終わりたい世界計画

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プロローグ

嘆き

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 「何かを手にすることが出来る人間は何かを捨てることが出来る人間だ」と誰かが言っていた。じゃあ僕は多くの大切なものを失ったことによって何を手に入れることが出来たのだろう。
  「止まない雨はない、明けない夜はない」と人気の歌手が謳(うた)っていた。違う。僕が欲しいのはそんな気休めの言葉じゃない。雨の中でも、歩いていく為の傘が、暗い夜を耐える為の灯火(ともしび)が欲しいだけなんだ。
「何故死ぬことになったのでしょう」と中学生の自殺者に向けてテレビのアナウンサーが言っていた。こんな事件に関しては胸を痛めてみせるくせして列車に飛び込んで死んだサラリーマンに対してはきっと舌打ちをしてるんだ。
「死にたいなんて言うな、頑張って生きろ」
薄っぺらい言葉で先生が僕に向けて言う。
違う。僕は死にたいんじゃない。生きたくても生きることができないだけなんだ。罪悪感から逃げたいからって分かった振りして近ずいて来てんじゃねえよ。
「個性を大切しましょう」と道徳の教科書に書いてある。個性と言えば聴こえはいいが、度が過ぎると、ただの不穏分子でしかない。
「人は本来優しい物なんだよ。」と母が優しい声で言い聞かせている。じゃあ多分、僕の周りには悪人しかいなっかったのだろう。
「お前のせいで」と傍観者達が加害者に向かって言っている。何お前ら被害者ぶってんだよ。お前らにそれを言う資格なんてないし、悪人が大義名分を語ってんじゃねえよ。
「可哀想に」といじめられて自殺した学生に保護者達が言う。どうせお前らには「捨てられた子犬」ぐらいにしか見えてないんだろ?いじめてた奴らが「豚」程度にしか見てなかったなら、人以下に見てるお前らもたいして変わらねえよ。
「この世は捨てたもんじゃない。」と兄が言う。だから、僕はその兄を殺した世界を捨てた。
「人を殺してはいけない、物を盗んではいけない」と言うのは常識らしい。でも、僕の中にはこの常識がないらしい。もういっそのこと笑ってくれないか。
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