おひとよしシーフ(Lv99)による過去改変記

Imaha486

文字の大きさ
178 / 209
第十二章 偉大なる魔王オーカ様

178-歴史観

しおりを挟む
 魔王から直々に史実を聞かされたものの、当のライナス殿下はあまり納得できていない様子だった。

「それで闇の女王は自身を魔王と名乗り、世界に宣戦布告、か。……もしや、助けた魔女から渡されたのは呪いの首飾りで、貴様の祖先が騙されただけではないのか?」

『正直なところ、我もそれは否定しきれぬ』

 そう言いながらも、オーカは無表情のまま祖先の記録の続きを読み上げた。

『真なる悪を打ち倒すべく宣戦布告する否や、この世界の全ての空へ巨大な神託が現れた……とある』

「!?」

『神託の内容は至って単純。世界の平穏を乱す闇の世界の魔王を、全て種族で力をあわせて打ち倒せ! ……とな。結果、闇と光との長きに渡る戦いが始まったわけじゃな』

「なんということだ……」

 ライナス殿下が愕然とした様子でうなだれた。

『魔女の出現と提言。神による我ら魔族の殲滅せんめつ要求。そして我が祖先の能力によって予言した世界の終わり……。そこに隠された目的や真意なんぞ知る由も無かろう。我らに出来ることは、迫り来る脅威を蹴散らし、自らの力で未来を掴み取ることだけぞ!!』

 力強く宣言したオーカは、少しだけ疲れた様子で溜め息を吐きつつ、窓の外に広がる聖王都の街並みへと目をやる。
 その表情はとても優しいもので、世界を滅ぼす魔王というよりも、まるで幼子を見守る母のよう。
 ところが、二人の会話を聞いていたサツキはキョトンと首を傾げながら、俺に話しかけてきた。

「ねーねー、おにーちゃん。お母さんの持ってた本には、平和だった世界に闇の魔王が襲ってきた~、みたいなコト書いてなかったっけ? だけどオーカちゃんの話じゃ、もともと世界中で戦争してた~って言ってるし、なんだか話が違うくない???」

「確かにな」

 サツキの言うとおり、俺達が学んだ歴史とオーカの話とではかなり違いがある。
 兄妹の話を聞いて、ユピテルも挙手してきた。

『オイラの村の言い伝えもちょっと違ってるよっ。魔王の放ったイフリートに森を焼かれて故郷を失って、ようやく戻ってきて村を再興しようとした矢先に人間とケンカし始めた~って話だったし。その前から争ってたなんて、聞いたこともない』

 ユピテルは聖王都近くのエルフ村の出身だけども、そちらもそちらで俺達とは異なる歴史観があるらしい。
 そんなこんなで我ら平民があれやこれやとボヤいていると、オーカはクククと再び悪党っぽく笑った。

『そんなもん、時の権力者が都合良くでっち上げたに決まっておろう。我らを絶対的な悪として仕立てて共通の敵にしておかねば、また争い事を起こしかねんからな』

「魔王が言うと説得力がヤバいな……」

 ズバズバとオーカに言われてしまい、現在進行形で我が国の権力者たるライナス殿下やプリシア姫が、ばつが悪そうに頭を抱えているのが何とも印象的だ。
 おそらくオーカの言ったことは事実で、王族達にとっては周知の事実だったのだろう。

『そして、我らが絶対悪として世に君臨してから百有余年。お前達は我らと対等に戦うほどの力を得て、もう十分に強くなった。特に近年は凄まじい成長ぶりじゃのー』

「……確かにな」

 ライナス殿下はそう答えながら俺達へと目を向け……唐突に笑い出した。

「というより、カナタ達がおかしいだけだろう?」

『うむ』

「???」

 俺とエレナが首を傾げていると、ライナス殿下は懐からいくつかの封書を取り出してテーブルへ置いた。
 いずれも上質な紙が使われており、差出人は……

「南のジェダイト、西のフロスト、さらに東方の国ヤズマト……。ここに置いた親書はいずれもそれらの国の王族から届いたものだ。しかも驚くことに、いずれも共通して、同じ内容が書かれていたぞ」

「同じ内容……?」

「……突如現れたプラテナ国の冒険者によって、未曾有みぞうの危機から救われた、とな」

「!」

 驚きに目を見開く俺を見て殿下は鼻で笑い飛ばしつつ、さらに言葉を続ける。

「しかも対立関係にあるジェダイト国に至っては、ライカ王子自ら直筆で寄越す始末だ。その内容は親書というよりも、まるで恋文のごとく敬愛の言葉だらけでな。親愛なるカナタ先生・・、カナタ先生~とな。……本当、お前達兄妹きょうだいはまったく節操なしにもほどがある」

「!?!?!?」

 まさかのサツキと同類呼ばわりを受けて俺が困惑していると、当のサツキがニヤニヤ笑いながら、俺の肩をべしべし叩いてきた。

「すごいねー、ライカちゃんから熱いラブレターもらっちゃうなんてね~。ひゅーひゅー……いてっ」

 茶化してくるサツキに一発チョップを入れておく。

『それどころか、こやつらは巨人を呼び出す魔石を全て無力化したうえ、我が直属の配下たる四天王のうち二名を易々と倒しおった。しかも、セツナに至っては不意打ちで後ろから一撃くらわせたと聞いておるし。その状況から協力関係となって、巨人召喚コアを破壊するなんぞ、まったくデタラメにも程があるぞ』

「セツナさんはどちらかというと利害が一致しただけというか、あのひとが勝手に酔っ払って勝手に倒されただけというか……」

 と、俺がぼやいた瞬間にオーカが邪悪な笑みを浮かべた。

『ほう、利害とな。お主とセツナとで、どんな利と害があったのじゃ? 詳しく言ってみるがよい』

「うっ!」

 気づけば外堀を埋められていた。
 王族二人に迫られている理由はつまり……。

『我がこれだけ手の内を明かしたのじゃから、お主達も洗いざらい吐くのが道理というものであろう?』

「あーー……」

 オーカにキッパリと言われてしまって、俺は頭を抱えるしかない。
 ふとエレナに目を向けると、苦笑しながら『仕方ないですねぇ~』みたいな顔をしていて、なんとも情けないやら。

「分かった。俺の知ってる情報も出すよ……」
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ! 東京五輪応援します! 色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

戦国鍛冶屋のスローライフ!?

山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。 神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。 生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。 直道、6歳。 近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。 その後、小田原へ。 北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、 たくさんのものを作った。 仕事? したくない。 でも、趣味と食欲のためなら、 人生、悪くない。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...