが階段を上がる複数の足音が聞こえて来る。

(一体誰だ。また白面の鬼女じゃないだろうな……)と皆が緊張しながらその足音の主に注目したが、勘太郎・羊野・大石学・飯島有・斉藤健吾・陣内朋樹・田代まさや・二井枝玄の八人の前に現れたのは、頭に怪我をした如月栄子を引き連れた一ノ瀬九郎・佐面真子・田口友子の四人だった。

 勘太郎は一ノ瀬九郎に抱えられている如月栄子の容体を目にすると大急ぎで彼女の元へと駆け寄る。

「如月さん、白面の鬼女を追いかけて行ってから何処かに消えていなくなってしまったんでかなり心配しましたよ。それに見た感じでは頭を怪我したようですが一体何があったんですか?」

「ごめんなさい、あの赤いワンピースを着た白髪の女性が妹の妖子かどうかを確認する為に一階の表玄関に飛び出して行ったんですけど、玄関の引き戸を開けて外を確認しようと思ったらだれかに後ろから頭を叩かれましてね。どうやらそのまま外で気絶をしていたみたいなんですよ」

 後ろから誰かに後頭部を叩かれて気を失っていただって……それってどう考えてもあの白面の鬼女の仕業だろう……と勘太郎は直ぐさま思ったがその事は今は口には出さない用にする。白面の鬼女の正体をもしかしたら妹の如月妖子だと信じている如月栄子に直接告げるのは何となく酷だと思ったからだ。

 まあ、どう考えてもあの白面の鬼女の正体が今現在も行方不明になっている妹の如月妖子だとは先ず考えにくいのだが……。

 勘太郎がそんな事を考えていると、続いて一ノ瀬九郎が直ぐさま話し出す。

「俺は二階にある自分の部屋でコーヒーを飲みながら今回持ってきたリュックサックの中身の装備を整理していたんだが、誰かが勢いよく階段を下ったり上がったりする音が聞こえてきたんで、何だかあまりに騒がしいと思ってな、流石に様子を見に行こうと思っていたんだよ。だが森での一見で緊張と警戒のあまりにトイレを我慢していたせいか何だか無性に大便の方がしたくなってな。仕方なく一階に降りて、一階に唯一あるトイレで用を足していたんだよ」

「確かに、この山小屋のような山荘ホテルにはトイレは一階にしかありませんからね。いちいち下に降りるのはかなり億劫ですよね。それに上に行く階段も一箇所しかないので防災の常識からしたらこの建屋は欠陥の建屋ですよ。火事にでもなったら逃げ場が無いですからね」

「まあ、昭和の初期くらいに作られた建屋らしいからな。仕方がないさ」

「昭和の初期の建屋ですか。道理で所々がボロい訳だ」

「その一階にあるトイレで約十分ほど個室に入っていた俺はお腹の中をスッキリさせてから直ぐさま三階に行こうと思っていたんだが、そこで少しだけ表玄関の引き戸が開いている事に気付いてな。何気に表玄関まで行ってその引き戸をゆっくりと開けてみたら、外で倒れている如月栄子さんを発見したんだよ。その後は、たまたま一階に降りて来た佐面や田口に声をかけて如月栄子さんをどうにか三階のみんながいる所まで運んで来たのだが……こちらはこちらで何かがあったようだな。一体何があった?」

「その階段の上がり下りをしていたのは如月栄子さんと俺と羊野です。すいません、白面の鬼女が一階の玄関先や三階の食堂に行き成り現れて、俺達は階段を行き来していたんですよ。そして不幸な事に管理人の小林さんがその白面の鬼女に殺されました」

「な、なんだって、それは本当か。俺がいない間にそんな事が起きていたのか!」

「麓へと繋がっている地中配線型の固定電話を使い、警察に連絡をしようと思ったのですが、どうやら電話線が切られているみたいで電話が繋がりません。ですので二十時に麓へと降りるロープウェイに乗って助けを呼びに行こうと思っています。そしてその役目を買って出たのが、大石学さん・飯島有さん・斉藤健吾さん・陣内朋樹さん・田代まさやさんの5名なので彼らにはロープウェイで下へと降りてもらい、助けを呼んで来て貰う事にしました」

 その勘太郎の説明に一ノ瀬九郎はただ黙って何かを考えているようだったが、そんなただならぬ様子を見ていた佐面真子と田口友子が震えた声で怖ず怖ずと話し出す。

「お、大石学部長……下へと降りられるんですか……」

 だがそんな声などは聞こえないとばかりに麓へ降りる準備を黙々とする五人の態度を見てもしかしたらこのまま見捨てられるのではないかと不安になった佐面真子は、食い下がるかのように再度言葉をかける。

