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『第2の街シドネス』

20.クエスト『あの場所へと至る道』

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「なぁ、どこに行くんだ?」

 俺は下にいる子鯨に話しかける。

 子鯨はまるで応答するかのように、尻尾で海原を叩き水柱を発生させる。そしてその水柱はそのまま子鯨の身体に直撃する。もちろん俺は子鯨に乗っているので海水を浴びた。

「これ何度目だろうなぁ…」

 がぶりと林檎に齧り付き、竿の引き具合を確認しながら俺は呟いた。


 * * * * * * * * * * * * *


 子鯨は大分弱っていたが、ポーションを一定時間ずつ与えていったらかなり元気になった。浜辺に打ち上げられていたからどうしようかと思ったが、それも自分で海に戻れたからよかった。

 この子鯨を調べるとどうやら名前がある様だった。詳しく調べていくと、こんな表示が出てきた。


≪種族名:鯨(子) 個体名:ルー 性別:♂≫


 名前はルーと言うらしい。試しに呼んでみたら、こちらに近寄ってきて擦り寄られた。可愛いなぁ…

 そんなこんなで結構触れ合っていると、突然目の前にメッセージウィンドウが出現した。


≪個体名ルーのノアへの好感度が一定に達しました。親愛度へと変化します。≫
≪条件の達成を確認。クエスト『あの場所へと至る道』が解放されました。≫
≪クエスト『あの場所へと至る道』を受けますか? ►Yes No ≫


 ……良く分からんが、なんか条件を達成したらしい。
 ルーが擦り寄って来る中、俺はシステムウィンドウをじっと見つめた。

「……受けるか」

 別に受けない理由もないし、クエストを受けることにした。

 Yesを選択っと。


≪Yesが選択されました。クエストを開始します。≫
≪条件クエスト受理ボーナスをお受け取り下さい。≫
≪【林檎】×10【串焼き】×10【カロリーブロック】×10【飲料水】×10【自由変換飲料】×10【誰でも簡易《料理》道具】【調味料フルセット】【一時帰還玉】≫


 何でこんなに食料品ばっかりなんだ……まあ、あって困るものじゃないから良いんだけど…

 クエストを受けたは良いが、これからどうしたら良いんだろう?そんなことを考えていると、ルーが尻尾で俺の肩を叩いた。

 どうやら自分に乗れ、と言う事らしい。なに、そういうクエストなの?
 いったい乗ることにどういう意図があるのかは、定かでは無いがこのままでは埒が明かないので、素直に従う事にした。




 そして、最初に戻るという訳だ。

 ルーは俺を乗せたまま、大海原を泳ぎだした。多分、すぐどっかに上陸できるだろと思っていたのだが、一向に陸は見えない。とっても暇である。

 暇だったので、【フロッグプレイサーの骨】と【蜘蛛糸】、【鉄インゴット】を少々加工して、釣り針の形にして、【骨の釣り竿】を作ってみた。

 んでもって、釣り針に肉付けて釣りをしているわけだ。ちなみに《釣り》スキルを取った。これが無きゃ、釣りができなかったからな。スキルポイント15も減った。案外使うんだな…

「あー、暇だなぁ」

 全く引きがない釣り竿を見つめながら、また林檎に齧り付いた。


 暇すぎたので、スキルとアーツの特訓をすることにした。と言っても、あんまし動かない奴だけだ。

 まずは《視覚強化》。ずっと全力で発動させてみた。眼が段々熱くなって、何も見えなくなった。しばらくしたら視界が回復した。スキルレベルがかなり上がっていた。

 次に《隠蔽》。5秒が過ぎても発動し続けてみた。とんでもない事が起きた。HPが8割一気に減少して、〔感電〕の状態異常に陥った。それに加えて、1時間スキル使用不可能だ。ペナルティが重いとは聞いていたがこれほどとは思わなかった。

 盗賊アーツの〈灯火〉の熟練度上げもした。〈灯火〉とは人差し指に小さな炎を出現させるアーツだ。1時間近くずっと発動させていた。熟練度がⅣになった。

 と、そんなことをしているとやっと竿に反応があった。引いてみると、小さな魚が釣れていた。よし、やっと1匹目だ。

 その魚が釣れた後から、どんどんと釣れるようになった。大儲けである。こんなに大漁なんだから一度魚を焼いてみることにした。

 《鍛冶》で使う耐熱布を下にひいて、【誰でも簡易《料理》道具】を使う。このアイテムの説明文を見ると、焼くと煮るの”簡単”な料理だけなら《料理》スキルが無くても作れるようになるらしい。貴重なアイテムだ。

 俺は〈灯火Ⅳ〉でコンロに火をつける。最大火力にすると、焚火レベルの大きな炎になった。俺は釣った魚の腹をダガーで切り、中の内臓を取り出した。簡単に塩を振りかけ、炎で焼いた。

