21 / 40
『第2の街シドネス』
20.クエスト『あの場所へと至る道』
しおりを挟む「なぁ、どこに行くんだ?」
俺は下にいる子鯨に話しかける。
子鯨はまるで応答するかのように、尻尾で海原を叩き水柱を発生させる。そしてその水柱はそのまま子鯨の身体に直撃する。もちろん俺は子鯨に乗っているので海水を浴びた。
「これ何度目だろうなぁ…」
がぶりと林檎に齧り付き、竿の引き具合を確認しながら俺は呟いた。
* * * * * * * * * * * * *
子鯨は大分弱っていたが、ポーションを一定時間ずつ与えていったらかなり元気になった。浜辺に打ち上げられていたからどうしようかと思ったが、それも自分で海に戻れたからよかった。
この子鯨を調べるとどうやら名前がある様だった。詳しく調べていくと、こんな表示が出てきた。
≪種族名:鯨(子) 個体名:ルー 性別:♂≫
名前はルーと言うらしい。試しに呼んでみたら、こちらに近寄ってきて擦り寄られた。可愛いなぁ…
そんなこんなで結構触れ合っていると、突然目の前にメッセージウィンドウが出現した。
≪個体名ルーのノアへの好感度が一定に達しました。親愛度へと変化します。≫
≪条件の達成を確認。クエスト『あの場所へと至る道』が解放されました。≫
≪クエスト『あの場所へと至る道』を受けますか? ►Yes No ≫
……良く分からんが、なんか条件を達成したらしい。
ルーが擦り寄って来る中、俺はシステムウィンドウをじっと見つめた。
「……受けるか」
別に受けない理由もないし、クエストを受けることにした。
Yesを選択っと。
≪Yesが選択されました。クエストを開始します。≫
≪条件クエスト受理ボーナスをお受け取り下さい。≫
≪【林檎】×10【串焼き】×10【カロリーブロック】×10【飲料水】×10【自由変換飲料】×10【誰でも簡易《料理》道具】【調味料フルセット】【一時帰還玉】≫
何でこんなに食料品ばっかりなんだ……まあ、あって困るものじゃないから良いんだけど…
クエストを受けたは良いが、これからどうしたら良いんだろう?そんなことを考えていると、ルーが尻尾で俺の肩を叩いた。
どうやら自分に乗れ、と言う事らしい。なに、そういうクエストなの?
いったい乗ることにどういう意図があるのかは、定かでは無いがこのままでは埒が明かないので、素直に従う事にした。
そして、最初に戻るという訳だ。
ルーは俺を乗せたまま、大海原を泳ぎだした。多分、すぐどっかに上陸できるだろと思っていたのだが、一向に陸は見えない。とっても暇である。
暇だったので、【フロッグプレイサーの骨】と【蜘蛛糸】、【鉄インゴット】を少々加工して、釣り針の形にして、【骨の釣り竿】を作ってみた。
んでもって、釣り針に肉付けて釣りをしているわけだ。ちなみに《釣り》スキルを取った。これが無きゃ、釣りができなかったからな。スキルポイント15も減った。案外使うんだな…
「あー、暇だなぁ」
全く引きがない釣り竿を見つめながら、また林檎に齧り付いた。
暇すぎたので、スキルとアーツの特訓をすることにした。と言っても、あんまし動かない奴だけだ。
まずは《視覚強化》。ずっと全力で発動させてみた。眼が段々熱くなって、何も見えなくなった。しばらくしたら視界が回復した。スキルレベルがかなり上がっていた。
次に《隠蔽》。5秒が過ぎても発動し続けてみた。とんでもない事が起きた。HPが8割一気に減少して、〔感電〕の状態異常に陥った。それに加えて、1時間スキル使用不可能だ。ペナルティが重いとは聞いていたがこれほどとは思わなかった。
盗賊アーツの〈灯火〉の熟練度上げもした。〈灯火〉とは人差し指に小さな炎を出現させるアーツだ。1時間近くずっと発動させていた。熟練度がⅣになった。
と、そんなことをしているとやっと竿に反応があった。引いてみると、小さな魚が釣れていた。よし、やっと1匹目だ。
その魚が釣れた後から、どんどんと釣れるようになった。大儲けである。こんなに大漁なんだから一度魚を焼いてみることにした。
《鍛冶》で使う耐熱布を下にひいて、【誰でも簡易《料理》道具】を使う。このアイテムの説明文を見ると、焼くと煮るの”簡単”な料理だけなら《料理》スキルが無くても作れるようになるらしい。貴重なアイテムだ。
俺は〈灯火Ⅳ〉でコンロに火をつける。最大火力にすると、焚火レベルの大きな炎になった。俺は釣った魚の腹をダガーで切り、中の内臓を取り出した。簡単に塩を振りかけ、炎で焼いた。
しばらくすると、完成した。アイテム名は【塩焼き魚】だ。齧り付くと、塩が良い感じに効いていて美味しかった。残りの魚も全部焼いてしまおうかと思ったが、ルーが食べたいそうなので、口に放り込んでやった。
