僕とあの子と一ヶ月

黒沢ハコ

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馴れるまでの一週目

一つでも

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それから数日したある日、
レイは、僕の手を引いて外にいった。
レイは最近、外で遊ぶことが多くなった。
きれいになった庭で、
楽しそうに走り回っていた。
それに合わせてビーも、飛び回っている。
「なに、レイ?」
レイは、裏庭に僕を引っ張っていった。
どこにつれていくつもりだろう。
レイはずっと、ニヤニヤと笑っていた。
こういうとき話せないから、困る。
「どこまでいくのー?」
そういったとき、レイは、ピタリと止まった。
それから、
足元にあった小さな穴のなかにはいった。
ついてこいってことかなぁ。
僕は、体をねじって穴のなかにはいった。
「レイ!レイ!」
ビーが、さけんだ。
穴から出ると、強い日差しを感じた。
どうやらここは、日が入りやすい場所らしい。
やっと視界がなれてきた頃、僕は、
感嘆の声をあげた。
「すごい!」
辺り一面、カラフルな花だらけだった。
鮮やかなものから、不思議な形のもの。
大小様々だった。
「ここ、なに?」
こんな場所あったんだ。
僕は、周りをぐるりと見渡した。
本当にきれいだ。
花の葉っぱが光を反射し、 
キラキラと輝いていた。
なんだか、懐かしい気がした。
クイクイ 
レイは、両手を腰につけて胸を張っていた。
すごいでしょ?
そういってるみたいだった。
「すごいね!」
僕は、レイの頭を撫でる。
僕らは一旦家に戻り、お昼をもってまた、
ここに戻ってきた。
ほんのりと香る甘い花の香りのなか、
僕たちはお昼を食べた。
そのあとは、各自好きなことをしていた。
ビーは、日の当たる場所でお昼寝をし、
レイはえんぴつと白い紙で絵を描き、
僕はあの部屋の本を読んでいた。
あの部屋の本は、
僕が読めるものがたくさんあった。
読めない時もあるが、
雰囲気で何となくわかった。
はじめは、優しい話ばかり読んでいたが、
今はミステリーをよんでいる。
いろんな秘密があって、
それをときながら読むのがとてもおもしろい。
時が、静かにすぎていった。
ビーの吐息と、レイの鉛筆が紙に擦れる音と、
僕の本をめくる音。
そして、それを伝えてくる心地のよい風。
ずっと、続けばいいと思った。
だけど、その静寂を破ったのは僕だった。
「えっ」
僕は、とても驚いた。
だけどすぐに、「大丈夫」といった。
僕は、本のページをめくった。
『なにもないな』
一人が言う。
真っ暗な細長い廊下。
床にはカーペットが敷き詰められていて、
ドアがありそうなと頃にあるのは、壁だけ。
みんなが戻ろうとしているなか、
たった一人だけ、その場所に立ち止まった。
そして、こう書いてある。
『男は、壁のすみにたったと思ったら、
いきなりカーペットをつかみ、目繰り出した。
そして、我々の前にひとつ、扉が現れた』
カーペットのしたに扉......
僕は、可能性はあると思った。
カーペットて入り口を隠すぐらいだ。
きっとそこに、何かあるに違いない。
そう思って僕は、本を閉じた。
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