「みなさん、何処へ行かれるんですか。山を下りるつもりなら私達も連れてって下さい。こんな場所に置いていかないで下さい!」

 だがそんな佐面真子の懇願するような悲痛な声にも、未知なる恐怖の為かまるで余裕の無い五人の先輩達は急ピッチでいそいそと帰りの支度を続ける。そんな卑情にも無視を続ける五人の態度に涙ぐむ佐面真子に、同じく大学一年の二井枝玄が彼女の肩を軽く掴みながら真剣な顔で言う。

「駄目だ佐面さん、絶対に彼らについて行ってはいけない。この山荘ホテルの方が絶対に安心だから、僕を信じてほしい」

 その二井枝玄の奇妙な言い回しには強い確信と意思が何故か感じ取れる。その用に勘太郎には見えた。

 つまり二井枝玄の言い回しでは、みんな一緒にロープウェイのゴンドラに乗り込むのが危険と言ってるのでは無く、遠回しにこの五人と一緒に乗ること事態が危険だと言ってる用に勘太郎には聞こえたからだ。
 この二井枝玄は明らかに勘太郎のまだ知らない何かを知っているのかもしれない。後で個別に話を聞いてみないといけないと、勘太郎は左胸ポケットに忍ばせてある分厚い黒革の手帳を取り出しながらいそいそとメモをする。

 勘太郎が自分の考えを忘れないようにメモを取っていると、今度は今まで何かを考えていた一ノ瀬九郎が皆に聞こえるように話し出す。

「探偵さん、あの五人の先輩達が麓に降りるというのなら探偵さんも一緒に同行して助けを呼んで来てくれ。恐らくその方がいいだろう!」

 何やら考え深げにいいながら頭を下げる一ノ瀬九郎に勘太郎は訪ねる。

「なぜ俺に?」

「この山を無事に降りたらあの五人の先輩達はもう二度とここには戻っては来ないだろうし、どうやら先輩達はあまりの恐怖に平常心を失っているみたいなんで警察には何も告げずにそのまま帰ってしまうかも知れない。それを防ぐ為にもここは一人、部外者でもある探偵を同行させるのが得策だと思うんですよ。見た感じでは探偵さんはあの白面の鬼女に恐れずに立ち向かえる勇気がありそうですからね」

(いいや、正直麓に降りたら俺もそのまま帰りたいんですけど……)

 そんな弱音を直ぐさま吐きたかったが、どうやら勘太郎は一ノ瀬九郎に正義感のある探偵だと思われているみたいなので、その信用を裏切らない為にもその思いには答えなけねばならない。なので仕方なく勘太郎は無言で頷く。

「あの赤いワンピースを着た白髪の女の正体が分からない以上、全員であのロープウェイのゴンドラに乗る訳には行かない。あの白面の鬼女は、俺達が全員ロープウェイのゴンドラに乗ったのを確認したら直ぐさまロープウェイのワイヤーを切断する恐れがあるからだ。だから俺と二井枝と佐面真子と田口友子……それに頭に怪我をしている如月栄子さんの五人はこの山荘ホテルに残って救助隊が来るのをひたすらに待つ事にします。恐らくその方がいいでしょう。それにこちらにはあの羊の女探偵助手さんが一緒にいてくれるだろうから、探偵さんはこちらの方は気にせずに助けを呼んで来て下さい。先輩達も探偵さんの同行を認めてくれますよね!」

「あ、ああ、そう言うことなら、俺達は別にいいぜ……」

「一ノ瀬は相変わらず俺達を信用してないな。俺達がお前達を見捨てて先に逃げる訳がないじゃないか。助けなら俺達五人が呼んで来ると言うのによ。まったく……」

「いいから早くここから出ましょうよ。こんな所には一秒だっていたくはないわ。だからここに来るのは嫌だったのよ!」

「飯島さん落ち着いて……一ノ瀬、去年の事をまだ根に持ってんのかよ。大丈夫だぜ、あの時とは状況が違うからな」

「あの時よりも状況が悪くなっているからあんた達の裏切りを心配しているんじゃないか。あの行方不明になった如月妖子さんの時のようにな!」

(なに、如月妖子だって……そこで何故如月妖子の名前が出てくるんだ。こいつらはまだ何かを隠しているのか?)

