社長の×××

恩田璃星

文字の大きさ
3 / 131

社長の…愛人?3

 社長の背中を見送る、課長の顔をチラリと盗み見る。

 心配そうな、それでいて慈しむような眼差しが、課長の想いを語っているように見えた。

 無関係の私が見ても分かるくらいに。

 もうこの時点でほとんど確信していた。
 課長と社長のただならぬ関係。

 このまま秘書課での仕事を始めたら、二人の不倫の片棒を担がされてしまうかもしれない。
 だけど、私はどうしてもそれだけはできない。

 真相を確認するために退職も辞さない覚悟で、震える唇を動かした。


 「嘘…ですよね?」

 「…何が?」

 「あの、社内で流れている…噂」

 「噂?」

 「しゃ、社長と課長が特別なかん、けいっていう噂…」


 激しい動悸に、言葉の切れ目じゃないところで喉が鳴って、可笑しくもないのにい語尾に「ハハハッ」と乾いた笑いを付け足してしまった。




 すると、課長はさっきと同じ意味あり気な笑みを浮かべ、さっきと同じように答えを曖昧にするのかと思わせた後、

 「嘘じゃないよ」

と、はっきり言った。

 「え...?」

 「だから、俺と社長は君たちの想像どおり『な関係』だって言ったんだけど?」

 微塵も罪悪感なんて抱いてない。
 それどころか口許にも目許にも笑みすらたたえて。

 そんな顔をして社長との不適切な関係を明かして来る無神経さに、

 「じ、自分のせいで傷つく人が居ても何とも思わないんですか!?」

 つい声が大きくなった私に、課長は表情を崩すどころか目尻のシワをより深くした。

 「私にはこんな環境で仕事をするなんて、絶対に無理です」

 私は勢いに任せてそう言って、さっき課長が私の鞄とコートをしまってくれたロッカーの扉を開けた。

 その瞬間私の肩の後ろからヒュッと伸びてきた課長の手が

バンッ

 という衝突音をさせてロッカーの扉を元の位置に戻した。

 「今の...どういう意味?」

 背後に立つ課長は、私の体に触れるか触れないかギリギリの距離を保ったまま、ゆっくりと唇を私の左耳に寄せて聞いてきた。

 甘くて低い声と、吐息に、背中がゾクゾクする。

 「こ、言葉のとおりです。お二人の関係を知ってしまった以上、私はここでは働けません」

 「どうして?」

 「それは…言いたくありません」

 「真田さんって、まさか俺のこと好きとか?社長と俺が特別な関係だから働けないってそういうこと?」

 あまりに的外れな質問に、理解するまで少し時間がかかった。

 「なっ!?自惚れないでください!私、不倫するような男の人なんて絶っっ対に好きになりません!」

 「へぇ。もしかして悪い男に結婚していることを隠して付き合われたとか?」

 「それも違います!」

 「…なら何で?」

 「それは…」

 「…理由によっては総務部に戻してあげてもいいけど?」
感想 16

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

溺愛のフリから2年後は。

橘しづき
恋愛
 岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。    そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。    でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?

【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―

七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。 彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』 実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。 ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。 口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。 「また来る」 そう言い残して去った彼。 しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。 「俺専属の嬢になって欲しい」 ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。 突然の取引提案に戸惑う優美。 しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。 恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。 立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。

『冷徹社長の過剰な健康管理が甘すぎます!~有能秘書は24時間、胃袋から愛を注がれる~』

kirisu
恋愛
【あらすじ】 完璧な仕事ぶりで冷徹社長・神崎を支える秘書の琴音。しかし連日の激務が祟り、ついに社長室で倒れてしまう。目を覚ますと、そこは神崎の高級マンションだった。「君の体調管理も上司の責任だ」と言い放つ神崎は、なぜか自らエプロンを着け、手作りの完全栄養食で琴音を餌付けし始める。 さらにスマートウォッチを着けられ、睡眠や心拍数まで24時間監視されるハメに!「健康管理」という名目で始まる、過剰すぎるスキンシップと甘やかし。冷徹なはずの社長による、胃袋からの完全包囲網から琴音は逃げられるのか!? 【キャラクター設定】 ◆ 白石 琴音(しらいし ことね)26歳 神崎ホールディングス・社長秘書。 会社では「氷の秘書」と呼ばれるほど、隙のない完璧な仕事ぶりを見せるクールビューティー。しかし、実態は仕事に全ステータスを振っているため、プライベートはポンコツで家事能力ゼロのズボラ女子。主食は栄養ゼリーとサプリメント。 社長の神崎を「顔が良すぎる最高のボス」として密かに推しており、熱烈な片思いをしているが、悟られないよう必死に鉄仮面を被っている。 ◆ 神崎 蒼(かんざき あおい)29歳 神崎ホールディングスの若き敏腕社長。 容姿端麗だが、一切の無駄を嫌う冷徹な仕事人間として社員から恐れられている。 しかし、実は琴音に対して入社時から異常な執着心と独占欲を抱いている。彼女を公私ともに「自分の完全な管理下」に置くことに至上の悦びを感じる、重めの過保護スパダリ。料理の腕前はプロ級。

彼氏がスパダリでヤンデレすぎてしんどいくらい好き

恋文春奈
恋愛
スパダリでヤンデレな溺愛彼氏に愛されすぎる!! モテモテな二人はどうなる!? 運命の人と激甘同居生活が始まる…!! スパダリでヤンデレな溺愛彼氏 朝霧奏多(28) 色気が半端ない みれあにだけ愛が重い×ピュアな美人彼女 二瀬みれあ(22) 芯はあるが素直すぎて無自覚な時がある 奏多しか見えてない

俺の天使は盲目でひきこもり

ことりとりとん
恋愛
あらすじ いきなり婚約破棄された俺に、代わりに与えられた婚約者は盲目の少女。 人形のような彼女に、普通の楽しみを知ってほしいな。 男主人公と、盲目の女の子のふわっとした恋愛小説です。ただひたすらあまーい雰囲気が続きます。婚約破棄スタートですが、ざまぁはたぶんありません。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 小説家になろうからの転載です。 全62話、完結まで投稿済で、序盤以外は1日1話ずつ公開していきます。 よろしくお願いします!

たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―

佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。 19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。 しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。 突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。 「焦らず、お前のペースで進もう」 そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。 けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。 学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。 外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。 「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」 余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。 理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。 「ゆっくり」なんて、ただの建前。 一度火がついた熱は、誰にも止められない。 兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。