 しばらくすると、完成した。アイテム名は【塩焼き魚】だ。齧り付くと、塩が良い感じに効いていて美味しかった。残りの魚も全部焼いてしまおうかと思ったが、ルーが食べたいそうなので、口に放り込んでやった。

 嬉しそうに口を動かしていた。それにしてもまだ陸に着かないのか…。

 暇すぎたので、肉系アイテムを焼き焼いたり、釣りをしまくった。スキルとアーツの特訓もしたし、とうとう《遊泳》スキルもとって、海を泳いだ。ルーが何だか嬉しそうだった。

 結局《遊泳》スキルを取ってしまったが、泳ぐのはすごく気持ちがよかった。海の中で、《闇魔法》と《短剣》、《体術》などの特訓も出来た。

 そんなことをしながら海原をずっと進んでいると、突然ルーの進行が停止した。

「どうした?なんかあったか?ルー」

 俺がそう問いかけるとルーは突然、海の奥底へと潜りだした。

「へっ!?ちょ、ちょっとま――――」

 ルーの唐突な奇行に対応できず、俺は海に落ちた。《遊泳》スキルのレベルを上げていた為、すぐに体勢を立て直すことに成功したが、何で急に潜ったりなんか…

 俺は、ルーが潜っていった海底を見る。するとそこには―――――、


 光輝く不思議なドーム型の何かが存在していた。


(なんだ…あれ…)

 心の中で呟く。もう少ししっかり見ていたかったが、息がそろそろ続かなくなってきたので一度浮上する。すぐにまた潜ると、ドームのすぐ近くでルーがこちらも見ている。待っているのだろうか。

 あの不思議なドームが何なのかは全く分からない。だが、何かある。そんな気がしたのだ。それにどうせこんな場所に居ても、何も変わらないしな。

 《遊泳》スキルを駆使し、その不思議な何かへと近づいていく。早くしなくては息が持たない。しかしそんな努力虚しく、息は持たなかった。少しずつHPが減り始める。

 ――――残り90%

 ――――残り80%

 ――――残り70%

 ――――残り60%

 ――――残り50%

 着々とHPは酸欠により減っていく。

 しかしあと20%のところでどうにかドーム型の何かに触れることが出来た。触れたからと言ってどうにかなるわけだも無いんだが……そう思った直後――――――、

 ―――――俺は真っ逆さまに落ちていた。
 ドーム型の何かに触れて、身体全てがドーム内に入ったのだ。そうしたら落ちた。うん、意味が分からないと思う。悪いが俺も分からない。

 HPがもう減っていないことから考えるにどうやらこの中は、少なくとも海ではないらしい。でもどういう事だろう。魚は泳いでいる。俺が落ちている中、悠々と遠くのドーム内で泳いでいる。

 落下中、そんなことを考えていた。

 そして―――――、

「え、あれ人魚!?」

 その言葉を発した瞬間、ぷつっと意識が途絶えた。

 ノアの意識が完全に途絶えた後、ポーン!と言う音と共に、新エリア読み込みが行われた。読み込みが終わり、ノアの前にはこんなメッセージウィンドウが出現していた。


≪深き海『アクアリウム』≫


≪特殊エリアの発見おめでとうございます。『ノア』様≫
≪この情報を全プレイヤーに公開しますか?≫
≪お選びください。 ▶Yes  No    ≫


 * * * * * * * * * * * * * 


 ノアの周りには人だかりが出来ていた。

「ねぇ、この子何かな?」

「しらなーい、どこから迷い込んだんだろ」

「はいはい皆どいて、一回運ぶから」

「運ぶってどこによ?」

「ポセイドン様の宮殿よ」

「え!?なんで!?」

「ポセイドン様が見たいんだって、ルーちゃんを助けた子を」

「ルー見つかったの?」

「ええ、なんでもこの子が助けてくれたらしいわ」

「へぇ~、じゃあ歓迎しなくちゃね」

「そうよ、料理できる子は宮殿に集まって頂戴」

「「「はーい」」」

「『はい』は伸ばさない!」

「「「はーい」」」

「だから…はぁ、もういいわ。じゃあともかく宮殿に集まってね。配膳係も必要だから皆もよ」

「「「はーい」」」

「―――――」


プレイヤー:ノア
【スキル一覧】
《短剣》Lv60(↑8UP)《体術》Lv70(↑8UP)《闇魔法》Lv42(↑6UP)
《盗賊》Lv62(↑9UP)《隠蔽》Lv56(↑10UP)《視覚強化》Lv71(↑21UP)
《立体機動》Lv58(↑1UP)《鍛冶》Lv24(↑1UP)
《釣り》Lv39(↑38UP)(New!)《遊泳》Lv42(↑41UP)(New!)

控えスキル
《調薬》Lv20《採掘》Lv10

スキルポイント:119

【二つ名】
終焉スキラー

【称号】
失敗の経験者・因縁を果たす者・真実を知る者・大罪確定者




* * * * * * * * * * * * * 

 《釣り》
釣り竿を扱えるようになる。
山越え谷越えどこまでも。釣り竿片手に大物狙い。
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