 勘太郎は一ノ瀬九郎と大石学部長からそこの所の詳しい話を聞きたかったが、もうロープウェイのゴンドラが出向する時間が迫ってきているので、話はまた後で聞く事にしたようだ。

 そんな勘太郎の思惑などは知る由もない一ノ瀬九郎は何故か迫力のある鋭い睨みを利かせながら、下へと降りる準備をする五人の先輩達を渋々と従わせる。
 どうやら大学二年の一ノ瀬九郎という人物は一癖も二癖もある先輩達がたじろぐ程の、堅物で一本気な正義感を持っているようだ。
 その山男のような大きな体を勘太郎に向けながら一ノ瀬九郎は極めて真剣な顔で言う。

「探偵さん、あんたは万が一の保険だよ。俺はここであの探偵助手さんと一緒に他の残りのみんなを守るから、あんたは確実に助けを呼んで来てくれ。麓にあるロープウェイ乗り場の機械室にこのロープウェイを動かしている従業員がいるはずだから、その人に事情を説明して警察に電話をして貰うんだ。いいな、あんただけが頼りなんだからな!」

 一体何があってそこまであの五人の先輩達を信用していないのかは知らないが、一ノ瀬九郎は全ての望みを勘太郎に託すようだ。
 だがその事で一つの疑問が残る。

 もしもあの白面の鬼女の次なる狙いが下に降りようとしている大石学・飯島有・斉藤健吾・陣内朋樹・田代まさやの五人の中にいるのだとしたら、共に同行するのは極めて危険では無いだろうか。いや、今までの話の流れからして絶対にかなりの確率で危険な気がする。

 そう考えた勘太郎は羊野瞑子に自分の代わりに麓に降りてもらい、そのまま助けを呼んで来て貰う事に決めたようだ。
 彼女ならたとえ白面の鬼女と遭遇したとしても怯える事無く容易に対峙をし、そのまま助けを呼んで来てくれると考えたからだ。

 勘太郎は態とらしく落ち着きを払いながら、あざとい自分の考えを気取られない用に話し出す。

「た、確かに俺が下に降りて助けを呼びに行く事はやぶさかでは無いが、管理人の小林さんを殺した白面の鬼女がまだこの辺りをうろついているかも知れない以上、ここに残されているみんなを置いて先に下に降りる訳には行かないな。依頼人の如月栄子さんもこの山荘ホテルに残る訳だし、俺が彼女を守らないでどうするんだよ。と言う訳で……ここは俺に変わって、我が優秀なる探偵助手の羊野瞑子にお願いをする事にするよ。ただ麓に降りて助けを呼びに行くだけならわざわざ俺が行かなくても羊野だけで十分だろ。勿論行ってくれるよな、羊野!」

 何だかもっともらしく言う勘太郎に羊野が申し訳なさそうに口を開く。

「申し訳ありません、黒鉄さん。私はこれから白面の鬼女が消えた厨房やこの山荘ホテルの周りを直ぐにでも調べようと思っていますのでここを離れる訳には行きませんわ。なので下に降りるのは黒鉄さんでお願いします」

(な、なんですとおおおおーぉぉぉう、お前、ふざけんなよぉぉぉぉ!)と言う心の叫びを全身で表現しそうになった勘太郎は、ピクピクと体を震わせながら尚も羊野に食い下がる。

「いや、しかしだね~羊野君……」

「大丈夫ですわ。あの白面の鬼女になんの考えも無しに無謀にも立ち向かえる勇気があるんですから、黒鉄さんなら、何とかしてくれると私は信じていますわ!」

「なんだよ、その奥歯に物の挟まった言い方は、詰まる話が物事をよ~く考えて常に状況を見て動けと言う事か。全くお前は嫌みな奴だぜ。お前は学校の先生か何かかよ!」

「あ、勿論私の方は大丈夫ですから、黒鉄さんは安心して助けを呼んで来て下さい」

(別にお前の心配なんかしてねえんだよ。俺の代わりにお前が言った方が絶対にいいし、あの白面の鬼女とだって戦えるから言ってんだよ。頼むから俺の代わりに下へ降りてくれええーぇぇぇ、頼むから俺の心の声に気付いてくれぇぇ!)

 そう心の中で訴える勘太郎の必死の願いなどを知ってか知らずか、羊野は笑顔を向けながら勘太郎の手を握る。

「大丈夫ですよ。あの白面の鬼女が真に狙っているのはどうやら登山サークルの部員達みたいですし、黒鉄さんが白面の鬼女の行いを阻止しなければ、彼女は黒鉄さんを無理には襲わないと思いますよ。なのでもしも白面の鬼女が現れたら全速力で逃げてください。恐らく白面の鬼女は黒鉄さんを追い掛けませんから」

「それはあの登山サークルの部員達を見殺しにしろと言う事か……」

「ええ、そう言う事です。自分の命には代えられませんからね」

「ふざけんな、そんな事が出来るか! 白面の鬼女が現れたら例え誰であろうと助けない訳には行かないだろ!」

「全く……臆病者何だか、勇敢何だか分からない人ですね。まあ、そんな黒鉄さんだからこそあの一ノ瀬九郎さんはあなたに全てを託したのでしょうね。と言う事は一ノ瀬九郎さんの目に間違いはなかったと言う事でしょうか。でもその正義感に戦う技量が伴ってはいないのですから無理はしないで下さい。無理だと思ったら本当に逃げてくださいね。人の命を助けようとして自分が死んだらなんにもなりませんからね」

(くそ、やはり俺が行く前提になっているな)

 そう思った勘太郎は今度は如月栄子の顔を見ながら羊野に言う。

「だがな~ぁ、依頼人の如月栄子さんの意見も聞いてみないと、勝手に彼女の傍を離れる訳にはいかないじゃないか」

 勘太郎は行きたくない一心で尚も子供のように抵抗を試みるが、なかなかあの羊野瞑子を黙らせる言い訳が思いつかない。

 その時、勘太郎と羊野の問答に業を煮やしたのか、いつの間にか後ろにいた陣内朋樹と田代まさやに勘太郎は両腕をガッシリと捕まれる。
 
 どうやら早く下へ降りたいとせがむ飯島有の以降で強制的に勘太郎を連行しに来たようだ。

「では、行きますか」と問答無用で引きずられていく中で勘太郎は叫ぶ。

「ま、まて、待ってくれ。俺は依頼人の如月栄子さんを傍で守らねばならないんだ。その俺がこの場からいなくなってもいいというのか!」

 そのもっともらしい叫びに応えるかのように話を聞いていた如月栄子が怪我をした頭に手を当てながら和やかに微笑む。

「安心して行って来て下さい、黒鉄の探偵さん。今日は何だかいろんなことがあり過ぎて疲れましたので、今夜は部屋でゆっくりと休みたいと思いますわ。それに部屋には鍵も掛けてありますし、プッシュフォン機能もある見たいですから、部屋の中から返事も返せるみたいです。なので私の事は気にせずに助けを呼んで来て下さい!」

 如月栄子のその言葉で下へと降りる事が決定してしまった勘太郎は、陣内朋樹と田代まさやの二人に半ば強制的に引きずられながらロープウェイ乗り場の方へと連行されようとしている。

「探偵さん。如月栄子さんの承諾も得たんで、もう心残りは無いですよね。そろそろロープウェイのゴンドラが下る二十時になりそうなんで、お早めにお願いします。フフフッ!」

「さあ、一緒に山を下りましょうよ、探偵さん。助けを呼びに行くんですよね。もう他の大石学部長・飯島有先輩・斉藤健吾先輩の三人はロープウェイ乗り場の方に向かいましたよ。なので探偵さんも急いでください。一体何がそんなに不満なんですか。俺達と一緒に短いゴンドラでの遊泳を楽しみましょうよ。クククッ!」

 陣内朋樹と田代まさやの二人の悪魔のような囁きと強引な力に、勘太郎は半ば連行される宇宙人のように引きずられて行く。

(た、助けを呼びに行くどころじゃねーよ。お前らと一緒にいると、この俺も漏れなくあの白面の鬼女の標的にされて、地獄の一丁目にご案内されるかも知れないんだよ。お前らあの白面の鬼女に一体どんな恨みを買っているんだよ。あの白面の鬼女がその麓にもいたらどうするんだよ。俺一人じゃとてもじゃないが対峙は出来ねえよ。ならせめて俺の部屋に戻らせてくれ。部屋に戻ったら、恐らくは俺のリュックの中に黄木田店長が持たせてくれた、あの円卓の星座の狂人に対抗できる唯一の武器でもある黒鉄の拳銃があるはずだから。先ずはそれを取りに行かせてくれ。嫌だ、なんの対策も無しに下に降りるのは嫌だ。丸腰は嫌だ!)

 本当は心の底からそう絶叫したかったが、登山サークルの部員達があの白面の鬼女の標的になっているかどうかはまだ憶測と疑惑の段階なので流石に言葉には出来ず。黒鉄の拳銃の武器の使用も弾が強化ゴム弾とはいえハタから見たらただの違法改造銃なので、その銃刀法違反の違法武器を所持させてくれとは流石に言えない勘太郎は仕方なくそれらの言葉を深く飲み込みながらロープウェイ乗り場の方へと向かうのだった。
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