俺の彼女記録

黒沢ハコ

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俺の彼女の対処法

お疲れ様

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「ただいま......」
ある日、俺がとなりに住む彼女の家に
お裾分けの桃を持っていった日のことだ。
彼女の好物である桃は、
癒しがほしいときのアイテムである。
桃をみればすぐに、
満面の笑みの彼女がみれるのだ。
しかし......
まだ、学校から帰っていないと......
俺が帰ろうとしたその時
「ただいまぁ......」
彼女が帰ってきた。
「お帰り~」
俺がそういうと、ん、とだけ返事をして、
ソファーに座り込んだ。
おばちゃんは用事で、
「まかせた!」といって出てってしまった。
さて、どうしたものか。
彼女は、ソファーに横たわりびくともしない。
「桃食べる?」
と聞いても、ん、としか答えない。
もうすぐ文化祭。
彼女のことだからきっと、
休日だというのに朝から出掛けて、
周りのあれこれを、手伝ったのだろう。
長時間集中して、疲れが限界まで来た。
「はぁ~」
俺は、台所にたつ。
さっき持ってきた桃を二、三個むいて、
お皿とフォークをもって彼女のところへ。
「ほら、ほら」
グデーンとした彼女を無理矢理おこし、
俺の前に座らせた。
身長差がかなりあるから、
彼女にとって俺は、ソファーみたいなもんだな。
「ほれ、口開けて」
フォークで桃をさし、
彼女の口許へ運ぶと、パクリ。
また運んで、パクリ、パクリ......
「うまいか?」
コクコクと、彼女はうなずき、
その目から涙がポロポロ。
「あぁ、よしよし。
よくやった、偉いよ。
お疲れ様」
そういって頭を撫でると、彼女は抱きついて
「......んがと......」
「おう」
やっと、声が聞けた。
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