嬉しそうに口を動かしていた。それにしてもまだ陸に着かないのか…。
暇すぎたので、肉系アイテムを焼き焼いたり、釣りをしまくった。スキルとアーツの特訓もしたし、とうとう《遊泳》スキルもとって、海を泳いだ。ルーが何だか嬉しそうだった。
結局《遊泳》スキルを取ってしまったが、泳ぐのはすごく気持ちがよかった。海の中で、《闇魔法》と《短剣》、《体術》などの特訓も出来た。
そんなことをしながら海原をずっと進んでいると、突然ルーの進行が停止した。
「どうした?なんかあったか?ルー」
俺がそう問いかけるとルーは突然、海の奥底へと潜りだした。
「へっ!?ちょ、ちょっとま――――」
ルーの唐突な奇行に対応できず、俺は海に落ちた。《遊泳》スキルのレベルを上げていた為、すぐに体勢を立て直すことに成功したが、何で急に潜ったりなんか…
俺は、ルーが潜っていった海底を見る。するとそこには―――――、
光輝く不思議なドーム型の何かが存在していた。
(なんだ…あれ…)
心の中で呟く。もう少ししっかり見ていたかったが、息がそろそろ続かなくなってきたので一度浮上する。すぐにまた潜ると、ドームのすぐ近くでルーがこちらも見ている。待っているのだろうか。
あの不思議なドームが何なのかは全く分からない。だが、何かある。そんな気がしたのだ。それにどうせこんな場所に居ても、何も変わらないしな。
《遊泳》スキルを駆使し、その不思議な何かへと近づいていく。早くしなくては息が持たない。しかしそんな努力虚しく、息は持たなかった。少しずつHPが減り始める。
――――残り90%
――――残り80%
――――残り70%
――――残り60%
――――残り50%
着々とHPは酸欠により減っていく。
しかしあと20%のところでどうにかドーム型の何かに触れることが出来た。触れたからと言ってどうにかなるわけだも無いんだが……そう思った直後――――――、
―――――俺は真っ逆さまに落ちていた。
ドーム型の何かに触れて、身体全てがドーム内に入ったのだ。そうしたら落ちた。うん、意味が分からないと思う。悪いが俺も分からない。
HPがもう減っていないことから考えるにどうやらこの中は、少なくとも海ではないらしい。でもどういう事だろう。魚は泳いでいる。俺が落ちている中、悠々と遠くのドーム内で泳いでいる。
落下中、そんなことを考えていた。
そして―――――、
「え、あれ人魚!?」
その言葉を発した瞬間、ぷつっと意識が途絶えた。
ノアの意識が完全に途絶えた後、ポーン!と言う音と共に、新エリア読み込みが行われた。読み込みが終わり、ノアの前にはこんなメッセージウィンドウが出現していた。
≪深き海『アクアリウム』≫
≪特殊エリアの発見おめでとうございます。『ノア』様≫
≪この情報を全プレイヤーに公開しますか?≫
≪お選びください。 ▶Yes No ≫
* * * * * * * * * * * * *
ノアの周りには人だかりが出来ていた。
「ねぇ、この子何かな?」
「しらなーい、どこから迷い込んだんだろ」
「はいはい皆どいて、一回運ぶから」
「運ぶってどこによ?」
「ポセイドン様の宮殿よ」
「え!?なんで!?」
「ポセイドン様が見たいんだって、ルーちゃんを助けた子を」
「ルー見つかったの?」
「ええ、なんでもこの子が助けてくれたらしいわ」
「へぇ~、じゃあ歓迎しなくちゃね」
「そうよ、料理できる子は宮殿に集まって頂戴」
「「「はーい」」」
「『はい』は伸ばさない!」
「「「はーい」」」
「だから…はぁ、もういいわ。じゃあともかく宮殿に集まってね。配膳係も必要だから皆もよ」
「「「はーい」」」
「―――――」
プレイヤー:ノア
【スキル一覧】
《短剣》Lv60(↑8UP)《体術》Lv70(↑8UP)《闇魔法》Lv42(↑6UP)
《盗賊》Lv62(↑9UP)《隠蔽》Lv56(↑10UP)《視覚強化》Lv71(↑21UP)
《立体機動》Lv58(↑1UP)《鍛冶》Lv24(↑1UP)
《釣り》Lv39(↑38UP)(New!)《遊泳》Lv42(↑41UP)(New!)
控えスキル
《調薬》Lv20《採掘》Lv10
スキルポイント:119
【二つ名】
終焉スキラー
【称号】
失敗の経験者・因縁を果たす者・真実を知る者・大罪確定者
* * * * * * * * * * * * *
《釣り》
釣り竿を扱えるようになる。
山越え谷越えどこまでも。釣り竿片手に大物狙い。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,073
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる